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〈第8話〉有限の時……

ある日小次郎は何度目かの小太郎の夢?記憶?を見る。

時を同じくして、白愛も小次郎が見ている夢と同じ夢を見る。


 ────???


 白い靄のかかった空間。

 いくら周りを見回しても何も無い空間。

 上を見ても下を見ても、左右を見ても何も無い。

 体が宙に浮いている感覚。

 

 またこの感じか……。

 俺は真っ白な空間にまた意識だけが漂っている感じを受ける。

 このまま漂っていればまた小太郎の意識と同調するのだろうか……。


 ガランッ!ガランッ!

 未だに意識が漂っているが、聴覚だけがはっきりし何かの音が聞こえてくる。

 これは神社の鈴緒を鳴らす音だ。

 

 (……皆が幸せになれますように)

 

 聞き覚えのある声が頭の中に響く。そう、これは小太郎の声だ。

 いつか見た夢と同じ願い事を願っている。

 

 次の瞬間目の前が明るくなり視界が開ける。


 小太郎は今日?も神社に来ている様だ。

 というより、今までの夢?記憶?を見る限り、神社に参拝するのがこの子の日課になっているのだろう。

 小太郎は参拝を終え、周りを見回す。

 この日も神社には小太郎しか居ない様だ。

 

 「……」

 

 「わっ!」

 

 「うわぁ!びっくりした……」

 小太郎が神社から去ろうとしたとき、急に背後から声を掛けられ、小太郎が驚く。


 「な、なんじゃ、白愛か……。脅かすなや」

 小太郎は声のする後ろを振り向く。

 小太郎を脅かすことに成功した白愛は無邪気に笑っていた。


 「ごめんごめん。でも、小太郎驚きすぎ」

 白愛は謝りつつも、余程可笑しかったのか、まだお腹を抱えて笑っていた。

 

 「もう笑うなや!」

 未だに笑っている白愛を見て、小太郎が拗ねたような態度をとる。


 「ごめんってば、ね?許して?お願い!」

 一頻り笑った白愛は、手を合わせて拝むように小太郎に許しを請う。


 「……反省しとるんか?」

 小太郎がそう聞くと、白愛は「してますしてます」と頷く。


 「……反省しとるんじゃったら許しちゃろう」

 腕組をした小太郎が白愛を許すと、白愛は「ありがとう!」と言ってあまりの嬉しさに小太郎に抱き着く。


 「うわぁ!急に抱き着いてくるなや!」

 小太郎は顔を赤くして、抱き着いてきた白愛を引きはがす。


 「え~、別に減る物じゃないんだし良いじゃない」

 そう言って白愛が不満そうな表情を浮かべる。


 「減るとか減らんとかの問題じゃない!女子(おなご)がそう易々と男に抱き着くもんじゃない!」

 先程より顔を真っ赤にした小太郎が、白愛を叱りつける。


 「む~。そこまで怒ることないじゃない」

 予想外の小太郎の剣幕に、白愛が涙ぐむ。


 「あ、いや。ごめん……。言い過ぎた」

 涙ぐむ白愛を見て、小太郎はついムキになり過ぎたと謝る。


 「ううん、私こそごめんね。そっか女子は気安く抱き着かない、抱き着かない、抱き着かない……。うん!覚えた!」

 小太郎に言われたことを、覚えるかのように白愛が同じ言葉を繰り返す。

 この時代?の白愛はやたら小太郎との距離を縮めたがるように思える。


 「白愛、お前どこに住んどるんじゃ?勘助らにも聞いたが、ここらじゃ見たことないって言うちょったぞ」

 俺は知らないが、小太郎はあれから勘助達に、白愛の事を聞いて回った様だった。

 俺の知っている白愛は神社で校長の正臣と暮らしているが……。

 確かに小太郎が疑問に思う通り、この白愛はどこに住んでいるんだろう。


 「秘密!でも()()()()()()()()()()()

 白愛が小太郎の問いに意味深な言葉で返す。

 

 「俺の……近く?」

 白愛の意味深な言葉が理解できず、小太郎は「?」となる。


 「そう、()()()()()()()()()()()()()

 白愛のその答えに、小太郎は余計に訳が分からなくなる。

 小太郎が「どういう意味じゃ?」と聞き返すが、白愛は「秘密」とだけ言ってただただ微笑むだけだった。


 「まぁもうええわ。それじゃ俺はもう行くわ」

 何を聞いても「秘密」で言い返してくる白愛に、付き合いきれなくなった小太郎は、神社から去ろうとする。

 

 「待って!待って!私何かしたかな?」

 去ろうとする小太郎を白愛が手を掴んで引き留める。


 「何もしちゃおらんが、白愛しか居らんから遊ぼうにも……」

 そう言って小太郎が困った表情をする。


 「それじゃ、いい所教えてあげるから付いて来て!」

 白愛が小太郎の手を引っ張って、社殿の奥の森林の中へと走って行く。


 「ちょ、は、白愛……!ま、待って!」

 小太郎は白愛に引っ張られるまま草木をかき分け奥へ奥へと付いて行く。

 

 「もうバテたの?体力ないなぁ……」

 白愛が立ち止まり、小太郎の手を放す。


 「きゅ、急に手を引っ張って走るから……。ハァハァ……」

 小太郎が膝に手をついて呼吸を整える。


 「ふぅ……。それよりどこまで行くんじゃ?」

 呼吸が落ち着いた小太郎が行き先を質問する。


 「ふふふっ。あともうちょっとだよ」

 白愛は微笑みを浮かべ、「こっちこっち」と手招きし、小太郎をさらに奥へと誘う。


 (どこまで連れて行く気なんだ……)

 社殿から結構奥まで入ってきて、俺も少々不安になる。


 「ここよ!」

 あれからまたしばらく歩き、目的地に着いた様で白愛が両腕を大きく広げる。

 そう言われ、小太郎が白愛の背後に視線を向けると、何やら赤い何かが見える。

 

 (なんだろう……花……か?)

 ここからでは白愛の背後に何があるか見えない小太郎は、白愛の立っている場所まで歩を進める。

 すると、俺と小太郎の目に真っ赤な視界が広がる。

 

 (赤い花の絨毯……。いや違う、これって……)


 「これ全部野イチゴか?」

 そう、赤い花かと思ったものは、赤い実が鮮やかなの野イチゴだった。

 ここは野イチゴの群生地なのか。

 小太郎の驚いている感情が俺にも伝わってくる。それもそうだ、こんな群生地めったに見れるものじゃない、俺も初めて見た。


 「そうだよ。これぜ~んぶ野イチゴ!」

 驚いている小太郎を見て白愛が得意げ自慢してくる。

 

 「白愛……、お前凄い所知っちょるんじゃのぅ……」

 小太郎の驚きが、感動に変わるのが分かる。


 「これちゃんと食べられるよ」

 そう言って白愛が一粒摘み取り、口の中へ運ぶ。

 野イチゴを一粒口に運んだ白愛は、そのおいしさに舌鼓を打つ。

 その白愛の行動に倣い、小太郎も一粒摘み取り、口の中へ運ぶ。


 「~~っ!甘酸っぱくて美味いのぅ!」

 一口入れた瞬間は酸っぱさが口の中に広がるが、その後に野イチゴの甘さが口の中に広がりとても美味しい。

 

 「ね?美味しいでしょ?」

 小太郎の美味しそうに食べる顔を見て、白愛が嬉しそうな表情になる。

 小太郎は夢中で一つ摘んでは食べ、一つ摘んでは食べを繰り返した。

 しばらく夢中で食べていた小太郎だったが、ふと食べる事を止める。


 「?どうしたの小太郎?」

 先程まで美味しそうに食べていた手を止めた小太郎に、白愛が心配そうに声を掛ける。


 「うん、美味しかった。もう十分じゃ」

 そう言って小太郎が白愛に笑顔を向ける。

 

 「ここにある野イチゴ全部食べていいんだよ?」

 白愛の言葉に小太郎は首を横に振って答える。


 「こんな美味しいもの一人で食べたらだめじゃ。ここは森に住んじょる皆のものじゃけぇ。俺はこれで腹いっぱいじゃ、ありがとう白愛、すごいところを教えてくれて!ご馳走様じゃ!」

 小太郎が白愛の手を取りお礼を言う。

 小太郎は腹いっぱいと言ったが、そんなことはなかった。小太郎が食べたのは精々十数粒程度、腹がいっぱいになるほどには食べていない。

 強欲な人間がこんな場所を見つけたら、独り占めないしはそれこそ食べ尽くしていただろう。

 だが、小太郎はこの場所は森に棲んでいる動物皆のものと主張し、それ以上食べる事をしなかった。

 そんな小太郎の優しさに、俺は心底感心してしまった。

 

 「うん!小太郎が喜んでくれて私も嬉しい!」

 白愛が小太郎の手を握り返して嬉しそうに、そして満足そうな笑顔を小太郎に向ける。

 小太郎は白愛に抱いていた警戒心と不信感が無くなり、その後は白愛と打ち解け、他愛ない会話で笑いあっていた。

 

 「そろそろ戻るか」

 陽が傾きかけた頃、小太郎がそう言いだす。

 それを聞いた白愛も「そうだね」と相槌を打ち、2人で社殿へ向け森を出ていく。

 

 「楽しかった~。のぅ白愛」

 通って来た草むらを歩き社殿に着き、小太郎が後ろを振り向くが、後ろを付いて来ていたはずの白愛の姿が見当たらなかった。

 周囲を見回し、しばらく白愛の姿を探すが見つからなかった。

 陽が落ちてきて、自分も暗くなる前に家に帰らないといけない。

 小太郎は仕方なく、社殿を後にし、帰路に就くことにした。


 俺の意識もここで途絶え、現実世界に引き戻されていく。


~>゜~~


 ────???


 ここは……どこだろう……。

 前にも見たことのある光景だな……。

 私は今夢の中に……、違う記憶の中を漂っている。


 そう思った瞬間辺りが眩しくなる。


 ガランッ!ガランッ!

 遠くで神社の鈴緒を鳴らす音が聞こえる。

 草むらの陰から誰が居るのか確認をする。

 

 小太郎だ!

 

 私は人間の姿に化け、小太郎の背後に忍び寄る。

 人間に化けるのは、狐や狸の専売特許じゃない、神様の使いである私にも、人間に化けることはできる。


 「わっ!」

 小太郎が参拝を終えて神社を去ろうと歩きだしそうなところで、私は大きな声を出して小太郎を驚かせる。

 小太郎は飛び上がるくらいの勢いで驚き、後ろを振り向く。

 

 「な、なんじゃ、白愛か……。脅かすなや」

 私の姿を見た小太郎がそう言ってくる


 (小太郎、私の名前覚えてくれてた!)

 そのことが嬉しくて、ついつい笑みが浮かんでしまう。

 

 「ごめんごめん。でも、小太郎驚きすぎ」

 小太郎があまりにも驚いたので私は可笑しくて笑いが抑えられなかった。


 「もう笑うなや!」

 小太郎が起こり気味に私に言ってくる。

 私は(やり過ぎた)と思い小太郎に謝る。

 手を合わせて拝むように許しを請うと小太郎は、渋々といった感じで私を許してくれる。

 私は嬉しくなり小太郎に抱き着く。

 

 「うわぁ!急に抱き着いてくるなや!」

 小太郎が顔を真っ赤にして抱き着いた私を引きはがす。


 「え~、別に減る物じゃないんだし良いじゃない」

 距離を取られたことに私は不満げに頬膨らませる。


 「減るとか減らんとかの問題じゃない!女子がそう易々と男に抱き着くもんじゃない!」

 小太郎はさらに顔を赤くして私を叱ってくる。


 「む~。そこまで怒ることないじゃない」

 私は小太郎がここまで怒ると思わず涙ぐんでしまう。

 そんな私を見て小太郎が、「言い過ぎた」と謝ってくる。

 この時人間の女子は気安く男子に抱き着いたりしないのかと覚えた。

 

 「白愛、お前どこに住んどるんじゃ?勘助らにも聞いたが、ここらじゃ見たことないって言うちょったぞ」

 

 (住んでる?あぁ家の事か)

 私はその辺の草むらに住んでるとも言えず、小太郎のすぐそばに居るよと誤魔化す。

 私の答えを聞いた小太郎は、私の言ったことがよくわからないような表情を浮かべる。


 「まぁもうええわ。それじゃ俺はもう行くわ」

 

 (え!また私可笑しなことしちゃったかな?)

 そう思って私は小太郎を引き留める。


 「何もしちゃおらんが、白愛しか居らんから遊ぼうにも……」

 その言葉を聞いて小太郎がまた怒ってないことに私は安堵した。

 そうか、今ここに私しかいないから遊ぼうにも遊べないのか。


 「それじゃ、いい所教えてあげるから付いて来て!」

 私は小太郎の手を引っ張り社殿の奥の森林へと走っていく。

 

 「ちょ、は、白愛……!ま、待って!」

 草木をかき分け奥へ奥へと私は小太郎を引っ張っていく。

 途中で小太郎がバテてしまったようなので、呼吸が整うまで待つことにする。

 呼吸の整った小太郎が、「どこまで行くのか」と聞いてくる。


 「ふふふっ。あともうちょっとだよ」

 私はそう言って「こっちこっち」と小太郎を手招きする。

 小太郎にこの景色を見せたらどんな反応をしてくれるか楽しみで仕方なかった。

 

 「ここよ!」

 私は両腕を広げ小太郎に背後の光景を見せる。

 一面赤い実を付けた野イチゴ畑を。

 小太郎はその赤い光景目にして呆然としていた。

 それもそうだ、この場所は森の中でも知っているものは少ない。


 「白愛……、お前凄い所知っちょるんじゃのぅ……」

 そう言って小太郎が驚きと感動の表情を浮かべる。

 

 (喜んでくれたかな?)

 私は小太郎の顔を覗き込む。

 

(良かった!怒ってはないみたい)

 

 「これちゃんと食べられるよ」

 私は野イチゴを一つ摘み取り口に運ぶ。

 それを見た小太郎も一粒摘み取り口へ運ぶ。


 「~~っ!甘酸っぱくて美味いのぅ!」

 美味しいと言ってもらえたことが、嬉しくて連れてきてよかったと私は思った。

 その後、小太郎はしばらく夢中で野イチゴを食べていた。

 しかし、ふと食べる手を止める。


 「?どうしたの小太郎?」

 何か変なもの混ざってたかなと心配になり小太郎に声を掛ける。


 「うん、美味しかった。もう十分じゃ」

 そう言って笑顔を私に向けてくる。


 「ここにある野イチゴ全部食べていいんだよ?」

 そうだ、小太郎にお腹いっぱいになるまで食べてほしくて、私はここに連れて来たんだ。

 だが、小太郎は首を横に振る。

 

 「こんな美味しいもの一人で食べたらだめじゃ。ここは森に住んじょる皆のものじゃけぇ。俺はこれで腹いっぱいじゃ、ありがとう白愛、すごいところを教えてくれて!ご馳走様じゃ!」

 小太郎が私の手を取ってお礼を言ってくる。

 私は改めて小太郎が強欲な人間じゃないと思った。

 こんな優しい人間に、小太郎に出会えてホントに幸せだ。


 「うん!小太郎が喜んでくれて私も嬉しい!」

 私は小太郎の手を握り返す。


 この後小太郎は警戒心を解いてくれて色々な話しをしてくれた。

 本当に楽しいひと時だったのを覚えてる。

 私の幸せな記憶の一つ。

 私の大切な記憶の一つ。

 

 不意に視界がだんだんと遠ざかっていく。

 

 (そうか、夢から覚めるのか……)

 

 (また小太郎と野イチゴ食べたいな……)

 

 今まで見ていた景色が、見えないほど遠くになり、気が付くと私の周囲は真っ暗になっていた。


~>゜~~~


 ────???


 真っ暗だった周囲が突然明るくなる。

 

 (朝……か?)

 私の視界に先程とは反転して白く眩しい景色が目に映る。

 私はまだ夢から覚めてはいない様だ。


 (……)

 意識だけが何もない空間を漂っていると、目の前に光を放ち琵琶を持った女性が現れる。

 私が使えている弁財天様だ。


 「弁財天様。暫くぶりでございます」

 私は正座をして両手を地面につけ、深々と頭を下げる。


 『暫くぶりですね、白愛。元気でやっているようでなによりです』

 私が顔を上げると、弁財天様は手振りで「立ちなさい」と合図する。

 私は弁財天様の手振りを見てその場に立ち上がる。

 

 『その後、あの少年とは上手くやっていますか?』

 弁財天様の言うあの少年とは小太郎の事だろう。

 私は弁財天様の質問に「はい」と短く答える。


 「それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」

 弁財天様がわざわざ私の夢の中に出てくるのは何かあるからだ。


 『そうですね、今日はあなたに忠告をしに来ました』

 弁財天様は表情を変えずに笑顔のまま私を見据える。


 「忠告……、ですか?」

 私は今までのことを思い返してみたが、弁財天様から忠告を受ける事をした覚えがなかった。


 『白愛。あなたが今人間として現世に転生したのは、過去世でのあなたの行いに対する私からの褒美です』

 そう、私が今人間として暮らせているのは、弁財天様の命を神の使いとして忠実に行ってきた私への言わばご褒美だ。

 それを今ここで言うことに何かあるのだろうか?それともこれが忠告なのだろうか?

 弁財天様の意図が分からず、私は次の言葉を待つことにした。


 『ですが、私はあなたに()()()()()しか与えてあげられませんでした……』

 有限の時間?生き物として時間に限りがあるのは当然。

 それを敢えてここで言う必要があるのだろうか……。


 『人間としての生が終わればまた私の使いとして働いてもらいます。それまで悔いを残さぬよう生きなさい。これが私からの忠告です』

 悔いを残さないようにか。

 弁財天様に言われるまでもなく、悔いを残して人間を終わるつもりは私にはない。

 だから今大好きな小太郎と少しでも一緒に居られるように頑張っている。

 

 『それでは、私は行きます。白愛、あなたに幸多からんことを……』

 そう言って弁財天様は、眩しい光とともに消えていき、私の意識も目覚めていく。


~>゜~~~~

 

 9月18日白天比女神社────母屋


 (……なんだったんだろう)

 私は身体の上体を起こし、まだ寝ぼけた頭で先程の夢の事を思い出す。


 (人間としての生が終われば……か)

 私は視線を壁に貼ってあるカレンダーに向ける。

 今日は土曜日。

 学校がないため小太郎には会えない。

 

 コンッコンッ

 

 私が考え耽っていると部屋の扉がノックされる。

 返事をする間もなく美沙が部屋に入ってくる。


 「白愛、そろそろ起きな……さ……い」

 休みの日にすでに起床している私を見て、美沙がその場で硬直する。


 「返事をする前にドアを開けないでもらえるかしら」

 私は窓まで行き、カーテンと窓を開け、朝の空気を部屋に入れる。

 

 「ちょっと白愛……、熱でもあるの?」

 そう言って美沙が私に近づき額に手を当てる。

 私はその手を払い除け、「失礼ね」と言い返す。


 「着替えるから出て行ってもらえる?」

 私は寝間着からいつもの私服(着物)に着替えるため、寝間着に手を掛ける。


 「あぁ、うん。わかった。じゃあ下でご飯の準備してるから着替えたら降りてきなさい」

 一人で起床した私に、ペースを崩された美沙は部屋を出ていく。

 私は美沙が出ていったことを確認し寝間着を脱ぎ、着物に袖を通し、着物の形を整え帯を結ぶ。


 「”有限の時……”か」

 私は弁財天様が言った言葉を思い出し、心地よい朝の空気が入る窓の外に視線を向ける。

 着替え終わった私は、階段を降り、朝食を食べるためリビングへ向かう。

いつも稚拙な文章にブックマーク、いいね!ありがとうございます。

更新頻度が遅いですが執筆の励みになっております。

いつも応援してくれている方達に幸福が訪れますように。

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