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シロヘビ少女〜白蛇と白い少女〜  作者: 深村美奈緒


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〈第18話〉スマホデビュー……(前)

 9月30日白崎高校────HR


 前日は自宅で4種のマヨネーズを自作し、それを詰めたボトルを本日の試食・食品開発班に持参した。

 文化祭もいよいよ今週の土日に迫り試食会でも、そろそろ出し物にする箸巻を完成したものにしないといけなくなる。


 「文化祭も明後日になって来たし、今日は教室で装飾の準備をしている子達に試食を食べてもらうために人数分作りましょうか」

 いつも通り早苗が仕切り、実際に文化祭に出すものをクラス全員分作って試食してもらおうと、いつもより多めの材料を机に並べていた。

 俺達試食開発の班は俺、白愛、早苗に加えた他女子が4人の計7人の班だ。

 白愛には目玉焼きを焼くことに専念してもらうため、6人でクラス31人分の箸巻を人数分焼くことにした。

 分担的には自分の分も含め1人6人分。

 一番料理が手慣れている早苗だけ7人分作ることになった。


 「佐々木君。今日何か持ってきてるみたいだけど、それ何?」

 早苗が俺が持ってきていた保冷カバンに目を向け質問してくる。


 「あ、そうだった。ソースの自作は時間がなくてできなかったんだけど、ソースと一緒に掛けるマヨネーズだけ自作して来たよ」

 と、前日に試作した牛脂、ゴマ、明太のマヨネーズを小さい保冷カバンから取り出し机に並べる。


 「4本?これってそれぞれ何か違うの?」

 一人の女生徒が机に並べたマヨネーズの違いを訪ねてくる。


 「うん。この一番白っぽいのが牛脂、真ん中がゴマ油を使ったもの、こっちのピンクっぽいのが明太子を混ぜてみたマヨネーズ、これは普通にサラダ油から作ったマヨネーズ」

 俺は並べたマヨネーズの説明を簡単に伝える。


 「へぇ~、これって全部自作なの?」

 と別の女生徒がボトルを手に持ち聞いてくる。


 「そうだよ。どのマヨネーズもMouTubeの動画見ながら一から作ってみたんだ。それで昨日両親にも試食で食べてもらったけど、牛脂マヨはお好み焼きにも合うみたいで好評だったよ」

 それを聞いた女生徒達から「へぇ~、すごぉい!」「牛脂マヨとか聞いたことないけどどんな味なんだろ?」などの反応が返って来た。


 「マヨネーズを1から作るって結構手が込んでるね。明太マヨネーズは何となく味の想像ができるけど……、牛脂とゴマってどんな味がするんだろ」

 早苗も興味を示し牛脂とゴママヨネーズのボトルを両手に持ち外見を見比べ視覚だけで味の想像をしている。


 「……とりあえずここに居る人の分を作って試食してみたら?」

 今まで黙っていた白愛が会話に加わってくる。


 「そうだね。じゃあとりあえずいつも通り自分の分を作って、それから佐々木君の作ったマヨネーズを試してみましょう」

 早苗がパンっ!と手を叩き、ひとまず自分達で試食してみようとなり、いつも通り自分達の分+白愛の分を作りマヨネーズの味を試してみることになった。


 ガラッ!


 各々の箸巻を作り始めた時、家庭科室の扉が開き担任の美沙が入ってくる。


 「やっほ~、調子はどう?HRでも言ったけど今日はほぼほぼ集大成のものを作ってクラス全員で試食だからね」

 そう言いながら美沙が俺達に近寄ってくる。


 「あら?このボトルは何?」

 美沙が机上に置かれた見慣れないボトルを一つ手に取り尋ねてくる。


 「小太郎が作ったマヨネーズ……」

 箸巻を作っている横で目玉焼き担当の白愛が俺の代わりに答える。


 「ほぉほぉ。マヨネーズ……。4本あるけど何か違いがあるの?」

 と一本一本手に取りながら、早苗同様見比べながら聞いてくる。

 俺はマヨネーズの特徴を美沙に教える。


 「へぇ~、わざわざ1から作って来たのね、じゃあ、今から作るものにかけて試食って感じね?」

 「そうですね。昨日お好み焼きにかけて食べたら悪くなかったので、箸巻にも合うかと思いますよ」

 俺は割と自信をもって美沙に答える。

 味が気になったのか美沙はサラダ油で作った普通のマヨネーズを手の甲に少し出し、味見をする


 「おぉ?市販のマヨネーズよりちょっと酸味があるのかな?でも、ちゃんとしたマヨネーズで美味しいわ」

 スーパーで売っている市販のマヨネーズとほぼ変わらない味に美沙は驚きの表情を浮かべる。

 それを聞いたこの場の生徒達が残った3種の変わり種マヨネーズに期待を寄せる。


 「とりあえず、ここに居る人の分は焼きあがったから。それぞれ思った通りの食べ比べをしましょうか」

 いつも通り白愛と美沙の分は早苗が焼き、白愛が焼いた人数分の目玉焼きを各々の焼いた箸巻に乗せる。


 「マヨネーズどれ掛けようかなぁ」

 「私全部試したいから三分割にして試してみよ!」

 「あ、それえぇね!私もそうする!」

 俺と白愛、早苗他の女生徒が、思い思いの食べ方を試してみる様だ。


 「う~ん、明太マヨと胡麻マヨって以外にも想像できるんだよねぇ……」

 早苗がそう言いながら牛脂マヨのボトルを掴み、傍らにいる「先生はどうします?」と尋ねる。

 何を掛けるか尋ねられた美沙は「う~ん……」と顎に手を着き、通常のマヨネーズ以外の3種のマヨネーズをの中から箸巻へ掛けた後の味を想像しながら牛脂マヨネーズの選択をする。

 ちなみに、白愛は敢えて味の想像ができる明太マヨ単体を指定して試食する。


 「「「「「「……」」」」」」

 俺を除いた全員が一口頬張り、口の中の箸巻を咀嚼しながら味を確かめている。


 「ど、どうか……な?」

 一口食べた全員が押し黙ってしまった事に、俺は少々不安になる。

 

 「一ついいですか、胡麻マヨなんですが中華風なゴマの香ばしい風味がすごく良いと思います!」

 「明太マヨも!味は想像できてたけど、これ生のたらこ使ってるのかな?明太のプチプチ感がとてもいい!」

 と、胡麻マヨと明太マヨは試食した女生徒からの反応で上々だと思った......あとは......。

 俺は牛脂マヨを選んだ美沙と早苗そして、マヨネーズを三分割して味を比べようとしていた女生徒2名の反応に視線を向ける。

 

 「「「……!?」」」

 牛脂マヨを口にした彼女等は驚いた顔を見お互いに見合わせ、味を噛み締めながら首を傾げる。


 「あ、あの......。美味しくなかった......かな?」

 首を傾げる彼女等を見て不安になる。


 「あれ、これって”牛肉”とか使ってないよね?」

 「う、うん。お肉系は経費がきついから使わない方向だよ……」

 「じゃあ、このお肉の風味ってこのマヨネーズのせいかな?」

 無視をされた訳ではないと思うが、牛脂マヨを掛けて試食した彼女等は、話しかけた俺をそっちのけで味わった事のないマヨネーズの味の感想を言い合う。


 「どうかな……。お、美味しいですか?その牛脂マヨ……」

 美沙が加わった生徒達の会話に、恐る恐る俺は加わっていく。


 「うん?ううん!、全然美味しいわよ!マヨネーズに牛肉?の風味があるから、なんだろお肉がある感じがして、風味だけでここまで満足感があってすごく不思議ね!」

 美沙が周りの女生徒の言葉を代表するように言葉を発する。


 「ほ、本当……ですか?」

 美沙にそう答え、牛脂マヨを食した女生徒の顔色を窺うが、美沙に同調したように「うんうん」と首を縦に振っている。

 俺は周りのその反応を見て(良かった!)と胸を撫でおろす。


 「この後、クラス分焼いて試食でしょ?だったらマヨネーズは各々の判断でかけてもらって、最終的にその反応見て残すマヨネーズを複数決めるのはどうかしら?選択肢があった方が面白いと思う……」

 そう言って意外にも白愛が小さく手を挙げ提案してくる。

 思いもよらない提案者に俺、姉にして担任の美沙、早苗を含めた女生徒は各々の顔を見合わせる。

 昨今の祭りなどで売っている食べ物系の屋台では、色々な味が展開されていて選択肢がある事も楽しみになっている。

 なので、白愛の選択肢のある出し物のアイディアは集客の事を考えるといいのではと個人的に思った。


 「うんうん。文化祭までの期間も限られてきてるし、試食・商品開発係はこの時限と次回の文化祭本準備との係に別れることにしましょう」

 美沙があとはクラスで準備している生徒の反応次第という段階で、評決を取りその結果で今後の係分配を変えようと提案する。

 

 「そうですね、それじゃあ、後はクラスのみんなからの判定で決めましょう!」

 この後、白愛と美沙が目玉焼き担当となりひたすら目玉焼きを焼いていき、残された生徒は味に優劣が出ない様に使用されていないガスコンロを拝借し、クラス分の箸巻を作ることにする。

 箸巻という料理が、生地が薄く焼き上がりが早い事から人数分を用意するのにあまり時間をかけなかったことで、周囲からの批判も上がってこなかった。

 散り散りになっても私語に盛り上がりながら振り分けられた分の箸巻を焼いている。

 俺はそんな彼女たちを尻目にノルマの数を焼き上げる。

 

 「……」

 皆が散り散りに箸巻を焼いている中、白愛が卵のパックを目の前にして固まっている。


 「白愛?どうかした?」

 ノルマの箸巻を作り終わった俺は、微動だにしない白愛が目に入り近寄って声を掛ける。


 「……。今計算したんだけど……。卵が3つ余る……」

 俺に声を掛けられ、どうしよう?と言いたげに首を傾げこちらを見てくる。


 「え?あ、ホントだね。う~ん。どうしようか……」

 俺は顎に手を添え、余りそうな3つの卵をどう処理するか考える。

 

 「あ、生地余っちゃった」

 「こっちも生地の分量間違っちゃったかも……」 

 と、四方に分かれた女生徒から”作った生地が余りそう”と言う声が上がる。

 今まではこの班の人数分で施策を作っていたが、この日はクラス中の箸巻の試食を用意しないといけなかったせいか、それぞれ振り分けられた人数分の分量を見誤てしまい、生地が思いの他多くなってしまったため数人分残ってしまっているようだ。

 

 「あ、こっち1人分がちょっと足りなそうだから残った分もらえれるかな?」

 このグループで一番数を焼いている早苗が手を挙げて1人分の分量を他生徒から受け取る。

 だが、生地を余らせてしまった女子はあと2人居る。

 つまり残り約2人分をどうにかしなければならない。

 

 「卵が3個、生地の余りも約2人分かぁ……」

 「あ、何とかなるかも……」

 そう言って白愛が残った卵を焼き始める。


 「ねぇ、小太郎。残った生地を集めて3()()の箸巻作れる?」

 白愛から問われ、俺は首を傾げながら「作れると思うけど……」と返答する。

 白愛の意図はわからなかったが、返答した俺は「残った生地、こっちで使い切るからもらえるかな」と2人の女生徒に声を掛ける。


 「じゃあ焼いてもらっていいかしら?」

 「いいけどさ、結構な物量になるよ?いいの?」

 俺は女生徒達から余った生地を受け取る。

 生地を余らせた女生徒達からは「ありがとう!」と感謝をされるが、3重に焼き上げた箸巻のフォルムを想像し、かなり太く物量のある物になることが予想される。


 「構わないわ。食べるのはアイツだから」

 俺の問いに白愛がそう答え、俺はすでに作った箸巻に追加で余った生地を巻きながら「アイツ?」と誰の事なのか尋ねる。


 「勘九郎。アイツならこのくらい食べられるでしょ」

 俺は白愛の食べさせる相手を聞き、(あぁ、勘九郎なら食べられるか)と納得し、白愛の考えを知り半ば悪乗りで1本だけ特別製の3重箸巻を焼き上げる。

 出来上がった3重箸巻の上に、白愛が3連目玉焼きを乗せ勘九郎特別の箸巻が完成する。

 クラス分の箸巻が焼き上がり、見た目に相まって重量がある特別製の箸巻だけ別皿に乗せ、俺達試食、食品開発の班は教室で作業している生徒達の元へと試作品を持っていく。

いつも稚拙な文章にブックマーク、いいね!ありがとうございます。

更新頻度が遅いですが執筆の励みになっております。

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