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〈第14話〉どこにも行かないで……!(後)

小次郎と白愛は『岩国シロヘビの館』から出ると昼食を摂るため食事処へ向かい、小次郎が食べてみたいと言っていた瓦蕎麦を食す。

食後もデートを続けるが……。

 9月26日吉香公園周辺────

 

 俺達は『岩国シロヘビの館』を出て昼食を摂れる店へ向かう。

 店に関しては白愛の方が詳しいので、店は白愛に任せてある。

 シロヘビの館の隣にもカフェテリアがあったがどうやらそこではないらしい。

 観光地が近い為か、車通りは比較的少なく、天候にも恵まれてのんびり歩くにはちょうどいい。

 俺達は吉香公園の中を通り、土産物屋や食べ物屋が並ぶ通りに出る。

 

 「お店ってどの辺りなの?」

 俺の質問に白愛は「もうちょっとよ」と答えひたすらに歩く。


 「ここよ」

 そう言って案内してくれた店は錦帯橋を向こう岸から、ちょうど渡った辺りの角にある店だった。

 看板にはデカデカとした写真と瓦蕎麦と書いてあり、白愛が言っていた茶蕎麦の意味がすぐに分かった。

 既に昼時を迎えており、看板は営業中になっていた。


 「いらっしゃいませ!」

 店の戸を開け入店すると、店員の元気な挨拶が聞こえてくる。

 入ってすぐに店内を見回すと、店内は4人掛けの席が10席程ある店のようだ。

 この店は地元では有名なのか、訪れた著名人のサイン色紙が数多く壁に並んで張り出されていた。

 店内入り口のすぐそばに券売機があり、食券を買って注文をするシステムのお店の様だ。

 メニューは色々あるが、俺達の注文するものはすでに決まっていた。

 白愛が財布を出し食券を買おうとしていたが、「ここは俺が出すから」と言って、白愛を制した。

 俺達は入り口の券売機で瓦蕎麦2つと、岩国寿司1つを券売機で買い、店員に案内された席に着席する。

 席に座って店員に先程購入した食券を渡す。

 

 「それでは少々お待ちください。当店はお冷がセルフサービスとなっておりますのでよろしくお願いします」

 そう言って、店員は厨房に注文を通しに戻っていく。

 俺はセルフのお冷を取りに席を立ちあがり、サーバーで2人分の水を汲み席に戻る。

 

 「いい匂いだなぁ。これって茶蕎麦の匂いかな?」

 店内は茶蕎麦の焼けるいい匂いが立ち込めていた。

 7時に朝食を摂って以来、何も口にしていないので適度な散歩をして空いた腹に、この匂いは結構響いてくる。

 

 「そうね、いい香りね」

 俺の言葉に白愛が共感して、お冷を一口飲む。


 「この後どうしよっか?」

 デートコースと言うか、散歩コースは特に2人で話し合って決めてないので、食後どうするかを白愛に聞いてみる。


 「錦帯橋も渡ってみたいんでしょう?私も渡った事はないし」

 「え、白愛も渡った事ないの?」

 白愛の意外な返答に俺は少し驚いてしまう。

 

 「地元民からすればわざわざお金を出して渡る物でもないでしょう」

 確かに言われてみれば、白愛の言い分にも納得してしまう。

 

 「じゃあ、この後は錦帯橋に行こうか」

 俺の言葉に白愛が「えぇ」と答え、次の行き先が決まる。


 「そういえばさ、文化祭の日皆でご飯食べようって約束したじゃない?何か白愛のリクエストの料理とかあるかな?」

 俺はできれば皆のリクエストの弁当を作りたくて、まず最初に白愛の食べたい弁当のおかずを聞くことにした。


 「ん~、そうねぇ。卵焼きは必須として、サンドイッチとかどうかしら」

 「サンドイッチかいいね!じゃあ中の具材は俺に任せてもらっていい?」

 片手で食べられるものがおにぎりしか思い浮かんでいなかった俺にとって、この白愛のリクエストはありがたかった。

 作る側としては「なんでもいい」という答えが一番困ってしまうため、その辺りちゃんと答えてくれる白愛は好感が持てる。


 「お待たせしました。瓦蕎麦2つに、岩国寿司1つです。あと取り皿もどうぞ。瓦が熱くなっていますので気を付けてください」

 文化祭に持っていく弁当の話しをしていると、俺達が注文した物がテーブルに並ぶ。

 注文はしていないが、店員が気を利かせて取り皿を2枚持ってきてくれる。


 「ありがとうございます」

 俺は配膳してくれた店員にお礼と一礼した。

 それを見た店員が「ごゆっくりどうぞ」と笑顔で言ってくる。

 俺は自分の分と白愛の器に蕎麦つゆを入れる。


 「それじゃ、食べようか」

 白愛が頷くのを見て俺達は手を合わせて「いただきます」と言って瓦蕎麦に手を付ける。

 俺はつけ汁のポットに書かれている通りの食べ方をする。

 まずは茶蕎麦の上に載っている紅葉卸とレモンをつけ汁に入れ、錦糸卵と焼けた肉をつゆの入った器に入れる。

 薬味と具材を入れた器に、緑色の茶蕎麦をくぐらせ一口啜る。


 「うんうん!美味しいね!」

 瓦で焼けてカリカリになった蕎麦に、レモンの酸味と濃い目のつけ汁が良く絡んで美味しい。

 蕎麦の上に乗っていた具材の肉も甘辛く焼かれていて、これを茶蕎麦と一緒に食べると味がマッチングして美味しかった。

 岩国寿司は1つを2人で分け合うつもりだったので、半分ずつ取り皿に移し一皿白愛に渡す。

 この岩国寿司と言うのはちらし寿司を型枠か何かに入れてギュウギュウに押し込んだ、関西でいう押し寿司に近い見た目で、味もちらし寿司の様な感じだったが美味しかった。

 瓦蕎麦と岩国寿司を美味しそうに頬張る俺を見て、白愛が満足そうな表情を浮かべ自分の前にある瓦蕎麦と取り分けた岩国寿司を食べ進める。


 「あぁ~、美味しかった」

 俺達は瓦蕎麦と岩国寿司を堪能し終え、店を後にする。

 途中白愛が「ちょっと多いかも」と言って寿司を半分(元々の4分の1)を残していたので、それを俺がもらい完食した。

 デザートに向かいにあるソフトクリームでもと思ったが、ちょっと運動をして腹を空かせないと俺もきついと思い、先に錦帯橋の方へと向かうことにした。

 幸い昼食を摂った店から橋の料金所まで道を挟んですぐ近くだった。

 俺と白愛はそれぞれ橋の料金所で入橋料を払う。

 橋に入った俺達は景色を楽しみながら対岸へと歩を進める。

 

 「景色がいいねぇ」

 俺は橋の上から見える景色に感動を覚える。

 橋の長さは約193メートル、木組みの技法で造られている。

 反り橋の構造は精巧かつ独創的で、現代の橋梁工学からみても非の打ちどころがないと言われていいるそうだ。

 隣を歩く初めて渡ると言う白愛も俺の感想に「そうね」と共感してくれる。

 この橋は四季折々のいろんな景色が楽しめ、夜にはライトアップされて、また違った雰囲気の錦帯橋も見れるらしい。

 俺は歩調を白愛に合わせて橋を進む。

 

 「この橋には

  一橋 こころきずな橋

  二橋 で愛橋

  三橋 ふれあい橋

  四橋 思い出橋

  五橋 百歳全幸せ橋と言うそうよ」

 そう言って白愛がそれぞれのアーチの由来を説明してくれる。


 「あ、そうだ、ここら辺でちょっと写メ撮らない?」

 俺達は中腹の3橋の辺りでちょっと思いついたことを白愛に提案する。

 俺の言葉を聞いて白愛はちょっと考える仕草を取る。

 

 「ほら、何かポーズを取って」

 と、俺はスマホのカメラを起動し、白愛にカメラを向ける。

 急にカメラを向けられオタオタとする白愛が可愛いかった。

 ぎこちないポーズを取る白愛を何枚か撮影し、移動しようとしたとき、後ろから肩をトントンッと叩かれる。


 「ん?」

 俺は背後を振り向き、肩を叩いた人物を確認する。

 そこには見知らぬ眼鏡を掛けた男性が立っていた。


 「よかったら彼女さんとのツーショット撮りましょうか?」

 どうやら男性には俺と白愛が恋人同士に見えた様で、白愛の事を「彼女さん」と言われ俺はちょっと気恥ずかしかったが、俺は「あぁ、そういうことか」と思い男性に「お願いします」と、スマホを渡しカメラマンをお願いして白愛の隣に立つ。

 


 「ちょっと間が空いてるんでもう少し近づいて肩でも組みましょうか」

 それを聞いた俺と白愛は「えっ!」とお互いに顔を見合わせる。


 「い、いいかな?」

 「……」

 白愛は無言で頷き、顔を赤くするが、俺も白愛と同じくらい顔を赤くしていたと思う。

 

 「それじゃ撮りますよ~。ハイ、チーズ」

 俺が白愛の肩を組んだ事を確認した男性が掛け声をかける。

 俺と白愛は今できるだけの笑顔を男性の方に向ける。

 何回かシャッターを切られ、男性が俺にスマホを返してくる。


 「どうですか?」

 撮ってもらった写真を俺と白愛が確認をする。

 2人とも顔を赤くして少々ぎこちない笑顔だが良く撮れていた。


 「良く撮れてます。ありがとうございました」

 俺が礼を言うと男性は「良かった」と言って、今度は自分のスマホを俺に差し出してくる。


 「?」

 「申し訳ないんですけど、今度は私達の方を撮ってもらっていいですか?」

 男性の後ろを見ると赤ん坊を抱えた女性と男の子が立っていた。

 俺は「なるほど」と理解して男性のスマホを受け取る。


 「撮りますね~。ハイ、チーズ!」

 男性の家族が橋の欄干を背に横に並び、俺の掛け声で男性家族が各々ポーズを取る。

 俺は男性の家族が入る画角でシャッターを数回切る。


 「どうでしょう?」

 男性にスマホを返し数回撮った写真を確認してもらう。

 

 「あぁ、いいですね。ありがとうございました」

 「いえ、こちらこそありがとうございました」

 お互いに礼を言い合い、男性家族と別れた。


 「小太郎、さっきの写真見せて」

 少し遠くで俺と男性のやり取りを見ていた白愛が近寄ってくる。

 

 「ん?いいよ。はい」

 俺は先程撮ってもらった写真の画面を開き白愛に見せる。


 「この写真欲しいな……」

 撮ってもらった写真を見つめて白愛が呟く。


 「スマホがあれば送信するけど、白愛ってスマホ持ってたっけ?」

 白愛がスマホをいじっている所を見たことがない俺は、白愛にスマホを持っているか聞くと、首を横に振り「持ってない」という答えが返ってきた。

 

 「今度プリントしてあげようか?」

 「うん。じゃあこの写真一枚お願いね」

 そう言って一番良く撮れているツーショットの写真を指定し、スマホを俺に返してくる。

 

 「白愛はスマホ持たないの?」

 家庭にもよるのだろうが、最近では高校生でスマホを持たせる家庭は多いと思う、早ければ小学校の高学年から持たせている家庭もあるだろう。


 「考えたこともなかったわ。今度美沙に言って買ってもらおうかな……」

 白愛と2人でスマホを選んだりもしてみたいが、俺達がまだ未成年な事と学生で金銭面が乏しく購入契約ができないので、そこは美沙に頼るしかなかった。

 俺と白愛はスマホについての話しをしながら川の対岸を目指して橋を再び歩き始める。

 

 対岸まで渡り切った俺は、白愛が着物に合わせた草履を履いていたので、白愛の足を気遣って一休みすることにした。

 白愛曰く、この先は観光用のバスターミナルや土産物屋と商店街になって居るらしく、また時間のある時に見て回ろうと言う事になり、休憩が終わったら折り返して戻ることにした。

 

 しばらく休憩した俺達は、再び入橋料を払い公園側へ戻り始める。

 行きの時は観光気分があったので気に留めなかったが、このアーチ形の橋を渡るのは結構良い運動になる。

 そこに秋の風が横から吹いて来て非常に心地よい。


 食事を摂った場所まで戻って来た俺達は、橋を渡る前に見送ったソフトクリームを食べようと、甘味処に立ち寄った。

 橋を渡った先には甘味処が2件あり、どちらもソフトクリームの種類の多さを売りにしているようで、店名がライバル同士の剣豪の名前からして、種類の多さで競っている印象を受けた。

 

 「どっちのお店にしようか?」

 「どっちでも同じよ。どうせならそっちにしましょ」

 そう言って白愛が俺の名前と同じ店の方を選ぶ。

 俺と白愛はチョコソースの掛かったバニラを選び、食べ歩きながら吉香公園に向かって歩く。

 横を歩く白愛がどう思っているかわからないが、こうやって並んで歩きながらソフトクリームを食べていると、デート感が出て少し緊張してしまう。


 「……」

 「?小太郎どうかした?」

 横目で白愛の様子を窺っていた俺の視線に気づき、白愛が小首を傾げる。


 「あ、い、いや、何でもない……」

 横目で見ていたことに気付かれた俺は、恥ずかしさを誤魔化すためソフトクリームのコーン部分に噛り付く。

 吉香公園の中央辺りまで歩いてきた俺達は、歩き疲れて噴水が出ている近くのベンチで休憩することにした。

 日和が良く休日と言うのもあって、家族連れやデート中と思われる男女が散見される。

 この公園も桜の木など季節の木々が植えられてあり、今の時期や春なんかはピクニックなどに最適なんだろうなと思う。

 今度来るときは紅葉が綺麗なときか桜が咲く時期に来てみたいものだ。


 「……」

 秋の陽気と歩き疲れたせいか、急に眠気に襲われ瞼が重くなる。


 「小太郎、大丈夫?」

 うとうとしている俺の様子を見て、白愛が声をかけてくる。

 

 「ごめん、なんか急に眠気が……」

 眠気に負けないように目を擦り、欠伸をかみ殺して白愛に答える。


 「いいよ、寝ても。陽が落ち始めたら起こしてあげるから」

 そう言って白愛が笑顔を俺に向けてくる。

 俺は「じゃあちょっとだけ……」と言って眠気に負けて目を瞑る。


~>゜~~


 ────???


 ここはどこだろう……?

 いつの間にか真っ白な空間に放り込まれ、俺は辺りを見回す。

 さっきまで白愛と一緒に居たはずだが、ここには誰も見当たらない。

 この感覚はいつものあれだ……。

 だが、この時間にこの空間に放り込まれるのは初めてだ。

 

 そう思ってしばらく何もない空間を漂っていると、空間の一角が急に眩しく光始め視界が開けてくる。

 視界が開けた遠くで男の子と女の子が、神社の境内で楽しそうに遊んでいた。

 小太郎と白愛だ。

 でも、なんだろう……。

 いつもの感じと違う。

 いつもだと小太郎の感覚を俺も共有できていたが、今見ているものは映画館のスクリーンで2人を見ている感覚だ。

 そんな俺を他所に、小太郎と白愛は仲良く追いかけっこをしている様に、お互いを追いかけまわして楽しそうに笑っている。

 

 (2人とも楽しそうだな……。今俺の傍にいてくれる白愛もいつかはあんな楽しそうな笑顔を俺に見せてくれるだろうか……)


~>゜~~~


 9月26日吉香公園────


 巨大噴水のあるベンチで歩き疲れて休憩している私と小太郎。

 何時しか小太郎がうとうとと舟を漕ぎ始めたので、心配になり小太郎に声を掛ける。

 眠気に負けまいとして、目を擦る小太郎だったが、そこは無理に起きていなくてもいいと思い、私が「陽が落ち始めるころに起こすから」と言うと小太郎は素直に寝付いた。

 眠りに落ちた小太郎の体をそっと横に倒し、周囲の視線など気にせず小太郎の頭を頭を私の膝に乗せる。

 

 「……」

 小太郎の寝顔を見ていると、幸せを感じて自然と笑みが浮かんでくるのが分かる。

 私の膝の上で寝息を立てている小太郎の頭を何度も私は撫でた。

 

 どのくらい時間が経っただろう。

 周りを見るといつの間にか人気も少なくなってきていた。

 私はそろそろ小太郎を起こそうかと悩んでいると、あることが不意に脳裏に思い浮かぶ。

 

 それは雪が血に染まり、血塗れの小太郎を抱きかかえている風景。

 目を閉じたまま動かない小太郎を何度も何度も揺すって起こそうとする。

 小太郎の閉ざされた眼は二度と開かなかった。

 私は徐々に冷たくなる小太郎の体を必死に抱き続ける。

 お願い目を開けてとお願いをする。

 神様にも小太郎を助けてくださいと懇願をする。

 だが、無情にも小太郎は私の腕の中で動かなくなった。

 逝ってしまったのだと悟ると、私の目から大粒の涙が零れ落ちる。

 

 「……っ!……っ!」

 私はいつの間にか涙を流して泣いていた。

 ()()()の小太郎と今の小太郎が重なり、また目を覚まさないんじゃないかと心配になった。

 また私の事を残して逝ってしまうのではないかと、不安になり涙が止まらない。


 (お願い、起きて!起きて小太郎……!)

 私は声を殺して泣いていた。


~>゜~~~


 9月26日吉香公園────


 「ん……」

 どれくらい眠っていただろうか、俺はあの夢から覚め現実に戻ってくる。

 俺は頭が何か柔らかなものの上にあることに気付く。

 

 「っ!ごめん!」

 俺はそれが白愛の膝の上だと分かった瞬間、飛び起きて条件反射で謝ってしまう。

 白愛から反応が返ってこないことに、不安に思い白愛の表情を窺う。

 俺が白愛の表情を窺うと、なぜか声を押し殺して泣いていた。

 

 「ごめん、白愛!重かったよね」

 白愛の表情を見て俺は慌てて、さらに謝罪する。

 俺の謝罪を聞いた白愛は首を横に振って何かを否定する。


 「違う。違うの……」

 白愛はただただ首を横に振るだけだった。

 俺は不安になり、白愛の体を自分の方へと抱き寄せる。

 白愛が俺の腕の中で泣きじゃくる。

 俺が「ごめん、ごめん」と耳元で囁き頭を撫でるが、白愛は違うと首を横に振るばかりだった。

 

 「大丈夫。大丈夫だよ」

 何が理由で泣いているのかわからない俺は、ただただ白愛を落ち着かせることしかできない。


 「小太郎……」

 白愛が涙声で俺の名前を呼び俺を見上げる。


 「私を置いてもう”どこにも行かないで……!”」

 白愛が大粒の涙を流しながら、切実に言ってくる。

 

 「大丈夫。どこにも行かないよ」

 俺はできるだけ気持ちが伝わるように、白愛の涙を拭い優しく答える。

 俺と白愛はお互い見つめ合い、それからどちらともなく唇を重ねた。 

いつも稚拙な文章にブックマーク、いいね!ありがとうございます。

更新頻度が遅いですが執筆の励みになっております。

いつも応援してくれている方達に幸福が訪れますように。

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