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二人三脚

 借り物競争の興奮が覚めやらぬ中、一年生の男子が次の男子の自由競技の準備に動き始めた。私の背後からは謎の囁き声も聞こえてくる。


「イアン王子様とお昼も会っていましたよね」


「まさか、婚約者なのですか?」


「いや、イアン王子様に婚約者がいるとはお聞きしていませんわ」


「一体どういうことでしょう?」


 いけません!これは当分は大人しくしていないといけない様です。でも人の噂も75日です。いや、ちょっと待て。私は75日も耐えないといけないのか? それはちょっと難しいような気がする。


「どうやら少しは先行した用ですね」


 盛り上げるために正確な点数はわざと表示していないのだが、ローナさんが手にした小さな手帳を眺めながらつぶやいた。流石です。世の男子達はこのような方こそ奥方に迎えるべきです。もっともローナさんは外見も私より遥かに可愛らしい人だから、そのような心配など無用ですね。


「これより男子の自由競技になります。男子の自由競技は二人三脚です」


 案内役が次の競技について触れ回っている。


 えっ? 二人三脚? もしかしてあの二人三脚ですか?


「二人三脚って何ですか? 初めて聞きました」


 ローナさんが私の横で首を捻っている。あれ? やっぱりみんな知らないんですね。でも男子がそれを選んでいるという事は皆知っているんじゃないんですか? 訳が分からない。


「この競技について説明させて頂きます。二人の競技者の左足と右足を紐で結んでゴールまで一緒に走ります。前方の折り返し点を回り、スタート地点まで戻ったらゴールです。そこで次の走者に紐を渡して行きます。最終競技者が先にゴールをした順位が最終順位となります」


 そう言うと説明係の生徒が紐を持って全員に示した。


「なお、紐の結び方が緩い、あるいは途中で解けた場合はスタートまで戻って再出発となりますので、ご注意ください」


「これは殿方が仲良く走る姿を見れるという事でしょうか?」


 女子生徒の一人がポツリと呟いた。その言葉に周りがピクリと反応する。


「そ、そうですね。こ、これは……」


 背後の女子生徒達の間にざわめきが起きた。一部の生徒からは既に「キャー!」という声も上がっている。ふふふ、みなさん涎が垂れそうですよ。どうか私も混ぜてください。


 エルヴィンさんとヘクターさんの組み合わせとかもうたまりません!あれ、白組と黒組だからその組み合わせはないのか。なんて勿体ない、今から組み替えをしましょう!


「なお、この競技は男子生徒と女子生徒の組で行います。各組みの競技者の組み合わせについては、厳正な抽選で決定させていただきました。やむ負えない事情がない限り変更は認めません。以上、よろしくお願いします!」


「えぇーーーー!」


 その説明に会場から驚きの声が上がった。ちょっと待ってください。知らない男子生徒といきなり二人三脚ですか!?


「もしかして殿方と並んで走るという意味でしょうか?」


 ローナさんの口からも驚きの声が漏れた。そうです。それもかなりの密着度です。ヤバすぎです!


「ではこれから各組みの代表が名簿を配りますので、それに従いスタート地点で走者順にお並びください」


「なんて事でしょう!あの方にバレたら怒られてしまいますわ」


 婚約者のいる女子生徒が困ったような声をあげているが、その声色は決して困っているようには思えない。むしろ顔が赤くなっているのは気のせいだろうか? いや、その前に皆さん……


「皆さん、二人三脚ってやったことがあります?」


 赤組の生徒がお互いに顔を見合わせる。いけません!皆さんはこの競技がどれだけ危険なのかを分かっていません。あれ、どうして私は危険だと知っているんだ? まあ、どうでもいい話しです。


「いいですか皆さん。掛け声が重要です。必ず二人で掛け声を掛け合ってください」


 私の言っていることが分かっていないのか、皆さんお互いに顔を見合わせている。これはとっても重要なことです。さもないと……


「皆さん、傷だらけになりますよ!」

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