青春の『青』の部分消失事件。
空は赤色。雲は薄いピンク。
川はオレンジ、道は…何色かわからんがこれもオレンジっぽい。
どれもこれも、頬を染めている。
この状況、横に並んで二人静かに。
しかし静寂は。
「…青色がない。」
「…は?」
青春の『青』の部分消失事件。
「青春って何色?」
「そりゃあお前、青よ。」
青春という文字に『青』が使われているのだから青だろう。
しかし現状、青は消えている。
「この状況は?」
「青春だろう。」
男女二人。夕日の帰り道。
言わずもがな青春。
「…青色は?」
周囲を見渡しても、暖色ばかり。
そう。つまりこれは。
「ねえ、青春から『青』が消えちゃった。」
「…狂ってんな。」
「でも青色がないと青春じゃないよ?」
「いや、別に青春ってそうじゃないだろ」
「じゃあ青春って?」
「………『青』が消えてしまっているな。」
「じゃあ事件?」
「事件事件。」
青春に『青色』は必要なのか。
「まず青くないとダメなのか?」
「ダメ!」
青春の場に『青色』は必要なのか。
「青がいるんなら、朝とか昼がいいと思うんだ。」
「でも朝の登校は時間が少ないし、お昼はウチの屋上いけないから青春っぽいことできないじゃん。」
「朝はわかるとして、お前の中に昼は屋上しかないのか。」
「漫画とかドラマだとそうだったよ?」
「創作物の範囲しか情報はないのか…」
青春の『青』とは何なのか。
「ところで、『青』『青』言ってるけど。青春の『青』って何なんだ?」
「青色じゃないの?」
「まあその可能性もある。」
「…青色じゃない可能性があるかもしれないって事?」
「例えば、俺たちのこと『青年』って言うだろ。」
「…まさか青春の『青』は、青年の『青』…?」
「そうだ。そして、俺たちの青春から『青』が見当たらなかった理由が分かっただろう。」
「私たち自身が『青』だから、お互いに気付かなかった…!」
「灯台下暗しってやつだったんだよ。」
「そういうことだったのか…」
かくして青春に『青』は…
「何とか『青』を取り戻したね。」
「まあ元々青だったって感じだけどな。」
冷たい風が吹く。
空は赤から黒へと変わり始める。
「青年の『青』…じゃあ、私たちがそろってれば、何時でも青春?」
「ああ、大人になるまでな。」
一瞬で長い沈黙。
川の音は、ざぁざぁと静寂を。
「…大人になったら、青春のことなんて呼ぶ?」
「…その時に、また決めようぜ。」
今はまだ、青春を感じていたい。
「私たちは『青』。私たちは『青春』。じゃあ、私たちって『春』?」
「…流石に春はないだろ。」
「せっかくの私たちの青春が。なくなっちゃった。」
「違う違う違う違う。全然なくなってないぞ。」
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