ヘルメスの居た青空
雲ひとつない青空の下
平原に寝転ぶひとりの青年
行っても帰ってもいつもいる
今日は寝転んでいた
ある日はギターを持っていた
観客は蝶一頭だけだった
可哀想だから僕も加わった
青年はギターを弾けなかった
歪んだ音色が僕一人を包んだ
蝶は居なかった
ある日は傘を持っていた
わざわざ傘を持ってまで
この平原に居たいらしい
貸してあげようか
青年は僕を見て言う
ある日は居なかった
雲ひとつない青空の下
平原には蝶が舞っている
蜜を吸いに来たわけでもないらしい
群れがそこに居座っていた