シノブ「相手の沸点ひくすぎない?」
Side 藤崎 シノブ
谷村さんと一緒にボディガードのお仕事をこなしていく。
鑑定、探知は便利だ。
盗聴器の類いや不審者がいれば直ぐに見つけられる。
ここに来る途中も不審者はかなり片付けたせいかとても落ち着いている。
今はアイドルのレッスンを見学させてもらっている。
一般人がやるにはハードなトレーニングメニューを行っているが、そうでもしないといいパフォーマンスを提供できないのだろう。
それはそうと・・・・・・
「ストーカーもう退治しちゃったパターンですかね?」
谷村さんにそう質問する。
「まあそれらしき人間はいて、長谷川君には報告済みだよ。ただ――」
「ただ?」
「今回の相手はけっこう資金力がある奴が相手かも知れない」
「鑑定魔法の結果ですね」
「推測もあるけどね。今回はストーカーではなく、アイドルに執着する金持ちさんが相手かもしれない」
「うわ~」
そんなエロ同人みたいな設定の奴が相手か。
関わるのいやだな。
「そいつを叩かない限りは依頼は完了とは言えないね」
「世の中にはいるんだなそう言うの・・・・・・」
この事は目の前で頑張っているアイドル達には伝えない方がいいだろう。
芸能活動どころじゃなくなる。
☆
そうしてレッスンが終わり、日も暮れて芸能事務所のビル前。
「あの、なんか大量に半グレっぽい方が・・・・・・」
「ええ。ちょっと相手の判断が急すぎる気もするね」
なぜか半グレな方達が大量にたむろしていた。
他のアイドルや芸能事務所の人達も外に退避している。
あきらかに自分達に関係あるっぽいので谷村さんと一緒に対処する事にした。
すると次々と半グレ連中が立ち上がってくる。
体格や強面な外見もあるが拳や顔を見るとケガや傷の跡が見えた。
ただの不良学生が相手とはワケが違う。
たぶん格闘技か何か囓っているか、もしくは人を殴り慣れているような連中だ。
芸能事務所の警備員達では荷が重すぎる。
とりあえずスマホで撮影している奴のスマホを念力系の魔法で破壊しておく。
生中継でもされでもしたら厄介だからだ。
「お前らか百万円って奴は?」
半グレの一人がそう言って突っかかってきた。
それよりも「百万円?」と言う単語に引っかかった。
「お前らを半殺しにしたら百万円くれるんだってさ」
「そう言う内容のメールが俺達の間に出回ってるのよ」
成る程。
見せしめがてらそう言う劣悪な手段で潰しに来たか。
「百万円か。それで人生を棒に振るつもりかい?」
谷村さんが挑発気味に言う。
「なんだお前? 百万円だぞ百万円。目の色変えない方がおかしいっての」
「百万円を働いて稼ぐのにどれだけ苦労するか分かるけどさ。大人になって真面目に働いて貯金していけば稼げない額でもないさ」
あ、谷村さんこれキレてるパターンだ。
「はあ? 説教しちゃうけい?」
「その程度の額で人生を棒に振る覚悟はあるのかい?」
「寝言は寝ていえや!!」
そう言って谷村さんに拳が突き刺さる。
避けずに受け止めた。
グキャ。
「あああああああああああああああああああああ!!」
相手の拳にヒビが入ったかもしれない。
手首は間違いなく折れている。
「ど、どうなってんだ!?」
「構わねえ! やっちまえ!」
それに動揺する半グレ連中。
これを皮切りに次々と襲い掛かってくる。
――人目が多すぎる! 魔法を使わず出来る限り傷つけず無力化していって!!
と念話で話掛けてくる
僕も(わかった)と返しておいた。
☆
Side 天川 マリネ
(凄い・・・・・・)
最初は頼りない二人だと言うのが正直な感想だ。
これがボディガード? ふざけているのかと思った。
だが今は大人数相手に二人で立ち向かう。
まるでアクション映画のように次々と投げ飛ばしていく。
他の皆も。
アカリやセイナ、纏目さんも、他のアイドルや芸能事務所の人も言葉を失っていた。
みるみるウチに相手は倒れていき、気がつくと相手は全員倒れ込んでいた。
そして藤崎 シノブと言う人だけが帰ってくる。
「谷村君は!?」
私は慌てて藤崎さんに谷村君の事を聞いた。
「この事件の決着をつけにいったよ・・・・・・あの馬鹿ども、怒らせちゃいかん奴を怒らせやがった」
「でも、いくら谷村君でも一人じゃ・・・・・・」
確かに谷村君は普通の学生とは違う。
凄い強くなってるのも分かった。
でも一人ではいくら何でも危ないのでは?
☆
Side 藤崎 シノブ
留守を任されてしまった。
天川さん達にはどう説明したもんか・・・・・・
正直言うと谷村さんの心配よりも相手の心配をしている。
基本あの人は裏方に回る事が多いが全く戦えないワケじゃない。
と言うか僕と谷村さんが本気で戦ったら間違いなく自分が死ぬ。
勝てたとしてもギリギリの勝負になるだろう。
それが僕の認識だ。
つまり何が言いたいかと言うと
(この事件、終わったな)
と言う事である。