六話 私は李黒星を連れて来たんです
六話 私は李黒星を連れて来たんです
エスパーダは一人の小人を連れて帰ってきた。男の小人で、腰に二丁拳銃を下げた西部劇のガンマンっぽいファッションをしている。身長はエスパーダよりも高く、痩せ型だ。
彼は服装に似合わないリュックを背負っていて、リュックの口から北京鍋の柄が顔を出していた。
「要、望み通り小人の料理を食べさせてあげる」
エスパーダは料理人を連れてきたようだ。要に失望して出ていったわけではなく、ただ小人の料理を食べさせようと料理人に会いに行っただけなのであった。
要は感動し、そして申し訳なく思った。
「彼は李黒星。私の知っている中で一番料理がうまいのよ」
「李……」
中国の苗字だ。この小人はおそらく中国出身なのだろう。そうなると西部劇衣装のような見た目が違和感として際立つ。
「黒星は銃の名前だ。だからこのガンマンスタイルはおかしくない。お前も日本人なのに着物を着ていないだろ? そういうことだ」
黒星はエスパーダよりも高圧的で、頑固な意志を感じさせた。不用意なことを言うと腰の拳銃が火を吹くかもしれない。
「はじめまして。俺は宿守……」
「知っている。エスパーダから聞いてる。要が小人の料理を食べたいと言っていると人の家に押し掛けてまで言うものでな」
あまり歓迎されている雰囲気ではない。エスパーダは人間に対して友好的だから誤解していたが、本来は人間と交流のない種族である。敵対的でもおかしくないのだ。
エスパーダに謝れば事は済むのだが、黒星に何もさせないで帰らせたら失礼にあたる。それにエスパーダに恥を書かせることになるので、要は黒星に料理を作ってもらうことにした。