四話 ケンカになりました
四話 ケンカになりました
「エスパーダは作ったことがないからそんなセリフが出てくるんだ。料理って大変なんだよ」
これでも感情を抑えながら、言葉を選びながら、要は言った。でもエスパーダは悪びれる様子もなく、要を睨み付けてくる。
「「辛いのは辛いのよ。それに塩味も濃いし。素直に感想言ったら怒られるなんて、そんな理不尽なことないわよ」
「だってせっかく作ったんだよ」
「手間暇かけて作って上手くなるなら私も天才料理人になれるよ。でも違うでしょ? 唐揚げはしょっぱいし、辛い」
エスパーダの言う理屈は分かる。でも要の感情がついていかない。
要が作った物を吐き出し、文句を言うエスパーダに否定以外の言葉を言って欲しい。
嘘をついて欲しいわけじゃないけど、ねぎらって欲しい。
それに否定するならもっと言いかたがあるだろう。
エスパーダに対するいろんな思いが渦のように混ざり合い、心が時化る。その渦にはエスパーダに対する愛情も混ざっていた。
「小人族だからこの唐揚げがまずいの? だったら小人族の料理を味見させてよ」
エスパーダが料理できないのを知っているのに、意地悪なことを言ってしまう。言ってしまった後に自己嫌悪に陥るが、吐いた言葉は飲み込めない。
「要、そんな意地悪だったんだ」
いつものキャンキャン怒鳴る感じではなく、しみじみと言った。
「分かった。小人族の料理、食べさせてあげるから」
エスパーダはそう言うと、身支度を整えて要の家を出て行った。
要は謝ることも、止めることも出来なかった。目の前て繰り広げられている状況を受け入れられなかったのだ。
「エスパーダ……」
要がいなくなった寂しさに襲われ、エスパーダの名前を呼んだのは朝になってからのことだった。