一話 彼が提案してきました
一話 彼が提案してきました
要は本格的な料理をあまり作らない。レトルト食品やコンビニ弁当で済ませることが多い。
対してエスパーダは食事に関しては秘密主義で、要の前で食べることはほとんどなかった。どこかですませているんだろうが、要は心配になる。
付き合っているのに一緒に食べたことがないなんて、何かおかしい気がする。
「エスパーダ、今日は一緒にご飯食べよう」
要は思い切って、誘ってみた。
「私、ダイエット中なんだけど」
この言葉を言われると次の言葉が出てこない。でも言っておかないといけない。要はエスパーダと一緒に同じ物を食べて幸せな気分になりたいのだ。
「俺はエスパーダと一緒に食事をしたい。ね、お願いだから」
要は必死に頼み込んだ。その必死さが功を奏して、イヤイヤながらエスパーダは食べることを了承してくれた。が、一つだけ言われた。
「私、料理できない」
「俺が作るよ。ウサギの肉が残ってるからそれで何か作ろう」
「じゃあ、唐揚げ。ウサギは唐揚げがうまいんだよね」
「え? あ、うん。やってみる」
ウサギのステーキを考えていたが、せっかくのリクエストだ。要は唐揚げを作ることにして台所に立った。




