97:エイスにある商店
エイスにあるお店屋さんに行く話。
――第8の街、エイスにある訓練所の図書館でデータだったレシピとかを本に書き写す作業をしていたボクは、その作業の合間にも司書さんの話を聞いていた。
「海底掃除……」
『そう。たまに掃除をしないと濁ってしまうからね』
「その割にパーティ推奨なのはどうして?」
『掃除する人と戦う人が必要だからね』
司書さんから聞いていたのは紹介所にあるクエストの話で、そこで一番多いのが海底掃除というもので、次点が海中ケモノ狩りというものだった。
『その2つは常時募集しているものと言っても間違いではないね』
「海底で戦闘って呼吸とか」
『水中で呼吸することが出来る装備があるよ』
「えっと、商店?」
司書さんはひとつ頷き、それから商店でのルールも教えてくれた。というかルールがあること自体ちょっと怖いけど……もっとも、そんなに難しいルールじゃなかったからよかったけど。
『当たり前のことかもしれないけど、商店で買ったものを他の人に売ってはいけない』
「転売はしないよ」
『それなら大丈夫だね。それから……』
そのルールは、絶対に守らなきゃいけないと思った。ただ、守れるかがボクにもわからなくて……心配になったが、司書さんが言うにはそこまで心配にならなくても大丈夫とのことだった。
「とりあえず行ってみます」
『それがいいね。じゃあまたおいで』
と、言うことで訓練所から出て向かった先はもちろん船着き場の東側にある商店で、中に入るとそこは吹き抜けのフロアで、フロアの真ん中には一組の少年少女が頭を下げて立っていた。
『いらっしゃいませ、なにをお求めでしょうか』
『いらっしゃいませ、問い合わせは我々にどうぞ』
「えっと……」
同じ顔、同じ色の服を着たその少年少女はどこか、人形みがあったけど戸惑いながらも司書さんに教えてもらった水中で呼吸できる装備のことを聞くと彼らはひとつ頷き、手元にある機械を操作して、それはすぐにボクの手元に現れた。
【水風の呼吸器:首元に装備することで水中での呼吸を可能にするもの】
「あの、ここで買ったものを売るのはダメって聞いたんですけど……あげるのはダメなんですか?」
『関係が繋がっている存在ならば問題はありません』
『いくつご入用ですか?』
「じゃあ……」
結局、その日は水中で呼吸できるアイテムだけを買った。ボクの分とカズ達の分。
まぁ、これをあげたらまた怒られるんだろうなって思いながらもボクはログアウトをした。
ちなみに、冒険者紹介所と訓練所は船着き場の西側。




