96:第8の街の図書館にて
第8の街の様子と住人と図書館の話
――サーディの山でダンジョンの入口を見つけた後、知らないプレイヤーの人に入口のことを聞かれて教えたのは些細な事だと思う。
それから、いつもの採掘依頼をして、セブで墓守少年と話をして、とりあえず第8の街、エイスに飛んでみた。
「海底都市……ってなんか不思議な感じ」
エイスのセーフティゾーンは青々とした大木がどっしりと植えられていて、その上に広がるのは海の青……いや、黒か。そんな街には住人はいるけど……なんか、ほっそりというか、肌が白いようなそんな感じだった。
『外の人とは珍しい。いらっしゃい』
「こんにちは」
街の人と話をしてみれば、どこにお店があるかとか、どういうものが名物かとかを教えてくれるけど……やっぱりどこか違和感というものをボクは感じていた。まぁ、お金が変わるって言うのもないから外国感があるわけでもないけど。
……で、この街にもちゃんと紹介所も訓練所もあって、情報収集も兼ねて訓練所の図書館に行ってみた……けど、そこには紙の本は1冊もなかった。
『すまないね、ここに紙製品を置いておくことが出来なくてね』
司書さんが言うには、ここの図書館にはデータでしかレシピとかがないらしい。まぁ、ボクは本に書き写すんだけど……
「でも司書さん、データでも海水だと危ないんじゃないんですか?」
『まぁそれを言われたらそうなんだけど』
そんな談笑をしつつ、書き写し作業は思いのほか順調だし、海産物のレシピがやっぱり多いし……それ以上に海系のケモノ素材の利用方法がとても豊富だった。
「なるほど、このお魚の牙は武具に使えるのか……釣れるの?」
『それは漁の方だな。まぁ、あまり取れないけど』
そんな感じにしてるうちにある程度のレシピも書き写し終わり、残りの時間はまだ反応がまともそうな司書さんの話を聞いたり、データを見せてもらったりしていた。ただ……
『知ってるかい? 山の上には決まったルートからしか行くことのできない街があるんだよ』
「それって山登りじゃたどり着けないってこと?」
『かもしれないね』
司書さんはどこかわざとらしく匂わせるように教えてくれたけど……なんとなく、サーディの山のダンジョンから行けそうな気がしていた。まぁ、ダンジョンに気付いてることはなんか言わなくてもよさそうだから触れないんだけどさ
「そういえばこの海の向こうにはなにがあるんですか?」
『さぁ……?』
そう、言葉は返ってこなかったけど……どうせ最後の街がそっちの方な気がしてるからボクはその返答にもそっか、と返すだけだった。
匂わせだけど、第9の街は山の上、第10の街は海の向こうである。




