77:セブを探検
セブの探検をする話
――セブに到着してからシクルにある商会で美味しいクエストをやったあと、ログアウト前にセブを軽く探検をして紹介所や訓練所の位置を確認してその日はログアウトをした。
それから翌日、学校が終わってからゲームにログインをして、さっそくセブの探検の続きをすることに……して最初にたどり着いたのは娼館だった。
「しょうかん……?」
『そうよ? まぁ、R18的なのは今開発中の追加パッチを購入しないとできないのよね』
「……ん?」
大きなソファがど真ん中にある部屋の中、ボクは膝丈くらいの長さがあるシャツを着たお姉さんと2人きり……とは言ってもそのソファは向かい合わせに2つあるし、ボクとお姉さんはそれぞれのソファに座ってるし、ソファの間には白くて大きな四つ足テーブルがあって、その上には紅茶が湯気を上げていた。
「もしかしなくてもお姉さんってリアルの人?」
『正解よ。ちなみに、ここに来たプレイヤーで初訪問だった場合は私が対応することになってるのよ。……正直、思ってたより遅かったけどね』
「そうなんだ。あ、そういえばこのしょうかんってどんなこと出来るとこなんです?」
『未成年なら話を聞いてあげたり、お茶したりとかね。成人していたらそれに膝枕やハグとか接触系が増えて、開発中の追加パッチを使えばR18的な事ができるようになる……予定よ!』
「つまり課金要素……」
『まぁ、開発が進まないからなんとも言えないんだけど』
お姉さんが言うには追加パッチを開発してる人達がエログロ入れようとして上と衝突してるらしい。というかそういうのをいちプレイヤーに愚痴ってもいいのだろうか……兄ちゃんでも愚痴らな……明確な愚痴はしてないのに。
『あ、そうそう。2回目からは受付のところで指名相手を選ぶことになるから』
「とりあえずわかった。そういえばなんでそれで娼館って言うことになったの?」
『それはあれよ。元王都ならそういう施設があってもおかしくなかったんじゃないかと思って。それにしても、初めてのセブ訪問者が若手とは思わなかったわ……もう少しちゃんと交流とかしてたらヒントになるものがあるはずなのに……』
「それはよく知らないけど、攻略の人って突き進みたいんじゃない?」
『あー……それは、わからないでもないわ……』
そう言ったお姉さんは少しだけ遠い目をしてたけど、すぐに説明の続きをはじめて、娼館の利用は1回につき、コインが200枚らしい
『あ、初回は無料で、基本前払いだから』
「はーい。ついでにこの紅茶美味しいけどどこで買えるの?」
『あぁ、これの茶葉なら大通りに面して南側にある魔法屋で買えるわ』
「魔法屋。わかった。あとで行ってみるね」
それから出してもらった紅茶を全部飲んでからボクは娼館を出て、お姉さんに教えてもらった魔法屋に向かって探検をしつつ進んだ。まぁ、ホントに大通りに面してたからすぐ見つけたけど。
「魔法屋……ここか」
『いらっしゃいませー。なにかご入用ですか?』
「娼館でここに紅茶の茶葉があるって聞いて」
『おや、茶葉狙い? いろいろあるけど……魔法薬とか買わない?』
「魔法薬は作れるからいらない」
そう、はっきり言うとお店の人は少し残念そうな顔をしていた。けど、すぐに茶葉が置いてる棚に案内してくれて、いろいろと説明してくれたり、味見をさせてくれたりした。そのおかげでボクは何種類かの茶葉をいっぱい買うことが出来た。
『一応魔道具系も売ってるから、そっちも見に来てな? なんだったら遊びに来るだけでもいいからな?』
「……お兄さん、寂しいの?」
『娼館に行きたいけど儲けが少ないだけです』
「なるほど、残念な人だ」
魔法屋の店番であるローブを着たお兄さんはボクの言葉にショックを受けた様子を見せたけど、多分誰であってもお兄さんに関しては残念な人と思う気がする。ていうか仮にもお客さんに対して娼館に行きたいけどお金がないなんて言う人、そんなにいないと思うし。
「また茶葉買いにくるね」
『新作でも作っとく……』
とりあえずセブでまさか開発の人と会うことがあるとは思わなかったけど、そういえばあのお姉さんって兄ちゃんを知ってる人だったのかなぁ?
そんなことを考えながらボクはその日、ログアウトをするのだった。
娼館はぶっちゃけ名ばかりである。ただし、住人達にとってはちゃんとした娼館ではある。
なお、初回限定の説明係の女性は設定上オーナーで、陽葵の兄、景灯とは同僚どころか隣の席で作業してる人である。なので、ヒカタが帰った後に隣の席の同僚(兄)に初めてプレイヤー来たと雑談のつもりで話してヒカタがその同僚の身内と知るまでが流れ……かもしれない。(リアルは女性とは言っていない)




