65:クエストの完了とちょっと珍しいアイテム
食堂を仲直りさせた時の話!
――第5の街ファイで受けた食堂のクエストは、結果的に言えば……南の食堂夫婦が離婚して両方の食堂は仲直りをした。と、言うのもその結果になってしまったのはボクがこの食堂どうしの不仲理由の黒幕が南にある方の食堂の奥さんだとわかった時にさかのぼる。
「たのもー?」
『あれ、いらっしゃい少年。また食べに来てくれたのか?』
「ん-……それもいいけど店主さんが襲われたりしてた黒幕がわかったかなーって思って」
それからボクは南の食堂の店主さんに両方の食堂とかで聞いた話から思ったことを話して聞かせると、彼は不思議そうな顔をしながらひとつ頷いていた
『君の話を聞いて合点がいったわ……確かに俺が結婚をして、それからニシのが結婚した頃から嫌がらせが酷くなってたからな……そうかあいつが……』
その表情は悔しさと寂しさとそれから驚きが含んでる感じのもので……ただ、こういう人は一度こうと決めるとかなり厄介なのは多分事実。だってこの目の前にいる南の食堂の店主のお兄さんはお客に断わりを入れてから奥の方へ入っていった。まぁ、なにをするのかわかってないけど。
食堂の奥からわずかに聞こえてくるのはボクが話した黒幕が店主さんの奥さんだということに対しての問い詰め、それから……
「というかゲームの中にも離婚とかの概念あったのか」
若干放置プレイ化してる気もするけど、クエストが進行してる感じもあるから……まぁ、いいかと思いながら適当な椅子に座ってお茶を飲んでいると上の階から響いてるどたどたという音が聞こえてきて……少しすると例の奥さんが大きな荷物を持ってかけていった。もっとも、その姿を追う人はNPCにもプレイヤーにもいなかったからある意味でお察しものだとおもう。
それから、少しして西の食堂のお姉さんの旦那さんが突然現れて、店主さんと話をして謎の握手をしてたけど多分それが仲直りの証明なんだと思う。その直後にボクの目の前にはクエストクリアのモニターが現れたから
「というか店主さん、奥さんと離婚しちゃってよかったの?」
『したくはなかった、と言えばそうなんだけどな。理由を聞いたら店を潰して自分だけを見るように仕向けたかったって言われたらなぁ……』
「あー……うん、それは無理だ」
恋愛も結婚もしたことがないボクでもわかる。それはいろんな意味で無理だ。
「じゃあお兄さんが突然現れたのは?」
『実家から妹が急に荷物を持って帰ってきたって連絡が来たからな……』
お兄さんが言うには、その後二人のお父さんとお母さんは妹こと南の食堂の元奥さんと縁を切ったらしい。専門家の人を呼んで。
『だからミナミの、お前も妹と関わりたくなかったら縁切りしといた方がいいぞ』
『あー……そっちもしないとなぁ……』
ちなみに、離婚は“契の記”というものを結婚するときに書いて、それを家に保管しておくらしいけど、その紙を破ることで契が失効、それで離婚ということになるらしい。
「どういう仕組み?」
『元々契の記には縁を結びつける魔法が練りこまれていて、それに双方の名前を書くことで縁を結ばれて婚姻となるんだったかな……そして破くことができるのはその記入者だけだし。記入は本人にしかできないんだ』
もし書いてる人が違う名前を書いてもその名前は消えて縁が結ばれることはないんだとか。というかその契の記に自分で名前を記入するという行為に意味があるのだと教えてくれたのが西のお兄さんだった。
「じゃあそのうち魚とお肉のワンプレートメニューまってる」
『あぁ。任せろ』
そんな感じのやり取りをしてボクは食堂を出て、クエストクリアのモニターを見れば、珍しく報酬もあり、それが【縁結びの手袋】というアイテムと【縁切りのはさみ】という2種類のアイテムだったわけだけど……正直アイテムボックスで眠るだけになりそう
「とりあえずサーディに行って結果確認して、ログアウトしようかなぁ……」
ボクは知らない。今回のクエストで手に入れた2種類のアイテムが実は転職するために必要なアイテムで、その転職先のジョブがキャラメイクの時では選べないものだということも。そしてまた、転職するための場所が密かに各街にアップロードされていたことも……当然ボクは知るはずもなかった。
このゲームに転職システムはなかったが、今回のことで条件を満たし転職システムが裏でアップデートされたお話でもある。なお、仲違いエンドにした場合もらえるアイテムは縁切りのはさみだけだったりする。




