60:第5の街を探検する前に。
まだファイを探検してない話
――カズに連れられて第5の街、ファイに到着した。あとついでに精霊石の粉のお薬も渡した。そして、ボクは今ファイで探検をしようとして……ふたつある食堂のうち、南の方の店主さんに絡まれ……もとい荷物持ちを手伝いしてた。
『悪かったな少年。手伝いさせちゃって』
「それは別にいいですよ。レシピ教えてもらう約束したし」
それに、ボクでも持てる量だったし。まぁ、なんでボクが手伝ってるのかと言えば、この街にログインをしてすぐの時、PKとかじゃない悪そうな人と喧嘩してる人がいて、思わず助けた相手が今一緒にいる南の方にある食堂の店主さんだった。しかもその時に店主さんは腕を少し痛めたらしい
それから、話を聞いて店主さんがお店に食材を持って帰るところだったことを聞いて、荷物持ちを買って出たわけだけど……この店主さん、なんでももうひとつの食堂の店主さんとは仲が悪く、今回はそれで絡まれたらしくて……
「なんで仲が悪いの? 天敵タイプ?」
『あー……ガキの頃は仲良かったんだよ。普通にな。ただ……よくある色恋沙汰でな、俺の嫁さんのことが好きだったんだと』
「なるほど……?」
一応店主さんが言うにはプレイヤーとか他の住人は両方の食堂を使っても問題はないってことを教えてもらったけど。心配だからあとでもう片方の食堂も行ってみることにした。ま、今は荷物を運んでるからそれが終わったらだけどね
荷物を食堂に運び入れて、レシピを教えてもらって、ご飯を作ってもらって……
「店主さん? 腕痛めたんじゃないの」
『痛めたけど薬を塗ったし、そこまで使う方じゃないからな』
「まぁいいけど……このパイ美味しいです」
『そうかそうか!』
この食堂はお肉メインの食堂みたいで、ボクが食べてるひき肉のパイみたいな軽食から分厚いステーキまでといろんなお肉料理を出してるらしい。あ、ハンバーガーぽいのもあった。
そして、もうひとつの食堂は魚料理がメインの食堂らしい。
「メイン食材は被らないんだね」
『まぁなぁ……うちの先祖が狩人で、あっちの先祖が漁師だったってだけだけどな』
「ふぅん……そういえば店主さん、隣の大きな建物ってなんの施設?」
『隣? あぁ、地下採掘施設だな』
「採掘……」
ボクは店主さんに採掘スキルを持ってないという話をした。すると……
『あぁ、ここの採掘施設は自分で掘るわけじゃなくて、掘られたものを回収するのが主な作業なんだよ』
それから、その地下採掘施設に入りたいなら冒険者紹介所で申請をしないといけないということを教えてもらった。そして、訓練所の図書館に面白い本があるということも……
「ここがもうひとつの食堂かぁ……」
さっきまでいた食堂から正面にあるセーフティゾーンに戻って、そこから西の方……この街の正門の向かい側にそのもうひとつの食堂があった。
ふたつの食堂の違いは見た目から違っていて、南のお肉メインの食堂がブロックでできた壁になっていて、西のお魚メインの食堂が木でできた壁になっていた。それから西の食堂の店主さんは……
『あん? 入るの、入らないの。どっちだい少年?』
「女の人……」
そう、西の食堂の店主さんは女性だった。だからこそボクは、南の食堂の店主さんが言ってた言葉がよくわかなくなり、その人に直接聞いてしまったのはボクのせいだけではないはずだ。
ちなみに南の食堂の店主はひょろりとした男性です。




