52:1人で船釣り
フォストの海で船釣りをしてたりする話。
――ファスタウンでカズ達と合流していろいろ話して……気付けばフォストで船釣りをしたのはただの暇つぶしだった。
そんな日から翌日……ボクはフォストの探検も終え、また1人で船釣りをしていた。
「昨日はちょっと美味しい魚が釣れたから今日はもうちょっと美味しい魚が釣れたらいいな」
船の上は時間がゆっくりと過ぎてるような感覚になるくらいには釣れてはいない……けど、そこは別によかったりする。というのもフォストの探検中に、今日は街中にいない方がいいよと教えてくれた人がいたからで。その人が言うには今日はちょっとフォストでプレイヤーを倒す人達が暴れるんだとか。まぁ、街の人達に迷惑かけないんならボクにも関係のない話だけど。
「……そういえばあの人……どっかで見たことがある気がする……」
それはゲームの中でという意味じゃなくて。言うならば白鳳みたいな感じで……まぁ、名前も知らないし、多分そんなに話すこともないだろうから今のボクにその人が誰なのか知る由もなかったわけだけど……多分プレイヤーを倒す人の1人なんだろうなというのはさすがのボクでもわかった。
「あ、美味しい魚だ」
たまに釣れるのは美味しい魚と食べれない素材とそれから……水棲のケモノ。
船上での戦い方はまだまだ難しいけど結局ボクに出来る攻撃はナイフを投げたり、薬を投げたり、石を投げたりすることくらいで。フレイムボアと戦った時よりも時間はどうしてもかかっちゃうけどそれはもともと不慣れな場所だから当然の結果とも言えた。
「えっと、アクアドラクの皮かぁ……あ、これはカズの服の加工に使えそうな気がする」
アクアドラクは水面に立てるちょっと大きなとかげぽい見た目だったけど、一応ドラゴン種に入るらしい。って、素材説明に書いてあった。
それからご飯の時間まで船釣りを堪能して、フォストに戻ったとき、その街の様子はちょっと汚れてるかなってくらいの印象しかなかったけど、船釣り前に言ってた人の話によればなんかあったらしいし……船を貸してくれた人に聞いたらケンカがあったらしいから多分そのことだったんだとボクはそう思うことにした。深く気にしたら多分ダメなやつだから
『ずいぶんのんびりしてたな。釣れたか?』
「普通くらい? あ、アクアドラクとかとも戦ったよ」
『アクアドラクかぁ……あいつは漁で獲った魚介を奪ってくからもっと減らしてくれていいからな』
「じゃあ今度また友達連れてくるね。あっちの方が強いから」
今の会話でアクアドラク討伐のクエストが出てきたけど、これも時間制限もないし、合計10体倒せばクリアみたいだし、だからまた今度カズ達と船釣りをすることを勝手に決定したのはある意味で言うまでもなかった。まぁ、3人にメールはしとくけど。
――ご飯後、隆和から電話があって、ゲーム内でメールしたことについての連絡だった。
『というか今日フォストでPK達がPK合戦してたらしいけど陽葵は大丈夫だったか?』
「うん。親切なプレイヤーを倒しそうな人が教えてくれたからずっと船釣りしてた」
『……まぁ、いろいろとツッコミたいところはあったが無事だったならいいか……で、アクアドラクを倒すクエストって?』
「うんとね、」
改めて船を借りたとこの人から聞いた話と船釣りのときのことを話せば、彼はなるほど、と納得していた。
『多分キーになったのはその船上戦なんだろうな』
「クエストの説明には1人が受けてたらパーティ組んでたら問題ないんだって。あ、そうだ」
アクアドラクの皮に耐水効果があることを革屋さんに聞いて、ついでに作成済みの防具に追加可能素材だということを教えてもらったことも追加で言えば、隆和はさっそくフレイムコートをメールで送ると言って来たので加工することが確定したのはいいことなのか、悪いことなのか……
まぁ、カズから戻されてきたフレイムコートへの加工は寝る前にしたログイン中に終わることが出来たからいいんだけど。
ヒカタにPK乱闘戦について教えたのは某PKKさんです。
なお、船上戦は近距離不利である。




