3:5人世界のクリア
タイトル通り5人世界がクリアされる話。(ただし陽葵以外)
――それからリアルでの数日、ボクはもそもそと1人で村の周辺を探索したり、近場の山で狩りをしたり、調合のようなことをしたりして過ごしていた。その間も時々チャットで主にデンと情報のやり取りとかもしたりしてたから多分充実していたと思う。
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デン:ヒカタ、悪いがホーンシープという獣の角を持っていないか?
ヒカタ:何本かあるけど、いくつ?
デン:できれば2本くらいあるといいんだが
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「デンは礼儀正しい人……かな。とりあえずメールで添付で、角ですっと」
お互いに欲しい素材があった場合、フレンドメールと呼ばれるメールで素材を添付して送り合ったりもして、対価について話したこともあったけど、とりあえずはボスを倒すまで保留という形にはしていた。と、言うのも、ボクも彼らも素材の相場を知らないからだったけど。
「あ、お礼メールだ。わぁ、ブラックカウのお肉! 村長さんにおすそ分けしようかな……あ、この前作ったお薬送っとかなきゃ」
そもそも、ボクの交流相手はほとんどデンになっていて、たまにセツリやメディアからもスクショ付きのメールのやり取りをしたりもしていて、アキラスタに関しては完全にそりが合わないということでほぼやり取りはない。
ボクは、こんな風にゲーム内での出来事を楽しんでいた。例えあがるレベルの速度は遅くても、もともとボスを倒すことを他の人達に任せてる状態でもあるからこそ、なんだけど。
『お兄ちゃん、一緒に森で遊ぼ?』
「またお母さんに怒られちゃうよ?」
『お兄ちゃんが一緒だったら怒らないもん』
ボクはそんなことを言う村の女の子にしょうがないからついて行く。この子は、ボクがここを拠点にしてからよく遊んでと近づいてくる子だからきっと人懐っこいか、好奇心が旺盛な子だろうからこそなんだけど。あと、他に小さめの子がいないみたいなのもその理由だろうとボクはわかっているからこそこうしてボクはまたひとつフラグを回収していくのだった。
『お兄ちゃん、こっちだよ』
「今日はいつもの花畑じゃないんだね」
『精霊様がね、お兄ちゃんなら連れてきてもいいよって言ってたの』
「……精霊様……?」
―――
ヒカタ:デン、精霊様って知ってる?
デン:こっちの都市では伝説としてなら聞いたな。確か、“深き森の最奥にて眠るは無垢なる光、其れは命に非ず。たが、其れは全ての元始である”みたいな感じだったな
ヒカタ:よくわかんないけどいるけどいないみたいな認識だったのかな……
デン:そうだな。年長の方々は信仰しているみたいだったが若い世代ほど認識していなかったようだ
ヒカタ:わかった。ありがと
―――
とりあえずわかったのは女の子のいう精霊様は生きてないけど存在しているものだということだけで、じゃあ女の子の言う連れてきてもいいよというワードがどういうことなのか、ボクはわからなくなり……
「案内してくれる?」
『うん!』
手を引かれ、木々の隙間を通り抜ければそこはどこか、大人の侵入を拒むような雰囲気があり、だからこそ幼さのある女の子は容易に奥へと行けるのかもしれない。そう、考えながらついて行けばたどり着いたのは中央に何かが埋まっている大木のある開けた空間だった。
『精霊様、お兄ちゃん連れてきたよ』
女の子がそう言うと大木から、姿の透けているキャラメイクの時にいたナビゲーターとよく似た存在が姿を現した。違いがあるとすれば髪型と服装と雰囲気だろうか?
そんなことを考えてるうちに女の子はその存在に何かいろいろと話をしていて……
《このワールドに存在するプレイヤー全てに精霊の加護が付与されました》
そんな音声が聞こえてきて、ステータスを見れば、そこには確かに精霊の加護という文字があって……
―――
デン:ヒカタ、説明を求めてもいいか
ヒカタ:ボクもよくわかんないけど村の子に案内されたら多分精霊様が出てきてこうなった?
デン:なるほど……とりあえずこの精霊の加護というものが時間制限のあるものの可能性もあるから俺達はちょっとボス戦をしてくるが、ヒカタの方はやり忘れはないか?
ヒカタ:ボスを倒したらこの村とかってどうなるのか知らないんだけど
デン:俺も詳しくは知らないが、世界に統合されるという噂だ。まぁ、もしボスを倒せても一応はログアウトするまでは猶予があるからな
ヒカタ:うん、わかった。
―――
とりあえず、他の4人がボス戦に行くみたいだし、ボクは一度村に戻ってから大きい都市に行ってみようかな。そう決めてからボクは女の子と一緒に村へ戻り、すぐに都市へと出発して……ログアウトをする頃にはボスが倒されたというアナウンスが流れたのだった。
次回は掲示板回!




