38:兄の秘密と鍛冶再び
景灯からの電話と本来の目的だった鍛冶をする話!
――晩御飯の前に鍛冶をしようと思ったのに変な人に絡まれたせいで予定が狂って、ボクは晩御飯後、改めて工房で鍛冶をするつもりでいた。だからご飯を食べて、片付けをして、お風呂の準備をしていた時、兄ちゃんから電話があった。
『陽葵、ゲームの方楽しんでるか?』
「普通。でも嫌いじゃない」
『まぁだろうな……』
「それで何の用事? ボクお風呂入ったらゲームやるつもりなのに……」
『いや、変な奴に絡まれた割には気にしてないんだなと思って』
「隆和達がすぐ助けてくれたし。あ、隆和は何もしてないけどはーくんは助けてくれた」
『ハクが? ……まぁ、あいつは面倒見がいいからなぁ……』
「そういえば兄ちゃん、なんでボクが変な人に絡まれたって知ってるの?」
ボクの問いに兄ちゃんは言葉を詰まらせ、それからナイショ話をしてくれた。例えば世界の方の村サイドの基本シナリオをやってたとか、発掘依頼はある倍数時間でレア率があがるとか。
「じゃあ精霊様のキャラってキャラデザの人が張り切った結果なの?」
『そうそう。イケメンと美女を愛でたいって言って精霊様のデザインだけで3桁提出してたな……だからその一部をNPCに使ってるんだよ』
「あー……だからあの人とか……あ、お風呂出来たから電話切る」
『おう。あ、婆ちゃんに今度また帰るって伝えておいて』
「わかった」
ボクはそのまま電話を切って、婆ちゃんに兄ちゃんの伝言を伝えてからお風呂に入り、ゲームへとログインをした。
――ゲームにログインをして、まっすぐ向かった先はもちろんログアウト前に行こうとしていた工房で、そこにはあの変な人達はもういなかったし、いた形跡もなかった。まぁ、またいたら面倒だなとしか思ってなかったけど。
工房の中は、使ってる人がやっぱりそこまで多くなくて、空いてる場所ばかりだけど、ボクが選んだ場所は以前に使ったのとほぼ同じ場所だった。
「とりあえず……それぞれの属性持ちの小型のナイフ作ろうかな……」
初めての発掘依頼からある程度の日数は経ってて、その間に属性のある石がいくつか数を増やしてたからこそ試しにやってみようと思えたわけで。ついでに光精石という石と闇精石という石も増えたからというのもある。
名称的に光属性と闇属性なんだろうけど。その効果もよくわからないし、ある意味実験なのかもしれないと思いつつ……出来上がったのが水精石で作った小型のナイフと似た効果を持つナイフ達だった。名称も水精のという部分がそれぞれの使った石の属性名に変わっただけという感じで。ただ……光精石で作った【光精のナイフ】と闇精石で作った【闇精のナイフ】は攻撃がプラスで10になり、それぞれの属性効果を付与にさらにデバフ効果というものも追加させるらしい。
「えっと、光の方は過剰回復とめまい? 闇が暗視と酩酊?」
別に両方が追加されるわけではなく、どちらかが……ということらしいけどその属性を持ってない上にまだプレイをしてそんなに経ってないボクにはわからない効果ではあった。とりあえず後でカズ達に確認してみよう……
なお、兄ちゃんに聞かないのはめんd……つまらなくなりそうだからである。
「あ、白鳳と唐ヶさんにもナイフあげようかな」
白鳳は魔法の人だし、唐ヶは確か遠距離の人だったはずだけどナイフ系ならどのジョブでも使えるみたいだし、あっても邪魔にはならないはずだし。それに変な人から助けてもらったお礼にもな……ったらいいかなという意味合いもあった。
――それから、ボクは寝る時間になるまでのあいだ、せっせとMP消費とコイン消費をしながら鍛冶をして……出来上がったのが白鳳にあげる予定の【光闇のオートナイフ:攻+5/戦闘時に空中浮遊を行い、オートで攻撃、狙撃を行うナイフ。消費MP:3】と唐ヶにあげる予定の【風火の投げナイフ:攻+5/風と火を纏うナイフ、投てき後は自動で投てき者の元へと戻ってくる】だった。
「……おかしいなぁ……」
とりあえずいいものが出来たと思えばいいんだろうけど、またカズ達に怒られるんだろうなと思いながらボクはフレンドチャットで2人にあげるナイフ作ったということを送ったのだった。
ヒカタが白鳳を呼び捨てにしてる理由は単純に元々くん呼びだったからさん付けに違和感を持つようになったからで、くん付けじゃないのはうっかりゲーム名じゃないほうで呼びそうだからである。なお唐ヶにさん付けなのはまだ知り合いレベルだからである。




