36:釣りのお時間
釣りをする話
――山の途中で釣りをするためにカズとそのパーティと一緒にサーディの山門で待ち合わせをしたらそのパーティの1人が兄ちゃんの友達だった。
「あ、薬草だ」
「ヒカタ、こっちの木の実は?」
「食べれる」
そんな感じにのんびりと登山をしていた。もっとも、後ろの方から誰かの小さい悲鳴が聞こえてる気がするけどきっと気のせいだ。そして、目的地である釣り場まではだいたい1時間弱くらいで到着でき、そこは、確かに鍛冶場の次男さんが言う様に緩やかだった山道が区切りから先になると本当に急激な坂道になっていた。あとちょっとだけ川幅が広かった。
「よし、美味しいの釣れるかな」
「うわ、ここまで来た事なかったけど……あっちが……」
「ひとまず敵性反応はないからのんびりでいいよ」
そして、4人並んで釣り糸を垂らしている状態がホントにしばらく続いた。その間、何かを釣ったのはボクだったり白鳳だったり唐ヶだったりして、それが食べれるかどうか話したりするのは案外悪くなかった。そんなときだった。
「……カズ、なんかスキル出てきた」
「え、まじか。どんなん?」
急にボクの目の前に出てきたモニターには新しいスキルを取得しましたと書かれていて、その下には【大漁旗】というスキル名が書かれていた。そしてその説明は、発動させると10分間はスキルを持ってる人と、その人とパーティを組んでる人達が釣りをすれば入れ食い状態になるらしい。
そう説明すると白鳳からパーティを組むことを提案され、多分いっぱい釣りたいんだろうと思いボクもそれを了承すればすぐに4人パーティになり、それからスキルを発動させれば……
「こ、怖かった……入れ食い怖い……」
「まぁ、釣れたは釣れたけど……ヒカタの釣果は?」
「うぅ……えっと、美味しそうなのがたくさんと食べれるのがいっぱい」
「やっぱ運のステも関係あるのか……白鳳、は満足そうだからいいか」
「おう、食べれる魚の方が多かったからだいぶ満足」
大漁旗のスキルを発動させると、静かだった水面から魚が顔を出してきて、バシャバシャとしてて、正直、怖い以外の何物でもなかった。ただ、きっかり10分後にはそれまでの騒がしさが嘘だったかのようにすぐに静まったからそれはそれで怖いけど。
それでもボク的に釣果はいい結果だったからいいんだけど。ついでにカズは美味しいが1割、食べれるが3割、その他が6割で、唐ヶは食べれるが5割、その他が3割、毒持ちが2割だったらしい。
「ヒカタ、魚ってこの場で調理とかできないの?」
「知らない。でも、調理できる場所があれば多分できると思うけど……」
今のボクの視界にはそれらしきものはなく、とりあえず今日は前にボクが作ったご飯を食べて、山を下りることにしたわけで。そして、サーディに戻ってから実は簡易の調理アイテムがお店で売ってるとか、焚火くらいならしても問題がなかったことを知ったりするわけだけど……それはまぁ、しょうがない。
「ところで俺もスキル出てきたんだけど。ヒカタ、バフ薬いくつか売って」
「えっと、どれを?」
「あー……じゃあ幸運薬2つくらいある?」
「うん」
唐ヶは、前にセカンの森に行った時と同じ枚数のコインをかける2にして渡してくれて、ボクも言われた幸運薬を2つ渡した。それから話を聞けば、新しく出てきたスキルというのが名称は【過剰摂取】で、効果は発動させると薬系を一度に2つ以上摂取でき、その効果も重ね効果になるらしい。ただし、効果が切れてから薬系を新しく飲めるようになるまでクールタイムというのが2倍にもなるとか
「使い方によってはいけそうか……あ、効果中だし、もう少しだけ釣りしても?」
サーディの街に戻る途中の山道だったから、すぐ横にはまだ川もあるけど微妙に視界や足場は悪いけどまだ多少の時間なら余裕があったから見張り役を買って出たカズ以外で軽く釣りをすることに……その結果は、やっぱり効果は倍だったということだけ。
「あ、ヒカタ。ついでからフレンド申請しても?」
「ボクから連絡することほぼないけど」
「まぁ、カゲの関係で」
「わかった」
ということで、ボクのフレンド欄は3人分の名前が並んで、ゲームをはじめて以来にフレンドが増えたのだった。なお、ゲームからログアウトをして兄ちゃんにはーくんのことを電話で話したら何故か彼がこのゲーム、【five to world】をβの頃からプレイしてることを知っていたけど多分気にしてはいけない……
前話で書き忘れてたけど、白鳳が知り合いだとヒカタが気付いた理由は彼のキャラメイクの結果が顔見知りがよく見れば本人に似てるタイプだからである。
ついでに大漁旗時の白鳳の釣果は美味しいが2割、食べれるが2割、その他が6割である。




