31:釣りの講座とスキルと
釣りを習ってスキルを得る話!
――釣りのスキルを覚える為にカズに教えてもらったサーディの正門近くにある小物屋で講座の受付をして案内されたのはその店の階下で、向かった先にあったのは……
「わぁ、川近い……」
『お、釣りを習いに来たのか?』
「えっと、教えてくれる人ですか?」
『まぁそうだな。今回はそこの釣り具を貸すから好きなの選びな』
川が近い出窓みたいなところにいたのはパイプを咥えているおじさんで、上の小物屋にいたおじさんとよく似ている顔をしていた。とりあえずボクは壁際に立てかけられている釣り竿からちょっと短めのを選んで手に持つとその人はひとつ頷き、さっそく釣りについて教えてくれた。
竿の振り方、餌の付け方、かかった時のタイミングの計り方、リールの巻き方。少しだけぶっきらぼうなそのおじさんはそうは見えない感じにとても丁寧に教えてくれた。そして、1時間近い講座でボクのスキル一覧には釣りのスキルが無事に追加されていたのだった。
『さっそく軽く釣ってみるか?』
「釣れた魚はお持ち帰りしてもいいんですか?」
『おう。それはもちろん問題ないぞ』
「やった。あ、でも食べれないお魚はいらないや……」
『ならそっちは引き取るぞ』
「ありがとございます」
そんなやりとりをして、さっそくお試しの釣りをはじめて……ひとまずの30分くらいでの釣果は食べれる魚が数匹と美味しく食べられるらしい魚が2匹、毒持ちが1匹だった。
「毒持ち……」
『調理法によってはそれも食えるようにはなるけどな、調理人じゃないとなかなかに厳しいぞ』
「じゃあこれだけ引き取りで」
『おう。そっちの2匹は生でも焼きでもうまいぞ』
「楽しみ」
それからボクは釣って持ち帰ることにした魚をアイテムボックスに入れて、小物屋で釣り道具一式を買って、さらに鍛冶場で借りた防火のエプロンを買い忘れてたのを思い出したからそれも買いに行って一度ログアウトしたのはやっぱり晩御飯の為だった。
「へぇ、ゲームの中で釣りかぁ……美味しそうなの釣れたか?」
「2匹くらいゲームの住人が美味しいって言ってたからあとでまたログインして調理するつもり」
「陽葵がゲームを楽しんでるみたいでよかったわ。あなた、すぐに興味をなくしてしまうんだもの」
「隆和が珍しくオススメしてきたからね。あ、婆ちゃんこの漬物美味しい」
「うふふ、新作なのよそれ。今度一緒に作りましょうか」
「うん」
今日は兄ちゃんも帰ってくる日でもないし、ご飯後にはイチゴも食べて、お風呂も入ってからボクはまたゲームにログインをして、ファスタウンの作業場に行く前に鍛冶場でまた採掘の依頼をしてきたのはある意味時間がある程度あった方が取ってきてもらえる量が違うと聞いたからで。次男さんが笑顔で了承してくれたのは悪い印象を与えてないからだと思いたい……
「あ、そういえば……次男さん、登山ってどこから行けばできるの?」
『あぁ、山門を出て、左手の方に登山路があるからそこから行けるよ』
「で、勾配がきつくなる手前の川辺りだったよね?」
『そうそう。道が繋がってるのもその手前までだけどな』
「わかった。教えてくれてありがとございます」
次男さんは気にするなとでもいうように手を振り、それからさっそく採掘にいくのか、他の人を連れて山門へと向かっていった。とりあえず次男さんに教えてもらった山にある釣り場には今度またカズを連れて行くとして、今日は予定通りにファスタウンへと飛び、作業場でご飯とついでに本を作ることにしたのだった。とは言っても魚料理のレパートリーはそんなにないんだけどさ
釣りスキルを得てから釣る運持ちと運のない人、釣りスキルなし状態で釣る運持ちと運のない人。そのうちで一番いい釣果になるのはもちろんスキル持ちの運持ちで、次が実はスキルなしの運持ちだったりする。もっとも、釣りスキルは一種類ではないけど




