22:セカンの森の先、ついでにバフ薬のお値段
森で違う道を進んだらそうなる話
――セカンの街である素材を収穫するためにその隣接している森へと来たボク達は、ドレイクウッドと呼ばれる木の形をした魔物の根元からその目的物である花の収穫を続けていて……
「なんで毎回ドレイクウッドの実も取れてるんだ……」
「毎回落としてるから。でもそろそろ花粉がもったいないからもう使わない」
「というかそんな貴重なものをほいほい使ってる方が問題……うん、なんでもない」
「ヒカタ、その花はあとどのくらい必要なんだ?」
「多分もういいと思う」
そんな軽いやり取りの後、せっかくだからと森の奥までちょっと採取をしたり、狩りをしてみたりすることになり……ボクはカズと唐ヶの凄さを理解した。
――例えば森の歩き方、戦い方、いろんなものの見つけ方……そのどれもが無駄なく、そして的確だった。
「カズってホントにこのゲーム長いんだね」
「まぁ、それは今更だけどな。ヒカタ、そこの採取物ならお前でも取れるだろ」
「あ、カンシャクチェリー。図鑑でパチパチするって書いてあったし、何かに使えるかも」
図鑑とはもちろんセカンにある訓練所の図書館にあった本の1冊で、名称は別に図鑑じゃなかったけど図鑑ぽかったからボクは図鑑と呼んでいた。よく見れば、ボクの視界の先にはその図鑑に載っていた植物がたくさんあって、珍しいくらいにボクのテンションは少しだけあがっていた。
――もっとも、そんな状態のボクがある意味で危ないということを知ってるのは兄とカズだけだけど……
それから、森のある程度深いところまで探索したボク達は帰り道はまた別の道を採取しながら辿って戻ることにして……その結果、進んだ先にあったのは同じ森の中ではあっても葉っぱの感じとかがどうみても違っていて……
「あー……まじか……」
「これは盲点だったなぁ……ちょっとカズ、なんか近くの敵を軽くやってきてよ」
「言われなくても。ヒカタ、採取するなら唐ヶから離れない程度にしといて」
「わかった」
そんな軽いやり取りの後、カズは腰に差してた剣を抜き、一歩足を踏み出した瞬間、そこにはもうカズの姿がなくて……
「わぁ……カズ足が速いなぁ……」
「ヒカタってマイペースって言われない?」
「さぁ?」
多分言われてるだろうけど、そもそも他の人に言われた言葉はそこまで気にしてないから耳に入ってきてないというのがホントのとこだけど。唐ヶに言う必要もないし。
そんな感じにカズが戻ってくるまでボクは採取をしたり、ポツポツと唐ヶと話をしていた。
ほどなく、カズはなんでもない顔をして戻ってきた……けど、その服には徐々に分解されていっている赤いものがたくさんついていることには触れない方がいいのかもしれない……
「それでカズ、どうだった?」
「思った通りだった。あー……正解はこっちだったかぁ……」
「ヒカタってまだセカンまでなんだっけ?」
「うん。そういえばカズ、街以外から街に戻るのって歩きだけ?」
「アイテムとかで戻ろうと思えばできるけど今ないからな。……よし、ヒカタバフ薬売ってくれ。全力で進行するから」
カズと唐ヶがそれから教えてくれたのはどうやらボク達が進んでた方向がやっぱりセカンの街じゃない方だったみたいで、これからセカンの街に戻るとなると時間が思っていた以上にかかるみたいで、だからこそ先に進んでしまおうということらしい。
「カズだったら攻撃薬? それならあるよ」
「おう。んじゃ代金は……あー、唐ヶ」
「プレイヤー作成のバフ薬で、効果は……うん、結構いいみたいだから400枚かな」
正直、料金はよくわかんないけど。その後道すがらカズと唐ヶがバフ薬含む薬価格について教えてくれた。
「普通のバフ薬はだいたい280枚で、HP回復の薬が250枚、MP回復はHP回復と同じくらいで、一番高いのが今のところはHP・MP回復薬で500枚だな」
「え、それがお薬1個の値段?」
「そう。だから始めたばかりのプレイヤーがバフ薬を作れるって言うのがすごいんだよ。というか思ってたよりも品質もいいし……」
そう唐ヶは呆れたような目を向けてきたけど、それが悪い意味でのものではないということはなんとなくわかっていた。そして、そうしてるうちに森が終わり、その先に広がっていたのは……
ギリギリ!!




