18:作業場にて初作業な話
作業場で製本をしてみる話である。
ファスタウンの作業場で、使うための登録をしてから割り当てられた個室に入ってボクがまずしたのは、部屋の中の確認とスキルの使い方の確認で。
「……とりあえず、紙束を作るのに必要なのは紙と紐で……あ、なるほど。アイテムボックスの中に入れたままでも出来るのか……うん、出してやってみよ」
大きなテーブルの上に本屋さんで買った紙の半分と5人世界の時に村で貰った紐を出して、製本のスキルを使ってみるとテーブルの上には紙束一つ分ができあがっていた。
「ちゃんと紙束だ。で、本にするためには……布か皮……?」
自分のアイテムボックスの中を確認して、使えそうなものはやっぱり5人世界のときに貰ったりした皮で。それで製本をしてみようとしたけど【レベルがたりません】という表示が出ていた。
なんとなく、ここまで来たらちゃんとした本にしたかったけど、使えそうな皮とか布がアイテムボックスの中に見当たらなくて、どうしようかと思ったとき、ボクは初めて気付いた。
部屋の出入り口である扉の横に受話器があって、その上には『何かご入用があればこちらをお使いください。受付に繋がります』と書いてある紙が貼ってあった。
――結果から言えば、受話器は確かに受付に繋がっていて、素材のことを聞けば、初心者向け素材ならこの作業場でも売ってるみたいで、皮と布を買うことが出来、そこから作られた本が……
【ちぐはぐの本(残りページ数:50)】
これだった。とりあえず、初めての製本は成功できたとも言えるからボクはこの本を本屋さんに見せに行くことにしたのは言うまでもなく……というか、ログアウトする時間までまだ微妙にあるというのがホントのとこだけど。
それから、本屋さんに到着して、店主に本を見せた結果言われた言葉はやっぱり可もなく不可もなくという感じで……
『だが、初めてにしては上出来じゃないか? 次に作るときは素材のランクを揃えてみろ』
「はい……そうしてみます……」
その後2,3店主と言葉を交わしてボクはログアウトをして。寝るまでの間にパソコンでゲームの攻略サイトを覗き、今のボクに一番必要なものである製本の初心者セットとも言えそうなアイテムを探してみたけど……
「そもそも製本関係のスキルがサイトに載ってないってどういうことなんだろ」
この時ボクはまだ知らなかった。製本のスキルがそもそも本屋さんで古書のクエストを出して、クリアをしなくては出現も取得も出来ないスキルだということを。そしてあの作業場を使うことが出来るプレイヤーがまだわずかだということも……
「もしもし、隆和どうしたの?」
『いや、ゲーム内でのことだけどよ……おまえもしかして作業場に行った?』
「うん。本屋さんが製本は作業場でやるもんだって言ってたから」
『あー……うん。知ってた。とりあえず陽葵、他のプレイヤーに話しかけられたらスルーするか、俺の名前出しとけ』
「よくわかんなけいどわかった」
そんな電話が寝る直前に隆和からかかってきたからちょっとだけなるほどわからん状態だったのは尚更いうまでもなかったけど。
製本とか作成系のスキルの場合はレベル制で、バフ系のスキルは上中下タイプみたいな感じになってます。
なお、ラストに隆和から電話があった理由は次回の掲示板回にて。




