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第26話

サキの謎とリアーノ

アイネの町の一角に三日月をデザインした看板が見える。

看板をクローズアップしてみると、「月見荘」と書いてあった。

夕方アイネの町へ着いたヒデトたちは、アルビスと一緒に夕食を食べに月見荘へ来ていたのである。

もう夕日が沈んでおり、あたりには明かりがつき始めていた。

今夜は月夜のようで、思いのほか外が明るい。

月見荘のヒデトたちの話し声も聞こえる。

ここ異世界「アナザー」には、電灯というものが存在しない。

ではなぜ明かりがつくのか。

それは、魔法によって明かりがついているからである。

しかし、それはおかしいのである。

通常この「アナザー」での魔法の仕組みは、人もしくは魔物が持つMP(マジックポイント)が削られて魔法が放出されるのだ。つまり、そのセオリーを無視できる発見があったということである。

その発見をした人物は、「アンノ・ビバルディ」。現在は、亡くなっている彼によって書かれた科学書には、こう書き記されている。


「魔石晶というものは、主にダンジョン内で生成される魔素が長い年月を経て結晶となったものと定義されている。しかし、実際には、魔石晶はそれだけでなく二つの特徴を有する。

1つ目の特徴は、『魔素平衡』と呼ばれる性質だ。『魔素平衡』とは簡単に記すと、魔素が放出される、周囲の魔素が魔石晶に戻るという、二つの可逆的反応が常時同時に行われている状態のことを指す。つまり、魔石晶には、魔素の固まった結晶であるという見かけの特徴だけでなく、同時に同量の魔素が反応しているため見かけでは判断できないが、常に魔素を生み出したり吸収したりするという性質があるのである。

また、二つ目の特徴は、魔石晶にはそれぞれ、それぞれの魔法の発動に対する特異的な性質がある。

たとえば、エレクトリカルストーンという魔石晶は、「ランプ」という下級生活魔法の発動に特異的な性質を持つ。そのため、エレクトリカルストーンは、自動的に「ランプ」を発動し、ストーン付近が光るのである。

このとき、MPを消費するという魔法発動法のセオリーを無視していると感じるだろう。しかしMP(マジックポイント)というのは、生き物が周囲から取り込んだ魔素を数値で示したものであり、MP=魔素である。つまり、魔法は魔素を消費すれば発動される。この魔石晶は、魔素を生み出したり吸収したりするという『魔素平衡』の性質を有するため、自身で魔素を生み出すことが可能になる。その魔素を使うことで、魔石晶は自身と特異的な魔法を発動させているのだ。」


と。


この「アナザー」にはそんな不思議な謎がいくつもあるのである。

とある縁でこの世界を眺め、兄、ヒデトの役に立つという一心で、この世界「アナザー」を研究してきた。途中兄に会いたいと思うときもあった。しかし、現実世界で生きる咲季は会うことは許されない。せめてもの罪滅ぼしに、今回とある縁でその研究したことを新たに、「サキ・ヨコヤマ」の著書としてヒデトの持つEXスキル『智慧』の「万物検索」に加える。それが今のサキが成そうとしていたことであった。


結局、ヒデトの近くにまで眺めてしまっていたが、ここでおさらばである。


(バイバイ、お兄ちゃん。)




「ん?、今だれか『バイバイ、お兄ちゃん』って言わなかったか?」


食事中のヒデトは、盛り上がっている月見荘の食堂でワイワイガヤガヤしている中、確かにその声を聴いた。


「えー、もう、ヒデト。酔っぱらってるんじゃない?」


ミクが、そういうと、


「え、ヒデトさんお酒飲んでないですよ?」


アキがそう答える。


「私間違えてお酒入れたかな?」


ヒデトに、ブドウのジュースをお願いされて、ジュースを継いだはずのリンが自分に問いかける。


「大丈夫だ、ちゃんとジュースだ。いや、ほんとだ。俺は聞いたんだ。うん。確かに聞こえたんだよ。」


そのとき、久しぶりにあの声が聞こえた。


「お久しぶりですご主人様!

今回EXスキル『智慧』のアップデートが起こりました。

以下、内容はご自身でご確認ください!」


(久しぶりにアドバイザーの声を聴いたが、やはりメイドさんしか想像できないな…。

っと、アップデート?これか?)


ウィンドウをタップするヒデト、すると一覧が表示された。


「今回アップデートした内容です。

ご確認ください。


「万物検索」での検索結果が300項目追加されました。

なお、この「アナザー」の世界で判明されていなかった内容が判明されたようです。


以上でございます。」



ウィンドウに記述された内容はこれだけであった。

しかし、ヒデトは気になった。

万物検索のアップデート内容を確認すると、そこにはこれからのこの物語にかかわる内容が記載されていた。




朝になり、アキのお母さんに挨拶をして月見荘を出ると、アルビスが待っていた。


「おー!おはようヒデト!もう行くのか?」


「ああ…。」


「そうか!待ってたかいがあったぜ。お前に渡したいものがあってな?」


「渡したいもの…?」


「そうだ、あ、ちょっと待てあの三人も今一緒か?」


「いや、部屋で支度してるからあと五分は出てこないと思うけど…。」


「よかったぜ!これは男にしかわからないものだからな。」


「男にだけ?」


「そうだ。実は、これだ。」


「何だこの輪っかが付いたやつ…。こっちにはアイマスクか?どうしてこれを俺に?」


「お前これ知らないのか??

分かった。大人の俺が教えてやろう。これはな……。


「はぁああああああ???????」


大声をあげるヒデト。


「どうしたのヒデト?」


慌ててその(ぶつ)をストレージに入れるヒデトと、ごまかすアルビス。


「お、王女殿下…。なに、男同士でたわいもない話をしていただけですよ。」


「あ、そう…。なんか怪しいけど、まあいいわ。」


リンがとりあえず追及はやめたようだ。


「準備完了!!」


「じゃあね、お母さん!また会いに来るから!」


ミクとアキも出てきた。


「さ~~!リノーアに向けて出発しよ!!」


ミクが元気よく叫ぶ


「リノーア?」


アキが尋ねる。


「リノーアじゃなくて、リアーノ。ランドハート王国の首都よ。私の王宮があるわ。お父様もそこにいらっしゃるの」


リンが答える。


「リアーノっていうのか。首都ってしか知らなかったら初耳だ。じゃあ、そういうことだから、ヒデトしっかりな!!」


アルビスがそういうと、


「もーまた、余計なことを…。」


「どうかしたんですかヒデトさん?」


アキが心配そうに見つめてくる。


「い、いや何でもないよ。

さ、リアーノに行こうか。」


「なんか怪し~です。」


「そうそう、なんかあやしーのよね~。」

アキとミクが口々にそういう。


「ほ、ほらしゅっぱ~つ。リン、記憶を少しのぞかせてくれ。」


「うん。」


そういうと、ヒデトに抱き着くリン。


「だ、抱き着かなくて大丈夫だ。近くによってくれたら…。記憶を見るだけだから。」


そう言いながらリンの頭に手を当てるヒデト。


リアーノの場所への「ワープ」をするためには、一度見聞きした情報が必要になる。

その情報を集めるのだ。


「できた!、よし!じゃあ行ってくるよアルビス!

おう!達者でな!また遊びにこい!」


「りょーかいだ!じゃあな!

サマエル!いるか?」


「はっ、ここに。」


「三人とも、行くぞ!」


「りょうかーい!」


「承知しました!」


「わかったわ!」


こうしてヒデトたち一行は、ワープしてリアーノにたどり着く。


すると、目の前に自分の何十倍の高さのある門があるではないか、さらに奥にはでぃ●にーランドのお城のような、きれいな白いお城がそびえたっていた。


「ここが、リアーノ城ですわ。私ここではきちんとした言葉づかいをしないと落ち着かないので、この話し方にさせていただきます。」


リンが、王女様の(てい)を装った話し方をする。


(案外、こっちのリンも好きかもなぁ…。自分が応じになった気分だ…。)


「あ、ああ…。」


自ら先導して、門の目前まで行くと、門番と何やら話始めるリン。


しばらくすると、


「開きますわ!」


と、こちらに口を開いたリンは、ヒデトたちに少し下がるように促す。


すると、ガガガガガ・・・ゴゴン。


滑車が回る音がするのと同時に目の前の巨大な門が開く。


門をくぐった先で、ギルバートとセバスチャンが出迎えてくれていた。


「長旅ご苦労様でした、リン王女殿下、並びにヒデト様ご一行様。」


セバスチャンが口にする。


「殿下、出迎えの準備ができております。ヒデト殿方もどうぞご一緒に!」


二人に連れられて行くと、広々とした場所に到着した。

どうやら謁見の間のようである。

通りの左右には、ギルバートをはじめ、大臣や騎士といった屈強な男たちが立ち並ぶ。

通りの正面には、少し高くなった場所に椅子があり、白髪の老人が椅子に座って待っていた。


「おー!リンよ。わが子よ。良く無事に帰ってきてくれた!この度の魔王討伐大変見事であった。今宵は、宴じゃ。して、後ろにいる者たちが今回リンを助けてくれた旅人の者たちであるな?」


「はっ、ロワイアム王。その通りでございます。王女の後ろにいらっしゃるのは、ヒデト殿、ミク殿、アキ殿で、今回私たちの魔王討伐に協力していただいた御仁でございます。」


「ほう、なるほど…。ヒデト殿といったか?ギルバートが言っていることは本当なのか?失礼かもしれんが、貴公のような若いものに協力していただいたと言われたのだが、私はとてもではないが信じられんのだ。どうだ、ここで一つそれを証明はしてくれぬか?」


「ヒデト殿、発言をお願いする。」


ギルバートが英人に声をかける。


「お初にお目にかかります。第31代ランドハート王国国王、ロワイアム31世様。

私は、ヒデト・ヨコヤマ。見ての通り、旅人、いや、正確には来訪者、をしております。

先の三星ギルバート殿のご紹介の通り、私は今回のリン王女様の魔王討伐の協力をさせていただきました。先ほど、貴公が言われた証明をここでさせていただこうと思います。何を示せばよいでしょうか?」


「な、貴公、今、来訪者をしていると申したか?


「はい、そう答えさせていただきましたが…、どうかされましたか?」


「どうかされました?、父上。」


ヒデト、そしてリンもロワイアム国王に質問する。


「い、、いや、何でもない。ただ、この後個人的に話をしたい。頼めるか?」


(なんか、俺悪いこと言ったかな…。来訪者って特別なのか?

それより、リンとの結婚の許しはここでは言いにくいな…。こちらとしても好都合だ。)


「わ、わかり…ました。」


「おお!、感謝するぞ!

す、すまん、取り乱してしまった。その前に、ここにいる(みな)への証明のために、一つ、貴公にお願いしたいのだ。

このリアーノ城に、隕石を落として見せ、それを無傷で守るということはできるか?

ギルバートの報告では、魔王はそれによって、貴公に服従するようになったという話だが、本当であるのか、それをこの目で見てみたいのだ…。」


「わかりました。中庭の方に移動していただきたいのですが?」


「うむ、わかった。(みな)の衆、中庭に移動じゃ。」


ロワイアム国王の一言によって、謁見の間にいた屈強な男たち、他の全ての者も全員中庭に移動する。


「では、行きます。神話級重力制御魔法『メテオライト(隕石)』!!!」


珍しく、中庭にいた全員にわかりやすくするため詠唱したヒデトは、すぐさま、


「神話級結界魔法『パーフェクトキューブ』!!!」


リアーノ一帯に強力な結界魔法を発動する。といっても、いつもミクやアキ、リンにつけている魔法と同じだ。


15秒ほどして、リアーノ城の真上から、リアーノ城ほどの隕石が落ちてきた。


「うわ~~~~~!!隕石だ!!!」

「や、やばい…、城がぁあああ!!!」


周りの屈強な男たちも、慌て始める。


そういっていると、隕石が勢いよく落下し、リアーノ城に衝突した。


爆風がリアーノ一帯を襲うはずであるが…、中庭も無事ではないはずであるが…。

無傷であった。隕石が砕けていく映像を目前できれいに見ることができたのである。


これには、中庭にいるヒデト一行を除く全員が腰を抜かした。

ロワイアム公も、驚いた表情で腰を抜かした…。


「ま、まさか…、これほどとは…。この度は試すようなことをしてすまなかった。これで(みな)が認めてくれるであろう。」


「いえいえ、現実離れしていることですので、試したくなるのはわかります!これで私を理解してくれる人が増えることに期待します。」


「さぁ、今回の出迎えの回は終了だ。(みな)解散してよいぞ!!リン、そしてヒデト殿一行は、私と一緒に来てくれ。」


「は…い。」


「はい。」


リンとヒデトが返事をする。


こうして、とりあえずリンの父、ロワイアム公とのファーストコンタクトに成功したヒデトであったが、これからのリンとの結婚の許しを得れるのか…。



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