第25話
“三星”アルフレッド・ハイバーンとの戦い
シロとヤスイエが、アルフレッド・ハイバーンのもとへ向かう。
と、アルフレッドハイバーンが剣を左右から抜き、その紅蓮のごとき髪をなびかせる。
どうやら気配で、シロたち神獣をつかんだらしい。
シロとヤスイエが、ヒデトによって放たれた魔法を間接的に放つ。
神獣は主と契約することにより、その主によって放たれた魔法を間接的に放つことができた。
つまり、ヒデトが発動した魔法をシロとヤスイエがその出力先として動いたのである。
ヒデトが選択した魔法は神話級炎魔法、「煉獄」。
前にサマエル(魔王)に見せた「黒炎」とは違い、その名の通り、地獄のごとき炎であたり一面を半永久的にあらゆるものを焼き尽くす魔法である。
ヒデトはなぜこの魔法を選んだのか…。それは、炎魔法の中で最強の魔法だからである。
ヒデトはリンに、「アルフレッド・ハイバーンが二刀流の剣士である」と教えてもらう前に、索敵モードで詳細をすでに知っていたのである。
そこで得た情報というのが、「アルフレッド・ハイバーンは二刀流の剣士で、炎を操る炎魔法においては右に出る者のいない」というものであった。
ならば、その強さがどれほどのものなのか、炎を操るといってもインフェルノの炎の火力を操れるのか、アルフレッドの強さを見てみようと思ったのである。
それで、今に至る。
神獣二体の「煉獄」をもろに受けて、アルフレッドは無事なのだろうか。着弾の衝撃で煙が上がり、そして炎が現れる。と、その中から何やら黒いシルエットが浮かんでくる。煙が無くなると、そこにはアルフレッドが立っていた。しかも、先ほどのインフェルノの炎を剣にまとって無傷である。
「ま、まじか…。」
思わず、感嘆の声がヒデトの口からこぼれる。
(まさか、これほどとはなぁ…。さすが三星ってところか。まあ、でも索敵モードの詳細を見る限りけっこう身体に負荷を追っているなぁ。次のインフェルノには耐えることはできないだろう…。だが、同じ魔法を二回も繰り出すのはなんだか格好悪いしなぁ…。どうしようかな…。)
「ふっ…ふ。この程度か。
ならばこちらから行かせてもらう!!」
疲労困憊で冷汗かきまくりだが何とか平然を装うアルフレッド。やはり、ヒデトが索敵モードの詳細で見たように身体にかなり無理をしているのだろうか。
「炎斬!!!!」
アルフレッドがそういった瞬間、アルフレッドの二刀を、巨大な炎が多い、さらにその炎が巨大なブレード型になる。アルフレッドがその二刀を振った瞬間、その炎が斬撃のように繰り出されていく。しかし、根元には炎が残っているのか、斬撃ではあるものの何回も使用できるようだ。
一回目の炎斬によって、アルフレッドの近くにいたシロとヤスイエが一度立て直しをせまられた。
(さあて、めんどくさい魔法を出してきたなぁ…。まあ、あれも超級魔法だしさすが三星だな…。どうするかな…。炎攻撃は効かないとみていいな…。なら水魔法の神話級で終わらせるか…。)
ヒデトはそう考えると、炎斬の二回目を放ちにシロとヤスイエに近づいているアルフレッドに対し、シロとヤスイエから神話級水魔法「大洪水」を放つ。
この魔法は、放った側にはどんなことをしても水の流れが返ってくることはないが、放たれた側にある、あらゆるものをすさまじい量の流水が包み込み、敵の体力をむさぼり・窒息・圧迫させるという魔法である。
炎魔法の使い手であるアルフレッドには効果抜群の神話級水魔法だ。
巨大な濁流が突如何もないところに二か所出現したかと思うと、アルフレッドめがけて流れていく。その流れにとらわれたら、どんなものでも包み込まれて逃れることはできない。
アルフレッドも、そのことを感じ取ったのか、濁流から逃れようと足場となりそうな場所を転々としながら避けていく。しかし、それでもついには足場が無くなった。と、ここでアルフレッドが思いがけない行動をとった。炎を身にまとい、まるで炎を鳥の羽のように変形させ、空を飛んだのである。その姿は、フェニックス(不死鳥)のようであった。
(しまった、空に逃げられたか。くそ…。魔法の選択を見誤ったか…。いや、あいつらを信じよう…。)
ヒデトも動揺するほどのアルフレッドの空中飛行であったが、ヒデトはあいつら、シロとヤスイエを信じることにした。
というのも、空では、ヤスイエにはヒデトを除くどんな生物も勝つことはできないからである。
それが、神獣・麒麟、“ヤスイエ”である。
そこからは早かった。
ヤスイエが、アルフレッドの目の前に瞬間移動したかのようなすさまじいスピードで飛行し、そのスピードの衝撃によって濁流にアルフレッドを突き落としたのであった。
「ふー、終わったか。」
溜息を吐くヒデト。
「あのアルフレッドが…。これがヒデト様の、力。」
リンが呆然としている。
「主、無事ことを終わらせてまいりました。」
シロとヤスイエがヒデトのもとへ帰ってくる。
「二人ともお疲れ様!、」
と次の言葉を言いかけたとき、
ミクとアキが駆けてきた。
「もう、ヒデト。今度は、三星の人?」
ミクがヒデトに尋ねる。
「あ、ああ…。すまない、連絡がいきなりだったね。
でももう見ての通りさ。とりあえずは、終わったよ。
シロとヤスイエのおかげでね!
三人は、訓練中だったのにごめんな。シロとヤスイエを借りてしまって。」
「大丈夫です、ヒデトさん!
それより、ヒデトさんが無事でよかったです!」
「まあ、俺やリン、シロとヤスイエにもシールド貼ってたし、まあ、何はともあれ、無事終わったからとりあえず帰ろうか!」
「はーい!!!」
それから、「大洪水」により、無事体力をむさぼり・窒息・圧迫させられたアルフレッドは、意識不明で一命をとりとめ、即、ビトレイの隣の牢屋に投獄された。
終わってみれば、ヒデトにとっては意外とあっけない戦いだったものの、映像・伝達モードを通じて周りから見ていたものからすれば、「三星」アルフレッドを瞬殺してしまう、ヒデトとその従魔たち。改めてその強さが認識された戦いとなった。
ちなみに、その後保護された700の正規兵は、ヒデトの精神系魔法「記憶改変」や回復系魔法「リストア―」で完全に安定した精神となり、ギルバートの管轄に入った。
その後、アルフレッド、そしてビトレイは、今も少しずつ精神安定並びに、その「記憶改変」をヒデトが行い、日々いい意味での調教を行っている。
時は、それから少し流れ、いよいよランドハート王国のロワイアム公のもとへ行く日がやってきた。
「みんな、とりあえず準備は大丈夫か?」
「ダイジョブ!」
「大丈夫です!」
「大丈夫よ!」
ミク、アキ、リン、がそれぞれ返事をする。
ギルバート達兵団も、王宮へ帰るらしい。
ヒデトたちは、別行動でアイネへと一度戻り、王宮へ行くことにした。
「ご主人様、これから一度、馬車でアイネへと戻り、その後王宮へと向かいます。
しばし、景色を楽しみながらお過ごしくださいませ。」
サマエルが、執事を務め、馬車を走らせる。
同乗者はいつもの三人と、小型化した神獣二匹。
慣れ親しんだ、ギルバートの森を離れ、アイネの森を抜け、久しぶりにアイネに戻ってきた。
久しぶりに見たアイネの城門が見えてくる。一番最初にアイネに来た時と同じく、城門付近にはアルビスが立っていた。
「おおおお!ヒデト!ミク!、それにアキ!、とかわいらしいお嬢さん?
久しぶりだな!、てか、ダンジョンに行ったきり全然連絡が無かったし心配したんだぞ?
俺んちの家事もミクがいなくてやばい状況だったから溜まってるし…。まあ、それはどうでもいいんだけど…。とにかくよかった、お前たちが無事で!」
「久しぶりだな、アルビス!ただいま!」
「ただいま~、って、私にまた家事させる気じゃないでしょうね?いい加減、女作りな?」
「い、いや、家事をさせる気は…、n、ない。な、ないぞ。断じてない。」
「あ~やし~~。まあ、いいけど。でも私、ヒデトの奥さんになってるからね?」
「お、奥さん??あのハーレムのどうのこうのの流れはうそではなかったのか…。オジサン悲しい。」
「はーい。一応言っとくと、私がヒデトの一番目の婦人、二番目がアキちゃんで、三番目がリン!リンはランドハート王国の第三王女なんだよ!」
「は!?、王女?この国の?」
「うん。」
「そうなのかヒデト?」
「ま、まあね…。」
「さ、先ほどの無礼な発言をお許しください。王女様」
「え、い、いいです、いいですから。人目もありますし。」
「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」
見ての通り、アイネの民は、国には頭が上がらない。というのも、このアイネそしてギルバートの森一体というのは、実は直接王宮が治めている場所であるのだった。
「ま、いいからさ、それより今までの話なんかをいろいろ話したいんだ。
ご飯食べたりゆったりしないか?門番は、ゴーレム君たちに任せるから大丈夫だ。」
「ゴーレム君?」
「そう!ゴーレム君。ちょっと待ってろよ。」
そう言うとヒデトは、アルビスのゴーレムを創造によって作り出した。少しMPを消費したが無限大なのでどうということはない。
(ついでに、アルビスをもう一人増やして、連絡係にでもしとこう。)
「ほい、完成だ。一人目のアルビス1は、門番。
戦うなよ!戦うと多分、アルビスは勝てないからな(笑)
きちんとした知能もあるから、何かあった時も臨機応変に対応できるすごいやつだ。」
二人目のアルビス2は、主に連絡係だ。これも戦うことができて、アルビスより強いから気をつけろよ!ちなみに、連絡先はアルビスになってるから、何かあった時にアルビスに知らせてくれる。
お前のこのアイネの護衛隊長としての務めと門番としての務めの両立が難しそうだったから、いずれ作る予定だったんだが、ごめん。遅くなってしまって…。」
「マジか…。(泣)
お前っていいやつだなヒデト。
ありがとよ~~~。」
感極まってうれし泣きをしながらヒデトに抱き着いてくるアルビス。大の大人、それも少しおじさんが、巨漢が、してくるとなんか怖い。
「さあ、早速ごはんに行こう!」
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
時話掲載が遅くなっておりますが、申し訳ありません。
迂路慎家海嘉羅夢




