第22話
三人の試練、そして麒麟。
三人は、競ってそれぞれ魔物を倒しに出かけた。
三人の様子はどうだろう…。
アドバイザーに聞いてみる。
「ミクたちの様子を観察したいんだが、どうすればいいかな?」
「はい!ご主人様。
それであれば、思念・映像伝達モードというものを作ってみてはいかがでしょうか。」
「思念・映像伝達モード??」
「はい!
「『思念伝達』は、ヒデト様によって作られましたが、
術者が選択した物体との思念・意識の交換が可能になります。
一方、『映像伝達』は、術者が選択した物体の周囲の状況をその選択した物体を俯瞰しながら見ることができる生活魔法神話級魔法です。このスキルは私自身の万物検索にも引っかかりました。
この二つの伝達スキルを、『思念・映像伝達モード』と名付け、
ONとOFFの切り替え操作、それと伝達する物体を選択する計二つの操作のみにすると、
誰かと連絡を取り合ったり、誰かや何かの様子を見るのにも手間が省けると思いまして…。」
「おおお!
二つ目のモードか!
いい!!そうしよう!!」
ということで、『思念・映像伝達モード』が新たにモードに加わり、
ミクやアキ、リンの様子を観察するのだった。
まずは、リンサイド。
「はぁ!!!」
力強い声をあげたリンが、ホワイトウルフと思われるモンスター数匹に立ち向かっていく。
手を左右に広げ、右手には剣を持ちながら、モンスターに向かって勢いをつけて走っていく。
誇張された胸が少し気になるが…。
(お、おい…。だ、大丈夫か…。形にはなってるんだが…。)
なおも、モンスターに向かって突撃していくミク。
と、右手に持っている剣の先端に閃光がほとばしる。
「はぁあ!!!
シャイニングウインド!!!!」
突如、光が当たりに広がったと思うと、強烈な風がミクから生じる。
モンスターは、光ったことを認識した瞬間に粉々になり、
魔石を落として跡形もなく消失していた。
「っし!!
私が、ヒデトのことを一番思ってるんだから!!」
(うわ…、ミク、強すぎね?
光速で剣の斬撃を飛ばしたときに、強烈な光が剣先から生じていたのか…。
そのあと、斬撃で切ったことを知らないモンスターを自身が光速で動いたときに生じた強烈な風でばらばらにしたってところか??
まあ、一刻を軽く滅ぼせる力を持ってるんだからこれぐらいやるとは思ってたけど、
初めて見るとやはりびっくりするな…。
俺もよけきれないかもなぁ…。流石にそれはないか…。)
ミク、恐るべき強さを発揮した…。
続いて、アキサイド。
こちらは、ゴブリンの群れと遭遇していた。
「ハわわわ…。
な、なんでゴブリンキングがいるの??」
アキが驚いているのも無理はない。
一番弱くても、Cランクモンスターで群れで動いて討伐するのが面倒くさいとされるオオカミの上に騎乗して戦うゴブリンライダー、
次に通常のゴブリンより体格の大きいAランクモンスターであるホブゴブリン、
そのホブゴブリンより体格がさらに大きくゴブリンの長も務めたりする、大厄災級というカテゴリに属すSランクモンスターゴブリンロード、
そのゴブリンロードのうち一握りが進化することでなる天災級SSランクモンスターゴブリンキング、
と盛り沢山である。
(さすがのアキでも苦労するのではないだろうか…。)
このゴブリンの群れをアキがどれぐらい強いかを見極めるためということで、
ヒデトが創造したのであった。
早速アキを発見したゴブリンライダーの群れそしてその後方からホブゴブリン、ゴブリンロード、ゴブリンキングが迫る。
「うひゃはひゃ。かわいい娘だぁあ!
俺様の肉棒を突っ込みたいなあ、野郎ども、あいつを何としてでもとらえてこい!!」
ゴブリンキングの大きな声がこだまする。
ゴブリンは、雄のみであり、人属の女をさらって孕ませることによって繁栄するのだ。
「うおおおおおおお!!!!」
「ひゃはひゃははははh!!!!」
他のゴブリンがその声に呼応する。
アキはというと、やはりビビっている様子だ。
すかさず、ゴブリンライダーが突撃してくる。
(これは、やばいやつかもしれないな…。
すこしアキにはまだ早かったか…。)
ヒデトがそう思っていると、驚いていたものの体勢を立て直したアキ。
「アイスランス!!!ライトニングアロー―!!!!」
前方に、アイスニードルよりもさらに多くの氷の断片を幾層にも作り、それぞれをやりの形に変えて突撃してくるゴブリンライダーに放つ、
そして、それと同時に、ライトニングアロー―、光の矢と直訳されるそれは、
光速でアキの前方から複数発射され、
光と氷というダブルの攻撃によりゴブリンライダーを殲滅した。
残ったアイスランスがそのまま、一匹のホブゴブリンの片腕をえぐる。
「うわああああ!!」
悲鳴が聞こえた。少しグロテスクではあるが、アキはなおも手を緩めない。
「フェニックスファイア!!!!」
アキの体が炎に包まれたかと思うと、
その炎がアキの前方に移動し、フェニックス‘不死鳥’の形を作り、ゴブリンキングめがけて飛んでいく。
一番近くにいたホブゴブリンたちは、その速さから逃れることができず、丸焦げになって消失し魔石を落とす。
ゴブリンロード数匹は、ゴブリンキングを守るため、フェニックスに向かって立ち向かっていく、何とか勢いは殺すことができたものの、フェニックスに触れることによって、手が炎で焼かれやがて全身に炎が伝わっていく。
全身が、フェニックスの炎によって焼けてゴブリンロードも消失し魔石を落とした。
フェニックスが、ゴブリンロードによって止められたことで、ゴブリンキングは無傷であった。
「メス!!よくも俺の部下全員を〇しやがったな。
許さん。
お前を何としても倒し、その中に孕ませてやる!!」
そういうと、まるで瞬間移動したかのように、アキの近くに来たゴブリンキング。
持ち前の金棒を使って、気絶させようと振り下ろしてくる。
(危ない!!!)
ヒデトが離れたヒデトハウスから遠距離でパーフェクトキューブを起動しようとしたとき、
アキが、防御魔法、「エクステントシールド」を発動する。
棍棒が振り下ろされた瞬間、その棍棒の振り下ろされる先に
透明のシールドが突如出現し、棍棒がはじかれる。
「な…!」
(おお…。防御魔法か。いつの間にそんなものを…。)
「私を孕ませられるひとは決まっています。
あなたなんか、私に何人たりとも触ることなどできませんよ。
なぜなら、今から私があなたを倒してしまうからです。」
髪が逆立ち、藍色の瞳はいつもより光って見える。
(え…、やば。アキって怒るとこんなに怖いの??)
「今何が起きたんだ?たかが、防御魔法に俺の棍棒が止められただと?
おかしい。許さん、こうなったら奥の手だ!!
『スティッキースパイク』!!!」
ゴブリンキングが、体内に蓄えていた魔法を球状に変えて体外へ放出し、
近くの魔素をその球状のボールに蓄えていく。どんどん大きくなり、
肥大していく。そのまま空中に打ち上げたかと思うと、棍棒をもって、その魔素の球体の上まで飛び、棍棒をボールに振り下ろす。
その魔素のボールはアキにめがけて高速で向かってくる。
「ふふ、流石にそれは防御できまい。そんなことをすれば、防御した瞬間に、大量の魔素が放出されて、お前の体は被爆するからな。一生魔素によって体を蝕まれることになるぞ。」
「あなたはやはりわかっていませんね。いいです。
もうおしまいですから。『エターナルシールド』。」
放たれてきた魔素を球状化したシールドが包み、
その魔素を受け取ってシールドがさらに肥大化巨大化していく。
そうして鎖状になったかと思うと、そのシールドがゴブリンキングを一瞬のうちに包んで
球状化する。
「な、何をする。おおかしいぞ。
俺の魔素ボールは当たって…、ちょっと、まっ…」
「おしまいですね。」
そのまま、シールドの圧力によって中でつぶされるゴブリンキング。
アキは見かけによらず酷いことをするものである。
「はー!!終わりましたね!
私とエッチできるのはヒデトさんだけなんですから。プン。
さて、次に行きましょう!」
(少し、ミクの時よりひやひやしたが、まあ大丈夫だろう…。
怒るとアキはあんなに怖いなんてな…。怒らせないようにしないと。
リンはどうなってるかな…。)
リンサイド。
「私、竜騎士になっても、飼ってる龍がいないんだったら意味ないじゃないの!!!」
と、正論を述べている王女殿下。流石である。
すると、前方に、オークの群れが現れた。
オークもゴブリンと同じように、人属の女をさらって孕ませることによって繁栄している。
もちろん、リンもそのことを知っていた。
「え、ちょっと待って。
私、孕ませられるよ…。
ど、どうすればいいの??」
と言っていると、周りを囲まれたようだ。
早速、オークの下っ端が襲ってきた。
オークは総勢三十体。
一体のオークロード以外は、すべて下っ端だが、それでも、ゴブリンたちと引けを取らないほど、一体一体が強いのである。
「よろよろ、こんなところに雌豚がいるぞ。ひっとらえて、さっさと犯しハメようではないか。」
「わかりました、ロード様。」
オークロードが下っ端に伝達したことで、一斉に周りから襲ってくる。
(待てよ…。龍と契約してないから、リンの力は少なからず減少してるよな…。
流石にまずったかもしれない。。)
ヒデトも、内心焦っていた。そのためいつでもパーフェクトキューブの準備をしている。
すると、リンが思いがけない行動をしたのである。
「麒麟召喚!!」
(え?、麒麟?神獣の?中央にいるやつだよな…?)
突如、煙下あたり一面を覆う。
晴れてくると、その煙の中に何やらシルエットが浮かんでいる。
(あのシルエットは…、龍。それも大きい。
索敵モードは…、すごい、本物の麒麟だ。リンが神獣の麒麟をよびだしたぞ!!)
と、
ここで低い太い声があたり一面に叫ばれる。
「私を呼んだのは誰だ?」
その瞬間、オークは動くことができず、その場で呆然としたのであった。
「わわ、私です。」
「ほほぉ、竜騎士とな。
竜騎士とは貴族の中でも選べれた者しかなれない役職のはず。
お前の深淵をのぞかせてもらおう。」
「は、はい…。」
リンは驚き、また怖がっていた。
それもそのはず、麒麟召喚というのは、あきらめ半分で言った言葉であったからである。
それが、突如煙が出たと思えば、超巨大な神獣の翼竜が本当に召喚されるとは思わなかったのだった。
「お、お主。もしやリンか?ほんとにあのリンなのか??」
「は、はい。私はリン、リン・ロワイアム、現在はヒデト様の第三夫人であるので、
リン・ロワイアム・ヨコヤマと申します。ど、どうかされましたでしょうか…。」
「それはどうかするぞ。儂の顔を忘れたのか?
儂はお前が赤ん坊のころからお前にあったことがあるのだぞ?
ロワイアムのやつが、子供を得たと聞いてな。
以来、お前の自我ができるまではよく私も遊びに行ったものだ。
王宮に会いに行っていたのだが、流石に覚えてはおらぬようだな。
して、お主のステータスを見たところ、
私の目でも見通せないほどの偽装がしてあったが、なぜなのだ?
本当のステータスを見せてはくれぬか」
「わ、わかりました。
実は私の主人、ヒデトが、このステータスがばれるといけないからと、偽装スキルを付けさせていただいているんです。神様みたいな人だから、つけることができるといった方がいいのでしょうか…。チートを保有していらっしゃるとか何かで…。」
「い、今、ひ、ヒデトと言わなかったか?」
「は、はい…。い、言いました。」
「おおお、神の御子の奥さんになっていたのか、リンよ…。
あとで、その方にお会いさせていただいてもよろしいか?」
「は、はい大丈夫だと思います。
ステータスオープンしました。」
「おおおおおお!!!
神の御子のなせる業だ…。
やはりそうであったか。
創造神様がおっしゃっていたことは間違いなかった。
して、今回はなぜわしを呼び出したのだ?
理由があるのだろう?」
「はい、実は…」
「なるほど。して今リンは試されている、あるいは試練を受けている、といったところだな。
とりあえず、あのオークの雑魚どもを消し去ればよいのだな?」
「は、はい!!」
「わしを召喚できてよかったな!リン。
あやつらは、わしにとっては雑魚でも、龍の召喚ができていない状態のリンにはちときつい相手だったかもしれぬからな。
よし、ではわしの背中に乗れ。」
「は、はい!!」
そう言うと、リンは麒麟の上にまたがろうと、巨大なおなかに足をかけていくのだった。
「そうそう、上ってこい!!
よし、上ったな。
あの赤ん坊がこんなにも重たくなったものだ…。成長とは感慨深いものだな…。」
「お、重たくはないと思います!!」
「ハハハハ。よし、ではしっかりつかまっておれよ。今から、久しぶりに流星群を見せてやるぞ。」
そういうと、麒麟は飛び立ち、急上昇した。
「きゃあ!!、地面があんなに遠くに!!」
「リンよ。しっかり目を開けて歯を食いしばれ。
この速度になれれば、あらゆる龍の速度に対応できる。
儂がお主をこれからみっちり指導してやるぞ!」
「は、はい…。きゃ、きゃああああ!!」
空中を少し旋回し、
すさまじい速度で急下降していく麒麟とリン。
麒麟の体が赤くなりだす。
突如、上空から、半径10メートルほどの隕石が、10発ほど落下してくる。
麒麟の急下降の動きに対応するように隕石もまた、オークの群れに向かって落下してくる。
「麒麟、あ、当たるよ、当たる!!!!!」
「大丈夫じゃ。」
地面すれすれでオークの群れを回避すると、元の場所に戻る。
その時、オークの群れに流星群が落下してきた。
終わってみれば、麒麟召喚から流星群落下まで、オークたちは、麒麟というものの前に、恐れをなして動けなくなってなくなっていったのであった。
「どうじゃ?わしの力は…。こんな業、序の口じゃがな…。」
「怖かったけど、何とか耐えれました!」
「そうか!、よかった。
これからもしばらく試練は続くのか?」
「はい。
実はどれだけこの森一体のモンスターを倒せるかという試練みたいなものをしておりまして。」
「なるほど、そうであったか。
すると、どうやらこの森一体に、魔王による結界魔法が駆けられているのも、神の御子様の差し金といったところであろうな…。」
「結界魔法??」
「そうじゃ、このモンスターというのは、おそらく神の御子様が造られたものだ。いざというときのために、自分が殺せてかつ、おぬしらを鍛えれるそういったモンスターを呼び出しておられるのだ。先ほどのモンスターからはそんな気配がしたのでな。」
「そうだったんですか…。
ヒデト、ありがと。。」
と、こういったことをヒデトは見ていたのであった。
少しヒデトが照れていたことや、神の御子といわれて動揺していたのは容易に想像できるだろう。




