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第1話

転生

第一話 転生

 咲季が外出してから、英人は朝食を済ませ、今日の予定を確認していた。

しかし、当然のように予定はない。イブだというのに彼女はいない。

大学院生ということもあり、知り合いがいてもみな帰省先はバラバラ。

遊ぼうにも遊べない。さて、どうしたものか。そうして結局はゲームやネットサーフィンをするのである。


時がたつのは意外と早いもので夕方になり、仕事帰りの母が帰宅してきた。

「ただいま。今さっき帰ってくる途中咲季たちとすれ違ったんだけど、咲季が『お兄ちゃんへのクリパを買う』だとさ、クリパってなんかわかる、英人?Mine cr〇ftのMobのクリー〇―は、私も知ってるんだけど、最近の子は全くわからない言葉を使うのね。」

それを聞いた瞬間、英人は成仏しかけた。

あんなにかわいいJK美女からクリスマスプレゼント(KP)をもらうことができるのだ。

うれしいわけがない。というかクリー〇-をしっていてなんでKPを知らないんだ?

英人は、単純にそう思ったのだった。

しかし、だいたい母親というものはなにかと面倒なことを持ってくるものである。

ほどなくして問題が英人の脳裏に浮き上がってきた。

それは、「俺は咲季にプレゼントなんぞなんも準備してない!!!」である。

ここで、英人の脳内で思考が通常の三倍いやそれ以上の速度で巡っていく。

英人は、寝ることが好きというだらしない大学院生だが、ピンチの時になると思考が活性化するという性分なのだ。

これはいけない。即刻咲季へのKPを買いに行かなくては。

ただ、ここの近くには、KPを買うだけの店が集まっているところなど一つしかない。

しかたない、咲季と鉢合わせするかもしれないが、ショッピングモールへ行くしかあるまい。

そうして、急いで支度を済ませ、咲季が帰ってくる前までに何とかプレゼントを買うべく、近くのモールへ行くのだった。

今思えば、それが始まりだったのかもしれない。


 ショッピングモールに、高校時代使っていたチャリで何とかついたものの、それまでの息切れが激しく、年を取ったものだと感じさせられる。

自転車置き場に自転車を置き、モール内へ入った。

久しぶりに来るモールは、昔と変わっており、たくさんの店が入っていた。

せっかくだから、自分が知っている店ではなく新しい店で買ったものをあげようと考え、新しい店を捜し歩く。

目新しいお店には服屋・駄菓子屋・眼鏡屋・歯科があり、咲季にあげるなら服一択だな、と考え服屋へと向かう。

男性なら一度は経験したことがあるだろうが、男性がレディースコーナーへ行くのにはそれ相応に勇気がいるものである。

しかし、時間の猶予がなく、思考が巡りまくっている英人には、そんなことはお構いなし。

颯爽と歩き、マネキンが着ているなかで、最も咲季が来て似合いそうなものを選んでいく。

お店の人と相談し、英人が最初に似合いそうと思っていたものをプレゼントにすることに決めた。

会計を済ませ、その店を立ち去ろうとした矢先、やつに出くわしてしまった。

やつとはそう、咲季である。

「あ、お兄ちゃん!」

咲季がかわいらしい笑みを浮かべて手を振る。あー癒される。

しかしこちらは、買ったのがばれてはいけない決まりの悪い状況だったので、それ相応な、ひきつってはいないだろう悪くはない笑みを浮かべ、手を振る。

その時、英人は見逃さなかった。咲季の後ろから迫るナイフを持った覆面の男を。

「咲季危ない!!!!後ろ!!!!」

英人の太い声がモールにこだまする。

何事かと周囲の人が英人に視線を向ける。

「きゃあ――!!!」

周囲の人が覆面の男に気づいたのか、悲鳴を叫びだす。

咲季も振り返って、ナイフの男に気づいたようだった。

しかし、恐怖のあまり身がすくんで、体が動かない。

いけない! 思考が活性化した英人は、咲季をめがけて走り出す。

咲季は、ナイフ男がナイフを降りかかった瞬間、私の人生は終わったのだと覚悟して瞼を閉じた。

しかし、5秒たっても何も起きない。

どうなっているのか気になって、怖がりながらも恐る恐る瞼を開く。

そこには、ナイフに突き刺されながらも、覆面の男をしっかりと捕えていた兄の姿があった。

「死なないでお兄ちゃん…!!」

咲季の涙と悲鳴交じりの声がモールに響き渡る。

モール内の交番のおまわりさんが来たらしく、英人の助太刀に入る。

しかし、その時英人の意識はもうろうとしており、咲季の悲鳴を聞きながら、咲季が無事でよかったと思いつつ、暗い闇の中へ入っていった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここは、どこだ。

一面真っ白い世界。本当に見る限り何にもない。

突如、英人の前方に黒い穴が現れ、一人の人間の形をした何かが穴の中から現れた。

「きたきた!こっちにおいで!」

そいつが言うとおりに、近くへ行ってみる。

近づいて分かったことだが、妹の咲季と比べても見劣りしない絶世の美女がそこにいた。

「あ、あの。ここはどこですか?」

英人が美女に向かって問いかける。

「ごめんね。今からちゃんと説明するからよく聞いてね!

私の話を聞いたらちゃんと質問に答えてあげるわ。

私は創造神アテネ。ここは、謁見の間。神と下界の者が唯一相見えることができる場所。

といっても、下界の者は亡くなって魂と身体が分離しないと来られないところなんだけどね。

あなたは、先ほど死んでしまった。通り魔から妹を助けるために身を盾にしてね。

ここで、あなたの死因についてなんだけど、これは私たち神の方に不手際があったみたいなの。

というのも、あなたが運命通りに動いていたら、あなたは死ななかったの。

妹さんも元から亡くならないことになっていたのよ。

近くにエリート警察官の方が偶然いらっしゃるようになっていたから。

でも、その方がトイレから出てこなくて結果、あなたが妹をかばって死ぬ運命になってしまったの。ごめんなさい。」

英人は、頭の中がおかしくなった。自分が死んだことはおおよそ理解できる。

妹の咲季が無事であってよかったと思う。

しかし、自分が死んだことが神のミスであって、エリート警察官が糞をしていたため死んだというのだから、これまたひどいものである。

そして、アテネの話を聞けば今自分は魂だけの状態であり、世界の創造神アテネに謁見していることになる。

創造神がこんなに美女であるということは置いといても、まだあまりに信じられないことであった。

結果、アテネに質問することにした。

「私がナイフを刺されて倒れているときに先がないことはなんとなく察していました。アテネ様の話だと、私は死んで運命とは異なる方向に動いたためここに魂が呼ばれていて、今は魂だけの状態でこの世界の創造神様であるアテネ様に謁見しているということになると思うのですが、合っているのでしょうか」

「合ってるわ。というか、そんなに固くならないで!妹さんに接するみたいに話していいわ!」

「では、失礼します。この後俺はどうなるんだ?魂だけの存在ということは、閻魔大王様のところへ行くのか?」

英人がまた質問した。

「この世界の輪廻の流れは次の三通りあるの。

一つは、英人さんが言ってくれたように、魂が下界では地獄と呼ばれている場所に行くわ。その後しっかり労働、あ、あなたたちが思っているようなひどい労働じゃないわ。あなたが日頃見てきた下界での労働と一緒なのだけど、それをある程度の期間しっかりやってもらって、そのあと記憶の消去などの転生の儀式を行う。

二つ目は、善行がよかったものは、次の転生の際にある程度意識を残して転生することができるわ。

三つ目は、英人さんのように、神の不手際で起こった失態の責任を取って、前世の自我を持った状態で、異世界に転生させる場合よ。

だから、あなたはこれから異世界に転生してもらうわ。

異世界というのは剣技があったり、魔法があったり、モンスターがいたり、勇者や魔王がいたりする世界よ。

レベルを上げたり、スキルレベルを上げて、モンスターを倒して生きていくそんな世界。

あなた方の言葉を借りていうならば、ファンタジーの世界ね。

ただ、そのままの状態で異世界に移ったとして、モンスターにやられてしまったら元も子もないから、ある種のチートをあなたにつけさせてもらうわ。」

英人は、目を光らせる!当たり前だ。夢に見た異世界転生が起こるのだから。

今まで生きてきた世界の人々には申し訳ない気がするが…。

英人は当たり前のように

「お願いします!」と返事をした。

「よかった。ありがとう。そう言ってくれて助かったわ。

私ではないのだけど、私の部下が不手際を起こしてしまったの。

きちんとするように言っておくわ。」

いろいろあったが、いよいよ転生する。

「楽しい人生を!」

アテネの姿が消えていく。

 ここはどこだ。

青い空、広大な草原、きれいな水、青々とした木々が見える。

ついに英人は異世界へ転生したのだった。

称号:異世界からの来訪者を取得しました。


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