第18話
サマエル
リンがビトレイに連れ去られ、それとと同時に魔王が復活した。
ギルバートらにリンの捜索に向かってもらい、ついに魔王と対峙するヒデトたち。
魔王は、見るからに人属と容姿は同じである。
「これはこれは人間風情よ。
貴様ら人間が私をこの地に封印してから1000年という月日が流れた。
あの忌々しい勇者ももういなくなっていることであろう。
どうだ、このまま貴様らが私に勝てるわけがないのだから取引といこうではないか。
私をこのまま見逃せば、これから先貴様ら三人の命は狙わないと約束しよう。
どうだ、いい話だろう。
私もまだ復活してすぐということもあり、未だに魔力が体になじんでおらん。
そのため無益な争いは極力したくないのでな。」
魔王がしゃべりだす。
「お前が魔王か。
俺はヒデト。ヒデト・ヨコヤマだ。
俺は魔王、お前に用があってこの地に来ている。」
「ほう、ではお前たちは私を偶然見つけるのではなく何か用があってきたということだな。
して何の用だ。へたすれば貴様らの命は亡くなるものと思え。」
「残念ながら、俺たちは倒されるものではない。
これから先、人属を襲わないと誓ってくれ。」
「つまらん、ただの意気地なしであったか。倒されるものではないと…。
そのような貴様らとなぜ魔王たる私が約束せねばならんのか。
はっきり言うが、貴様ら人属が封印したことで私はいらだっているのだ。
当り前だが、人属を滅ぼすのは当たり前のことであろう。
だが、私の今回の情けで、その人属の中に貴様ら三人を入れないと言っているのだ。
それをなぜ人属のためにわざわざ口約束をしなければならない。
私をこれ以上失望させないでくれ。
でないと、いい加減私も貴様らを殺さないと気が済まなくなるぞ。」
「わかった。魔王
お前がただのチキン野郎だということをな」
「貴様、私を取りと申すか、許さん。
消し炭にしてくれる!」
「動くな!」
ヒデトがそう言うと、突如魔王の動きが不自然に止まる。
「な、何が起こっている。
俺の体が思うように動かない…。」
「馬鹿な奴だ。
人属を襲わないと曲がりなりにも誓ってくれればこのような事はしなくて済んだのだが…」
「なぜだ、この魔王の動きを封じることなどたとえ、誰であっても…。」
「誰であってもだと?
魔王、俺が誰だかわかっているのか?」
「ただの人属が、何を言っている!」
「やはりほんとの馬鹿らしいな。
これまで見せれば、思い出すか…。」
「黒炎!」
ヒデトが無詠唱で魔法、「黒炎」を発動する。
この魔法は、世界でヒデトしか発動することのできない神話級黒魔法。
発動された対象に黒い炎がとりつき、
炎は術者が止めない限り無くならず永遠に対象の肉体・精神が燃え尽きるまで
消えずに残り続ける。
これは、「大魔王」ヒデトでしか発動できない魔法である。
ヒデトは、
魔王は勇者によって封印される前に、
一度は先代の大魔王がこの「黒炎」使っているところを目撃している
と思ったのである。
そのため一時的であるが、大魔王だけが使える魔法だけロックを解除し、
今は大魔王の魔法がうてる状態になっている。
「ま、まさか。その魔法は『黒炎』。
大魔王様が唯一なせる魔法。
貴様、まさか大魔王か、いやそんなはずは…。
こんな人属に…。」
思惑通り、気づかせることに成功したヒデト。
「やっと気が付いたようだな。魔王。
俺は貴様の言っていた大魔王だ。
魔族は人属と容姿が変わらないことはお前も知っているだろう?
先ほど言っていた人属への報復をやめてもらおう。
二度は言わない。」
「そ、そんなこと信じられるか。
だが、確かに黒炎。
なにがあっても大魔王しか発動できない…。
くそ、お前が大魔王であるというなら、それ以外に大魔王とする証拠を見せろ。」
後のミクとアキは、ヒデトが「大魔王」のジョブを持っていることなど、
ヒデトのステータスをあらかた知っている。
そのためか、満足げな顔である。
ノリノリのヒデトが続ける。
「誰に対しての口の利き方だ?
まあ、いい。これは不問にしよう。
きちんと大魔王たる証拠を見せていないのが原因のようだからな。
分かった。とりあえずお前には大魔王の力を存分に体験してもらい死んでもらおう。
その後生き返らせたうえで、大魔王本人であることを認めさせる。」
「ま、まて。殺すだと???」
魔王が話し始めるが、
ヒデトが無詠唱で魔法を発動する。
「メテオライト!」
すると、何も起こらない。
「ふっ!
やはりお前は大魔王などではないな。
先ほど体が動かくなったのも、
お前の『威圧』でどうやら俺は金縛りにかかっていたことが原因だと体が教えてくれたよ。
魔族の上位になってくると、このように一定時間がたてばすぐに対応できるようになるのさ。
残念だったな。
体を動かなくさせて、俺を倒すつもりだったろうが、
もうすぐ『威圧』の解答が終わる!
そうなればあとはこっちのものだ!
久しぶりで対応に遅れたがこれでもう後れは取らない!」
魔王の体が動けるようになってきている。
本当に「威圧」スキルを解凍しているようだ。
はたから見れば少し危ない状況かと思ったが、大魔王のヒデトは続ける。
「それはどうかな…。」
突如、頭上に何やら重たい気配を感じた。
重たいものがあると重力(引力)が働き、
何かしらの存在いやこの場合意識がひかれたのだろうが、
そんなことはどうでもいい。
リンを追っていたギルバート達もその存在に気づく。
ヒデトたちがいる頭上にとてつもなく大きな隕石が落下してきていたのだ。
「な、なに~!!!
魔王とはあんな技も使うのか…。
私たちだけでは太刀打ちできないと言っておられたヒデト殿言葉もこれで大方理解できた。
やはりヒデト殿はすごいお方だ。
しかし、ヒデト殿らも大丈夫であろうか…?」
「ギルバート様、そんなことは言っておれません。
ヒデト様方が魔王の相手をなさっている間に何としてもリン様を取り返さなくては」
カイルがギルバートに進言する。
「そ、そうだな!
早く追いつくぞ!」
「御意!!」
隕石には目をくれず、
ロイアル・ワイズ・カイルの三人はギルバートとともにリンの追跡を急ぐのであった。
場面代わりヒデト側。
「な、なに!!」
隕石に驚く魔王。
動揺が激しい。
「威圧」の解凍に成功したが、あまりに動揺したためか体がふらついている。
「重力制御魔法『メテオライト(隕石)』
選択した物体の頭上から隕石を降らせる神話級魔法、
大魔王しか発動することができない魔法だ。
これで俺が大魔王であることを理解できたか?」
「あ、当たり前だ。こ、こんなことできるのは大魔王ただ一人。
申し訳ございませんでした。どうか、命だけは…。」
血相を書いてヒデトに謝罪をしてくる魔王。
「残念ながら、魔王よ。
お前はこの大魔王たる私を侮辱したのだ。
それ相応に罪を償ってもらわなければならない。
ここはひとつ、一度死んでもらおう!」
もうヒデトはノリノリである。
後の二人も、魔王になった気分なのであろう…。
そんなことを言っていると、
「メテオライト」が頭上から落ちてきた。
「や、やめてください、大魔王様!!、だいまお…。」
魔王の声むなしく「メテオライト」が衝突したことにより、
跡形もなく消滅した魔王。
ヒデトたちはパーフェクトキューブ内に入っており、全くの無傷であった。
本当に、「パーフェクトキューブ」はチートものである…。
ふ~~!
終わったな。
とりあえず、魔王を「リバイブ」する。
無詠唱で「リバイブ」をするヒデト。
すると、消滅した魔王が、また生成した…。
「ここは…、わ、私は『メテオライト』で消滅して…。」
「気が付いたか、魔王よ。これでお前を罪の償いからは解放しようと思うが、
その前に一つ約束をしてもらおう。
『人属に何人たりとも危害を加えてはならない』
これを守れるならば私は、魔王、お前を開放する。
これを守れなければ先ほどと同じようにお前を消滅させる。
どうだ、守れるか?
守っているかどうかは一応言っておくが、すぐに俺にわかるからな。
お前だけで人属に復習しようとせず周りの魔族やモンスターを使うかもしれないが、
俺には、先ほど見せた魔法よりもっと極力な魔法を使うことができる。
この大陸「アサドリム」を破壊することだってできる。
どうだ、守れるか?」
日頃、自信をつけさせてもらうときにアドバイザーに言ってもらう言葉の受け売りを、
そのまま伝えたのだが、果たして通用するだろうか…。
「め、滅相もございません。
私は一度死んだ身。
大魔王様に誠心誠意尽くすと決めております。
先ほどおっしゃった『アサドリム』を破壊できるという言葉を聞き、
なおさら恐怖であなた様を敵に回そうとは思いません。
しかし、失礼ですが、なぜ大魔王様はそれほどまでに人属をかばうのでしょうか。」
「それは、俺が人属だからだ。
大魔王というものは特別ですべての種族からなることができる。
今回はそれでたまたま人属である俺が鳴ったということらしい。
そういううことで人属に手出しをしようものなら俺が許さん。
いいな?」
「御意。お心遣い感謝いたします。
大魔王様に生かされた命、大魔王様のために誠心誠意使わせていただきます。」
よくもまあ、こんなに簡単に寝返ったものである。
まあ、こんなに圧倒的な力を前にすれば、そんな気は起きないというのも頷けるな。
万が一の時を考えて、人属に対する怒り・憎しみの感情を、
人属に対する愛情・慈しみへと変更しよう。
そしてこの手のタイプは近くで見ていた方がよさそうだな…。
精神系魔法「記憶改変」を使い魔王の記憶を変更していく…。
無事に終わった。
「して、魔王、お前の名前はあるのか?」
「いえ、ありません、大魔王様。」
「魔王、ではお前は今日から『サマエル』と名乗れ。
あと、俺への呼称も、
正式な場ではご党首、使えている際はヒデト様、魔族関係であればマスタ―にしろ。
お前は、これから俺の側付きとして働いてもらう。」
「しっかりとこれから行くリン・ロワイアムの執事セバスチャンに
仕え方を学ぶのだぞ?よいな?」
「はは、かしこまりました。ヒデト様。」
「じゃあ、おれはもう普通の話し方に戻る。
これが普通な状態だと思ってくれサマエル!」
「は、はい。かしこまりました。」
「よかった!途中どうなるかと思ったけど、流石ヒデトね!
あ、私はミク、ヒデトの愛人の一人よ。
「は、ヒデト様の愛人様でいらっしゃいますね。
これからよろしくお願いいたします。
失礼の内容にお仕えする所存です。」
「よろしく!!」
「私は、アキ。私もヒデト様の愛人の一人よ。
これからよろしくお願いします!」
「は、よろしくお願いいたします。
ヒデト様は愛人を二人もお持ちなのですか?」
サマエルが聞いてくる。
「そうよ、ヒデトの目標は私たち愛人をどんどん増やしてハーレムを作ることなんだから。
でしょ??」
ミクが聞いてくる…。
「ま、まあな…。でも、俺はハーレムの誰か一人を特別扱いするつもりじゃない。
みんなそれぞれに思ってるし、お互いにすきではない人とはそうなりたいとは思ってないよ。」
「わかってます。私とミクさんへの態度を見ても変わりませんから、
少しミクさんには悪いと思いますけど…。」
「そうよ。ヒデト!
もう少し私をひいきしていいと思うわ(笑)」
ははっ、言っとけ。
「よし、無事に一件落着したことだし、リンを探しに行くぞ!」
「うん!」
「はい!」
「御意」
数が多い方がいいだろうし、シロにも手伝ってもらう。
「シロ!出てきてくれるか?」
ヒデトの影から出現するシロ。
普段は普段は影の中で暮らしているのであった。
どうやら影の中というのは快適らしく、
ヒデトの影だからなおさら快適らしい。
「話は聞いております。私もお力になれればと思います!」
「話が早くて助かるよ。じゃあ、リンを助けに行こう!!」
そう言って、リンを探しに行く一行。
はたして、リンは無事なのか、先に捜索に言っていたギルバート達はどうなっているのか。