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第15話

面会とハンバーグ

リンの別荘に来たヒデトたち、

改めてリンたちと面会するのであった。


長いテーブルに上座からヒデトとリンが向かい合う形で座っていく。

来客ということで、上座側から見た際の左の上座にヒデトが座ることになり、

その左にミク、アキと座る。

対するリン側は、上座側から見た際の右側に座り、

上座からリン、ギルバート、その他の家来と続いていく。

最後にはリンの執事のセバスチャンの姿も見える。

リン側は総勢7人もいる。

と、ここで口火を切ってリンが話し始める。


「改めて紹介するわ。

私が、ランドハート王国第二王女リン・ロワイアムよ。

私の右隣にいるのが、ラングハート王国三星、ギルバート・オングストン。」


王女に紹介されて椅子から立ち深くお辞儀するギルバート。

その姿は将軍にふさわしいものと思わされる。


「その隣から順に、ギルバートの部下の

ロイアル・タフマン、ビトレイ・スケアード、ワイズ・スマート、カイル・トレーダー。


四人とも素早く椅子から立つと深くお辞儀する。

ギルバートに鍛えてあるのだろう。

礼儀正しい。


「あとは、先ほどあったと思うけど執事のセバスチャン・エミッサリーよ」


こちらも椅子から立ってお辞儀をする。

ギルバートら兵士と違った、

親近感のわく雰囲気を(かも)し出している。


「これでこちらは全員紹介したと思う、ヒデト!」


リンが一通り、自分たちの方を紹介したため、ヒデトの方も紹介する。


「改めて、俺がヒデト・ヨコヤマ。

隣が、俺の愛人のミク・ヨコヤマ、と、アキ・ヨコヤマだ。」


ヒデトが紹介するのに合わせてお辞儀をする二人。


「これからよろしく頼む。」


ヒデトも頭を下げる。


「ヒデトたちが頭を下げる必要なんてないんだよ!!

私たちが助けてもらってお礼をしようとしてるんだから…。」


リンはそういうと、使いの者に何やらたくさんのものを持ってこさせた。

机の上に白い布で包まれた何かが置かれる。


「はい!報酬!

300モルワルよ。

少ないけど、気持ちだと思って受け取って!」


白い布がほどかれると、白金貨300枚が顔を出した。


マジか…。

これが少ないだと…?

白金貨1枚だけでも1モルワルという大金なのに、

それが三百枚?


1モルワル=100万ガル≒100万円だったから、

300枚だと…、300モルワルは…、3億ガル。

日本円に換算すると3憶円だ。


三億円???????


これで少ないとは金銭感覚がおかしいのではないのだろうか…。


まぁ、ここだけの話EXスキル「智慧」の創造で、お金には困らないのだが…。



「あ、ありがとう。

俺には少ないなんて、これは大金だよ…。

こんなにものお金を受け取るなんてできないよ。

恐れ多いなぁ…。」


ヒデトがリンに語り掛ける。


「いったでしょ?

遠慮しなくていいって!

はい、受け取った受け取った!!」


と、ここでリンがヒデトにお金を押し付けると、

ヒデトが抵抗するのを避けるため、別の話に振る。


「ところで、ヒデトたちは旅人って言ってたよね。

今どこに泊まってたの?アイネの町?」


「そうだよ。アイネの町だ。

実はこのミクとアキは、アイネの街にいたんだ。

俺が、アイネの街について仲良くなって、愛人として旅に連れていくことになったんだ。」


「なるほど。

雰囲気が愛人同士のそれだと思っていたのですがそうでしたか。

アイネの町出身ということは、

先におこったスタンピードを討伐したのは貴公方でしょうか?

先ほど助けていただいた時も、旅人とは思えない身のこなし、

私も剣を交えてみないとわかりませぬがおそらく貴公にはかないますまい…。」


ギルバートが口をはさむ。


「いや、あれは突如生じた砂嵐が運よくモンスターを蹴散らしてくれたんだよ。

神様がいるのかと思ったよ。」


ヒデトは自分がしたことがわからないよう、

あくまでも自分がした(てい)を装って受け答えた。



「そうですか。

私はてっきり貴公が本気を出して、

砂嵐を発生させてモンスターを倒したのだと思ったのですが…。

勘違いでしたか…。

まあ、ギルドからの文にはきちんとそのような内容が書かれていましたし、

こちらからの詮索もよしましょう。」


鋭い指摘をしてくるギルバートであったが、何とか身を引いてくれて内心安心した。

ヒデトたちはあくまでも自然に砂嵐が起こったという(てい)を貫いてきたため、

少しひやりとした。

さすがに、場が悪くなってきたので話を変える。


「そういえば、リン。

リンはどうして別荘にいるんだ?

それも三星のギルバートを連れて。」


「それは…、

実はここ最近ここらへんで不審な動きがあったと王都に文が届いたの。

なんか、夜に魔物が飛んでいるものを見たっていう人が続出してるのよ。

それで調査に来たの。

私の休暇もかねてね…。足を引っ張っているけど。」



そうだったのか。

そういえば、夜中に「月見荘」の部屋の窓から空を飛んでいる何かを見たな。

あの時はドラゴンかと思ったが、もしかすると違ったかもしれないな…。

脳内で思い出すヒデト。


「そうだったのか。

いや、少し王都にいるだろう王女様が、護衛に三星の一人を連れているなんて、

いくらなんでもおかしいと思ったんだ。

少し詮索するようになってしまい申し訳なかった。」


「いいのいいの。

それよりさっさとご飯食べましょう!

セバスチャン料理をお願いするわ。」


「はい、かしこまりました。姫様。」


セバスチャンが料理を運ぶため部屋を出ていく。



しばらく話していると、料理をもって帰ってきた。


「こちらが、マーリンカウの焼き物でございます。

お熱いので気を付けてお食べください。」



そういってセバスチャンが料理をテーブルに出してくれる。

早速、三人で手を合わせて


「いただきます」


といって食べ始める。

リンたちは、少しどうしたんだろうといった表情を見せているが、

ミクとアキも同様にいただきますを言って食べる。

この世界「アナザー」に来て最初にミクやアキと食べた食事でもそうだった。


「いただきます」と言うと、二人はきょとんとしたものだ。

いただきますは、俺が住んでたところの文化で、

食事に携わってくれた人への感謝、食材への感謝を言葉として表すものと伝えたことが

まだ記憶に新しい。

この世界「アナザー」にはどうやら「いただきます」という文化はないらしい。

同じように「ご馳走様」もない。

この世界「アナザー」に来たヒデトは、良くも悪くもこの行為で

「月見荘」の食堂では注目されていた。


同じように今度はヒデトたち三人が、注目されている。

リンが、


「なんで、今その言葉を言ったんだ?」


と聞いてくる。

その後、なぜそうするのかを説明するヒデト。

リンたちは、

なるほど

っと、感心していた。


そんな話をしながらご飯を食べていたのだが、

ついに、ヒデトのうっぷんが爆発する。

「月見荘」ではあまりこういった焼き物系でも、

魚系がほとんどで、出るにしても朝食でしか肉が出なかったから気にしていなかったが

この世界の肉は、硬い。そして肉に手を加える料理は基本おいしくない。

ワイルドボアのベーコンポテトはおいしいが…。


ここで、気づかれないように無詠唱で肉に最良の処置を施し、

ワイルドボアーの焼き物が、ステーキへと変貌する。


誰にも気づかれていないと思ったが、

三星のギルバート、そして

ヒデトの近くにいたセバスチャンは逃さなかった。


「貴公、今肉に何か施したな?

何をしたのだ…。」


ギルバートが口にする。


「そうです。私も見ていました。」


セバスチャンも口を開く。


「あー、えーと、その、焼き物をステーキにしたんだ…。

あんまり言いたくないんだが、俺の歯には少々このメニューが硬くてな…。

処置をしてステーキにしたんだ…。」


「しょ、処置ですか…。ステーキ?

今ステーキとおっしゃいましたか??」


セバスチャンが目を大きくして少し興奮した状態でこちらに聞いてくる。


「ああ、そうだが…。」


「ステーキというのは、幻の肉料理と言われている、神が食すものですぞ。

「伝説の献立」と言われる、王都にある神話級の本にしか書かれないものですぞ…。

それになるように、この焼き物を作り替えたというのですか?」


「私もそれ知ってるわ!ステーキって今までに食べたこと一度もない超レアな食材って聞いていたわ。それを作るなんて、ヒデトって…、ほんと何者?」


リンも聞いてくる。


「ま、待て。

この焼き物ってのはな、ただ焼いただけで誰でも作れるだろ?

そうじゃなくて、きちんとした工程を踏んで作ると誰でもステーキを作ることができるんだ。

俺は、その工程を少しいろいろとしてステーキを作っただけだ。

ステーキの作り方ならおれが教えてやる。

ついでにハンバーグも教えるよ。」


「は、ハンバーグ!!!?!?!?

それも神話級の本にしか載っていない神の食すとされるメニューですぞ。

ぜひ、私たちに作り方を教えてください。」


セバスチャンが土下座をして頼んでくる。


「や、やめてくれ。

お、教えるから…。」


現実世界では一人暮らしの24歳の大学院生であったヒデト。

冬休みの帰省で咲季にご飯を作ってもらっていたが、実際にもちろん作ることができる。

ということで、ステーキを食べ終わったため厨房にメニューを教えに行くヒデト。

ミクとアキ、そしてリンがヒデトの後についていく。

リンが行くということで、ギルバートなどのその他部下もその流れでついてきた。



「…、とまあこんな感じだ…。」


ヒデトが人数分のステーキとハンバーグをそれぞれ焼き終え、

各種盛り付けも終了し、改めてテーブルに食事を並び終えて食べ始める一行。

作ることはできたが、ここに至るまでには少々紆余曲折があった。




厨房につくと、幸いにもマーリンカウ(一応牛である)、

そしてワイルドボア(一応猪でもあるが豚でもある)の肉が余っており、

この世界では高級なものとされる調味料各種もあったため食材には困らなかった。

しかし、ステーキはともかく、

ハンバーグを作るためのミンチ肉(ひき肉)は、

現実世界では加工されたものを使っていたヒデト。

どうしようと悩む。

そこで、登場したのがユニークスキル「異世界の文明」を使用する。

SPを消費することによって、ミンチ肉を製造する機械を買うヒデト。

厨房が思ったよりも広くスペースがあったこともあり、設置する。

氷冷蔵庫(現在の冷蔵庫の前身)が隣にあったが、

それより少し高さは低いが横が長いぐらいの大きさだった。

ヒデトは、意外と小さくてコスパのいいものを設置できたと我ながら思ったのだった。


「え!?!?!今どこから…。」


そういう声が周囲から漏れるが気にしない。

マーリンカウとワイルドボアーの肉を入れて、ミンチ肉(ひき肉)を作っていく。

あとは、決められた工程通りの作業を淡々とこなし完成といったところだ。

食材には、あとヒデトが最も欲しかったものがあった。

それは米である。

この世界ではお釜で米を炊くことが一般的らしく、

釜で炊いた白ご飯を作った。





こうして現在に至る。


「うん、おいしいな。」


我ながらおいしいと思う。

久しぶりにご飯を食べたからか、食欲が進み、すぐに食べ終わってしまった。

そういえば、ほかのみんなの反応を聞きたかったので、周りを見てみると、

ミクやアキも含めて、リンたちみんなが涙を流して食べているではないか。


まずい。アナザーの住人には合わないものであったか…。

と、内心思ったヒデトであったが、ここでリンが声を出す。


「死んじゃう。

おいしすぎて死んじゃう。

体がとろけちゃいそう…。」


お…!やった!

内心、そんな感じだったヒデトだが、

アキが口を開く。


「ヒデトさん。すいません。

私の宿のおいしくない料理を食べていただいて…。」


と月見荘のおいしかったご飯を誤ってきた。

これにはヒデトもびっくりしたが、すぐに声をかける。


「そんなことはないよ。アキ!

アキのうちのごはんもこれに負けないぐらいおいしかったよ!

ほんとさ!

アキが作ってくれたベーコンポテト、

あれもおいしかったし。

キノコのシチューもおいしかった!」


ほんとのことを言ったヒデト。

なぜならアキの家、すなわち月見荘での食事は本当においしかった。

異世界とは思えない、まるでお母さんの作るご飯のような感じだった。

おそらくアキは現実世界でいうところの高級料理店の味を堪能しているから、

思わず謝礼が出てしまったのだろう。


「本当ですか…?よかったです。


ステーキとハンバーグ、おいしいです!

私はヒデトさんの食事を担当させていただく身です。

これから、たくさんヒデトさんの知っている食事を教えてください!」


気を取り直して笑顔になるアキ。

可愛い。

思わず、抱きしめたくなるが人前なので流石にやめる…。


そんなこんなで、ヒデトは、自分以外の部屋にいる一同が泣いたままであり、

しばらく時間がたち、居心地の悪い思いをしたのであった。

少し長くなってしまいました。

R-18そしてR-18ではない版の方もよろしくお願いします。

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