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第13話

初制覇と親近感

ギルバートの森のダンジョンの最下層の9階層へ降りたヒデトたち一行。

階段が終わると、すぐ前にボス部屋の扉が見える。

見るからに、ああ、ボス部屋なのねぇ…、という雰囲気を漂わせている。


その雰囲気は、ヒデトたちになにかと圧迫感を与えて、緊張感を持たせる。


前にシロからダンジョンコアを持つボスが、

Sランクモンスターのサイクロプスだと聞いてそのための対抗策も練ってきたというのに…。


やはり緊張というのは異世界へ来てもなくならないものらしい。


ここで神の一声が来る。

これが来ると、ヒデトは絶対に負けることはないと改めて思ったりする。。


「ご主人様、大丈夫です。

パーフェクトキューブがあれば、たとえどんな凶暴なモンスターであっても

まずミク様とアキ様に危害を加えることはできません。

扉を開ける前からパーフェクトキューブをしておくと、

扉が開いた直後の攻撃も安心して対応することができます!


あと、何度も言っておりますが、

ヒデト様はこのダンジョンを壊すほどの力をすでに持っておられます。


それ以外にも、最終手段として、EXスキル「智慧」の解体を使うことで、

一瞬にして殺すことが可能です。


ですので、安心してお二人を守りつつ、二人に討伐してもらいましょう!」


アドバイザーがそう口にする。

いやしかし、かわいいメイドさんを彷彿させる声である。

もう定番化してきただろうか。

一度実体化していただきたいものだ。


とそんなことを考えていると、ミクとアキの準備が整ったようだった。


「さあ、ボス討伐頑張ろう!

安心して剣技や魔法を打ち込んでいいぞ!」


ヒデトが二人に聞かせる。


「了解です!」


「わかったわ!」


アキとミクがそろって返事をすると、

ヒデトが「パーフェクトキューブ」を使用する。

助っ人としてシロにも参加してもらおう。

シロに巨大化してもらい、戦いに参加してもらう。


ゴゴゴゴゴ…

ギギギギギ…


重々しい扉がヒデトによって開けられていく。

頑丈な扉だが思ったよりヒデトにとっては軽かったようだ…。


突如索敵モードが反応し、地図に3つのシロの時よりかは濃くない赤いアイコンが示される。

巨大なシルエットが肉眼でも3つ確認できた。


ヒデトが扉をすべて開け終わると、部屋の明かりが照らされ、

そのボスの容姿が明らかとなった。


三体のサイクロプス。

顔が一つ目であり、手には利き手に棍棒、もう片方に盾を持った武装したモンスタだった。

詳細を確認すると、シンクロして攻撃をしてくると記載されている。


少し手ごわいかもしれないな…。

ヒデトはそう思ったが、

真剣な表情で、ミクとアキはキューブ内からすぐさま剣技と魔法を打ち始める。


「スラッシュ!!!」


「アイスニードル!!」


二人とも、ヒデトがシルバーウルフとの戦いに見せた動きを応用し

キューブ内で最も最適な動きから剣技・魔法を放つ。

放たれた、幾重もの氷の針いや先端のとがった塊と、

地面を切りながら進む剣の太い斬撃が、

サイクロプス二体をとらえる。


「あ…れ…。」


「ザシュ↗!!!

ダダダダダダダダダダダダダダダン!!」


Sランクモンスター、サイクロプス二体、あえなく撃沈。


一体は、体を真ん中から建てに真っ二つに切られ、

周囲になにかが飛び散ったかと思うと、跡形もなく消失。


もう一体は、とがった氷の塊が体のあちこちに突き刺さり、

全身が氷の塊のようになってしまった状態になり、これも消失した。


通常モンスターというのは、倒すと死骸が残るものなのだが、二体とも消失してしまった。

ヒデトが先ほど声を上げたのもそのためである。

ボス戦だからだろうか…。

なにわともあれ、あと一体になったサイクロプス。


ここで、ヒデトが木の棒ではなく、通常の剣をストレージから取り出す。

アイネの街の探索中にアルビスから進められて買っていたのであった。

二人とは別のパーフェクトキューブを作り、

キューブ内でのミクやアキへの巻き込みを防ぐと、

剣を構えて、サイクロプスのいる空間を切るイメージで剣を振る。


「あ、いやな予感…。」


突如イメージしたサイクロプス付近の空間に亀裂が入る。

それだけではない、斬撃を飛ばした空間にも亀裂が入っていた。


「あ、やばいやつだこれ…。」


が、ヒデトが気づいて時にはもう遅い…。


切られた空間から、

徐々にダンジョンを形作っていくものがその異空間に吸い込まれていく。

パーフェクトキューブをしているヒデトたちもその例外ではない…。

少しずつ、亀裂に引き寄せられていく。


剣技「亜空切断」

空間そのものを切り、

それによってできる亜空間といわれる異空間に、

()()()()()()切った空間にあったあらゆるものを吸い込み、消失させる。


空間を切るイメージをしたことにより、

EX「智慧」の創造が剣技「亜空切断」を作ってしまったらしい。


しかし、ウサギ討伐の時もそうであったが、

ヒデトは「大剣聖」のジョブを所持していることでか、

剣を持つと無意識に斬撃も生じさせてしまう。

その斬撃によって、ヒデトたちの近くの空間も「亜空切断」され、

今の当人が吸い込まれようとした状況が生まれたのだった。


急いで、空間を閉じようと、空間を対象に

「リストア―」を使用する。

しかし、自分の方から「リストア―」を使用しても

その魔法自体が亜空間吸収される。


ヒデトたちと逆側にいたシロの方からではどうだろうか…。


亜空切断はその特徴上、切った側から切った空間のあらゆるものを吸い込む。

切ってない空間、すなわち逆側から魔法を発動すれば、

魔法は吸収されないのではないだろうか…。


試しに、シロを通して、対象を切られた空間にし、

ヒデトとは逆側から「リストア―」を使用する。


すると、切断されていた空間が治った。

シロのお手柄である。


「よくやったシロ!」


「ありがたき幸せ。」


まさに、今回斬撃によって自分にそした仲間に被害を加えそうにするという、

「自爆」という言葉にふさわしい行為を、無事に成功させたヒデト。

あとになってこの時の話を聞いたのだが、

ミクとアキはパーフェクトキューブごと吸い込まれつつあり、

サイクロプスよりも本当に怖いのはヒデトなのではないかと思ったという。



サイクロプスが異空間へ吸い込まれ消失すると、

ダンジョンコアと魔石が地面にどこからともなく出てきて転がった。

消失した場合でも、待っておけば魔石が出てくるらしい。

ステータスも「吸収」を使用した時よりも上昇率が低いが、それなりに上昇していた。


ヒデトがコアと魔石を拾う。


前に話した通り、ダンジョンはダンジョンコアが無くなると死ぬ、

つまりダンジョンは制覇される。


ここに、ダンジョン制覇が達成されたのである!


さて、これからどうしようかな…。

いちいち上がっていくのもめんどくさい。


何やらヒデトが考えている。

先ほど自分がしたことによってMr「自爆」の異名を買ったというのに…。

また、自爆する気なのだろうか。



ヒデトの思考を追っていく。

パーフェクトキューブ内に入っておけば、二人は安全だし、

キューブは中の物体ごと移動させることもできる…。

ということは、このままダンジョンを崩壊させて、

俺は空飛んで、キューブは上空へ飛ばさせて、

このダンジョンの跡地に、森の土と同等の地層を入れとけばいいんじゃね?


いや、空間魔法の「ワープ」を習得したほうがいいか。

「ワープ」なら一度行ったことのある場所なら簡単に行き来ができる、

と万物検索には記載されていた。


よし!


ヒデトは、空間魔法「ワープ」をEXスキル「創造」で作る。

自分と二人のキューブをそれぞれ解き、

まだ「亜空切断」の衝撃を真に受けて唖然とした二人に、

「ワープ」の転移ゲートをくぐってもらう。

ゲートの先をダンジョンの入り口にしたので、

無事ダンジョンから帰ってくることに成功した。


コアがダンジョン外に出たことで、崩壊を始めるダンジョン。

ダンジョンは、下の改装から押し上げられるように崩壊するため、

待っているとダンジョン内にあったすべての魔素やお宝、

ダンジョン内にいたモンスターが死骸となって地上へあがってくる。


最初の選択肢にして、土層入れなくてよかった…。

てか、巻き込まれた探索者の人とかいないよな…。

幸い、いなかったようだ。


ダンジョンコアを外に持っていくとあんなことになるのか、

これから気を付けないとな…。


こうして完全にダンジョンを制覇したのであった。




いつもの手際でEXスキル「吸収」で吸収などをしていると、

それまでは心ここにあらずの状態であった二人に、意識が戻ったようであった。


「え、ここどこ?

そ、外にいるよ!!?」


「わ、私たち亜空間に巻き込まれそうになって…。」


ミクとアキが話はじめる。


「おー、気が付いたか。

無事ダンジョン制覇したぞ、ほら、今モンスターを「解体」し終って「吸収」してるところだ。

多かった魔素も、「威圧」で圧力を加えて濃縮して魔石に換えてるよ。」


「おーじゃないわよ。しっかり説明してもらうんだから…。」


「そうです、こっちは危ない目にあって…。ヒデトさんもでしたけど…」


どうやらミクとアキはヒデトに対して少し怒っているようである。

事の成り行きを説明したヒデト、


「すまなかった。

これからは周りのことももっと気を付けるよ。

ダンジョン制覇できたことだし許してくれないか??」


と、ミクとアキに素直に謝る。


「なんなのよ~、もう。

これからは気を付けてね!

でも、ヒデトが無事でよかった!

私たちはまだ亀裂に遠かったからよかったけど、

ヒデトめっちゃ近くて心配したんだから。」


目に光るものを見せながら、ヒデトの服の腕の部分を握ってくるミク。



「ご、ごめん。

そんな風に思ってると考えてなかったから…。

これからは本当に気を付ける。」


そう言いながらヒデトはミクに抱き着く。


「うん!」


ミクが目をこすって、笑顔で返事をした。

少し泣いた後の笑顔ほどいいものは無いのではないだろうか…。


アキも、(うなず)いて許してくれた。

その眼にはミクと同じように涙が見られる。

アキもヒデトの背中側に回り、後ろから抱き着いてきた。



二人とも、怖かったのだろうか。

自分も怖かっただろうに、俺が心配だったなんて…。


ヒデトは、

改めてチートの脅威というものを肌で感じるとともに、

二人からの咲季に似た親近感を感じたのだった。



無事にダンジョン制覇を成し遂げ、少し休憩している一行。

ヒデトは、スタンピードがなぜ起こったのかについて、アドバイザーに聞いてみる。


「仮説ですが、今制覇したこのダンジョン内には、

ダンジョンとは関係ないシルバーウルフの群れとシロが暮らしていました。

このダンジョンはボス以外は、

シルバーウルフに手出しできるほど強くはないモンスターですから、

そのモンスターたちがシルバーウルフを怖がり、ダンジョン外へ出た可能性があります。」


なるほど。

シロから聞いていた話とおおかた一致するな。


シロは先日、(おさ)が無くなったシルバーウルフの為、

(おさ)替わりとしてシルバーウルフの面倒を見るため、

手ごろなダンジョンであったここに入った、と言っていた。


時系列的にもスタンピードが起きたときと一致する。


謎が一つ解け、

二人の成長、スタンピードの原因調査、自身の剣技・魔法習得、

すべての目的が終わり、ヒデトはホット安堵感を抱いたのであった。



時間は、昼過ぎと少し夜まで時間があるので、ミクやアキと相談し、

ヒデトは久しぶりとなる「美しい草原」にピクニックに出かけることにした。

といっても、「ワープ」を使って三秒で到着。




異世界に始めてやってきた場所についた。

ここの景色がやはり異世界の中では今まで見た中では一番だろうと思う。

セーフティエリアもよかったが…。青〇のことが思い出され、

すこしこちらの方が上と感じる。



草原に寝っ転がるヒデト、

きれいな景色を見ると、

向こうの世界で別れてきてしまった咲季のことが心配になる。

向こうではきちんとやっているのか、と。

クリパもらいたかったし、クリパを送りたかった。

正直会いたい気持ちも大いにある。

創造神に頼んで、手紙だけでも渡せないかと頼もうとも思った。


しかし、ヒデトは咲季を思うことが、

今の「アナザー」での生活を営む自分自身への甘えだと同時に気づいてもいた。

咲季がいた向こうでの生活を想像することで、

親近感のない生活を無意識のうちに逃避していたのだろう。


しかし、今は両脇にいてくれる二人がいる。

一緒にいるだけで、安心感を感じさせてくれる。

親近感を感じさせてくれる。


改めて、二人を大切にしようと英人(・・)はそう思ったのだった。





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