第11話
神獣“白虎”
無事にお手本プレーとしてシルバーウルフの群れを倒したヒデト。
パーフェクトキューブを解き、二人に大丈夫だと告げる。
「ありがと、ヒデトおかげで助かった。
私がシルバーウルフの索敵内に入ってしまったばっかりに…」
ミクが少し泣きそうになっていた。
「大丈夫だミク!、どんなことがあっても俺が守るから。
ただ、できれば俺の前から出ないでくれると助かるよ!」
ヒデトは賢者スマイルでミクを気遣い、できる男を演じる。
演じとんのかーい。
「でも、ヒデトさんすごすぎます。
自分たちの使っている魔法を使って倒してくれるなんて。
ヒデトさんという自分たちのお手本がいるので、すぐに強くなれそうです!」
アキがそう口にする。
実は、この言葉は的を射ているのである。
この二人につけていたユニークスキルを思い出してほしい。
「無限記憶・定着力」である。
効果は、無限にあらゆることを記憶し、それをすぐに定着させるというもの。
つまり、先ほどヒデトが見せたお手本プレーを二人が記憶し定着させることで、
同じように自分のステータス内であれば、再現することが可能になるのである。
だからこそ、二人のステータスに合わせてヒデトは戦ったのである。
こうして、ミクとアキはそれぞれ「スラッシュ」と「アイスニードル」の戦い方を
完璧にマスターしたのであった。
だがしかし、ここでヒデトは気づいた。
群れがいるということは、それをまとめる長がいるということである。
先ほど倒した群れのシルバーウルフはどれもステータスが同じぐらいであった。
同じステータスの者が群れを率いれるはずがない…、と。
突如、索敵モードの警戒音が鳴り響く。
すぐさま、ヒデトは自分を含め、二人にパーフェクトキューブを放つ。
地図を見ると、今までとは比較にならないほど濃く赤く光ったアイコンが表示されている。
どうやら、先ほどのAランクモンスター、シルバーウルフの群れの長というだけではないらしい。
どうして今までこれに気づかなかったのかと思うヒデト。
やばい、このアイコンの表示の仕方は絶対にSSSランクモンスター以上だ…。
その詳細を確認しようにも、表示されていない!?!?!?
EXスキル「智慧」の「解析鑑定」を含めた索敵モード、
それが反応しないということは、人知を超えた存在…。
アドバイザーに詳細を聞いてみるも、不明だという。
ついに、ライトの範囲外にそのシルエットが映し出される。
ヒデトは、この世界「アナザー」にきて初めての難所を迎えていた。
「なんで、索敵に引っかからなかった。もしかして神か…」
脳内で激しく思考を回していく。
EXスキル「智慧」の思考加速、この効果によりあらゆる可能性を引き出したヒデト。
あ!!
ヒデトの脳裏にふと何かがよぎった。
「神獣」
もしかすると、神獣かもしれない…。
万物検索の項目欄で一度は見たことのある、
モンスターの中で最強と言われ、神のペットとして神の力を行使できる。
まだ一人だけであったならなんとかなったかもしれないが、後ろにはミクとアキがいる。
このまま二人をかばい切った状態で戦闘をするのは得策ではない…。
だが、どうする…。
なるようにやるしかない!!
「二人とも絶対にキューブの中に入ってるんだぞ!!」
ミクとアキは、ヒデトの太い声を聴いた。
二人は、自分たちに対してこんなに太い声を上げたヒデトは見たことがなく、
自分たちに、いやヒデトを含めてパーフェクトキューブを使用していることを考えると、
今までとは比べ物にならないほどのモンスターが来ていることをすぐさま判断した。
「わかった。頑張ってヒデト!」
「ヒデト様、お気をつけて!」
二人がヒデトに叫ぶ。
すると、「ライト」の範囲内にその巨大な姿を現した。
先ほどのシルバーウルフと同じウルフ…、いやこれは白い虎だ。
ウルフではなかった…。
まさかウルフではないが、この白い虎が先ほどのシルバーウルフの長なのか??
すぐさまEXスキル「智慧」の解析鑑定を行使しもう一度ステータスを確認する。
すると、ようやく判明した。近くだとさすがに使うことができるらしい。
・氏名:白虎 ・LV:主人に依存
・種族:神獣 ・状態:主人なし、元シルバーウルフの長
・スキル 「創造神の加護」「索敵除去」???
詳細
モンスターではあるが、その存在は神のペットとして降臨している。
神獣のうち西を任されている。他に東に青龍、南に白虎、北に玄武、中央に麒麟がいる。
主に、長を失ったモンスターの長替わりをしたりして、
人属らにモンスターが殺されるまでの世話をしている。
世界の均衡を保つ存在。
出た。やはり神獣、その中でも西を司る白虎だ…。
スキル「索敵除去」のおかげで索敵モードの詳細には表示されなかったのか…。
だが、それよりももっと目を見張るものがあった。
スキルに「創造神の加護」とあったのである。
ヒデトも同じスキル持ちなので、
「これはもしかすると戦わなくて済むのではないか?」
と、内心少し期待していたヒデトであったが、
もちろん期待は裏切られ、突撃して襲ってきた。
しかしこちらはパーフェクトキューブ。
いくら神獣とはいえ、全く効かないだけでなく、すべてが跳ね返る。
自分の突撃の力をもろに受けて地面にうずくまる白虎。
そして、そこに息を合わせてアキとヒデトが「アイスニードル」を
キューブ内から打ち込んだことによって
通常の威力の10倍のアイスニードルが撃ち込まれ、あえなく撃沈。
瀕死状態となってしまった。
しかし、ここで突如ヒデトたちの目の前が光りだす…。
すると、何と創造神アテネが現れたのであった。
そして、アテネが話し出す。
「ヒデトくん。久しぶり!
元気にしてたかな?
これは私本人ではないけど、精神体として少々この世界に降りてきているわ。
ヒデト君は知っているかもしれないけど、この子私のペットなのよ…。
ただ、長がいなくなってしまったシルバーウルフの長替わりをしててね、
そのシルバーウルフをあなたがばっさばっさやってしまったから、
怒って出てきちゃったんだけど、あなたにやられたみたいね(笑)
相変わらず、チートをうまく使いこなせてるようでよかったわ!
この子にも今しがたすべての内容を伝えてあるわ。よかったら仲直りしてほしいの。
この子、私とは仲がいいけど、友達がいなくてね…。できれば友達、いや主人になってほしいのよ…。
この大きさや容姿はもちろんこの子たちが自由自在に変更できるし、
できれば他の5匹も頼みたいのだけど…できるかしら?」
「久しぶりって、びっくりしたなぁ。
ありがとな、アテネのおかげで楽しくこの世界で過ごさせてもらってるよ。
神獣の件はわかった。アテネの神獣と従魔契約していけばいいんだよな!?
もちろんやらせてもらうよ!
こいつらえげつないほど強いし…(笑)
これからもよろしく頼む!」
ヒデトが口にする。咲季に話しているみたいに話してよいと言われていたので、
あまり敬わない感じで話す。
「よかったわー!これでペットちゃんたちが楽しく過ごせるわ!
ありがとう、ヒデト!これからも大変だろうけど頑張ってね!
ハーレム大事にするのよ!じゃね!」
というと、アテネは何もなかったかのように消えた。
ミクやアキは石造のように固まっているので、白虎が突撃した衝撃で失神したようだ。
パーフェクトキューブを解き、
「リストア―」を白虎に使用するヒデト。
すると、白虎がしゃべった。
「申し訳ありません。ヒデト様。
ご無礼をお詫びいたします。
このように襲ってしまって自業自得で怪我をしたにもかかわらず
全治させていただきありがとうございます。
実は、ヒデト様のお力を拝見し、私から従魔契約を結んでいただきたいのです。
私白虎こと神獣は、主人の力に依存して強くなります。
そのため、主人の力が強ければ強いほど私も強くなるのです。
私がヒデト様のお力によって強くなれば、ヒデト様のお役に立つことができます。
どうか、従魔契約をしていただけないでしょうか?」
「うん、契約を結ぼう!
俺としても、神獣と契約できてうれしいよ!
ただし、ちゃんと言うこと聞いてもらうよ!
それ以外では自由にしていいよ!
どうかな?」
「ありがとうございます。ぜひ契約してください。
私の頭にヒデト様の手を置いていただき、
スキル「召喚」を使用いただくと、従魔契約が完了いたします!」
「わかった。ちょっと待ってくれ。」
ヒデトは、ステータス画面を開き、ダンジョン内で倒したモンスターによって溜まっていたSPを使って
スキル「召喚LV1/5」を「召喚LV5/5」にすると、
白虎の頭に手を置き、従魔契約を行った。
そのとき、あたりを照らす光で覆われる。
ついに、白虎が仲間になったのだった。
改めてステータスを確認すると、少し変わっていた。
・氏名:なし ・LV:863(ヒデト様に依存)
・種族:神獣(白虎) ・状態:ヒデト様の従魔
・基本ステータス
オールSSS(モンスターのステータスはアルファベット表記)
・スキル
〇EX「創造神の加護」「主人の加護」「索敵除去」
基本ステータスはすべてSSSとモンスターのステータス中最強を取り、
EXスキル「主人の加護」は、主人によって魔法を出すことができるというものだ。
主人が間接的に白虎から放つことができるというものである。
これは、なにかと便利なスキルだろう。
氏名の欄が先ほどは白虎になっていたが、なし、に変更になっている。
これは、もしかすると従魔にした効果だろうか。
名前を付けられるのかもしれない。
「これからよろしく頼むぞ!白虎!
お前に名前を付けたいけど、大丈夫か?」
「もちろんです。
名付けていただけると嬉しいです。」
「お前は、シロだ!」
ヒデトが命名した。
「はっ。ヒデト様よろしくお願いいたします。
シロはあなたのものです。
いつでも私を使いください。」
こうして、ヒデトは神獣白虎こと「シロ」を改めて仲間にしたのだった。
大きな体だったので、小さくなってもらい、通常はヒデトの服の肩の位置に乗ってもらうことにした。
失神したミクとアキに念のため「リストア―」をかけて起こし、
シロが仲間になった経緯を説明する。
「し、神獣!?!?
創造神アテネ様!?!?!?
ほんとに、ちーと、ってスキル以上ですね…。
もとからヒデトさんはいい意味でおかしな人だと思っていたのですが…。」
アキが口にする。
「ほんとそうだよね…。
もう、何があっても驚かないようにしないとなぁ…。
さすがに神様が出てきたときはびっくりしちゃったけど。」
ミクも口にする。
「とりあえず、もうそろそろ休憩しようか。その前にこのダンジョンについてシロに教えてもらおう。
シロ教えてくれるか?」
「はい。もちろんです。ヒデト様。」
ヒデトの肩に小さくなって座って少々かわいく思えるシロが返事をしてくれた。
「このダンジョン、ギルバートの森のダンジョンには私を除くと、
強いモンスターはほぼいないと言っていいでしょう。
しかし、このダンジョンの、ダンジョンコアを持つ「ボス」は、
私よりは強くはないものの、Sランクのモンスターです。
確か、サイクロプスといわれるものであったと記憶しております。」
「情報ありがと、シロ!
おかげでダンジョン制覇が早くなりそうだ!」
ヒデトがシロをほめると、犬のようにしっぽを振るシロ。
可愛い。
そんな感じで探索を再開した一行であった。