66話 急行
剣の柄を咄嗟に握ったブレイディアは心の中の動揺を悟られまいと必死にポーカーフェイスを作るも、女騎士を見つめる赤い瞳はまるでその混乱を見透かしているようにも見えた。
(……突然現れたことには驚いたけど、フェイクと遭遇するっていうこの事態を想定していなかったわけじゃない。落ち着いて行動しなさいブレイディア・ブラッドレディス)
自身に言い聞かせるように脳内で呟いたブレイディアは静かに、かつ短く息を整えると驚きの行動に出た。
フェイクと対面し地面に刺さっていた剣の柄を握っていたブレイディアだったが、すぐにその手を放し同時に『月光』を消してしまったのだ。その行いに対して仮面の男は不思議そうな声をあげた。
「……なぜ『月光』を消す……? そのうえ一度握った『月錬機』を手放すとはな。お前は私を討伐しにきたのではないのか……?」
「……そのつもりだよ。でもその前にちょっとだけお話しない?」
「……話……? いったいなんの話をするというんだ」
「いや、たいした話じゃないんだ。すぐ終わる簡単な話。ほら、こうして丸腰なんだしちょっとだけ付き合ってよ」
フェイクはブレイディアが本当に丸腰なのを確認すると口を開いた。
「……いいだろう。私もお前に聞きたいことがある」
「ありがとう。それじゃこっちから話すね。それで……単刀直入に聞くけどさ――貴方達、降伏してくれないかな?」
あまりにも意外な提案にフェイクは返事をするのが一瞬遅れるも、すぐに口を開いた。
「……降伏……? 負けを認め投降しろというのか……?」
「うん。そうだよ。そうすれば無駄に争わなくていいでしょ?」
「…………」
笑顔でそう言うブレイディアにフェイクは数秒無言になった後、呟く。
「……なぜ我々が降伏しなければならないのか理由がわからないな。袋のネズミとでも言おうか――むしろこの状況で降伏するべきなのはお前だろう、ブラッドレディス」
「『黒い月光』の使い手がこのラフェール鉱山にいるって聞いても同じことが言えるの? このまま私たちと戦うことになれば貴方達の魔獣を皆殺しにした強力な力が今度は貴方達に向けられるんだよ、フェイク」
「なるほど、それが理由か。だがそんなものはなんの脅しにもならない。そもそも、ク……」
フェイクはなぜかそこで言葉を詰まらせると言い直す。
「……ラグナ・グランウッドはこのラフェール鉱山の中にはいない。意味のないハッタリはやめろ」
「……どうしてハッタリだってわかるの? いつここに現れたのかは知らないけど、まさかここに来る前にラグナ君がこのラフェール鉱山に入ったかどうかを直接確認したわけじゃないでしょ?」
「直接見ずともわかる。ラグナ・グランウッドが近くにいればな。まあ、それは奴も同じだろうが」
「…………」
フェイクは確信でもしているかのように断言した。ブレイディアは仮面の男の発言に奇妙な違和感を覚えながらも考察する。
(近くにいればわかるって……どういうこと……こいつ、まさかラグナ君の存在を感じ取れるとでもいうの……それにラグナ君にもわかるみたいなこと言ってるけど……)
ブレイディアが混乱しながらも思考を巡らせていると、フェイクが話しかけて来た。
「今度はこちらの番だブラッドレディス」
「……何が聞きたいの?」
「ラグナ・グランウッドについてだ。お前たちがワディやロンツェたちと戦いここまで来たのは知っているが、なぜかラグナ・グランウッドは『黒い月光』を一度しか使っていない。なぜだ……?」
「…………」
ブレイディアは再び考えを巡らせ始める。
(……私たちがこのゴルテュス領に来てから『黒い月』が浮かんだのは一度だけ……それを見ての質問なんだろうけど……もしかして『黒い月光』の制限時間と使える回数について感づかれた……? いや……こんな質問してる時点でまだ確信してるとは言い難いはず……ここはうまく誤魔化すしかないな)
フェイクの質問の意図をそう捉えたブレイディアは話し始める。
「……単純に使える場所が限られてたからだよ。最初に使った森は人の気配がまったくないうえに全力で戦っても周囲の被害を気にしなくても大丈夫だったからね。ただここに来るまでに戦って来た森以外の他の場所は全部市街地やら周りに人がいる場所だったからラグナ君は『黒い月光』を使えなかったの。あの力は強力だけど周りを巻き込んじゃうほど凄まじいからね」
「……それが理由か。ならば敵しかいないこの場所でなら『黒い月光』を使い全力で戦えるというわけだ」
フェイクのその言葉はまるでラグナに全力で戦って欲しいように聞こえたためブレイディアは眉をひそめる。
(……何コイツ……まるでラグナ君に全力戦って欲しいみたいに聞こえたんだけど……『黒い月光』を相手取って勝てるとでも言うの……)
ブレイディアが考え込んでいるとフェイクが再び口を開く。
「もう私の聞きたいことは終わった。この無駄話もそろそろ終わりにしよう」
「……無駄話ね。ってことはやっぱり私の提案は受け入れられないってことでいいのかな?」
「無論だ。降伏などありえない」
「……そっか……残念だよ。提案は受け入れてもらえないか……」
ブレイディアは大げさにため息をつくと天井を見上げながら言う。
「本当に残念。でも仕方ないね。……それじゃあ――」
そして何でもない事でも言うようにブレイディアはフェイクに告げる。
「――死になさい」
その瞬間――フェイクの背後の地面が盛り上がると同時に、何かが地中から飛び出す。飛び出したそれの正体は先端に刃が付いた鞭――すなわちブレイディアの変形させた『月錬機』だった。当然物音に気付いた黒衣の男は振り返ろうとするも、その前に飛び出した鞭はその仮面で覆い隠した顔と首に瞬時に巻き付き首を締め上げると開いた穴の下にその首だけを勢いよく引き込もうとする。
それは刹那の出来事だった。フェイクがその拘束を解こうと腕を動かす暇もないほどに。そのうえとどめと言わんばかりに女騎士は地面に刺さっていた剣の柄を強く握ると、締め上げる力が増し下に向けてさらに強力な力がかかったその時――ゴキッという音と共にその黒衣の体は地面に倒れた。
その間わずか一秒足らずの出来事。敵の首の骨が折れたことを確認したブレイディアは遺体の首と顔から鞭の戒めを解き刺さっていた剣を地面から引き抜いた。するとフェイクの後ろに開いていた穴から鞭は地中を通って剣が刺さっていた穴へ抜ける。
地中から鞭を取り出したブレイディアは仮面の男の死体を一瞥した後、背を向け再びコンソールに向かおうとしたが――。
「――良い不意打ちだ。正直驚いた」
「ッ……!?」
ブレイディアはその声を聞いたその時、体感時間が止まるほどの衝撃を受けた。だがそんなことなど眼中にないらしい背後の声はなおも喋り続ける。
「あの提案そのものがこの不意打ちを仕掛けるための囮だったわけか。どういう仕組みかはわからないが、その『月錬機』は変形し触らずとも遠隔操作できるようだな。柄を放す前、最初に柄を握った時にその柄のトリガーをわずかに引いたように見えたが、それが変形させるためのスイッチのようなものだったわけだ」
「……嘘でしょ……」
ブレイディアは背後から聞こえる衣擦れの音を聞きながらゆっくりと振り返ると、そこには首が不自然に斜め下へ曲がった仮面の男が立ち上がろうとする姿があった。
「提案するフリをして地中に伸ばした鞭をゆっくりと気づかれないように私の背後に伸ばすとはな。大したものだ。首を折る際のスピードや手際の良さ、容赦の無さも称賛に値する。だが――」
敵を称賛しながら立ち上がったフェイクは手で首を強引に元の位置に戻すと告げる。
「――私を殺したいのなら首を折るのではなく切断するべきだった。お前のミスはそのたった一点だけだ。さあ――それでは始めようかブラッドレディス」
静かにそう言った仮面の男を中心にして膨大な銀色の光がその区画を埋め尽くさんばかりに展開される。その信じがたい光景を見てブレイディアは悔しそうに歯噛みし緑色の光をその身に纏った。
ラフェール鉱山近くを見つからないように低空飛行で飛んでいたジョイは心の中で独り言ちる。
(陽動はこんなもんでいいだろ。早いところ嬢ちゃんたちに合流――)
合流しよう――そう思った矢先――眼前のラフェール鉱山の一部が内部から吹き飛ぶ。と同時に巨大な銀色の雷が外に向けて放射される光景を目の当たりにしジョイは驚愕した。
(……おいおいマジかよ……前にも見たことあるぜあの電撃……嫌な予感がビンビンするんだが……)
ジョイは周りに注意しながら徐々に高度を上げ電撃が放たれた鉱山の中腹に飛んで行った。そして焼けこげた穴の開いた部分にたどり着くと中をこっそりと覗き込む。するとそこには仮面の男の攻撃を一人で必死に避けるブレイディアの姿があった。
(嬢ちゃんッ……!? しかも一人でフェイクと戦ってんのかよッ……!? ラグナはどうしたんだッ……!?)
防戦一方のブレイディアを見て血の気が引いたジョイは周囲に視線を彷徨わせるもフェイク討伐を任された件の少年の姿はどこにもない。しかし代わりに台座に置かれた巨大な黒い球体を見つける。
(……ありゃ確か嬢ちゃんたちから聞いた『ルナシステム』……けど資料で見た形状とちょっと違うな……もしかしてあれが『αタイプ』とかいう兵器なのか……そうか、なんとなく状況が読めて来たぜ。ここに来る前に男たちが『αタイプ』が完成したとか言ってたもんな。おそらく嬢ちゃんはそれを聞いてラグナ達を先にレスヴァルさんのところへ向かわせたんだな。そして自分だけ一人で様子を見に来たってところか。ったく……嬢ちゃんならそれくらいの無茶平気でやりそうだもんな……だが敵に――よりにもよってフェイクに見つかっちまうとは……)
知っていた情報を組み合わせて状況を推測したジョイは急いでその場を離れ飛び去る。
(俺の推測が正しいならラグナはフィックスさんの言ってた洞窟にいるはず。早いところ助けを呼びに行かねえと。待ってろよ、嬢ちゃんッ……! ラグナを連れて来るまで死ぬんじゃねえぞッ……!)
ジョイはラフェール鉱山の右脇にあった小道を高速で飛び洞窟へ向かった。
一方フィックスと共に洞窟に向かったラグナはなんとか敵と遭遇することなく無事に目的地に到着する事が出来た。そして囚われていた町の住人やレスヴァルたちとの合流に成功する。
「ラグナ君、無事にたどり着けたようでよかった。ところでブレイディアさんは?」
「ええ、そのことなんですが……」
ラグナはブレイディアが先にラフェール鉱山に向かった経緯を話した。
「……なるほど。それでは我々はブレイディアさんが戻ってくるまではここで待機していた方が良さそうだな」
「ええ、お願いします」
ラグナはそう言うと人質に取られていた住民たちを見まわした。顔色は若干悪かったものの見たところ全員無事そうだったため少年は安堵の笑みを浮かべる。
「皆さん無事みたいで安心しました。それもレスヴァルのおかげです、本当にありがとうございました」
「いや、いいんだ。気にしないでくれ。それよりなんの連絡も寄越さず消息を絶ってしまいすまなかった」
「いえ、大丈夫です。でも何か理由があったからなんですよね?」
「ああ。実は町に入ってすぐに町の住人に違和感を覚えてね。宿の部屋を予約した後、誰にも気づかれないように君達との集合時間まで姿を消して町の様子を窺うことにしたんだ。すると、夜になって町の住人の一人が町の外へコソコソと出かける様子が目に入った。追いかけて町の外に出ると、その住人の男がどこかへ連絡をしている声が聞こえてね。耳を澄ましていると『本物の町の住人を人質に取った』だの『それを利用して町の住民と入れ替わった』だの『廃墟群におびき寄せて奇襲を仕掛ける』と言った声が聞こえてきたんだ。その後電話連絡を終えたその男に術をかけて知っていることを洗いざらい喋らせた。当然君達にもそのことを電話で伝えようとしたのだが、その前に敵が町の外に用意していたらしい索敵用の魔獣に気づかれてしまってね」
「え、だ、大丈夫だったんですか……!?」
「見ての通り無事だよ。それと時間はかかったが町の外にいた魔獣たちや『ラクロアの月』の構成員は兵器諸共全滅させたから安心してくれ」
「そ、そうなんですか……でも全滅させたら外の構成員と連絡が取れなくなったロンツェたちがもっと騒いだと思うんですが……本当に平気だったんですか……?」
「問題ないよ。その場の指揮を執っていた男の脳を操って偽の報告をさせたんだ。だから奴らは気づかなかったのだろうね」
「な、なるほど……敵を騙しつつ数を減らすなんて……すごいですね」
うまくロンツェを騙したレスヴァルに感心したが、同時に脳を操られるという恐怖をワディのアヘ顔を思い出すことで再確認したラグナは若干顔を引きつらせる。
(そうか……それでロンツェはそんな様子を見せなかったのか。そういえば俺が『黒い月光』を使って町の外に逃げた時を想定して魔獣やら兵器を用意してたって言ってたな。普通なら夜に町の外で兵器やら魔獣が動き回って戦ってたらすごい騒音がするんだろうけど、偽の祭りがあったせいでたぶん俺達は気づけなかったんだろう。……あれ……でもなんか『黒い月光』に対応できるように大量の兵器や魔獣を用意してたってロンツェは言ってたような……え、ってことは……そんな数の敵や魔獣、兵器を……たった一人で……?)
ラグナはレスヴァルの顔をまじまじと見つめたが、彼女はキョトンとした様子で首をひねる。
「どうかしたのかい?」
「あ、いえ、なんでもないです……」
ラグナはロンツェの言っていた大量という言葉はハッタリだったのだろうと思い自身を強引に納得させると、レスヴァルの言葉を待った。
「……では話を続けよう。敵は片付いたのだがその時点で集合時間には大幅に遅れ、そのうえ妨害電波を張られてしまっていたため君達に電話で連絡をすることができなかったんだ。直接そちらに向かおうとも考えたんだが、奴らがラフェール鉱山で住民を人質に取り君たちの動きを封じようとしていることを知っていたため悩んだ末に人質を先に開放する選択をしたというわけさ。これが今までの出来事だ。……君達ならば早々やられないだろうと思っての判断だったのだが、やはり勝手に動いて君たちに心配をかけたのは事実。本当にすまなかったね」
「や、やめてください! レスヴァルさんが謝ることなんて一つも無いですよ! 俺達の事を信じてくれたからこその判断ですし、何よりそのおかげで助かったわけですから! あらためてお礼を言わせてください、ありがとうございました!」
「……そうか。そう言ってもらえると助かるよ。それではブレイディアさんが戻って来た時にすぐに動けるように私たちだけで先にここからどうやって脱出するか作戦を練っておこうか」
「賛成です。とりあえず町の人たちをどうやって安全に避難させるかについてなんですけど、実はここに来る前にブレイディアさんがアルフレッド様に連絡して救援の要請を――」
ラグナがそう言いかけた矢先聞き覚えのある声が洞窟に響く。声のする方へ顔を向けると赤い鳥が叫びながら凄まじいスピードでこちらに向かってくる様子が目に入った。やがて赤い鳥――ジョイは目と鼻の先までやってくる。
「ジョイ! よかった! 無事に戻ってこれたんだね! 安心したよ!」
「あ、ああ、だけど、そ、それどころじゃねえんだ! 嬢ちゃんが、嬢ちゃんがフェイクと一人で戦ってるんだよッ!」
「……え……」
ラグナは驚きのあまり言葉を失ってしまったが、ジョイはまくし立てるように喋り続ける。
「頼む、一緒に来てくれ! 防戦一方でよ、こ、このままじゃ……」
ブレイディアが無残に殺される姿を想像したラグナは歯噛みするとレスヴァルの方へ顔を向ける。
「レスヴァルさん、俺……」
「ああ、わかっている。ここの事は私に任せてくれて構わない。君は急いでブレイディアさんのところへ」
「……ありがとうござます」
「礼などいいさ。この洞窟は内部でラフェール鉱山に繋がっているらしい。このまま奥に真っ直ぐ進めばラフェール鉱山内部に出る」
松明で照らされた洞窟の奥に目を向けたラグナは頷く。
「わかりました。ジョイ、ブレイディアさんがフェイクと戦ってた場所はわかるんだよね?」
「あ、ああ。鉱山の中腹辺りだ。……今更気づいたんだが……そこに着くまでの道案内にはちょっと自信が無いぜ……俺は穴の開いた外壁から嬢ちゃんが戦ってる姿を見ただけなんだよ……しかもここに来るまでに通ったルートはお前らと同じルートだ。だから鉱山内部を通ってうまく案内できるかどうか……頼みに来ておいてすまん……くそ……せめて鉱山内部の見取り図でもあれば……」
それに対して何かラグナは言おうとしたが、その前に近くで聞いていたらしいフィックスは急いで荷物の中から一枚の紙を取り出す。
「あの、ラグナさん。ブレイディアさんにも渡したのですが、鉱山の見取り図です。予備で一応もう一枚持って来ておいたのですが、もしよろしければこれを」
「……いいのですか?」
「ええ、最後の一枚ですが、私が持っているよりも貴方が持っていた方がいいと思います。どうかお使いください」
「……ありがとうございますフィックスさん」
ラグナは見取り図を受け取るとフィックスに頭を下げ、レスヴァルの方を向く。
「すみませんレスヴァルさん。町の人たちのこと、よろしくお願いします」
「任せてくれ。それと……くれぐれも気を付けて」
「……はい」
ラグナはレスヴァルにも頭を下げると、銀色の光を纏い駆け出す。ジョイもそれになんとか追随した。だがその後洞窟を抜け人工的な明かりで照らされたラフェール鉱山内部と思しき場所に出た後もいっこうに見取り図を広げようとしない少年に赤い鳥は疑問の声をあげる。
「お、おいラグナ。見取り図見ないで進んでるけど大丈夫か……?」
「……見取り図は帰りに使うことになると思うけど今は大丈夫。ラフェール鉱山の中腹なんだよね? おおよその場所がわかれば見取り図が無くとも到着できると思う」
「ほ、ホントに大丈夫なのか……?」
「平気だよジョイ。俺を信じて」
「わ、わかった。なんだかよくわからんが、お前を信じる! お前だけが頼りだ! だから嬢ちゃんを助けてやってくれ!」
「うん、全力を尽くすよ」
ラグナは全速力で鉱山内部を駆け抜けながら左手に意識を集中させていた。左手の甲に刻まれた黒獅子は今までに感じたことの無いほど熱く何かに反応している。
(……ラフェール鉱山に近づいた時からずっとこの黒い痣は熱を持っていた。そしてこれは奴――フェイクに反応している証。このおかしな共鳴現象がなんなのかはわからない。けど、この痣は間違いなく俺をフェイクのいる場所まで導こうとしている)
ラグナはフェイクから感じた威圧と恐怖を再び思い出したが、ブレイディアの手の暖かいぬくもりも同時に思い出しそれが負の感情を打ち消す。
(……待っていてください、ブレイディアさん)
ラグナは一人戦場で戦うブレイディアのもとに急行した。