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35話 取引

 爆発によって上着は粉みじんに吹き飛んでしまったため、白いワイシャツのまま銀の光を纏ったラグナが目的地に向かって駆けていると、途中で青い光を纏い走っている少女の後姿を発見する。背負われたサリアはもう起きているらしく背筋が伸びていた。場所はアルシェまでもう目と鼻の先と言った地点。森林地帯は完全に終わりちらほらと木々や草花が見える程度の場所だった。少年は速度を上げて少女の背中越しに声をかける。


「リリッ……! こっちは全部片付いたよ、君達は怪我とかしてない……?」


「……ラグナ……うん……私もサリちゃんも平気……ありがとう……」


 気が付いた少女は立ち止まると気まずそうににこちらを振り返り返事をした。それを見たラグナはひとまず安心すると表情を崩した。


「無事で良かったよ。安心した」


「……うん……それで……あのね……ラグナ……」


「なに? どうかしたの?」


「…………」


 その後無表情の少女は何かを言おうと口を開くも何も言わずにすぐに閉じてしまう。背負われていたサリアもリリスの肩をギュッと掴んでカタカタと震えていた。それを見たラグナはすぐに察する。


(……ああ、そうか。たぶんサリアさんから全てを聞いたんだろう。……そりゃ言いにくいよな……友人って言っても俺は一応現役の騎士。俺にジュリアのことを話せば上に報告されて彼女も討伐対象になりかねない、ってそう考えても不思議じゃない)


 ラグナは彼女たちの気持ちを察しながらも小さくため息をつき口を開く。


「……実はね、リリ。さっき森でジュリアに会ったんだ。そこで全てを聞いたよ」


「……ッ!? ……じゃあ……全部知ってる、の……?」


「……うん。でも一応二人の話も聞かせてほしい」


「……わかった……」


 『月光』を消したリリスはサリアを降ろし、ラグナもまた銀の光を解除する。そして二人は手に入れた情報を交換し合った。


「――俺とリリが聞いた話はほとんど同じみたいだね……」


「……うん……」


 その会話を最後に二人は黙り込みうつむいてしまう。お互い何を言えばいいのかわからなかったのだ。一分ほどそのまま沈黙が続いていると、不意にサリアがラグナに向かって口を開いた。


「あ、あの違うんですッ……! お姉ちゃんはボルクス男爵たちにそそのかされてるだけなんですッ……! お姉ちゃんは正義感や責任感が強くて、そこに付け込まれて……だから……だから……」


 目に涙を溜めて懇願するように言うサリアを見たラグナは安心させるように笑顔を作った。


「大丈夫です。ジュリアが優しくていい子だっていうのはよくわかってますから。ジュリアの立場が悪くなるようなことは上に報告しないので安心してください」


「ほ、本当ですか……?」


「ええ、約束します。あと、これを」


 ラグナがポケットからハンカチを取り出し渡す。するとそこでようやく安心したのかサリアの表情に安堵の色が浮かんだ。 


「あ……ありがとうございます……」


「いえ。それよりいったん町に戻りましょう。っとその前にリリ、傷の具合はどう……?」  


「……平気……これくらいなら病院に行かなくても明日には治ってる……」


 見たところ腕や足に巻かれた包帯の赤い斑点を除いて血も止っており顔色も良さそうだ。無理をしているわけでは無いという事を理解したラグナは頷く。


「わかった。じゃあとりあえず町まで戻ったら支部まで行こう。あそこなら薬や包帯もあるし休めるからさ」


「……了解……」


「サリア様もそれでいいでしょうか? 支部の方には俺がうまく言っておきますので」


「は、はい……よろしくお願いします」


「はい。それではここからは俺がサリア様を背負わせていただきます」


「え……」


 その言葉を聞いたサリアは一瞬キョトンとした表情になった後顔を真っ赤にした。どうも見ず知らずの男に背負われることには抵抗があるらしい。


「……ラグナ……平気、サリちゃんは私が背負うから……」


「いや、ここは俺がやるよ。せっかく塞がった傷が開くかもしれないし」


「……でも……」


 リリスが言う前にサリアが声をあげる。


「あ、あのッ……私だったらもう大丈夫です。薬の効果も切れてますし。自分で歩け――うひゃあッ!?」


 歩こうとして足がもつれたのか盛大に転びそうになったサリアをラグナはとっさに受け止めた。


「大丈夫ですか……? あの、まだ薬が抜けきったわけではないと思いますので無理はしない方がよろしいかと」


「す、すみません……ありがとうございます。えっと……あ、そういえば貴方のお名前は……」


「ラグナ・グランウッドです。よろしくお願いします」


 自己紹介を受けたサリアは立ち上がると姿勢を正し礼をした。


「ラグナさん……姉から聞いていると思いますが、私はサリア・フォン・ベルディアスと申します。先ほど言い忘れていましたが、この度は助けていただき本当にありがとうございました」


「いえ、自分は職務を全うしただけですので。お礼はリリと……ジュリアにしてあげてください」


「え、リリさんはわかりますけど……お姉ちゃんに、ですか……」


「ええ。さっき貴方たちを逃がすために一時的に『ラクロアの月』を裏切ってくれたんです。彼女のおかげで追手を倒すことができました」


「……そう、だったんですか……」


 サリアは何とも言えない悲しそうな顔で一瞬うつむいたが、すぐに顔をあげてラグナを見つめて来た。


「……あの……ラグナさんはお姉ちゃんの、お友達……なんですよね……?」


「……はい、一応自分はそう思っています」


 そっか、と小さく呟いたサリアは少し頬を赤らめながらためらいがちに口を開く。


「ラグナさん、えっと、その、ご迷惑おかけして申し訳ないのですが、アルシェまでお願いしても、大丈夫でしょうか……?」


「お任せください。なるべく変な所は触らないよう注意します。ですが、もし何かおかしなところに手が触れるようなことがあれば遠慮なくお声掛けください」


「わ、わかりました。あの、それと……敬語は出来ればやめていただけると……」


「……ですが……」


「ラグナさんは年上ですよね? 年上の人に敬語を使われるとなんだが委縮しちゃうんです。それに姉と一緒で遠慮されるのが苦手で。……ダメ、でしょうか……?」


 上目遣いでラグナを見つめてくるサリアを見て出会った頃のジュリアを思い出したラグナは苦笑する。


「……わかったよ。公の場とかでは流石に無理かもしれないけど」


「それで大丈夫です。ありがとうございます。それじゃああらためてよろしくです」


「うん、よろしく」


 ラグナはすぐにサリアを背負うべく屈んだ。


「じゃあどうぞ」


「し、失礼します……」


 遠慮がちに体重を預けて来たサリアを背負うとそのまま立ちあがる。


「あ、あの、お、重くないですか……?」


「大丈夫。全然軽いよ。危ないからしっかり掴まっててね」


「わ、わかりました」


「それじゃあリリ、行こう」


「……うん……」


 サリアを背負ったラグナと深刻な顔で考え込んだリリスは共に町まで走った。



 朝早く出たはずだったが、気がつけば夕方になっていた。事情を話しサリアに取りつけらえていた小型カメラを取り除いた後、アルシェに戻って来たラグナ達は騎士団支部に到着しその門をくぐる。そして受付にいた若い男性騎士に話しかける。ちょうど廃工場に向かった時に話した新米の騎士のようだ。


「ただいま戻りました」


「あ、おかえりなさい。お二人とも無事なようで安心し――えっとそちらの方は……」


 リリスの上着を顔を隠すように頭から被ったサリアの方を見て目をパチクリさせる男性騎士。ラグナが目配せすると、少年に背負われた少女は上着を取り去り顔を見せる。そしてあらかじめ打ち合わせしておいた偽の理由を話すべく口を開く。


「……実はここに戻ってくる途中でベルディアス家のサリア様と偶然お会いしたのですが、足をくじいているらしくしばらくここでお休みしていただこうと思いまして。それでお連れしました」


「……ああ、そうだったのですか」


「ええ。それで今日はここにお泊りしていただこうと思っているのですが、よろしいでしょうか?」


「え、ですが、その、ベルディアス家にお送りしなくてもいいのですか?」


「今ベルディアス家の方々は病に伏している状態ですからね。足を怪我した状態で戻れば心配をかける、看病に追われているお姉さんや使用人の方々に余計な手間を駆けさせたくないとサリア様はおっしゃっています。それならばとサリア様のお姉さまと交友のあるリリス様が、自分がサリア様の面倒をみるとおっしゃられたのです」


 演技の為に巻いた足首の包帯を小刻みに揺らしながらサリアとリリスはコクコクと頷いた。


「……そうなのですか。いえ、こちらとしては部屋は余っているので全然かまわないのですが……」


「ありがとうございます。ベルディアス家の方にはサリア様ご自身や自分から連絡しておくのでご心配なく。あとこのことはくれぐれも内密にお願いします。貴族のご息女が泊まっていると周囲に広がると、サリア様を狙ったおかしな連中が支部に集まってくるかもしれないので」


「わ、わかりました」


「お願いします。ではお二人ともお疲れのようなので自分がお部屋にお連れします」


 三人は一礼すると二階にある部屋へ向かって行った。その様子を見届けた受付の新米騎士はしばらく階段の方を見つめた後、表情を消した。先ほどのおどおどした様子から一転、機械のような無表情になった男性騎士はポケットから携帯端末を取り出すと素早く文字を打ち始めた。



 空いていた部屋のベッドにサリアを寝かせ布団をかけ少し休んでいるように言うとラグナとリリスは部屋を出た。廊下に出た二人は向かい合う様に話し始める。


「とりあえずこれでしばらくはサリアさんを隠しておけるね。でも彼女を病院に連れて行かなくて本当に良かったのかな……変な薬打たれてたみたいだし……町を歩いてる時大きな病院を見つけたけど、やっぱり今からでも連れて行った方が……」


「……病院に連れて行くのは危険……大きな病院の医者は貴族と繋がってるケースが多いの……だからサリちゃんみたいな貴族の子を連れて行けば、その情報が何らかの形で男爵の耳に入る可能性が高い……」


「そうなんだ……じゃあ小さな診療所みたいな所はどう……?」


「……そういうのなら大丈夫だと思うけど……この辺にはそういう診療所はなかったと思う……」


「そっか……じゃあこの件が解決するまでは医者に連れて行くのは無理そうだね……」


「……うん……それに下手に動かすのも危険……敵に見つかるかもしれない……でもここにとどまり続けるのも得策とは言えない……すぐにここもバレる……」


「だよね……軍服着てたの見られてるし、なにより廃工場のアジトを一度襲撃してるから敵も騎士が攻撃を仕掛けてきてるって認識してるしね……」


 先ほど町に入る際にも細心の注意を払い、サリアの顔を隠した状態でここまで来た。彼女の話によるとベルディアス家にいる使用人の大半が『ラクロアの月』の構成員らしく、その連中に見つからないようにとの配慮である。


(……王都への魔獣投入の件もある……一番いいのは本部に今まで手に入れた情報を全て報告して王都の防衛強化とベルディアス伯爵家族奪還のための応援を寄越してもらうことだけど……それをやるとジュリアが『ラクロアの月』に協力していることが上にバレる……仮に嘘をついてうまくやり過ごしたところでそんなもの一時しのぎでしかない……戦いが始まれば彼女は自分の意思で奴らに協力していることを表明するかもしれない……そうなればたとえ王都への魔獣進行を阻止したとしても国家反逆罪でジュリアは確実に死刑だ……騎士としては王都を守るために報告するべきだ。大勢の命がかかってるんだから……だけど……)


 ジュリアの笑顔がちらつきそれが決断を妨げ、さらに別の懸念材料が頭をよぎる。


(……でも……たとえ俺が連絡しなくともおそらく明日には騎士団本部から応援がやってくる……そうなれば敵の思惑通り王都の警備が手薄になってしまう……アルフレッド様に相談してみるか……いや、きっとあの人は俺に騎士としての役目を全うさせるだろう……一か月しかまだ一緒に仕事をしていないけど公私混同は絶対にしない人ってことくらいは知っている……そうなればジュリアが……一番いいのは『ラクロアの月』の作戦が始まる前にジュリアを説得することだけど……)


 固い決意を秘めた少女の顔と言葉を思い出し、思わず顔をしかめる


(……そもそも今ジュリアがどこにいるかもわからないのにどうやって説得するって言うんだ……やっぱりここはジュリアの事だけうまく誤魔化したうえで大人数の騎士派遣を中断してもらうしかない。そして隠密行動に長けた少数精鋭によるベルディアス家の救出を要請しよう。ジュリアが嘘の証言をしたのは脅されていたからってことで通るし、なによりそれもまた事実だ……根本的な解決にはならないけど、これで最悪の事態だけは避けられる……とりあえず今はこれしか……)


 ラグナが難しい表情で床を見つめているとリリスの声が静かに響いた。


「……ラグナ……私なりに考えた……ジュリのことを本部に報告しないってサリちゃんには言ったけど……やっぱりそれは現実的じゃない……」


「……え」


「……魔獣の脅威が王都に迫っている以上、そっちを優先するべき……だから全てを報告した方がいい……たとえその結果、ジュリの事が騎士団長にバレたとしても……」


「だ、だけどそれじゃあジュリアが――」


 ラグナは言いかけて気づく、リリスが苦悶の表情を浮かべていたのだ。


「……私だって報告なんてしてほしくない……! ……さっきラグナに言いかけてやめたのもそれが理由……けど、大勢の命がかかった重要な問題……小さな嘘が大きな綻びにつながる可能性だってある……それにジュリだってそれくらい覚悟してるはず……ラグナに直接全てを伝えたのはきっとその意思表明のため……だったら……私達も覚悟を決めるべき……」


「リリ……」


「……大丈夫……サリちゃんにはもう少し落ち着いた後で私から話しておく……ラグナ一人を悪者にはしないから……私も一緒に背負う……だから騎士団長にはありのまま真実を話すべき……」


「……君の考えはわかったよ。でも……もう少し考えさせてほしい」


「……わかった……でもあまり時間は無い……」


「……わかってる」


「……私はサリちゃんの部屋にいるから……何かあったら来て……」


 そう言うとリリスはサリアのいる部屋に戻って行った。一人残されたラグナはトボトボと自室に戻るとベッドに座り込んだ。


(……リリはああ言ったけど本当はそんなこと望んでいないはずだ……けど罪のない人たちの命がかかっているから私情を捨ててああ言ったんだろう……きっと苦渋の決断だったと思う……迷ってる俺なんかよりもよっぱど騎士らしいよ……そしてジュリア……彼女の気持ちもよくわかる……身内の、それも父親のせいで大勢の命が奪われたことを知ってどう責任を取って良いのかわからなかったんだろう……彼女の清廉潔白な人柄を考えれば、今回の件も理解できなくはない…………なんとか二人の気持ちを汲んだ解決法はないだろうか……)


 ラグナは目をつむって五分ほど考えるもいい解決案が見つからない。


(……駄目だ、良い解決策が見つからない……それに、リリに言われて気づいたけど俺がさっきしようとしていたその場しのぎの嘘はやっぱり危険だ……ジュリアが家族を人質に取られ脅されて無理矢理協力させられてるってことだけを上に伝えれば救助隊が組まれてベルディアス家の人たちは救われる、だけど問題はその後だ。人質が救出されればジュリアのことを警戒していない味方の騎士や王侯貴族たちは彼女の動向を気にしなくなる。王都に魔獣が迫っているのならなおさらそうだろう、対策に追われるはずだ。しかも彼女は七大貴族であるベルディアス家の人間……それを利用して王都に『ラクロアの月』を侵入させるかもしれない……そうなればただでさえ良くない状況が悪化する恐れがある……リリの言う通り小さな嘘が大きな綻びにつながるんだ……)


 ラグナは頭を抱えてうなだれるが、不意に頼りになる幼顔の副団長を思い出すとポケットから携帯を取り出しアドレス帳に記録された彼女の携帯番号を画面に表示させた。だがその番号を見て表情を曇らせ首を横に振った後、すぐにディスプレイを消す。


(……何をやろうとしてるんだ俺は……ブレイディアさんだってブルトンで必死に任務をこなしてるんだ……そんな時に……邪魔になるだけだ……だいたい遠く離れたブレイディアさんに助けを求めたってしょうがないだろう……自分でなんとかしなきゃいけない……けど……どうすれば……)


 再びうなだれた瞬間、持っていた携帯が突然鳴り始めた。驚き画面を見るとそこにはアルフレッドでもなくブレイディアでもない番号が表示されていた。


(……誰だ……こんな番号見たことないけど……)


 疑問に思いながらも画面に表示された通話を押し携帯を耳に当てる。


「……はい、もしもし」


『やあラグナ君。元気そうで何よりだ。あ、私の声わかるかな?』 


「れ、レイナード様ッ……!?」


 声の主は他ならぬレイナード・フォン・キングフローその人だった。だからこそ驚く。


「どうしてこの番号を知ってるんですか……!? この番号は騎士団員しか知らないはずなのに……」


『まあまあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりサリアさんを救出したんだってね。おめでとう』


「なッ……!? どうしてそのことを……」


『他にも色々と知っているよ。王都に魔獣が攻めてくることとか、ベルディアス家の人々がウイルスにおかされて人質に取られていることとか、ね』


「……やっぱり、全部知っていたんですね」


『色々と秘密にしていたことは謝るよ。だがディルムンドの反乱の直後だ、正直私も騎士に対して色々とまだ信用できない事が多くてね。全ての情報を流して敵に筒抜け、なんてことにならないように情報は厳選させてもらったんだ』


「……理由はわかりました。でも、どうしてサリアさんのことがわかったんですか……?」


『私は様々な場所に諜報員を送り込んでいる。もちろん騎士団支部にもね』


「…………」


 ラグナの脳裏に浮かんだのは受付の男性騎士。今日ここに戻ってきて真っ先に接触したうえ、この部屋に来るまでまだ誰とも遭遇していないことを考えれば犯人は彼しかない。おそらくあの男性騎士がレイナードのいう諜報員なのだろう。


「……なぜ俺に連絡を……?」


『君が公務と私情の板挟みになって苦しんでいるのではないかと思ってね。救いの手を差し伸べるためにこうして連絡したのさ。……ジュリアさんの罪滅ぼしにはアルロンの生き残りである君もさぞ胸を痛めているだろう?』 


「ッ……!」


 ラグナは目を大きく見開いた後、表情を大きく歪める。


(……この人はいったいどこまで知ってるんだ……)


 驚愕し混乱しながらも少しでも落ち着こうとラグナは深く息を吸って吐いた。


「……救いの手とはいったいどういう意味ですか……?」


『君やジュリアさん、リリス、ベルディアス家の方々、王都に住む人々、みんなが幸せになる方法を私は知っている。だがそれを行うにはどうしても君の協力が必要なんだ。だからこうして連絡した。……ラグナ君、私の言っていることがわかるかな?』


「……どういう……ことですか……?」


『私と取引をしよう、そう言っているんだ。みんなでハッピーエンドを迎えられるようにね』  


 優しくも妖しい悪魔の囁き声がラグナの脳に響いた。 

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