転生?
(はぁ……)
思わず深いため息を吐く。吐きたくもなるというものだ。
主様はサッカー好きで、人に加護を与えサッカー選手に育てようとする事は今までにも何度かあった。
しかし、人を転生させてとなると、神々の定めたルールに抵触しかねない……
神々とて何をしても許される訳ではないのだ。
「主様。私的な目的の為の転生は禁止されています」
私は慌てて主様に苦言を提す。
「それに転生は時間神の管轄に入ります。いかに主様といえ破る事は許されません。」
そう神々はその力を自由に行使出来る訳ではなく、各神々の管轄を与えられている。
それを破って力を行使すれば、その神は厳罰を受けることとなる。
「わかってるよ。転生は時間神の管轄なんだろ?」
ルールを破ったりしないよ。と私に向かって肩を竦める。
「時間神の管轄なら、時間神に転生させてもらうさ」
別に僕しか転生させられない訳じゃない。と、主様は言うと、空に向かって両手を翳す。
すると、空が真っ暗に暗くなり、雷鳴が辺りに鳴り響く。
雷鳴の中心に割れ目が出来て、死んでいるかのように眼を閉じたの美しい青年が現れた。
「……これは主様。突然このようにお呼び立てとは如何されましたか?」
青年はゆっくりと眼を開けて、辺りを見渡して主様の姿を確認すると驚いたような表情を一瞬だけ見せる。
しかし、何事もなかったかのように涼しげな笑みを浮かべると、頭を下げながら主様に話し掛ける。
「やあ、久しぶりだね。時置師神……かれこれ1000年ぶりかな?」
時の狭間を漂うように過去に未来に移動する時間神である時置師神は神界に現れることすら稀で、神々でさえ中々会える相手ではない。
その神と主様が力を合わせて加護を与えるというのだ……その加護を与えられた人間は、いったいどれ程の存在となるだろう……
「……なるほど……主様は私に協力しろと?」
少し警戒したような口調で時置師神は言った。神々は自分の領域を犯される事を極端に嫌う。
それだけ神々の権限は強く、責任を伴うということなのだ。
「いや、転生者を一人紹介してくれるだけでいい。あとは、自分でするよ」
あくまで、転生する人間に偶然加護を与えるだけさ。僕自身が転生させて加護を与えてもいいが、それでは取り決めを破る事になるからね。
理にそって動く為に力を貸して欲しいと時置師神に頭をさげる。
「……力を貸すも何も、本来主様なら私の力を借りずとも転生も加護も行えるでしょう……分かりました。転生者を一人紹介致しましょう」
時置師神はそう言うと、眼を瞑り右手を左から右へと大きく振った。
すると、目の前に小さな少年が現れた。少年は小さく丸まるようにうずくまり、静かに眠っている。
「……この少年は?」
主様が確認するように時置師神を見ると、時置師神はそれに答えるように静かに頷いたのだった。