魔術都市アレ・テタル 魔力の楔
「こちらの世界って、古本屋さんはあるのに新刊書店はないんですよね」
一軒目の古書店を出て次の店に向かいながら、コズエは前々から思っていた疑問を口にしていた。
アレ・テタルにある古書店は三軒。ナモルタタルにも一軒の古書店があった。しかしどちらの街にも新刊書店は存在しない。
「アレ・テタルくらい都会だったら普通の本屋さんがあっても不思議じゃないと思うんですけど」
「本が作られる目的が日本とは違うからだろうな」
アキラは自分の推測だがと前置きした上でコズエに説明をした。
「こちらの世界には出版社が存在しない。本は原稿を写書したものを職人が製本して作るもので、一冊はかなり高価なものだ。研究書は研究者がスポンサーを得て作るし、貴族や金持ちの老人が自己顕示欲のために自伝書を作る」
研究書は同じ研究者や必要とする組織や個人が著者個人から購入するし、爺の自伝書は権力に媚びる連中が読まない本に大金を出して買いおもねる。
「本の販売は個人間で、しかもオーダーのようだから、書店が無いのだと思う」
「わざわざオーダー購入した本を手放すなんてもったいないなぁ」
没落してしまった貴族や大店が財産処分の際に売ったり、権力に押し切られて仕方なく買った本などはこっそりと古書店に持ち込まれる。貴族の自伝書は内容はともかく装丁は豪華で見栄えも良く、インテリアとして購入されるらしい。
「娯楽小説とかないですよね。読んでて面白い本ってなかなか見つからないですね」
コズエが閲覧した中で面白かったのは、角ウサギを番いで飼ってその観察日記を本にしたものだ。食べる草の種類によって角の毒性が変わることが証明されたという研究内容だった。他にも貴族の庭の花壇を季節ごとにスケッチした絵図を集めた本は、写真集っぽくて見ていて楽しかった。逆に面白くなかったのは、どこかの金持ちの隠居した爺さんが自分の一生を書き起こした自伝書だ。自己賞賛と自慢ばかりで数ページを読んだだけでうんざりしてしまった。
「教科書みたいな本もありましたよね」
「私塾が生徒に買わせるために教科書を作ることもあるようだな。魔術学校の教本なども同じだと思う」
「さっきの店には魔術書はなかったですね」
「魔術師を廃業してもなかなか手放さないんだろうな」
二軒目の古書店には魔術書が一冊だけあったが、コズエがアキラにもらったものと同じ初歩の教本だった。ここでも本を購入することなく三軒目へと向かう。
「アキラさんはどんな魔術書を探しているんですか?」
「俺が探しているのは、研究書だ」
「薬草の研究本みたいなのですか?」
アキラの趣味がガーデニングだとサツキが言っていたことを思い出した。普段から植物図鑑を読み込んでいるし、森で食べられる木の実や果実はいつもアキラが発見していた。
「そういえば図書館はどうですか? 図書館ならアキラさんの探してる本もあるかもしれませんけど」
「庶民が閲覧できる図書館は、ここにはない」
こちらの世界にある図書館は公共に公開されたものではない。個人の収集家が開いた図書館は、たいていは貴族階級だけにしか利用を許されていないし、利用料も高額だ。他にはギルドが資料として集めた本を庶民に公開しており、そちらは利用料もそれほど高くはないが、稀少な知識を期待するのは難しいのが現状だ。
「ギルドの蔵書にはなかった。個人の収集家が手放したり、没落貴族の蔵書が出回っている中に探している本があれば、と思って探しているんだが」
「何の研究書なんですか?」
「……亜人族に関する本だ」
「もしかして獣人とかエルフの本を探してるんですか?」
「情報不足でエルフに関する本は難しいだろうとは思う。獣人についてか、亜人族全般についての本があればいいんだが」
そう言ってアキラは目を伏せた。
そういえば彼はエルフだった、とコズエはフードを被ったアキラをまじまじと見た。長く尖った耳さえ目に入らなければ人族にしか見えない。
「そういえばコウメイさんのお友達、獣人でしたね。なにか知ってるかもしれませんよ」
「あまり期待はしないでおこう」
肩をすくめたアキラは、三軒目の古書店にコズエを案内した。
古書店内はどこも狭く薄暗い。内容ごとに分類し収納した本棚が壁伝いに並んでおり、店主が座る机の背後には、稀少本が納められた棚がある。ここも前の二軒と代わりばえのしない品揃えだったが、アキラは前回来たときにはなかった魔術書があることにすぐに気づいた。店主の背後の棚に、盗難防止のため鎖でつながれている本がそうだ。
アキラは店主に許可を得て魔術書を順番に閲覧していく。コズエも横から覗き込んだが、何も書かれていない白紙にしか見えなかった。
「これも違うな」
魔術書を確認し終えたアキラは、飾り書棚に本を戻した。
「あんたたちは魔術師かい? 魔術書を探すなら専門店の方がいいよ」
「専門店って、ギルドの売店ですか?」
「いいや、魔術書ばかりを取り扱う専門の古書店だよ。わしらの店に流れてくる本よりもずっと高度な魔術書が揃っている店だ。行ってみてはどうかね?」
店主に教えられた古書店の場所は、北町の端の方にある小さな家だった。近隣は住宅がほとんどで、近くに商店や屋台の姿も見えない。魔術書専門の古書店の外観も古ぼけた民家だ。
「ほんとにここが古本屋さんなんですか?」
「一応、開店って札がかかっているから、何かの店だとは思うんだが」
アキラは不審な物音が聞こえないかどうか聞き耳を立てた。同時に薄く魔力を広げて魔術的な仕掛けや罠が無いかも確かめた。
「入ってみるか」
木製の扉をノックした。中から「あいてるよ」という声が返る。アキラは扉を引いた。
古書店とは思えないほどに室内は明るく清潔だった。
「客が来るのは珍しいな」
本棚の前に置かれた椅子に座った青いローブの男が驚いたように二人を見た。
「ここは魔術書専門の書店で間違いないのか?」
「ああ、そうだよ。何か探しものか?」
「亜人族に関する本ってありますか?」
「亜人族ねぇ……昔誰かが研究してたと思うが、まとめた物はあったかな」
コズエにたずねられて青ローブの男は奥の本棚に移動した。いくつかの本の背を指でなぞりながら探すが、見つけられなかったようだ。
「すまんな、それらしい本は無いようだ。もう亡くなった魔術師が研究をしていたと聞いたことがある。本にまとめたかどうかはわからんよ」
「その亡くなった魔術師の他に、獣人やエルフについて研究していた人は居ないのか?」
「居たかもしれないし、居なかったかもしれない。なんせ古い話だ、研究していたのは俺の師匠の師匠の同僚って話だ」
あまりにも古く遠い話だ。それでは文献が残っていたとしてもまともに保存されているのかどうか分からない。
「古い研究資料は弟子が引き継いだり保管してるものだが、誰が相続したのか俺は聞いてない。力になれなくて悪いな」
「いや、十分だ」
過去に研究者がいたことが分かっただけでも手がかりにはなる。運が良ければ研究資料にめぐり合うこともあるだろう。
アキラは魔術書を物色しているコズエに声をかけた。
「買いたい本はあったか?」
「残念ですけど、ほとんど読めないんですよね」
読めない本を見ているよりも、アパートに戻ってコウメイから獣人の情報を聞き出した方が面白いと、コズエは出口に向かった。転移者の獣人がこの世界の亜人族についてどれだけの情報を持っているのかあやしいものだと思いながらもコズエの後を追う。
「またどうぞ~」
店主の間延びした声と同時に、開いた扉の先が消えた。
「きゃあぁぁーっ」
「コズエちゃん!」
コズエへと手を伸ばしたアキラは背中から蹴られ、ともに暗闇へと落とされた。
+++
「……ったぁ」
暗闇に落とされた。尻と背中を硬い床にぶつけたが、頭が落ちたところには運よく柔らかなものがあって助かった。
起き上がって目を凝らす。かすかに明るい方を見ると、スポットライトが当たっているように床が明るい場所があり、その中央に人が倒れていた。
「アキラさん?」
離れた位置に倒れているアキラを見てコズエは駆け寄ろうとした。
「来るな!」
アキラの声と同時に床の光が増した。意味の分からない文字と線が浮かび上がり、脈動のように光っていた。
「なにこれ……魔術陣?」
「離れるんだ、この光から遠くへ。魔力を、吸い取られる」
「痛っ」
そっとのばした指先が光の線に触れた瞬間に、針に貫かれたような痛みを感じた。
引っ込めた指先に、じくじくとした痛みだけが残っている。
「アキラさんこそ、こっちへ逃げてきてください」
「動けない、この光に、縛り付けられてる、ようだ」
「そんなっ」
アキラは光に抗い身体を起こそうとするが、両手をついて上半身を持ち上げただけで力尽きて崩れ落ちる。アキラの荒く苦しげな呼吸に合わせるように魔術陣の光が強弱を繰り返していた。
「アキラさんっ」
「……逃げる、だ。脱出、して、助け……をっ」
魔力の感知など全くできないコズエの目にも、アキラの身体に魔力光の鎖が絡みついているのが分かった。アキラの魔力が鎖を通して魔術陣へと流れている。
緩慢な動きで脇差を掴んだアキラは、魔力の鎖に抗いそれをコズエに向けて投げ滑らせた。
「そ、れ……つかえ。人が、く」
「えっ?」
コズエの耳にも堅い踵の靴音が聞こえた。壁を隔てたようなくぐもった靴音が、だんだんと大きくなっていく。
「かく、れ」
「ど、何処に?」
あたりを見回しても部屋の全貌はわからない。魔術陣の光がとどいていないところは暗闇だ。
「……は、やく」
コズエは闇に隠れようと魔術陣から離れた。
先ほど自分が倒れていた場所には布のような柔らかなものがあった。あれを被って動かなければ、この暗闇なら隠れられると思いたかった。
微かに届く光りを頼りに石の床を手探りで進み、布に包まれた柔らかなものにたどり着いた。それを乗り越えて身を伏せ、布を手繰り寄せめくった。
暗闇の中で、何も見えないはずなのに。
コズエは見られていると感じた。
「―――っ!!」
見開かれた虚ろな眼球と、目が合った。
ゴゴゴォゥ。
コズエが悲鳴を堪えるのと、重い物が動く大きな物音は同時だった。
布を戻してコズエは堅く目を瞑った。
今更にすえた臭いを感じ、刺激に涙が湧きあがる。
逃げたい。今すぐ別の場所へ移りたい。だが堪えるしかないのだと、コズエは歯を食いしばり両手で口を押えた。
「……掘り出し物がかかったな」
足音は複数。
二人か、三人だ。
「魔術陣がこれだけ活性化するのは初めてだぞ」
「布が邪魔だな……なるほど、エルフか」
おお、と三人の男たちの声が興奮に弾んだ。
コズエは恐る恐るに目を開けた。
横たわるアキラのフードが脱げていた。魔術陣の光に照らされて、三人の腰あたりまでがはっきりと見えた。青いローブが一人、茶色のローブが二人だ。
「我々は運がいい。一年足らずでまたエルフを得られたぞ」
「これで魔力の心配なく師匠の研究を引き継げる。不足分もすぐに埋まるだろう」
「空の大魔石はいくつある?」
「四つだ。全部置いていこう」
青いローブが屈み、魔術陣の上に拳ほどの大きさの石を置いた。
ぼんやりと浮かび上がった男の顔を見て、コズエは声を漏らさぬように両手に力を込めた。
魔術書店の青ローブの男だった。
「そういえば……もう一人落としたと思ったが」
青ローブの靴が向きを変えた。コツ、コツ、と石畳を探るように歩く。
「放っておけ、ここからは出られないんだ。そのうち死ぬ」
「消臭と分解の魔術式は動いてる、ここに置いておけば死体の後始末も楽だぞ」
「そうだな。カスほどの魔力よりも、エルフだ」
茶ローブたちの所に戻った青ローブは、先ほど置いたばかりの魔石を一つ手に取った。角度を変えながらじっくりと観察し満足気に頷いた。
「貯まるのが早いぞ。この調子なら二日もあれば石に魔力が満ちる」
「空の大魔石がもっと欲しいな」
「殺してしまうのは惜しくないか? 生かして魔力を取り続ければ、わが師の研究の完成も近づくぞ」
茶ローブたちは手渡された魔石を交代で舐めるように眺めてから、魔術陣の上に戻した。
「ではエルフ用の檻を用意するか」
「面倒だぞ、ここでいいだろ。転移術で出入りできるのは俺たちだけなんだ」
「いや、場所を変えた方がいい。仲間の死を見て発狂されては困る。狂ったエルフから魔力を搾り取るのは難しい。また暴走したら我らだけでは抑えきれない」
「仕方ない、どこかの空き家を探そう。術式陣の埋め込みに時間がかかるぞ」
「三日か、四日?」
「……急がせろ」
「分かった。奴隷の……冒険者は」
「……」
足音とともに声が遠ざかり、重い物が動く音がして、更に靴音は遠ざかった。
壁の向こうにかすかに聞こえる足音すらも聞こえなくなったと確信してから、コズエは闇から這い出した。
「あ……アキラ、さん」
ぽろぽろと溢れるものを袖で拭い、四つん這いでどうにか魔術陣にまで近づいた。
「だい、ぶ……か、コ」
「私は平気です。アキラさん、掴まってください」
コズエは脇差をアキラに向けて伸ばした。何とかこの魔術陣から救い出せないかと、位置を変え、腕を伸ばすが、広い魔術陣の中央に囚われているアキラは遠かった。
「……」
コズエを向いたアキラの口が小さく動くが、その意思が声となって届かない。
「なに、なんて言ってるの?」
アキラの眼が、コズエから逸れ魔術陣の端に置かれた大きな魔石に向けられた。
「あれね? あの石を除ければいいのね?」
頷くようにアキラの瞼が閉じた。
床を這いながら四つの魔石に近づき、脇差の鞘を使って魔術陣の外へとはじき出した。
「どうですか?」
「……楽に、な……た」
弾き飛ばされた魔石は、離れた暗闇でほんのりと光っていた。コズエは再び脇差を持って手を伸ばした。
「動けませんか? なんとか手の届くとこまで、これ掴めるとこまで、来て!」
指先が動き、石の床を掴む。
肘を突き手が浮いた。
上腕に力がこもり腕が伸びたが、すぐに力尽きた。
「頑張ってっ」
「だっ、しゅつ、して……助け、呼ん」
「無理です。ここ何処だかわからないし、さっきの人たちも出入りは転移するしかないって」
自分には魔術は使えないのだとコズエは激しく首を振った。
「死、にたい、のか」
搾り出すようにして吐き出されたアキラの声も、コズエを睨むその瞳も、熱くて冷たい。
「お、れ……は、死に、たく、い。動け、コ、ズエ……んが、逃げ、て」
「でも、でもっ」
「コ、ズエ、があき……める、事、俺を、殺すこ……いけ」
「……私、転移の魔術なんて、使えません」
「だい、じょう……ぶ」
無力感に項垂れたコズエに、穏やかな声が届いた。
「ここ、魔じゅ、つ、作られ、てない。ひとが、作った……の、魔、術のほきょ、う。コズ、エちゃん……属、せい、なら」
「私なら? 私の属性、なら?」
アキラのまぶたがゆっくりと瞬きをした。
自分の魔力属性なら。
土に親和のある魔力なら。
コズエは両腿を拳で叩いた。もう十分に休んだだろうと脚を叱咤し、ゆっくりと立ち上がった。
転がっている魔石を拾い、懐中電灯代わりにしてゆっくりと壁を目指した。
アキラの位置を見失うことはない。
十メートルほど離れたところで壁にたどり着いた。コズエは石組みの壁に手をあて、土の声を探した。石壁の厚さ、逃れられる空間の有無。薄く魔力を放ち、跳ね返る魔力がコズエの手に戻ってくる感覚で、様々なものを読み取ろうとしていた。
あの三人が出入りしたと思われる石扉には強力な魔術式が埋め込まれているらしく、コズエの放った魔力を弾いただけでなく、強い攻撃が返ってきた。魔術陣に触れた時よりも強い痛みに、ここを破るのは無理だと諦めた。
四角く区切られた空間をぐるりと一周する間に、コズエは死体をいくつも見つけた。眼窩にまだ眼球が生々しく残る彼が最も新しい死体だった。腐敗が進んだものも多かったが、近づかなければ腐臭はほとんど感じなかった。消臭と分解の術式とやらが効いているのだろう。
石扉と対角の壁に、脱出の可能性を見つけたコズエは、目印に魔石を置いてアキラの元へ戻った。
「あそこの壁の向こうに、大きな空洞がありました。壁を壊して穴を掘って進めば、外に出られると思います」
アキラの視線が残りの魔石に向けられた。
「魔石、どうするんですか?」
「おい、て」
「ダメですよ。アキラさんの魔力吸うんですよ。苦しくなるだけです」
「じゅう、でん。もって、け」
「……アキラさんの魔力は電気じゃないです」
「やく、たつ……から」
コズエは目印を置いた壁を見た。あの向こうに空洞があるのは間近いない。だがその距離は、自分の魔力を使いきっても届かない。枯渇寸前で休み、魔力回復を待って再び掘る、そうやって掘り抜けるつもりだった。
「少しだけ……ほんの少しだけ、魔力を分けてもらっていいですか?」
アキラの状態を考えれば、回復を待つタイムロスがもったいない。一分でも一秒でも早く助けを求める為に、とコズエは無力感と罪悪感に蓋をして、拾った魔石を一つだけ、魔術陣の上に置いた。
コズエの行動を待っていたかのように、透明な魔石が見る見るうちに色づいていく。抵抗を止め、むしろ狙って注ぎ込むように魔力を放出させるアキラだ。
「無茶しないでくださいっ」
「……」
大丈夫。
声は聞こえないけれど、アキラの瞳がそう言っているような気がした。
コズエの拳よりも大きな魔石が、紫色に染まってゆく。銀板に使うクズ魔石は、一個で十日ほど保った。クズ魔石がだいたい十個程度で小魔石一つ分の魔力に相当する。アキラの魔力を吸い取っているこの魔石は、今まで見たことないくらいに大きい。どれほどの魔力が溜められるのだろう。
魔石の色が濃くなってゆくのを見ていたコズエは、脇差で突いて魔石を動かした。
「これ以上はいりません。もう十分です。余るくらいですよ」
アキラの魔力に染まった魔石を両手でそっとすくいあげて、コズエは不満そうなアキラを睨んだ。
「魔力と、脇差も、借りていきます。すぐにコウメイさんたちを連れて戻ってきますから、絶対に死なないでくださいね」
魔石をポケットに入れ、アキラの脇差をベルトに括りつけたコズエは、これから攻略する壁に向かった。
石工職人によって組み築かれた壁には、ごく薄い魔力が張り付くように覆っている。
「これくらいなら、私でも何とかなる」
コズエは石壁に両手を押し当てた。
「穴掘りは得意なんだからねっ」
コズエの魔力は壁のコーティングを破り、硬い石壁を少しずつ削り始めた。




