共同生活のススメ 7 暴牛のステーキ
共同生活のススメ 7 暴牛のステーキ
森ばかりで狩りをしていても成長しない。冒険者として経験を積むためにも、平地での戦闘や狩りをしてみるのはどうだろうか。
朝食の席でそう言ったコウメイに、アキラは冷ややかな視線を送った。
「牛肉が食べたいだけだろう?」
「食べたいに決まってるだろ。やっと薪オーブンにも慣れたんだ、ローストビーフ作りたいし、ビーフストロガノフ作りたい。霜降り牛肉のステーキは美味いと思うぞ。アキは食べたくないのか?」
本日の朝食のメニューは、目玉焼きとソーセージ、野菜サラダと丸芋サラダとミルク仕立てのスープだ。美味しい朝食を堪能していても、コウメイの口から出る牛肉メニューに思わず喉が鳴ったコズエとヒロだ。
「厚いステーキ、食べたい」
「ローストビーフも食べたいですっ」
「ハンバーグも作りてぇなぁ。サツキちゃんが酵母を育ててくれたから、柔らかいパンを焼いてハンバーガーとか作れるんじゃねぇかな」
「暴牛狩り、やっちゃいましょうよ」
「平原での狩りの経験も必要だと思います、俺」
「……」
「お兄ちゃんは暴牛の狩りに反対?」
サツキに甘えるように問われ、アキラは眉間のしわを揉んだ。
「ほらほら、アキの食べたい牛肉メニューも作るからさ。何が食べたい?」
コウメイに往生際が悪いぞとつつかれる。
多数決により本日の狩猟先目的地は既に決まっている。アキラは薄く笑みを作って嫌がらせ半分にコウメイにリクエストした。
「牛肉のしぐれ煮が食べたい」
当然、白い炊き立てのご飯も一緒に、だ。
「……しぐれ煮、か」
コウメイは唸った。和食党なアキラが半分本気で食べたいと思っているメニューだと分かったからだ。炊きたてのご飯に牛肉のしぐれ煮を乗っけて食べる……自分も食いたい。しかし作れない。この街のどの店を探しても、醤油を見つけることはできていない。なにより米が存在しない。
「お醤油を探し出すのはかなり大変じゃないですか?」
「お酒も、この辺りはビールとかウイスキーしかないよね」
「コウメイさんに意地悪するのはやめようよ、お兄ちゃん」
牛肉の魅力ではなく、妹のコウメイ擁護に敗北したことに深く落ち込んだアキラだった。
+++
暴牛は遮へい物のない平原に生息していた。街の東に広がる平原に十を超える群れが生息しており、南西の岩混じりの荒地にも、少しばかりの群れが見える。
「足場は悪いが、俺たちは南西の荒れ地を狩り場にしようと思う」
コウメイとアキラが三人に狩猟方法を提案した。
街の周辺は街道沿いをのぞいては草地だが、東は遮へい物や障害物のない平原なのに対し、南西は大小の岩が至る所にある。岩の性質はわからないが、見た目はカルスト台地のような地形だ。
五人は岩の陰に腰を降ろしていた。あたりにある岩はどれも身を隠せるほどの大きさはないが、マントの色合いが似ているので、フードを被れば遠目からは岩に見えなくもない。
「この岩は俺達が逃げるときの障害になるが、逆に言えば暴牛だって俺たちを追いづらいわけだ。できるだけ群れから離れている一頭を狙って屠り、仲間の牛が襲ってきたら岩場を利用して安全地帯まで逃げ切る」
「せっかく狩った暴牛は捨てていくんですか?」
「もちろん後から回収に行くよ」
「仲間を襲った人間を追い払った後は、襲撃のあった場所を危険と判断して移動するらしい」
暴牛は草食魔獣なので仲間の死体を食う事もない。放置された死体はそのうちに銀狼や野犬が食いに集まるが、その前に回収すればよいのだ。
「群れの端の方の暴牛を見つけたら、できるだけ大きな岩に身を隠しながら近づく。アキとサツキちゃんが二方向から弓で攻撃して、俺とヒロでしとめる。コズエちゃんには援護を頼む」
「暴牛の角は強力だ、刺さったら腹に穴が開く。治療薬は持っているが、間に合わない可能性はゼロじゃない。絶対に刺されるなよ」
コズエの作ったベストの胸には、治療薬と回復薬を入れておく専用のポケットがある。全員がポケットを触って錬金薬を確認した。
最初に見つけた暴牛は十頭未満の小さな群れだった。岩の間の小さな草地でまだ枯れていない草を食んでいる。
「群れの中心から離れているのは、右端のと、手前のか」
どっちを狙うか決めかねているとコズエが小さく手をあげた。
「手前の暴牛をおびき出せないかな?」
「どうやって?」
「スペインの闘牛みたいに、目の前で布を振って挑発するのはどうですか?」
「危険よコズエちゃん」
囮役をやる気のコズエをサツキが止めた。二十メートルほどの距離があっても暴牛の大きさは一目瞭然だ。あんな巨体が興奮したら、その動きも突きの重さも魔猪をはるかに越えると想像できる。コズエが暴牛の角に引っ掛けられたら、いとも簡単に飛ばされてしまうだろう。
「一頭だけ群れから引き離すにはいい方法だが……」
最初の作戦通りに一頭を屠っても、残りの暴牛に向かってこられたら逃げ延びられる距離ではない。確実に狩るなら、おびき出して引き離すのが一番なのは間違いない。
「この中では俺が一番足が早い。マントを使ってやってみよう」
アキラが自動弓をサツキに渡した。
「俺が暴牛を釣ってこの岩の間を走り抜ける。コウメイはあの岩の陰で、ヒロはこっちの岩のところで待ち構えててくれ」
岩間と群れとの距離を目で測ったコウメイは、これくらい距離をとれればいいだろうと頷いた。
「牛は案外目が悪い。ここまでおびき出して屠れれば、群れの奴らに反撃される危険はおそらくない。けど、確実に一頭だけを釣らなきゃ終わりだぞ」
あんな巨体を複数同時に屠る余裕はないと釘を刺すコウメイに、アキラは分かっていると深く頷いて返した。
「そこは上手くやるつもりだ。サツキはあの高い岩場から暴牛を射てくれ。タイミングは俺がこの岩場を走りぬける瞬間にあわせて、暴牛の頭部めがけて連射するんだ」
サツキは頷くと自分の弓をベルトに戻し、兄の自動弓をしっかりと持ち直した。
「私は何をすればいいんですか?」
槍の柄を握り締めたコズエ。
「コズエちゃんはとどめを刺してほしい。矢が刺さった状態で暴牛はここを通過する、コウメイとヒロに首を落としてもらうつもりだが、しとめ損なったときの保険だ」
コウメイらの待機場所から少し下がった位置にある岩陰をコズエの待機位置と決めた。
全員が所定の位置についたのを確認したアキラは、岩陰をつたいながら標的の暴牛に近づいた。三メートルほどの距離まで近づいたところでマントを揺らし、暴牛の興味を向けさせる。
ゆらゆら、バサッ。
強弱をつけたマントの動きに興奮した暴牛の蹄が地面を叩いた。
瞬間にアキラは走り出す。
岩の少ない走りやすい場所を選び、仲間の待ち構える場所を目指す。
どっ、どっ、と地を蹴る音が迫る。
暴牛が距離を詰めていた。
「っ!」
アキラは邪魔なマントを投げ捨てる。
暴牛と二メートル弱の距離を保ったまま岩間に飛び込んだ。
「やあっ!」
トス、トス、トスッ。
頭部と背中に矢が刺さったままの暴牛が狙い通りの位置に現れた。
「おらぁ」
振りかぶったコウメイが矢の刺さった暴牛の首に剣を振り下ろす。
「ふんっ」
同時に下からヒロの剣が喉を切り裂いた。
暴牛の巨体は勢いのままドスンと大きな音を立て転がった。
「えい!」
足掻く暴牛の頭をコズエの槍先が貫く。ぴくぴくと動いていた足も止まり、暴牛が死んだことを確かめてからコズエは槍を引き抜いた。
「サツキ、警戒を!」
予備の武器を抜いて構えたアキラの指示に、コウメイとヒロも暴牛の群れを振り返って身構えた。仲間が屠られた事をどう思っているのか、数頭がこちらを向いている。二十メートルほどの距離で対峙していたが、一分ほど睨み合った後、暴牛たちは方向を変えて離れていった。
「……はあぁ~」
暴牛の巨体を囲んでようやく緊張を解いた。
「追いかけてこなかったな」
「おびき出し作戦、成功ですね」
「緊張したぜ」
岩の上にいたサツキが駆け寄ってきてアキラに飛びついた。
「お兄ちゃん怪我してない?」
「大丈夫だ」
「追いつかれそうになった時はどうなるかと思った……」
マントを持ったままでは思うように走れなかった。次に囮をするときは小さな布を用意しておくほうが良さそうだ。
コウメイはしゃがみこんで自分達が剣を入れた場所を検分していた。
「ヒロの剣はやっぱり首の骨で止められてるな」
「喉の辺りは筋肉もなくて切れましたが、これだけ大型の魔獣だと骨も太くて頑丈みたいです。後頭部からのコウメイさんの一撃も骨で止められてるみたいですけど……半分くらいは切れてますね」
「コズエちゃん、槍を突いた時の感触はどうだった?」
「そうですね、予想していたよりも抵抗なく刺さった感じです。体重を乗っけて突けたのが良かったかな、と」
アキラは暴牛の背から矢を抜いた。
「あのスピードの的に三本とも当てたのはすごいな」
「最後の一本は頭からはずれちゃったけど……」
「自動弓はあまり練習もしていないだろう、十分な成果だよ」
狩りの簡単な分析はこれくらいにして、暴牛の解体を終わらせてしまおうとナイフを取り出したコズエをコウメイが止めた。
「今回は丸ごとギルドに持ち込んでみないか」
「いつも私たちで解体してるのに?」
「こいつは牛だからなぁ。日本の牛肉って部位によって値段も違っただろ。こっちの世界でもそうだったら、下手に解体して価値を下げるよりは、最初は持ち込んで解体を見せてもらったほうがいいと思うんだ」
そういえば、初めて角ウサギを自分達で解体したときも、魔猪の解体を教わったときも、最初に処理した物の査定額は低かったなとサツキも思い出した。
「暴牛は肉も皮も角も買取して貰えるんだ、解体手数料は先行投資のつもりでいいと思うぜ」
千キロに近い暴牛の死体を運ぶのは大変な仕事だった。ギルドで貸し出しされている中で一番大きな箱台車を借りてきていたが、そこに運ぶまでが一番の難仕事だ。手足を縛って木材を通し担ぎ上げようとしたが、男三人でも千キロの巨体を持ち上げることはできなかった。コズエの用意していた布を担架のように使うことで、やっと箱台車の場所まで運んだ。
「これは、何が何でも解体を覚えないとキツイぞ」
「血や骨を取り除けばもう少し軽くなるだろうし、内蔵も……新鮮なら食えるんだが、こっちの世界は内臓は食ってないみたいなんだよな」
コウメイがソーセージ作りのために羊の腸の処理を頼んだときも、食べるためだとは思われていなかったくらいだ。
「あ、アキ。この死体に冷却の魔法ってかけられるか?」
「できるが……ギルドに戻る頃には切れるぞ」
「十分だよ。解体でホルモンとかを捨てるようなら貰ってくるつもりだからさ」
内臓は新鮮なうちに処理しなければ食べられない。冷却保存しておけば、ギルドにつく頃にも新鮮なままだ。
アキラによって冷却の魔法をかけられた暴牛の死体とともに、五人はいつもより随分と早く街に戻った。二の鐘が鳴ったばかりのギルドに冒険者の姿はほとんどない。
コウメイらは査定窓口に暴牛を持ち込み、全員で解体を習った。
「皮は何ヶ所か深い傷があるから、その分査定は下がるぞ」
暴牛が倒れたときに小さな岩を下敷きにしていた。そのときにできた傷だろう。南西を狩場にするならこのあたりは諦めるしかない。
「へー、腸と心臓に舌は捨てるのか」
解体処理の責任者の解説にコウメイの目がキラリと光った。
「骨も大半は廃棄だ」
乾かして粉砕し肥料や家畜の餌にしているらしいが、ほとんど値段がつかないらしかった。
「皮は傷があったから二百五十ダル、肉は二百ダル、角が四百ダルってところだ。解体手数料と箱台車の貸し出し料金で八十ダル差し引くぞ」
合計七百七十ダル。
「なあ、その捨てちまう腸と心臓と舌、それと骨をもらってもいいか?」
「骨も内臓も食えねぇぞ。何に使うつもりだ?」
不審げな解体職員の問いを誤魔化して、コウメイは求める廃棄部位を持ってギルドを後にした。
「コズエちゃん、肉屋の彼女に暴牛のこと教えてあげなくていいのか?」
「そうでした。ちょっと寄り道してきますね」
「あ、帰りに市場でレトとヨルナガを買ってきてもらえるか?」
「……夕食はモツ鍋ですか?」
レトはキャベツに似た葉野菜で、ヨルナガはニラのような野菜だ。
「そうだよ。捨てるなんてもったいないよなぁ、ホルモン美味いのに。タンもハツも滅多に食べられないのにさ」
暴牛の臓物を大切に抱えるコウメイは、四人の冷たい視線に気づいていなかった。
「ハンバーガー」
「ローストビーフ」
「厚切りステーキ」
「あ……」
朝食の席でみんなを釣り上げるために羅列したメニューの数々。
コズエの軽蔑に満ちた視線を避け、サツキの呆れに満ちた薄笑いから顔を逸らし、ヒロの眉間に力のこもった半目から逃れて、コウメイは親友に助けを求めた。
「しぐれ煮はいつ作ってもらえるんだ?」
氷のように冷たく硬いアキラの表情の、口元だけがうっすらと微笑んでいて。コウメイの背筋に冷や汗が流れたが、今回ばかりはサツキは兄を咎める事はなかった。
「……いつ、だろうね?」
醤油が手にはいるのは何時になるのだろうか、それはコウメイ自身も知りたい事だった。
+++
丁寧に洗い下処理されたモツの煮込み鍋は美味しかった。最近は夕方から気温も下がり、夜は少し肌寒いと感じるようになっていたので、温かい鍋料理は歓迎だ。
「卓上コンロ欲しいよな」
「冷めちゃいますもんね~」
「台所まで何度も往復するのは面倒ですよね」
「コウメイさん、ちゃんと食べれてますか?」
モツがなくなれば鍋を台所に戻して調理し、野菜を足しても加熱に台所へ戻りと、コウメイはなかなか落ち着いて座っていられない。
「鍋料理のときは暖炉を使うことにしたらどうだ? たしか金具がいくつかついていただろう」
「そーいえば鉄製の五徳っぽいやつもあったな」
おき火にして五徳を置き、その上に鍋を置けば調理しながら食事もできそうだ。
「夜は寒くなってきたし、そろそろ暖炉を使ってみたいなぁ」
「暖炉の前で食事ができるように、ちゃぶ台みたいなテーブルを作ってみますか?」
コズエがハンクラ趣味で木工にまで手を出したのは、ヒロが一時期日曜大工にはまっていたせいだ。木工作業ならコズエよりもヒロの方が巧い。
「じゃあ私は座布団作るよ。端切れで作るから見た目は良くないかもしれないけど」
「コズエちゃんのパッチワークは私好きよ。真っ直ぐに縫うだけなら手伝えるからね」
ナモルタタルの真冬は、毎朝のように薄く氷が張るほどの気温らしい。雪の降る日も多いので、冬の間の冒険者は半分休業状態になると聞いている。五人の借りた家は暖炉の熱を家全体に循環させて温める仕掛けもあるらしいが、それをした場合の薪の消費量を考えると、冬の間は暖炉の前で過ごしたほうが節約にもなるし、寂しくないだろうと話し合っていた。
+
「昼間の狩りで、聞きたい事があるんですが」
モツ鍋の〆にコウメイ作の手打ちラーメンを煮込み、出来上がりをテーブルに乗せたところでヒロが問うた。
「暴牛狩りに魔法を使わなかったのは何故ですか?」
ヒロもコズエもサツキも、日常生活で魔力のコントロールを覚え、魔法の発動にも苦労しなくなっていた。攻撃魔法として使えそうなのはヒロの風魔法くらいだが、それを使えばもっと簡単に暴牛を屠ることができたのではないかと思うのだ。
「お兄ちゃんの魔法なら、あんなに危険なことをしなくても倒せたよね?」
囮役をして暴牛に迫られる兄の姿に恐怖したサツキもヒロに同意した。
「理由は二つだな」
箸を置いたアキラが三人を向いた。
「遮蔽物のない見通しの良いあの場所で、おおっぴらに魔法を使うのは危険だと判断していたのがひとつ」
暴牛に集中しなければいけないときに、他の冒険者や街道の旅人の視線まで気にしていたら隙ができる。魔獣は冒険者の隙を見逃してくれるほどたやすい相手ではない。もちろん、命の危険が迫れば人目など関係なく魔法を使うつもりではあるが、昼間はそれほど緊迫してはいなかった。
「もうひとつは、獲物を殺すためにどれくらいの力が必要なのかを知っておくためだ」
「力、ですか?」
「ヒロの風魔法は攻撃にも応用できるレベルだが、どのくらいの威力にすれば暴牛の首を落とせるかわかるか?」
コウメイとヒロの二人がかりでも暴牛の首は切落せなかった。骨の硬さ、筋肉の強さ、それらを思い出しながらヒロは少し考えて答えた。
「かなり強力な風刃を作らないとダメですね。鋭くて、重たくて、切れ味の良い大きな魔法になります」
「それは自分の手で斬ってみてはじめて分かったことだろう?」
「そう、です」
「俺もヒロに解説できるほど理解しているわけじゃないが、魔法と魔術は違うと思っている。魔術の事はわからないが、魔法は何もかもを自分でコントロールする必要があるだろう?」
「確かに、自分の感覚に頼っているところがあります」
もしも初見で暴牛を魔法で攻撃していたら、魔法に込める威力はとても軽く弱いものだったかもしれないし、過剰な威力の魔法を放ってしまい、暴牛一頭を屠る以外にも何かしらの影響が出ていた可能性もあった。
「最初から魔法を使っていたら、俺は切れない風刃を放っていたと思います。暴牛に傷をつけられないような魔法は意味がないし、みんなを危険に晒すことになったかもしれません」
疑問に答えを得てスッキリしたのか、ヒロは緊張を解いた。コズエやサツキも納得したようで頷きあっている。
「魔法は万能じゃない。間に合わないこともあるし、何らかの理由で使えない時だってある。魔法の効かない魔物だって存在する。それなのに倒し方がわからずに返り討ちにあって死にました、じゃ困るだろ」
「強くなろうと思ったら、魔法でショートカットしても経験値はもらえないんだよ、この世界は」
地道に少しずつ、自分の身体で学んでいくしかないのだ。
「ま、暴牛の硬さは分かったんだ。次からは支障のない範囲で魔法を使って狩るとしようぜ」
+++
翌日、ケイトの肉屋で暴牛の肉を買った。ステーキに向いた霜降りの部位を五人分、百五十ダルもした。ギルドに卸した値段は一頭分の肉が二百ダルだ。
「次に暴牛を狩ったら俺達で食っちまおうぜ」
ケイトに売って、自分達の取り分だけ肉屋の冷蔵庫で預かってもらえるよう交渉しようとコウメイは考えるのだった。




