姐さんとOL
アポカリウス=カイエンデルトは私の正面に立った。
「アオちゃん、心配要らないよ?オリアナちゃんとも話しているんだ。僕ね、ぽくっと逝く時はオリアナちゃんと子供達皆に囲まれて逝きたいって~だって残されるの、もう嫌だもんね。だから魔法使うの止める時は怖くはないんだよ。オリアナちゃんにも言われちゃった。人はいつかは亡くなるものね、今…って分かっててお別れが言えるなんて幸せなことねって」
そう優しい笑顔で私に軽い口調で話すアポカリウス=カイエンデルトに私は抱き付いた。未来も同じく抱き付いている。
「あれれ~わ~両手に美女だ!わはは…アオちゃんもミーちゃんもありがとね~。大丈夫大丈夫…」
この自称魔神の魔術師は本当に優しい人だ。とてつもなく長い時間を一人で過ごしてきて、腐ることなく恨むことなく…世界の為に愛する人の為に笑える。とんでもなくすごい魔術師だ。
ただの、ウザイだけのジジイじゃないものね…一応拝んどこう…合掌…。
「ちょっとーそれ知っているよ!アオちゃんの国の死者を送り出す時にする挨拶じゃなかったー?僕、まだ生きてるし!イケメンだし!」
ポカ爺がプーッと頬を膨らませた。この人…本当に御年1000才越えなんだろうか…。
ポカ爺はプリプリ怒ったフリ?をしながらポルンスタ爺と何かゴニョゴニョ話した後
「異世界に置いてある魔法陣、ちょっと描き換えておくね。魔力がある人なら誰でも起動出来るようにしとくから~そうしたら、皆里帰り自由に出来るよ~じゃあね!」
と、言ってポカ爺は消えた。
未来と思わず顔を見合わせた。未来は眉間に皺を寄せている。
「自由って…異世界から自由にこっちに来れるってことですよね?ヤバくないです?それこそフロックス大尉が言ってたって言う、得体の知れない何かが転移で…とかになっちゃいません?」
そうだわ…異世界に魔力持った人っているんじゃない?それこそ○リーとかさっ。
「術の発動条件を限定するから大丈夫じゃ」
「発動条件ですか?」
ガレッシュ様がポル爺に聞くとポル爺は未来やノリを見ながら頷いた。
「そもそもあの術は素養が無いと発動せん、それといくつかの条件を重ねるとアポカリウス殿がおっしゃっていた。大丈夫じゃ」
ポカ爺の条件…なんだろうか?怒ると怖いとか、胆が据わっているとか、実家が金持ちとか…?まさかね?
さてそれと並行して、異世界のなっちゃんに皆を代表してノリから手紙で意思確認をしてもらっていた。時々デジカメムービーで撮影した画像でのムービーレターもしてみたりした。
つまり…本当にジューイのくせにと結婚する意志があるのか?本当に変質者…もとい修羅場男のジューイなんかと結婚する気があるのかどうか?…等々しつこいぐらいに聞いてみてもらった。
『もちろんジューイさんとのご結婚に向けて前向きな気持ちは本当です。それと同時に、ノリさんや皆さんとお話させて頂いて異世界での生活で私なりにお役に立ちたいと…魔物やそれに付随する恐怖を軽減出来るお手伝いが出来るならと…こちらも前向きな気持ちでいるのです。本音を言えば、皆さんと一緒に日々生活するのが楽しそうだな~と羨ましいです。今からお会い出来るのが楽しみです。 ナツキ』
なっちゃん可愛すぎる…やっぱりジューイの嫁には勿体ないわね。
「なっちゃん素敵過ぎますね…やっぱ修羅男には勿体ないぃっ!」
横からなっちゃんからの手紙を見ていた未来が吐き捨てるように言った。ジューイへの呼び方が段々雑になってきてる…っ。
さて、今日は未来とガレッシュ様の婚姻式だ。派手にしたくないとの二人の意向のもと、親族だけの式になった。
ノリは今日はムービーで撮影係だ。あまり得意ではないのよ~と言っていたので、代わろうか?と言ったら妊婦さんはダメ!と言われた。
本日の未来は濃い目のブルーと紫のグラデーションになったお姫様みたいなレースが沢山ついているドレスだ。絶対お姫様スタイルにする!と声高に叫んでいたので本人の意向重視だ。
絵になる二人だわ~と、感慨深げに椅子に座って見ていると、ナッシュ様が顔を近づけてくると私の耳元でソッと囁いた。
「私達の時を思い出すな。あの時のアオイも本当に綺麗だった」
こらーーっ!もうっ…他所様の式の途中で色っぽい事言わないっ。
式は無事に終了した。
これで未来も第二皇子妃か…。妃の先輩として未来の手本になるように気品と品格に溢れる皇太子妃でいなければいけないわね!と、気持ちを改めたのだった。
婚姻式の次の日
「ちょっとーあんたいい加減にしなよっ!」
前日の気品溢れる皇太子妃でいなければ…という決意とは程遠い怒号を、ジューイこと修羅男に私は浴びせていた。
それには理由がある。
昨晩、なっちゃんから修羅男に手紙が来ていた。やっぱり…と言ってはアレだが、なっちゃんのご両親からそんな胡散臭い人と結婚なんて絶対ダメだ…と言われてしまったらしい。
当たり前じゃないか、異世界人だぜ~で誰が信じると言うのか…。
ジューイはどよ~んと落ち込んでいる。まったく…。
「あのね、何を根拠に婚姻を認めてもらえると思っていたのか分からないけど…普通の人は異世界人なんて存在していないと思っているの。現に私も自分が経験しなきゃこんな摩訶不思議な現象、信じるものですか。」
ノリと未来が第三の詰所でサラー入りシフォンケーキを食べながら大きく頷いている。未来が私を見ながら言った。
「明後日だっけ?先輩達が向こうでなっちゃんのご両親に会うの?」
「心配しなくとも、實川家と片倉家が立ち合いよ?官民両方の影響力のある人達じゃない。大丈夫でしょう?それに冷蔵庫の中から出て来るパフォーマンスをするように…と、お父様から言われてるのでしょう?百聞は一見に如かず、これですわね」
そうは言うけど、ノリ~本当に大丈夫かな…不安だよ。
明後日の朝、10刻過ぎ
なっちゃんからの連絡を待つ。すでにジューイは異世界に行っている。ゾアンガーデ夫妻と私達はなっちゃんの連絡後に異世界に行く予定だ。カッシュブランカ様と1DKマンション…ゴージャス貴婦人感満載のこの方がどんな顔してなっちゃん家のキッチンに居るのか早く見てみたい。
そのカッシュブランカ様は詰所のソファで優雅にサラーを飲んでいる。隣には夫君のジュリード様…。今日も渋格好いい!
「殿下、アオイ様、ナツキさんからお手紙来ました!」
扉の外で一礼したコロンド君が私になっちゃんからのお手紙2枚(何故か紙だけ?)を持って来た。
慌てて見てみた。
『葵さん、ナッシュルアン殿下
お待たせしました。転移の方をお願いします ナツキ』
と綺麗に書かれたなっちゃんの字だ。もう一枚は、修羅…ジューイだ。
『ナツキのじーちゃん達が全然信用してくれないよ…助けてくれ!』
ジューイ…心の叫び。
カッシュブランカ様は少し溜め息をつかれた。
「本当に情けない子だこと…さ、行きますわよ!」
はいっ!勿論お供します!
そして数分後?時間軸がズレているから数時間後かな…にカッシュブランカ様にジューイは八つ当たりをされることになった。
その訳は…
「あんなに面妖な場所から出なければならないならもっと早く言いなさい!ドレスや髪が乱れたでしょう!」
ごもっともです…。それは私にも非があります。すみません、カッシュブランカ様…。折角の○リー=○○トワネットばりのヘアースタイルが乱れておいでですね。
さて、まずは私とナッシュ様が異世界に移動だ。魔法陣に手を置いたナッシュ様に抱かれながら眩しい光に包まれた。
そして相変わらずの狭くて暗い所に転移すると
「いだだっ…狭っ…おえっ…」
お腹が圧迫される…。急いで明るい所へ手を伸ばした。ナッシュ様は先に出ていたようだ。ジューイにも手助けしてもらい引っ張って外へ出してもらった。
「うぉ…」
「うそぉ…」
「ホントに出て来た…」
おっと…声の方を見ると茫然唖然とした人達がいる。なっちゃんのお父さんかな?意外にもハーフなんだけどアジアよりな顔立ちだ。お母さんね、可愛い方ね。お姉さん?なっちゃんより外国人要素が薄めね。
あ、このガシッとしたおじいさんがお酒を送ってくれるお爺様とお婆様かな?この国の方ね。
「初めまして!鷹宮葵です」
私は居住まいを正すと日本人のご挨拶の基本、45度のお辞儀をした。
「本当だわ…日本人!」
「ヤダ…本当なの?」
相模家ご一家は興奮で騒ぎ出した。そんな中ナッシュ様が柔らかな微笑みを浮かべながらご挨拶をした。
「遠路遥々御足労頂いて申し訳ない。ナッシュルアン=ゾーデ=ナジャガルと申す。そこなジューイ=ゾアンガーデの従兄弟でナジャガル皇国の皇太子です」
なっちゃんご一家の前に歩み出たうちの旦那…今更ですが、そこそこ押し出しもいいし男前なんですよ。
なっちゃんのお母さんとお姉さんの顔が歓喜と興奮で頬を染めているのを確認した。たまにはやるわね、ナッシュ様!
その後にカッシュブランカ様とジュリード様ご夫妻が、冷蔵庫の中からいらっしゃった。
「うわあ!本物!」
「パパ!貴族っ貴族だ!」
なんか感動している相模ファミリーが可愛い…でもカッシュブランカ様は冷蔵庫から降り立つとジューイを扇子でビシッと指し示した。
「ジューイ!何ですかっこんな狭いところに転移されるなんて聞いてませんよ!折角ナツキのご家族とお会いするからと朝から磨きをかけてきたのにっ台無しですわ!あんなに面妖な場所から出なければならないならもっと早く言いなさい!ドレスや髪が乱れたでしょう!」
御髪が乱れていても怒っていてもお綺麗ですよ?カッシュブランカ様…と、思っていたら、なっちゃんがトトト…とゾアンガーデご夫妻の前に歩いて来てゆっくりと淑女の礼をした。
「初めまして、カッシュブランカ様、ジュリード様、ナツキ=サガミと申します」
カッシュブランカ様は手でササッと髪を整えると悠然と微笑まれた。
「お顔を上げて良く見せて下さいな」
「はい」
なっちゃんはゆっくりとカッシュブランカ様を見上げた。興奮か緊張なのか、少し頬を赤く染めたなっちゃんは、それはそれは美しかった。流石っハリウッドーー!
カッシュブランカ様も私と同じ事を思ったみたい。顔を輝かせてワナワナ肩を震わせると横に立っていたジューイの二の腕を扇子でバシッバシッと何度も叩いた。
「痛っ?!何だよ…もうっ…」
「ジューイッ!あなたにしてはでかしましたよ!こんな可愛らしいお嬢さまなんて…まあぁ…こちらがご両親かしら、お初にお目にかかりますわ、そこのでかいのの母でございます」
すげっぇぇ…異世界のお局圧がすげぇぇ…ここに美園ママと邦子居なくてよかったよ。お局の異世界交流でとんでもない圧力が発生する所だったよ…。
ズイィとカッシュブランカ様とジュリード様はなっちゃんのご家族に近づいた。何故だかナッシュ様もカッシュブランカ様に引っ張られていた。
「まあ、オホホ…」
「きゃあ、皇太子様素敵!」
「こちらに…シャシンが御座いまして…」
「この銀髪の子めっちゃ格好いいよ!」
あれ?あれれ?いつの間にカッシュブランカ様はルル君とコロンド君の写真を持って来ているの?その異世界アイドルの生写真に食いつくなっちゃんの母、祖母、お姉さん…あれ?
見事に實川のおじ様と片倉のおじ様は影が薄くなっている。實川のおじ様が空気を読んで「私、ちょっとこの後仕事がありまして…」とかなんとか言いながら、片倉のおじ様と二人で帰って行ってしまった。
帰り際、實川のおじ様は私に目配せをしていたので、後は任せた!かな?と勝手に解釈した。
ジューイとなっちゃん、私はベッド際で三人で固まっていた。
「で、ジューイはなっちゃんのご両親に娘さんを下さい!とかやってくれたの?」
なっちゃんははにかんだ後、チラチラとジューイを見ながら
「ずっと文通をしていて顔も見た事なかったのですが、内面の美しさに惚れました…と、えへへ」
顔を真っ赤にして教えてくれた。
ふーーん…。そんな見たことも無い女知るもんか…とか言ってたけど…ふーーん。
まあ、こんな御目出度い場所で意地悪言うのはやめましょ…。
なっちゃんのご家族とゾアンガーデご家族は楽しそうに話している。両家の顔合わせは、まずまずの様だね。
「あ、それとお聞きしたんですけどノリさんが、魔術師の修行を始めちゃうんで軍のお仕事やめちゃうんですよね?」
「そうなのよ~。折角第一部隊にも女性隊員が来たー!って、くまさ…皆、喜んでいたのにね」
なっちゃんは少し眉間に皺を寄せた後にっこり微笑んだ。
「あの…正式に面接とか試験を受けさせて頂けるなら、軍の事務の採用試験、申し込んでみてもいいですか?」
「やった!」
「ダメだ!」
私の言葉とジューイの言葉が真逆な発言をした。おや?私はジューイをジロリと見上げた。
「何がいけないのよ?」
「ダメだ、ヤローがいっぱいいる…」
「軍の施設だから当たり前でしょう?」
私とジューイが言い争いになりかけた時になっちゃんが、あの…と声を上げた。
「私…働いたらいけないのでしょうか?」
ほぉ~ら!ジューイのお馬鹿め!そんな言い方したら女子から反感買うわよぉ~!
ハリウッドナツキは悲しげに目を伏せている。私は更にジューイを睨みつけた。
「あのね、専業主婦になれっての?あなたの家って使用人いっぱいいるじゃない?なっちゃんを家に居るだけの嫁にさせるつもりなの?なっちゃんだって生きがいが欲しいわよ。そりゃ子供が出来たら状況が変わってくるかもだけど、出来るだけ世の中と関わって行きたいわよ~ねぇ?」
なっちゃんは目を輝かせるとコクコクと頷いている。
「それに軍の仕事がダメだっていうなら、なっちゃんは商店街で働いちゃうかもよ?そうしたら市井の若い男性から言い寄られちゃうかもね~」
「それは絶対ダメだ!」
私は下からグィィとジューイを睨んだ。
「だったらまだ軍部のお勤めの方がジューイの目が届いていいでしょう?」
なっちゃんのウルルとした瞳と私の睨みで…ジューイが折れた。小さい声で「分かった…」と呟いた。
なっちゃんはジューイに見えないように私にサムズアップをしている。なっちゃん意外と策士?
何とかジューイとなっちゃんの婚姻は先に進めそうだ。良かった良かった。
ポルンスタ爺から、異世界のなっちゃん家の魔法陣の描き換えは上手く行ったと…聞いたので、なっちゃんとドアンガーデ一家が異世界で両家のお食事会をするらしい。
なんとも濃い面子だな…と思っていたら、な、ななんと食事会を終えて魔法陣から帰って来て、詰所のジューイの机からゆっくりと降り立ったリリアンジェ様(修羅男の妹)は驚きの装いをしていた。
「リリアンジェ様~それ何?!フェミニンなスカートにこれまたキャピとした薄手のカーディガン!」
リリアンジェ様は皆の前でクルリと一回転すると、女子大生やリア充OLのようなネイルアートの爪をキラキラさせながら微笑んだ。
「ナツキがね、お食事会をしたホテル?という建物の中に出店している洋装店であちらの私ぐらい年代の女性が着ている普段着を選んでくれましたの!どう?似合ってます?」
「おお、良いな!リリアンジェ~」
「ナッシュ兄様には聞いてませんわよっ、はっ!アーダクトに見てもらわなきゃ!」
「そうだ、そうだ!そんな可愛い姿、旦那に見てもらっといで!」
私がそう言うとリリアンジェ様は頬を染めて駆け出して行った。可愛いな~。
しかし次の転移魔法で可愛いどころかとんでもない迫力のブツが運ばれてきた。
「!」
ブツから発せられる闘気?威圧がすげぇぇぇ…。
「姐さん!お帰りなさいまし!」
「何ですの?アオイ」
思わずの迫力に頭を下げた。姐さんことカッシュブランカ様は御着物を召しておられた。
どこからどう見ても三代目姐だろ!?なんでまたそんな下に髪を纏めてる!?余計に姐さん感が増している!おまけにその○麻ちゃんが着ているような銀色と薄紫の渋カッコいい色の…それは丹後ちりめんかい?
高級御着物で更に迫力を増しているカッシュ姐はスッスッと詰所内を移動するとソファに悠然と座って後から来たジュリード様に微笑んだ。因みにジュリード様は親分ではなかった…。普通のスーツだった。
「ジュリード、異世界の装いも似合っているわね」
「カッシュはキモノも似合っているね、美しいよ」
そう言いながらカッシュ姐の頬に口づけを落とす、イケオジジュリード様…っ!格好いい…。
「カッシュあ…ブランカ様、その御着物どうされましたの?」
と、私が聞くとカッシュブランカ様はそれは嬉しそうに頬を染めると言った。
「ホホ…何でもナツキのお婆様が若かりし頃にお召しになっていたものだとか…ナツキに譲ろうと思ったけど私の方が似合うからと…頂きましたの!本当…手触りも素敵だし、色も綺麗ね」
私は近づいて間近で着物を見た。上質な一品だ。お手入れも完璧。
「素敵な御着物ですわよ、カッシュブランカ様の瞳の色と合わせてとてもお似合いです。良い頂きものでしたわね。着物の保管方法はノリが詳しいので彼女に聞いてみて下さいね」
と異世界のお洋服事情などを話してご機嫌なゾアンガーデ夫妻は帰って行った。
その日の夕方ジューイは帰ってきたがヘロヘロだった。
「疲れた…人生で一番疲れた…」
「お前まだ婚姻式の本番があるだろ?今から疲れてどうするんだよ」
ナッシュ様がそう言うとジューイは机に突っ伏していた頭をヨロヨロとあげた。ホント…いつものマッチョイケメンが若干げっそりしているわね。
「だってよ…異世界でもさ、…え~とケッコンシキ?っていうのしましょうよ!て、オバハン共が盛り上がっちゃってさ…あいつらさ~ルルとかコロンド見たいだけなんじゃねぇの?」
うえぇぇ!結婚式?!ちょっとそんな異世界交流結婚式なんて…大丈夫なの?!
思わずナッシュ様を見たけどナッシュ様も戸惑ったような顔をして私を見ている。
まあ…取り敢えず国王陛下が、いいよ~と言わなきゃそもそも開催?出来ないだろうし…そうそう異世界に押しかけたりとかしないでしょ…しないよね?
キリッシュルアン国王陛下が常識人であることを祈るわ…。
ところがだ
忘れていたが国王陛下もナッシュ&ガレッシュの親だった。
特にガレッシュ様と、ここぞ!という判断基準が似ていた。
簡単に言うと、押すなよ?押すなよ?えーい押しちゃお!…な性格なのである。
「面白そうだな、よし、異世界に皆で行ってみるか!」
おいぃぃ…国王陛下ーー!
そうだった…忘れていたけど昔暴れん坊で結構な不良?だったんだっけ…。こんな面白そうなシュチェ見逃すわけないか。そうか、今回の魔法陣の転移騒動…実は参加したくてウズウズしていたに違いない。
押しちゃお!な性格の暴れん坊に権力があるって怖いわね。あっと言う間に話を纏めちゃって、第三の軍の皆とゾアンガーデ家、まあ一応親戚だからと国王陛下夫妻まで異世界に行くことになった。
ナジャガルの皇族全員が留守にするのはマズいんじゃない…と思っていたらガレッシュ様と未来が留守番をしてくれるらしい。じゃあ私も…妊婦だし…と留守番組に入ることにした。
ナッシュ様は少しはごねたが、体を気遣って…と理由を言うと納得してくれた。
まあ…たまにはのんびり行きましょうか…私以外は異世界の結婚式に参加しているので詰所で一人、熱い日本茶をズビビ…と飲んでいる。流石にちょっと寂しいわね…。
少ししんみりしていると、ここにいるよ~みたいなお腹から弾む魔力を感じる。
「そっか…私一人じゃないか、あなたが居たわね。そうだ、柏餅食べる?」
食べる~食べる~みたいな更に弾むような魔力がお腹から返ってくる。思わず笑みが零れる。
そして、子供と二人…柏餅を食べてのんびりとした時間を過ごした。




