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怯える剣士


さてさて


ノリのお見合い相手(仮)のミーツ=ブルブランド近衛騎士団副団長(昇格した)に早速ノリの写真をお見せした。


近衛の詰所に居たシューテ君とジーパス君その他の顔面偏差値高めの近衛のお兄さん達が、同じく写真を覗き込んでいる。


「すごいな、これが異界の技術?でしたかね?ミライさん」


「こんな小さな紙の中に姿写せるんだ!すごいですね、ミライさん!」


「ノリさんてこの人?可愛いですね、ミライさん」


と、近衛のお兄様方は私が居るのに、質問は全部未来に聞いている。おいっ流石の私もいじけるぜ!


「ノリさんに関しては私は面識が無いんだよ、アオイ妃に聞いてよ」


未来さんが若干イラッとしたような口調で返すと、近衛の詰所内はピリリとした魔力に包まれた。私は敢えて気づかないフリをしながらミーツさんに顔を近づけた。


「どうかな?ノリの印象は?」


ちょっと気になるのだが…さっきからミーツ兄さんが写真を凝視したまま固まっていることだ。どうしたのだろう…ま、まさか何か写ってるの?し…し、心霊写真…ぎゃあああ…。


私が恐怖に慄いているとミーツさんはやっと絞り出すような声で一言だけ発した。


「レアンテリ…。レアンテリ大叔母に…似ています」


ん?大叔母?ああ、すでに亡くなっているポル爺のお姉様ね。ノリに似てるの?


「へぇ~まあ、同じ人種だからかね。ノリは黒目がちな日本人形な顔立ちしてるからね。余談だけどノリのお母様がすごく古くから続く家系で、此方で言う所の神殿などを建築したりする専門の建築屋さんの家系なのよ。え~と飛鳥時代からだから1400年くらい前から存在するお家のお嬢様なのよ」


「ひぇぇ…そんなお家、現在も存在しているんですか?!」


「ほとんどは戦国時代に途絶えてしまったと聞くけどね…」


とか未来と話している横でミーツさんはぽーっとしていた。


後でミーツさんに聞いた所によると、この時に絶対にノリを召喚するぞ!と心に決めていたらしい。


さてさて


問題のデジカメでの撮影を行うことになった…が…。やはりここでも魂を抜かれる!と言う訳ではないが…見た事のない得体の知れない小さい箱を見て怯える人が居た。


意外にもルル君だった。案外ビビリなのか?


「怖い…」


と、全然怖くないような無表情で答えるもんだから、皆が面白がってデジカメを構える未来の前に一人で放り出されることになった。


さっきから…幻の剣を構えて未来とルル君が睨み合い状態になっている…ように見えるのは私だけか?


「ルル様、顔が怖いよ?笑って~」


と何度か未来が声をかけても、ピクリとも表情筋の動かないルル君。緊張感が漂う…。


「もう、いいよ!はい、撮った!」


「っわあ…!」


びっくりした…イヤ何にびっくりしたってルル君の叫び声よ…。ルル君でも怖くて叫ぶことがあるのね。


「ルル様、上手く撮れてるかな…」


未来が画像を確認しているので私も覗き込んで見る。


「ブレてるね…」


「もうっルル様、動いちゃだめだよ!深呼吸二回分は同じ姿勢で立っててって言ったじゃないか!」


ルル君は恐怖体験を再びこなすことになった。この撮影を見ていた皆も要領やコツを掴んだらしい。一人撮る度に皆で画像を見て笑って、楽しい撮影会になった。


そうそう、皇宮の外に出て城の外観も撮影してみた。我ながら絵葉書の如く綺麗な一枚が撮れた。この写真を見たナッシュ様が、自分用に欲しいと言い出したので、それならばとナジャガルの名所を撮って絵葉書にしてお土産にして売りに出そうか?と提案するとそれはそれは、ナッシュ様以下国王陛下やバウントベリ宰相までもが大喜びで、ものすごい勢いで土産物制作委員会が設置された。


その日の夜…なっちゃんからお返事があった。


まだ、テレビでノリとぼんくらのセレブ婚の続報が流されているらしい。ノリは呑気なものだけど、周りの皆は結構ピリピリしているらしい。


心配していたノリには、運転手の森元さんが付き添っているらしい。よしっ…。


なっちゃんは私から菓子折りを貰って非常に恐縮していた。そして、手紙の内容を良く読んだ上で、ノリに真実を打ち明けることにしたらしい。


『ノリさん、異世界と冷蔵庫で繋がってるなんて…信じてくれますかね?』


むむっ…そうなのよね。取り敢えず私から直接ノリ宛てに手紙を書いて…それから冷蔵庫の向こうの異世界で私が元気で居る証拠があればいいのよね~。そうだ!ノリの目の前に私の手料理をすぐに出せば信じてくれそう。


なっちゃんにそう提案するとすごく喜んでくれて今晩、自宅に招いてみる…との返事を頂けた。そしてなっちゃんからお借りしていたデジカメを返した。


『うわーーっ上手く撮れてますよ!葵さんはノリさんからお写真拝見したことあるのですが、未来さんも美人さんですね!てか…このブルーブラックの髪色のお二人ぃ~もしかして旦那様と弟殿下ですか?!めちゃ男前じゃないですかー!やだっかっこいい!』


おほほほ~そうでしょそうでしょ?うちの旦那と義弟、いけてるでしょ?兄の方はお菓子お菓子とおかしい人だけど。あら、駄洒落になっちゃったわ~。


なっちゃんは写真をプリントしてすぐに送り返してくれた。そうだった、コンビニで写真プリント出来るのだったね。皆に明日写真を渡しましょ。


うふふ、でもノリとの話が上手くいくといいな。あ、そうだノリは絶対、出汁巻卵焼きを食べたいはずだから準備しておこう。この為にお出汁作りだめしといてよかったわ~!


その次の夜


なっちゃんがノリに打ち明けてからノリから手紙が来た時は大泣きしてしまった。


私はノリから貰ったメモ紙のお手紙とマカロンの空箱を抱いて寝た。マカロン本体はナッシュ様とザック君に食べられてしまったけどいいよね…まあ本音を言うと、ちょっとは食べたかったけどね。でも私はいつも食べてたし~悔しくはないわよ?


カデちゃん…マカロンの作り方知っているかしら…?


次の日からなっちゃん経由でノリとも連絡を取り始めた。


なっちゃんから、この世界の魔の眷属やそれに纏わる召喚の事を書いた手紙をノリに見せてくれるようにお願いしていたのだ。


ノリからは手紙を読んだ後、しばらく時間を置いて考えさせて欲しいことと、ミーツさんのお顔を写真で拝見したとの連絡は受けた。


『綺麗な顔の方ね』


うむ、好感触?なのかな…この返事だけでは分かり辛い。


ノリには無理強いはしないこと、ノリの意思を尊重すること、あくまでお見合いの形はとるけれど、自由恋愛が基本だから気にし過ぎないように。あくまで私がノリに来て欲しいのだということを強調して書いた手紙を渡しておいた。


さて、今日は異世界は土曜日、ノリはなっちゃんと二人で色々と私に送るプレゼントを買い出しに出かけてくれているようだ。


「楽しみだな~」


「そうだな、どんな菓子かな?」


「あら?ナッシュ様の分なんてありましたっけ?」


ナッシュ様はババンとソファから立ち上がった。何事かとコロンド君とジューイが見詰める。


「またお前だけ美味しい菓子を独り占めするつもりだな!私にも寄越せ!」


おい…また菓子論争?いい加減にしろ…。するといつもこの論争には参加すらしたことがないジューイが呆れたような顔でナッシュ様をビシッと指差した。


「隊長な…ナツキは善意で菓子を送ってくれているんだぜ?そのおこぼれ貰っておいて、もっと寄越せって一国の皇太子に有るまじき発言だぜ?ナツキがそんな隊長の発言聞いたら悲しむぜ。隊長のシャシンを見てすごくカッコいい皇太子殿下だ!って褒めちぎってくれたのにさ~」


ジューイが珍しく語気を荒げている。ナッシュ様もジューイのイラつきが本気だと感じたのだろう…。シュン…としてソファに座り直すと小さくなっている。


ふーーーん…。


「…何だよ」


ジューイがまだイラつきながらこちらを見てきたので、以前書いていたメモ紙を出して朗読してみた。


「俺は女には困ってないんだ!そんな見たとこもねえ女なんか来たって知るもんかっ!…以上です」


ジューイは真っ赤になって何か言い返そうとしたが私は睨み返してやった。性格悪くてすみませんね~。一語一句メモってますので~。今はナッシュ様に偉そうに説教していたけど、まだ見ぬなっちゃんに暴言を吐いていたこと、私は忘れてませんよ?


「アオイ妃、シテルンの役人の方が、サンチョクセンターの件で、来てらっしゃいますよ」


コロンド君がよいタイミングで執務室に顔を出してくれたので、は~い!と元気に返事をしながらジューイの前から颯爽と退場した。


夜、なっちゃん宅にノリと共に帰宅したらしい二人から、待望の○ンサン○レーヌの果物がドーンと乗ったケーキとナッシュ様が待望していた和菓子数種類が魔法陣によって届けられた。この日はお菓子が送られてくる…との情報を得て、第三の詰所にはヴェルヘイム一家も急遽来訪していた。


「きゃああ!」


届いた瞬間、カデちゃんが悲鳴を上げた。一緒に届いた手紙を読んだ。


『今日は、ご希望の洋菓子と和菓子の店に行ってきたわよ。ご賞味あれ。それと麹を買って来たから、自家製のお味噌作ってみる?作り方はテキストついてるから大丈夫だと思うわ。 ミノリ』


ノリ‼流石だよ!麹は盲点だった!助かる~。


『日本茶も買って来たので和菓子と一緒にどうぞ♡ カデリーナさんが来ているって聞いたので、たこ焼きも買って来ましたよ!  ナツキ』


「たこ焼きよー!なっちゃんありがとうーーーっ!」


「母上ー僕にも頂戴~!」


「食べたい食べたい!」


チビッ子達にせがまれて、ヒートの魔法をかけてハフハフしながらたこ焼きを食べるカデちゃん、リュー君レオン君…微笑ましい。


「アオイ様、これ何~?」


ザック君がたこ焼きの横に置いていた袋を持ち上げた。何々?


「もんじゃ焼きの粉だわ!なっちゃん気が利く!ザック君今度作って食べましょうか~」


ザック君のたこ焼きにもヒートをかけて渡すと、ザック君は顔を輝かせた。うんうん、微笑ましいね。


「この丸いのについてる黒いの美味い…」


「閣下、アンコと言う甘味らしいですよ」


…てかナッシュ様とヴェルヘイム様のおっさん2人組、いつの間にあんころ餅食べてんのよ?食べていい、って私許可したっけ?


すると魔法陣が輝いて、ジューイさんへ…と書かれた手紙と可愛い小箱が一緒に乗っていた。


ジューイとガレッシュ様はその箱の中を覗いて何やら嬉しげだ…個人的になっちゃんに何か頼んでいたな?さっきは偉そうに善意ガーとかおこぼれガーとか言ってたけど自分だって貰ってんじゃん。


ジーッと見ているとジューイが見詰める私の視線に気が付いたのか、こちらの方を見た。


ジューイは睨んで来たけど、私は心のメモに善意ガーおこぼれガーの一文をメモってやった。おほほほ…。


因みにミーツさんも地味ながらノリと文通を始めていた。


こちらは大人な二人なので、派手なやり取りはなさそうなのだが、ノリからの手紙を手に、一人酒をしているミーツ兄さんが非常に色っぽいと、目撃した近衛の若い男の子が噂をしたものだから、妙齢の女性から再び渋いイケメン枠で脚光を浴びているらしい。


ノリよ…早くしないと未来の旦那(仮)が奪われてしまうよ?


そしてその日から二日後、異世界で事件が起こった。


それまでテレビでノリとぼんくらこと鷹宮学をセレブ婚だのなんだと、鷹宮サイドが話題にしようと頑張ってはみたものの…実川物産サイドからは拒否の姿勢しか出てこないこともあり、この話題は一週間ほどで芸能?業界?ニュースからは消えていったのだが…。


消えていってやれやれと思って、油断していた…異世界でのバレンタイン当日。なっちゃんとノリからチョコレートを貰って小躍りしているナッシュ様やジューイの元へまた魔法陣で手紙が来た。


『た、大変ですっ!ノリさんから連絡が来て今はノリさん、実家に戻っているんですが…その自宅前に鷹宮学と…葵さんのご両親とかその他色々、鷹宮一族が押しかけて来ているらしいのです。今は玄関口で揉めてるみたいです!』


「何ですってぇ?!ちょ…警察を…は、大事になるからダメか…なんの用事だ…馬鹿の考えることは分からんっ…。押しかけている暇があるなら、不倫ミラルからブランドイメガを代えろ!」


と、私がなっちゃんからの手紙を見てブルブル怒りに身を震わせていると、手紙を覗き込んだナッシュ様がこう言った。


「異世界の事だから、私も自信を持っては断言できないが…こういう場合、押しかけて来る理由はこうじゃないかな?つまり『世間的にもう婚姻すると知れてしまった、そちらが婚姻を断ってきてこちらは恥をかかされた、責任を取って婚姻しろ』じゃないかな?」


「嘘でしょう?そんな理屈通る訳ないじゃない…」


私が唖然としてそう言い返すと、ナッシュ様はジューイと顔を見合わせて苦笑いをした。


「イヤ…実例があるんだよ。以前も言ったけど私のことを逆恨みして…男色云々の噂を流した令嬢が居た…と言っただろう?」


ああ、あの結局病んで田舎に引き籠ったご令嬢よね?私が頷くとナッシュ様は話を続けた。


「あのご令嬢も色々噂を流してこちらに迷惑をかけてきたのを抗議しに行くと、逆に私と噂になって婚姻が出来ない…責任を取って自分と婚姻しろ…と迫ってきたんだ。な?ジューイ?」


「ああ、馬鹿らしいと思うけど、実際にその馬鹿を目の前で見てみろよ?怖いぜ…、そうするのが当たり前、婚姻するのは当然でしょう?とか言ってるの見て俺、怖くて総毛だったわ…」


自分から噂を流して嫌がらせしておいて、今度はその噂で困らされた…責任を取れと…?まさか…。


まさか…と思っていたけれど…そのナッシュ様の読みは当たっていた。


その日、夕方近くになってなっちゃんからやっと手紙が来た。


『なんでもあのぼんくらと婚姻しろ…って言ってきたらしくて…すごい騒ぎになって…顧問弁護士さんが駆けつけて来て、ものすごい一喝をされて鷹宮一族が渋々帰った…と聞きました。詳しくは明日ノリさんから聞きます。ノリさんはご両親と片倉さんの親御さんにこちらの事情を話してみたい…とおっしゃってます。葵さんや未来さんのご意見お聞きしたいです。  ナツキ』


「おじ様達に…未来は、どう思う?」


横で一緒に手紙を読んでいた未来は顔を強張らせていた。


「お父さんに言っても信じてくれるかな…」


「だよね…」


一応、両親達に話してみてもらっても構わない…と了承の返事を書いて送り返しておいた。


心配して駆けつけてくれたミーツさんにも軽く事情を説明しておいた。


翌日の夜、ノリから手紙が送られてきた。


『昨日はお騒がせしちゃってごめんね

私も慌ててしまって、なっちゃんにも葵達にもご心配をおかけしたこと深くお詫びします。


昨日、鷹宮一族が押しかけて来て…彼らはこう言ってきたの。マスコミに騒がれてさぞやご迷惑だったと思います、こうなった責任を取って鷹宮一族として私を實川実莉を嫁に迎え入れたいと思う…って。』


「はあああ?!」


一緒に手紙を覗き込んでいた、未来そして、怒りの緊急参戦のカデちゃんと私…の三人は同時に叫んだ。


『怒りで頭が真っ白になったわ…。お父様達がものすごく怒って、訴えると騒いでね。弁護士の先生が間に入って追い出してくれたの。でもね葵のご両親なんて帰り際私に向かって、どうせ嫁にも行けないのにうちの学が貰ってあげるのに何が不満なんだ…て言ってきたわ…眩暈がした。あなたのご両親って前から非人道な方々だな…とは思ってたけど、本当にびっくりしたわ。』


「なんてこと…最悪…」


「うわ…」


「葵…」


私の体を未来とカデちゃんが横から支えてくれた。


「昔から、あの人達は変わってるし…人としておかしいとは思ってたのよ…それでも親だし我慢していたわ。でも、関係ないノリにまで暴言を吐くなんて…我慢出来ない。異世界で手も足も出せない自分が悔しいわ…」


手紙はなっちゃんの分も入っていた。未来が読んで息を飲んでいる。未来から手紙を受け取った。


『今、私の家にノリさんのご両親とお兄様と片倉さんのご両親が来ていらっしゃいます。デジカメの写真をお見せしました。まだご両親は信じていらっしゃらない感じです。今、ノリさんが冷蔵庫の前で熱弁を振っています。この手紙を送って見せてみますので、お返事なり何か送って頂けたら助かります。 ナツキ』


「おおっ!」


「お父さん、こういうファンタジーとは無縁の人だからなぁ…何を送ったらいいんだろう?」


「あ!バレンタインのチョコは?」


カデちゃんの提案に、未来はヨジゲンポッケの中から軍の殿方用に大量に作り置きしておいた義理チョコを取り出して来た。


「手紙も書きますね…。よしっ」


私も簡単にノリのおじ様に手紙を書いて、魔法陣の上にチョコと一緒に未来と私の分を置いた。


暫く、返事は無かった。


カデちゃんにノリに頂いた麹を分けて、作り方のテキストを読んで時間を潰していると小一時間以上待ってやっと魔法陣が輝いた。


手紙が二通…一通は私宛、ノリのおじ様とおば様の連名だ。もう一通は未来のご両親みたい。


私はノリのご両親の手紙を読んだ。


『葵ちゃんへ


美園は手が震えて書けんというので、私が代筆するよ。正直まだ異世界というものが本当にあるのか…気持ちが整理出来ていないよ。でもデジカメの中の画像、目の前に現れた葵ちゃんの手紙とチョコレート…現実なんだね。とにかく元気だということだね?無事なんだね?向こうで幸せなんだね?それだけが心配だ。いいね、困ったことがあったら、実莉を通して必ず報告しなさい。出来る限りの援助はするからね。それと結婚おめでとう。もうすぐ子供も生まれるそうだね。嬉しいよ。元気でな。


實川精毅、美園』


心配させてしまっていた…本当の親じゃないけど、私にとっては実の親以上の方達だ…。ナッシュ様が静かに横に来ていた。手紙をナッシュ様に渡すと、ゆっくりおじ様の手紙を読んでいる。


「ノリの…ご両親は良い方々だな」


私も泣いているけど、ナッシュ様も目を潤ませている。ホント泣き虫なんだから~。


未来も号泣している。その横でガレッシュ様が未来の背中を摩ってあげている。


「ガ…ガレッシュ様と結婚するって報告したんです~そ、そしたら絶対反対するって思ってた父が、泣いてしまってぇ…母が返事書いてくれました。母もイケメン皇子だから大喜びで…子供出来たら写真送れって…。うぅ…」


意外にも未来のご両親は柔軟な対応をされる方みたいね。


後でナッシュ様はノリのご両親にガレッシュ様は未来のご両親に手紙を書いて渡したらしい。二人共優しいね。


更に後で聞いた所によると、なっちゃんのデジカメの画像を見たお母様達がルル君とコロンド君に熱を上げ、そして未来とノリのお嫁に行ったお姉さん達がミーツさんとキリッシュルアン国王陛下の渋い姿に歓喜したらしく、なっちゃんに写真の焼き増しを頼んで来たらしい。ちょっとした異世界アイドルが誕生した瞬間だ…。


「写真集でも出したら儲かるかしら…」


「いいっすね、ルル様やジー君やシュー君にも脱いでもらいましょうか?」


未来さんがサラリとそう言った言葉が、廻り廻ってルル君の耳に入って、顔を真っ赤にしたルル君が詰所に乗り込んで来て未来と睨みあう…ということもあったりもした。


今日もミーツさんは静かに詰所に入って来られると、ノリ宛ての手紙を魔法陣の上に置いて憂い顔をされている。ただ手紙を置いただけなのにカッコいいって何事なんだ…とミーツさんを見ていると、目が合って微笑まれてしまった。


今の顔デジカメで撮りたかった…。お姉様達すみませんっ!


「ノリは、アオイ妃の従兄弟殿と相手のご両親にまだ何か言われているみたいですね…」


そう…ミーツさんのおっしゃる通り、ノリはあれから何度かぼんくら達に会社の前で待ち伏せされたりしているらしい。今度という今度は、實川のおじ様も激おこでノリに護衛をつけて厳戒態勢だそうだ。


「もう犯罪の域に来ているから、警察…こちらでは警邏ですかね?に捕まってしまえばいいんですよ」


ミーツさんはナッシュ様と苦笑いを浮かべている。


「ですが、アオイ妃のご両親でしょう?」


「あんな人達、親なものですかっノリに迷惑かけたりして…捕まっちまえ!」


と私が呪って?いたのが効いたのかどうかは分からないが…。


実家から一人暮らしのマンションに戻ったノリの部屋に、ぼんくらと別の従姉妹が押しかけて来て騒いで、とうとう警察を呼んで連行される…という騒ぎになったのだ。


だがすぐ釈放されたぼんくらが、週刊誌にベラベラと喋りまくりノリに対する悪質な記事が載り、とばっちりを受けてノリがまたマスコミに狙われる事態になってしまったのだ。


ノリは随分気落ちしていた。手紙でも元気が無いのが分かる。ミーツさんも未来も励まそうと色々送ったりしているが、ノリの気持ちは中々浮上しないようだ。


そしてとうとう、ミーツさんが切り出したようだ。


異世界に来ないか…と。待っている…と。



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