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文明の利器


魔法陣の前で茫然としていると 再びペラッ…と異世界から紙が送られて来た。


『SNSで拡散されているネットニュースなのですが、ノリさんが結婚式場に鷹宮学と現れた…とブライダル関係者が暴露した記事が載っていまして…』


ノリと学が!?…有り得ない…うん、有り得ないわね。


ノリはどう言っているのかしら…と、書いて手紙を送り出した。すぐに返事が返ってくる。


『ノリさんのスマホにメッセージを送っているのですけれど、返事がないです。寝てるのかな?』


うん、有り得る…ノリはのんびりした性格だ…。本人は兎も角、ノリのお父様と陸翔お兄様が怒り狂って反撃していると思われる…心配することはない…という旨の内容を書いて更に送り返した。


「ネットで拡散させて…どうしたいんだろう…そうか…」


更に追加でなっちゃんにまた手紙を書いた。


『もしかすると明日以降も奏雅サイドから結婚ネタを出して来るかもしれないわ…株価下がってるんでしょう?周りへのアピールもあるわね。それにしてもその、結婚式場に現れた日ってノリは何してたんだろう?なっちゃん知ってる?』


するとこれにも素早くなっちゃんから返事が返ってきた。


『あ~言い忘れてました…この記事で式場に月の中旬の日曜日に来た…て書いてあるんですが、その日と思われる日は実は葵さんのマンションにガサ入れをしてまして…え~生ものとかゴミ片付けてきました!勝手に冷蔵庫の中のモノ処分しちゃってすみません!』


お、おお!良かった~!本気で冷蔵庫の中が気になってたのよ…お腐り様が凄かったんじゃない?


と、書き付けて送ると、結構大きめの太字マジックでA4くらいの紙にデカデカと


『胞子が飛散していて腐海の森、一歩手前でした。そのうち○ウムが孵化しそうでした…』


とすごく似ている例の虫のイラストが描かれていた。なっちゃん絵、お上手ね。


『ノリさんから返事が来たらまたご連絡しまーす。こちらは土曜日なのでネットに張り付いて監視しておきます!』


イラストの後に小さくそう書かれていたので、取り敢えずその日はそのまま帰ることにした。


翌朝、いつもより早めに詰所に着くとジューイの机を見た。魔法陣の上に紙がペロンと乗っている。


『おはようございます

ノリさんやっぱり寝てました…。葵さんの言った通り、朝一にめっちゃイラついている文面の怒りの反撃文がうちの社長から発表されました。名誉棄損…とか言ってらっしゃいますし…これで落ち着きますかね?』


なるほど、流石おじ様。対応が早い…だが相手は学君だ、いえ裏には私の親族がいる。馬鹿の常識は世の非常識…。ノリの迷惑や実川物産に対する風評損害なんておかまいなしに…突き進む。


自分達の利益や会社を守ろうと必死になって来るに違いない。株価が下がっている。服飾部門の売り上げ不振…新商品も評判は最悪…。これはM&Aの標的にされるんじゃない?


自分を過剰評価するのは気が引けるけど…未来から聞いた話だと私がいなくて社内は混乱しているみたいだ。


倒産は無いにしても、買収に近い業務提携も有り得るかもしれない。そうなると株主達から一族の追い出しが行われる可能性が高い。


「ノリ…実川物産に擦り寄って来る可能性が高いわね。ノリがおひとり様なのが仇になったんだわ」


こういうスキャンダラスな方面でノリに注目を集めて…追い込んで自分の懐に入れようと…鷹宮のアイツらならやりかねない。そして私なら次の一手はこうするな…というのは予想が付く。


急いでなっちゃんに手紙を書いた。


『今後…鷹宮からノリに擦り寄って来る可能性が高いわね。やり方がセコイけど、ノリと付き合っています…とかこれから結婚します…とか匂わせて実川物産が奏雅の後ろにいることをチラチラさせて来るかもね。実川物産の方々なら徹底的に擦り寄りに対処されるけど、ノリが勝手に表舞台に引っ張り出されるのはなんとしても阻止したいわね。またSNSや…テレビ、週刊誌などに結婚匂わせの情報を流してくる可能性もあるわ。ノリにくれぐれも気を付けるように伝えてね』


なっちゃんから


『はい、了解しました!また何かありましたらご報告いたします!』


とのピラ紙とは別に『ジューイさんへ』と書かれた手紙が入っている何やら某ブランドの良い匂いのする小さめの手提げ袋が一緒に送られてきた。


おやおや、これは?なっちゃんからジューイにプレゼントかな?


ん…あれ…?プレゼント?…はっ!?もしや今月ジューイの生まれ月じゃなかったっけ?


「ナッシュ様っ…もしかして今月ジューイの生まれ月でしたっけ?」


執務室にいるナッシュ様にコソコソと聞きに行くと、ナッシュ様はニッコリしながら「そうだよ~」と呑気に答えやがりましたよっ!


おいっ覚えてるなら、私にも一言言ってよ!……とやつあたりをしても仕方ない。忘れていた私が全面的に悪い…どうせならジューイの好きな物を贈りたいわね…好きそうな物…。そ、そうだ!


地方役人の方々が常駐している役人棟に急行した…走ってないよ?でも私のお腹の子、走ると喜ぶのよね~揺れるから楽しいのかな?


そしてシテルンの役人の方に今アンテナショップ用の商品として検討中の『モッテラツメアワセ』の魚介ドーンと一㌔お値段なんと銀貨一枚ぽっきり!


…という産直食材詰め合わせセットを急ぎでワンセット送ってもらうように手配した。


これで日本酒でもあれば熱燗でクイーッと一杯ひっかけつつ…魚の塩焼きなんて最高の贅沢なのにな…。


と、思っていたら…神様は、いえ…なっちゃん女神様は我の願いを聞き届けて下さったぁぁ!


夕方…なっちゃんからの誕プレの男性用のフレグランスの瓶を見てニヤニヤしているジューイの机の上の魔法陣が輝き…横に寝かされた細長い木箱が送られてきた。


「何だ、この箱?」


ジューイがコンコンと箱を叩いた後、木箱の上に書かれた字を読んだ。


「おい、アオイこれ異界語じゃね?んん?セイシュ?酒?」


何だってぇ!?思わずジューイの机の前に走り込んだ。


「走らない!」


またフロックスさんに怒られてしまったけど仕方ない、見逃してくれ…。


木箱の上の文字に目をやる…。


「やったー!日本酒だーっ!おっと…お手紙が何々?『祖父が酒造りの盛んな場所に住んでいて、色々なお酒を送ってくれるので、おすそ分けです ナツキ』なっちゃーーん!流石ぁーー!大吟醸だー!」


急いでなっちゃんにお礼のお手紙を出した。


「それ、酒なのか?ダイギンジョーって名前?」


ジューイにホクホクしながら説明していると、ナッシュ様とガレッシュ様が揃って詰所に入って来た。


「アオイ、シテルンの役人がお前に頼まれたっていうモッテラ…届いてたぞー」


あらいやだ…皇太子殿下に配達させてしまったわ。


「ジューイ、お誕生月おめでとうございます。こちらを…」


と、トロ箱をズイイッ…とジューイに渡した。カッコよさも無いし…消えモノだけど、味には自信がある。


「おっ!モッテラ?!ありがとさ~ん!開けていい?」


ジューイはトロ箱を開けた。モッテラの干物、イクラもどきソーナ漬け、その他試食して決めた珠玉の産直詰め合わせだ。


「この赤い粒…何?」


「モッテラの卵だ、クセはあるが美味いよ」


ナッシュ様はジューイに説明し始めてたので…魔法陣の上からお酒の入った木箱を持ち上げた。おっと…結構重い…と思ったらガレッシュ様が横からスッ…と木箱を持ち上げてくれた。


「義姉上、重いもの持っちゃダメだよ?」


いや~優しいね!さすがモテる義弟は違いますねぇ~。ガレッシュ様は私を事務机までエスコートすると椅子まで引いてくれた。


「お腹の子、今日も元気だね~兄上がよほど好きみたいだね。あ、俺も好き?あはっありがとう~」


いつも思うんだけど、ガレッシュ様とうちの子…本当に会話してるんだろうか…。そういえばマジー様も会話?しているみたいだし…。この一族の特技みたいなのかしら?


その夜、魚の塩焼きと日本酒をクイーッと…皆様飲んで楽しんでおられたようで何よりでございました。私は一人つわりも無いので、マグロのソーナ漬けのっけもりサラダをモリモリ食べて気を紛らせておきました…。


さて翌朝、お腹を我が子に内側から蹴っ飛ばされて目が覚めて、少し早いがお弁当を作り、ザック君と早めに詰所に顔を出した。


今日はザック君は託児所はお昼出勤ということだった。


この託児所


運営を始める前はお預かりするお子様の数が少なく…若干心配なスタートだったけれど、リリアちゃんとザック君という少し年上のお兄ちゃん、お姉ちゃんと遊べるという子供達にとっては兄弟の疑似体験が出来ることと、年の近い子供同士、身分関係なく遊べるとあって、いつの間にか定員いっぱいになり、預け入れの順番待ちになるほどの盛況ぶりになった。


最近までザック君は夕方までヘロヘロになるまで子供達のお世話に振り回されていたのだ。今はなんとかリリアちゃんと同年代の女の子と男の子を雇い入れてスタッフの人員が確保出来た所だった。


「本当にゴメンね。ザック君にお手伝いばかりさせて…」


ザック君は首をぶんぶんと振ると少し照れたような顔をした。そういえば身長伸びたね…。


「あのね…僕ね…やっぱり小さい子の遊び相手するの好きなんだよね。それにここじゃ僕の事、子供扱いもしてくれるし一人前としても頼りにしてくれるし…居心地良いんだ…へへっ」


可愛い…これはアカン…未来がザッ君ザッ君と構いたがる気持ちがよく分かる。するとお腹の我が子から弾むような魔力を感じる。ザック君が嬉しそうに私のお腹を見詰めている。


「あ、うん!そうだね~一緒に遊ぼうね!待ってるよ!」


…あれ?お腹の子とザック君も喋れるの?


もしかして実の両親だけが生まれる前の我が子と意思の疎通が出来てないとかではない?


二人で詰所に入ると、魔法陣の上に二枚ペロンと紙が乗っていた。なっちゃんからかな?またチラシ広告の裏に殴り書きしているね…え~と何々?


『葵さんの言ってた通りでしたよ!朝のワイドショーで鷹宮学が芸能人みたく、リポーターから囲み取材を受けている映像が流れてますよ!?結婚の約束とかド厚かましい事言ってますよ!』


これが一枚目…ふむ、鷹宮サイドの動きは予想通りだな。で、二枚目は…。


『もしかしたらテレビの取材が会社の前まで来ているかもしれませんので、今朝は早めに出社します!』


うむ…なっちゃんの読みは当たっていると思うね。しかし…しばらくはこうやってテレビに出たり週刊誌で暴露したり…ノリや實川に大迷惑な行為を繰り返すに違いない…何せ馬鹿は周りの状況が読めないからだ…。


こんな上っ面な話題で株価なんて戻る訳がない。実川物産全体に迷惑をかけて、実害でも出たらあの實川のおじ様の事だ、損害賠償請求を本気で起こしてくるに違いない。


ブランドのイメガの見直し…来季の化粧品の開発…新規アパレルブランドの企画…やるべきことは奏雅の社内に沢山ある。外に向けてアピールしている場合じゃないのに…。


そうか…学は実務から外されたのか…社長か会長にこう言われたに違いない。


社内の仕事はしなくていい、お前は広報活動をしなさい。まずは実川物産の娘をこちら側に引き込みなさい…。こんな所だろうか?


もしかして…馬鹿だけに行動が読み辛いけれど、力尽く…とかでノリに危険が及ばないだろうか?護衛とかついてるのかしら?


私の横から一緒に広告チラシのお手紙を見ていたザック君に


「ゲイノージンって何?」


と聞かれたので、異世界の芸能界や私の会社の主な業務などの話をしながら皆の出勤を待った。


今日はダンジェンダ氏を迎えてのガレッシュ様と未来の婚姻式の衣装の打合せがあるらしい。ナッシュ様は本日は休みなはず…なのに、何故か詰所に来ている。おい…仕事をしない上に執務室でお菓子を食い散らかすなっ…。


「あぁ~殿下?!それ夜に皆さんで召し上がって貰おうと思って作ってた木の実マフィンなのにっ!」


ホラ見ろ…未来に見つかったぞ?さあ、どうするんだよ…。未来は射殺しそうなほどの目でナッシュ様を睨んでいる。ナッシュ様は口の周りにマフィンの食べかすをつけたまま


「り、離宮の中に存在する菓子は…私のモノだぁ!」


と叫んだ。叫んだけど…台詞が格好悪い…。皇太子殿下がソレに固執するの?未来も呆れたような顔でナッシュ様を見て、鼻で笑っていた。


「馬鹿馬鹿しい…」


ナッシュ様は…まさにガーンとショックを受けたような顔で口をパクパク動かしている。もういいじゃない?義妹(予定)の未来にはどう足掻いても勝てないんだから…。


その日ダンジェンダ氏との打ち合わせに私も参加して未来達と詰所に帰って来るとミーツ兄さんが、応接室で私達の帰りを待っていた。


「実は、ポルンスタ爺に召喚を早くするように…とまた言われまして…殿下達に召喚の際の注意点などをお聞きしたく…」


召喚か…確か召喚対象を絞るには、物なら具体的なイメージが必要だったわよね…そして人物である場合、今までの乙女の召喚で得た情報によると、特定の誰かを召喚する場合…名前や容姿とかも必要かも…。


ナッシュ様達に注意点などを聞き終わったミーツさんに思い切って声をかけた。


「ミーツさん…乙女を召喚する時に、先日おっしゃっていた好みの女性を召喚するおつもりなのですよね?」


ミーツさんは柔らかく微笑むと頷いた。


「はい、出来れば自分の理想の女性がいいな…と思いまして」


まだ迷っている…本人に確認していないから…でもでも、私から見てもミーツさんとはお似合いだ…。


「ミーツさん…少し召喚は待ってもらえませんか?私の友人をミーツさんにご紹介したいのです」


「あ…ああ、異世界に居られるお嬢さんでしたね…しかし召喚するにしても不確定な方は呼びにくいと先程、殿下にも指摘されましたが…」


そう、そうなのよね…。狙い撃ちでこの人!という呼び方は難しい…顔も分からないしね…顔?うん…写真…そうだ!


「ちょ…ちょっと待ってね!」


急いでなっちゃんに手紙を書いて魔法陣に置いた。あ、そうだ、まだ夕方だし異世界と時間軸の差はそんなにないから、恐らくなっちゃんまだ仕事中だわ。


「今、私の友人ミノリ=ジツカワの写真を送って頂けるようにお願いしています」


「シャシン?」


あ、どう説明すればいいのかしら…。う~んと…。


「異世界の魔法とでも言うものでな、紙に人物の姿をそのまま映して絵として残せるものらしい」


ナッシュ様…そうそうそんな感じの説明ね。


「つまりは絵姿のようなものなのですが、より正確に実物に近い状態の絵になります。それをミーツさんにお見せしますので…そうだわ、お見合いみたいなものよね」


「お見合い?」


ナッシュ様もミーツさんも首を捻っている。すると未来が私達の前に立った。


「つまりは、男女の出会いを間に入って取り持ってあげようと催す会のことをお見合いと言うのです。まずは写真…つまり第一印象で会うか、会わないかをまず決めて頂いて…今回の場合は特殊ですので、ノリさんの永久移住の意思を確認してからだと思います。こう言っては極論過ぎるかもしれませんが、ミーツさんとお見合いするも良し、他の男性との出会いを求めるも良し、はたまたおひとり様を満喫するも良し。ノリさんの意思を尊重することをお忘れなくですよ!いいですね?無理強いはいけませんよ?」


「は、はい!」


ナッシュ様とミーツさんは未来さんの久々元ヤンの迫力に押されてギクシャク返事をしていた。


その場はミーツさんにお帰り頂いて…なっちゃんにこちらの世界情勢や魔の眷属のこと…それに付随してミーツさんの召喚…等々、隠すことなく長文の手紙を書き上げると魔法陣の上に置いた。


なっちゃん、どういう反応を返してくれるかな…。ノリはどういう返事をくれるだろう…。


翌朝詰所に行くと、夜中になっちゃんから返事が来ていたようだ。 一枚の紙と…ああ!これはスポーツ新聞じゃないか!新聞の一面に『奏雅と実川物産の超セレブ婚』の見出しが躍っていた。


悪趣味な一面だわ…。なっちゃんの手紙を読む。


『お手紙ありがとうございます。一度、軽く目を通しました。もう一度じっくりと読んで明日、またお返事させて頂きます。それと…異世界間のお見合いですが、相手の方ミーツさんのお写真は無いのですか?え~と素朴な疑問なのですが…食べ物も送れますし…今、新聞も送ったんですけど届いてますよね?文明の利器?が無いのならこちらからデジカメを送って写真を撮ってもらって送り返してもらう…というのは可能でしょうか?』


手紙を読みながら手が震える。


ああ、私は馬鹿だ!何故、今までソコに気が付かなかった!消えモノばかりに固執していて、文明の利器…家電の充電式で使えるものなら、電池のある間は()()()()()使()()()()()()()()()()


震える手でなっちゃんに返事を書いた。


『なっちゃん

一度デジカメを送ってもらえる?無事に届いたらミーツさんとこちらの皆の写真を撮ってなっちゃんに送り返してみたいけど、大丈夫かしら?』


そう書いて返事を待っていると、未来が詰所にやって来た。


「ああ!?スポーツ新聞じゃないっすか!どれどれ…」


未来は新聞を手に取るとソファにドカッと座って、新聞を開いて読みだした。


その姿は見たことがあるっ…!公園のベンチでおじさんがやっているポーズそのものだ…!


「うわっ…これが例の囲み取材の映像かぁ~なぁんだよっこのにやけ顔は!ふざけんなよっぼんくらっ!」


ボヤキ方まで公園のおじさんのようだわ…。そして裏一面を見て小さく悲鳴を上げた。


「うそぉ!純くん…!」


そう言って未来は床にへたり込んだので、誰かの訃報でも載っているのかと新聞の裏一面を見てみた。


「JOYYOUの純、GP-Aのマリカと熱愛?」


私が新聞記事を読み上げると未来はビクンと体を震わせた。成程…この純君とやらは見た目金髪のキラキラした王子様っぽい男の子だ。未来の好みは一貫している。


「いいじゃない、未来には本物の皇子様がいらっしゃるんだし…本物に存分に甘えていらっしゃいよ?」


「あれ、ミライここに居たの?」


未来は無言で立ち上がると戸口に現れたガレッシュ様に走り寄って抱き付いている。


「おわっ?何…ちょっと、皆見てるよ~」


とか言いながらも、ニヤニヤしながら未来の腰に手を回したガレッシュ様と未来は、戸口でいちゃこらし出した。戸口はやめたほうがいいと思うよ?だってホラ…。


「邪魔ですよ」


怒気を孕んだ冷気がブワーッと詰所内に流れ込んできた…!氷の貴公子…もといフロックスさんが鋭い眼光でいちゃつく二人を睨んでいた。


「公の場でなんですか、皇族たる者いつ如何なる時も毅然とした…」


「あらー、デジカメが異世界から来たわよー!」


フロックスさんのお小言が始まりそうだったので、華麗にぶった切ってあげた。異世界からナイスフォローなっちゃん!送って来るタイミングいいよ!


「でじかめ?」


「わーデジカメ?ああっそうか!写真!」


未来が手に取って早速起動している。デジタルカメラと一緒に来た手紙を読んだ。


『届きましたか?好きな枚数撮って下さいね。プリントもしておきます、それとノリさんが写っている写真も同封しておきました。 ナツキ』


どれどれ…ガサガサ…。おおっノリ!と数人の女子…あ、この中になっちゃん居るのかな~皆それぞれ可愛いけど…。


「これがシャシン?なるほどー絵姿より実際の目で見た感じに近いね!すごいな~で、ノリはどの子?」


と、覗き込んできたナッシュ様に指を差して見せた。未来もガレッシュ様もフロックスさんまでもが覗き込んでいる。


「小さくて可愛いね!日本人形みたいですね!」


未来が早速、ノリを可愛いものカテゴリーに入れて来ましたね。


「ナツキはどの子なの?」


ガレッシュ様に聞かれたので、私も首を捻った。お返事を書くついでに、聞いてみよう。


デジカメ届いたよ…ありがとう。写真もありがとう、ところで写っている中でなっちゃんはどの子?


「よし…」


返事を書いて、魔法陣に置くとすぐに返事が返って来た。


『無事届いて良かったです!そちらの風景とかも撮って下さいね!私は…写真撮られるの苦手でして…そこには写っていません。すみません』


ああぁ…私ってばまた余計な事言っちゃったみたい…。


写真が苦手、写されるの避けてる方って結構いるわよね。カメラを向けられると顔が強張って笑って写れないとか…聞くもの。


余計な事聞いてゴメンね…と返事を書いて、こちらの高級菓子マスワッツのワルッテ詰め合わせを送った。え?準備がいいって?いつもなっちゃんには良くしてもらっているものね、お礼のお品をお渡ししなければ…と準備しておりましたのよ~オホホ。


でも悪い事聞いちゃったな…。もしかして色々と身体的にコンプレックスをお持ちの女の子かもしれないよね…。傷つけてしまったかしら…ホント自分が情けない。


なっちゃんからは返事はない。


時間的に仕事に行ったのかもしれないけど、謝罪のタイミングを掴み損ねたみたいでその日は一日ヤキモキして過ごすことになったのだった…。



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