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異世界との遭遇


「ジューイ…」


「なんだ…」


「いい加減諦めて、恋愛成就の生き神様の御意向に従いなさいよ…」


私がそう言うと、詰所内に居たコロンド君とジャレット君の視線がジューイに集まった。ジューイはケッ…と最大限に舌打ちをするとものすごい冷ややかな目で見てきた。


「何が成就だよ…お前らの魂胆なんて分かってんだよ…異界の食べ物や…珍しい珍品を俺の魔術印で繋がったヤツに送ってもらおうとしてんだろ?」


「ジューイ、ヤツなんて言い方、未来のお嫁さんよ?!」


「何回も言うがなぁ~俺は女には困ってないんだ!そんな見たとこもねえ女なんか来たって知るもんかっ!」


なんて言い方!と言い返そうとするとジャレット君が咎めるような口調で話し出した。


「ゾアンガーデ中佐…そんなことおっしゃって…もし、ポルンスタ老師のおっしゃったように『いずれ嫁になるやもしれん』相手の方が中佐好みの絶世の美女だったらどうするのですか?今ここで、そのような言葉を発したらアオイ様に一語一句覚えられていて、その美女との仲を裂かれてしまうかもしれませんよ?」


鋭い!ジャレット君!…でもね、なんか私に対する人物像って…それなの?


そう、ポルンスタ爺とポカ爺の秘密が暴露された日の後、未来とカデちゃんが『異世界から送って欲しいモノ』を連呼していた時にポルンスタ爺が何か言っていたことがナッシュ様によってジューイに告げられたのだ。


「この先…お前とその魔法陣が繋ぐ異世界の向こうの方との…交流が無ければ次代の勇者が生まれないかもしれない…だって。結構重要な感じだな…」


じ、次代の勇者!?私とコロンド君は仰天した。流石のフロックスさんも目を丸くしている。


「どういうこと?!」


ナッシュ様も首を捻りながら皆の顔を見ている。


「ジューイが勇者…ということではないらしい…もしかして息子?とかかな~だからその魔法陣の向こうの方が将来の奥方になるのかな…とか?あくまでこれは私が推察するだけで…」


「まああ!」


「なにが息子だよ…お前の推察だろ~?だったらアテにならないね!」


とジューイはばっさりと切り捨てたが私はナッシュ様の推察は当たっている…と思っている。


だって恋愛成就の生き神様のお告げよ!信憑性はあるもの!


それから事あるごとに、ジューイに魔法陣を使え~使え~と囁いているが中々魔法陣を使おうとしない…。


「もういいじゃないですか?取り敢えず魔法陣を起動してみて、その異世界の綺麗なお姉さんがいらしたら、優しくて人望も厚い素敵な殿方をご紹介すれば済むだけですし…。幸いにも討伐隊員の中には未婚者も多いですし、ミライさん亡き後…心の支えが皆様欲しいでしょうし…」


おーいコロンド君ー!未来まだ生きてっし!まあ確かに討伐隊員達は未来がガレッシュ殿下とくっついてしまって…まだ第二の詰所内は文字通りお通夜ムードになっている…。


「確かに…軍部全体の士気が下がるのは良くないわね…ここは上官の妻としてビシーッと言っておかなきゃいけないわね。と言う訳で、異空間結合…なんとかとか言う魔法の起動宜しくね!」


「何がと言う訳で…だよ!知らねぇよ!」


「あら~あ?ジューイそんなこと言ってもいいのぉ~?ジューイは女性に冷たいねぇ~へ~ほ~」


「おい…何か書付してんな?何書いてんだよ…」


「あら、オホホ…大したものじゃあございませんことよ!オホホホ…」


ジューイがジトッとした目で睨んでくる。


ええ、ええ、何でもございませんことよ~ジャレット君のおっしゃった通りにジューイの失言を一語一句書洩らさないようにしたためているなんて~オホホ。


「もういいよっ!分かったよ!ホレッ…魔力も籠めたっ!さあ置くぞ…」


ジューイは折りたたんでポケットに入れていたせいで、すでにヨレヨレになっている魔紙を取り出すと、自分の事務机の上に置こうとした。


「そんな得体の知れないモノを詰所内で展開しようなんて…ジューイはやっぱり馬鹿ですか?」


詰所の戸口から、春の麗らかな風とは違う冷気が吹き込んでくる…。またまた雪女だーっ!フロックス雪女はツカツカ…と室内に入って来るとジューイの魔法陣をサッと取り上げてジロリとジューイを見下した。


「この異空間結合魔法陣を発動したらどんな得体の知れないモノが転移して来るか予測が付きません。いいですか、もし未知の病原体を孕む生物の死骸とかだったらどうするのですか?この世界に死病を振りまくつもりですか?」


死病!いや…そうだよね。ちょっと冷静になってみれば分かることだった…。


「そういえば私もここに召喚される時に持っていた鞄、いつの間にか無くなってたわね…。もしかして神様がこちらの世界に存在しないウィルスとかを持ち込ませないようにしてくれたのかも…」


フロックスさんは大きく頷くと魔法陣の描かれた魔紙をジューイに突き返した。


「術式を展開するのなら、周りに害の無い所でして下さい」


と、フロックスさんに言われて…なんとジューイは裏庭の隅にある物置小屋の中に魔紙を置いた。


「ふ、不衛生よ!」


「死病をまき散らす疫病の方がもっと不衛生ですが?」


私の反論は久々のフロックスアイズにやられて却下されました…。


さて…ジューイにもっと魔力を籠めろ~~と言って脅しつけていたら「魔力を沢山籠めたからって術が正常に起動するかには関係ないよ?」とナッシュ様に真顔で否定され…それでもへこたれずに未来と何度も物置小屋を確認しに行っていたその日の夕刻…異変は起きた。


「きゃあああ!」


突然、未来の悲鳴が上がった。


打合せをしていたナッシュ様とガレッシュ様が一瞬で消えた!


私も慌てて窓際へ近づいた。裏庭の物置小屋の前に…ひ、人だかりが出来ている!よーし!私もっ!


「走らないっ!」


フロックスさんに叱られたが、それでも小走りで裏庭に出てコロンド君と一緒に物置小屋に近づいた。あ、ザック君もいるわね。未来は…ガレッシュ様の腕の中でいる。


「未来?どうしたの?大丈夫?」


「先輩…あれ…あれ………ウブッ…ゲホゴホ…」


なんだと?何言ってるんだか全然分かんね…。未来が物置小屋の中を指差すので中に入ろうとしてナッシュ様に制された。


「私が先に入る、絶対前へ出るな」


皆の緊迫感が高まる…ザック君が近づいて来たので、手を繋いでナッシュ様の後ろから一緒にゆっくりとついて行った。


物置小屋の木箱の上に置かれた魔紙の周りに魔力の粒子が飛散している。魔紙の上に何かある…。


「割と小さいが面妖な箱だな…」


ナッシュ様の呟きに目を凝らす。箱?


あ…あ…あの見覚えのある…あのパッケージはぁぁぁ?!


「握り寿司のパックだぁぁ!」


「し、知っているのか?!あれは何だ?危ないものか?!」


あまりの衝撃で足が縺れそうになったのをナッシュ様とザック君に支えられる。


「た、食べ物です…危険じゃありません…あは…あはは、お寿司のパッ…入れ物、食品を入れておく箱なんです」


ナッシュ様に説明しながらも自然と涙が零れる。


お寿司だ…お寿司だ…。すると未来がガレッシュ様に支えられながら物置の中に入って来た。


「先輩ぃ…アレお寿司ですよね?間違いないですよね?」


「うん、うん間違いないよ…スーパーとかで売ってる握り寿司八貫セットだ」


未来と抱き合って、お互いを支え合いながら握り寿司をもっと良く見ようと魔紙に近づいた。


「あまり近づくな…」


ガレッシュ様が尚も警戒しながら、私達の周りに魔物理防御を張ってくれる。


「ウニ…イクラ…ボタンエビ…値段も結構高めの豪華寿司ですね…」


「賞味期限…見ても参考にならないか…美味しそう、どこのスーパーのだろう…ええ?」


私がパッケージに貼っている日付のシールを見て声を上げたので未来はもっと寿司パックに近づいて見ている。


「ミライ…危ないって」


「食べ物だって…寿司が爆発するかよっ」


ガレッシュ様の心配をよそに未来はラベルをガン見している。


「東京都…港区…かなりの高級スーパーですね…て、どうしました?先輩?」


「私も良く行ってたスーパー…」


ラベルに書かれた住所とスーパーの名前の懐かしさに涙が込み上げて来て止まらない。


未来は事も無げに寿司パックをヒョイッと持ち上げると皆の驚愕をよそに、中のパックを近くで覗き込んだ。


「ネタは新鮮ですね…。製造年月日から察するに向こうの世界は年度末ですね」


「ミライッ!手を放しなさい!」


とナッシュ様がワタワタしながら未来に怒鳴ったが未来は皇太子殿下に胡乱な目を向けて


「食べ物だっつーに、モッテラがゴハンという食物の上に乗ったれっきとした食べ物っ!分かった?!」


と叱りつけた。ナッシュ皇太子殿下は「す、すまん…」と何故か謝っている…。


私も寿司パックを近くで見詰めた。確かにネタは綺麗だ…今売り場からカゴに入れたような…。


「ちょっと待って、未来…気が付いたんだけどこの魔法陣の空間なんとかって…()()()()()()()()()()()()()んだろう?」


未来が息を飲んだ。


「このお寿司…まだ冷たいです。もしかして…鮮魚売り場に置いていたのが転移して来たのでしょうか?」


「売り場ぁ…それは流石にマズいわね…これじゃ万引きしているみたいじゃない…」


未来と二人、気まずげに寿司のパックを見詰める。


「も、戻しときましょうか…」


「そ、そうだね…すっごく食べたいけど流石にお金も払わないものを万引き飲食は気が引けるわ」


そっ…と寿司パックを魔法陣の上に置いた。すると陣が光り…寿司パックが一瞬で消えて行った。


ああ…ボタンエビよ、さようなら…ネギトロ軍艦巻きよ、さようなら…。


「今更ですが、万引きと叱責されようとも食べておくべきでしたかね…」


「私もそう思う」


という訳で、どうやら異世界と繋がった場所は生鮮食品売り場の陳列棚である可能性が高いということが判明して、魔紙は物置小屋からジューイの机の上に移動させられることになった。


「さっきのあの箱は、食品を入れて販売する時に食材が見やすいように透明な素材になっているのか…成程」


ナッシュ様はさっきから、スーパーとは何だ?小売りの形態はどうなっているんだ?とか、何故何故どうしての大人バージョンになっている。


「面白そうだな、そのスーパアをナジャガルでも作ろうか?」


「シテルンや地方からの食材も魔法ですぐ集められますしね、良いかもしれませんね」


と、話している所にまた魔法陣がピカーッと光り出した。フロックスさんはすでに帰宅…ジャレット君とザック君は一足先に離宮に帰っていた。


私とナッシュ様、ジューイとコロンド君の視線が魔法陣に注がれる。


そして魔法陣の上に今度現れたのは…。


「えぇ?お酒?」


「な?アレ…酒瓶なのか?円柱型で変わった形だな…」


ジューイはナッシュ様と私がそう言いながら近づいて来たのを横目に、そのお酒…つまりは缶を持ち上げた。


「うわ…冷た…。この中に酒が入ってんの?飲んでみていい?」


ジューイは怖くないのだろうか?でも、ここで新たな疑問が浮上した。異世界と繋がっているのはスーパーの陳列棚だと思っていたのがどうやら違う…ということだ。寿司…お酒…これらが冷えた状態で保存されている場所といえば一つしかない。


「冷蔵庫の中…」


私はジューイが持ち上げたお酒の缶を観察すると未開封ということを確認してからプルトップのキャップを開けてジューイに手渡した。


「その穴からお酒が出て来る仕組みだから、飲む時気を付けてね」


もう万引きが~とか気にしている余裕はなかった。急いで紙とペンを用意するとこの冷蔵庫の持ち主…ジューイの嫁(仮)に宛てて手紙を書いた。


ジューイは恐る恐る口をつけて飲むと歓喜の声を上げた。


「わわっこの酒、何~?甘いや!」


「梅酒と言って果物のお酒なのよ」


ジューイは台所に入るとグラスを持って来てナッシュ様に注いで渡している。缶の回し飲みをしないあたりがお坊ちゃまっぽい。


美味い美味い~と騒ぐ皇太子とその従兄弟の声を聞きながら手紙を書き上げると、空になった空き缶を水洗いしてから手紙と一緒に魔法陣の上に置いた。


手紙と空き缶は一瞬で消えた…。


さあジューイの嫁(仮)はどういう返事をくれるのか…。それともこのまま放置なのか…。


ジューイの嫁(仮)の返事を待ちつつ…


とうとうガレッシュ様と未来が婚姻の意思が固まってきたらしい。またお局トリオ(クリッシュナ様、カッシュブランカ様、マジー様)がドレスがー意匠がーと言い出しそうなので先手を打って未来とドレスのデザインの打合せをしている。


「そういえば、あのクリぼっちの先読みの結果…どうなったんだろう」


「そうですね~どうせ永遠のお一人様じゃの…とか言われてるに決まってますよ!」


ホント、未来はアルクリーダ殿下を目の敵にしてるわね~。すると…。


「こんにちは~」


とカデちゃんが詰所に顔を出した。噂をすれば…!


早速カデちゃんを囲んで魔法陣が起動したことを話し、クリぼっちの先読みの結果を聞くことにした。


今日カデちゃんはキイチゴのマフィンとガトーショコラを作って持って来てくれた。未来がレシピをメモっている。


「ええっ?!握り寿司に梅酒ですか~?!いや~ん見たかったぁ?!」


「ゴメン…出現したものが生ものだし…カデちゃんを呼んでいる余裕が無いままに向こうに帰って行ったというか…」


カデちゃんはガックリ…肩を落としていた。ゴメンね…。


「空き缶を返す時に手紙を書いてみたのよ…。読んでくれるか…それとも気味悪がられて終わりか…。一昨日から返事は無し…。気長に待つわ…」


カデちゃんは苦笑いしながら頷いている。


「私だったら冷蔵庫の中に入れたものが無くなってて、手紙が入ってたら真っ先に空き巣とかを疑いますね…仕方ないですね」


「ところで…アイツ…ゴホン、アルクリーダ殿下の先読みはどうなったんですか?」


未来…仮にもあの方殿下よ?カデちゃんはこれにも苦笑いで答えてくれた。


「どうやら、召喚魔法はするだけ無駄なようで…出会いはもう少し先…異国の地にてあり…ですって。今度カンデンタッテに香辛料を求めてお出かけするじゃないですか~?その時にアル兄様も一緒に連れて行っていいでしょうか?」


おやまあ…異国ですか…。未来は嫌そうにしていたけれど、ぼっち脱出の為に是非とも協力してあげて~。


カデちゃんは今日はご報告まで~と言いつつ、例の魔法陣の前で「出て来い~出て来い~」と呪文を唱えてしばらく粘っていたが、時間切れらしく…渋々帰って行った。


そして更に二日後…。


例の魔法陣に封筒が乗っていた。詰所は大騒ぎになった。


急遽来訪したカデちゃんや未来、ナッシュ様達が見守る中…ゆっくりと中を開けて読んでみた。


『初めまして


実は冷蔵庫の前で中の物が無くなるかどうか…数日観察していました。本当にこの手紙も異世界に届くのでしょうか?正直まだ信じられません。ですが、あなたのおっしゃっている行方不明の事件…存じています。

私、實川実莉さんと同じ会社に勤めている者なのです。』


私はそこで泣き出してしまって読めなくなってしまった。代わりに未来が読んでくれた。ノリの知り合いだった!ノリ元気なの?ノリ会いたいよぉ…。


『ノリさんは随分心配して、鷹宮さんの事を捜していらっしゃいます。今…私の口から鷹宮さんの無事を伝えて良いものか…もし伝えたら自分が精神を病んでいる…と言われてしまうのではないかとまだこの状況を信じ切れていないので色々と迷っています。


他にもお聞きしたいこともありますので、ご連絡頂けたら幸いです。


                           ナツキ』


読み終えると未来は大きく息を吐き出した。


「文面から察するにしっかりした方のようですね」


カデちゃんは私を見てもらい泣きしているようだ。鼻をすすりながら未来から便箋を受け取って、文章をみている。


「實川さん…というともしかして実川物産ですか?…すごいお嬢様とお知り合いですね、流石先輩…」


未来がそう言うとカデちゃんがガバッと顔を上げた。


「実川物産なのこの方?!大手にお勤めじゃない~すごいわね」


はい、ノリの実家は超お金持ちで、祖先を辿ればお生まれは高貴な血筋で恐れ多い格式の家柄なのよ。


兎に角急いで返事を書け!とカデちゃんに急かされて…私がここに来た経緯と片倉未来と沢田美憂もここに居ると言う事と…この魔法を使った経緯などを書き綴ってみた。すごい超大作で便箋5枚にびっしり文字になってしまった。


「あまり情報を与えてしまってもこのナツキさんが混乱するかもしれませんけどね…。異世界の方とコンタクトが取れるなんて…感動ですね」


カデちゃんは噛みしめるようにそう言った。カデちゃんが一番異世界生活長いものね。辛かっただろうな…。


なんとなく異世界人三人で、書いた返事の便箋を掲げ持って魔法陣の上に置いた。ちょっとした儀式のようだ。


そして手紙置いた途端、一瞬で消えた。


何となくホッとした空気が流れて皆でお茶を一口、二口飲んで笑いあった。すると魔法陣がまた輝いてペロンと一枚、紙が乗っていた。何だ?


『返事きたーー!冷蔵庫の扉を何度も開け閉めして確認してたんですよー!ちゃんとした返事はまた書きますーー!』


マジックで走り書きされた一枚の紙…。思わず裏をひっくり返すと某不動産屋の広告チラシだった。


「チラシだーー!」


カデちゃんが広告を握りしめて泣き笑いの表情をしている。


ああ、嬉しい、これは嬉しいね。もう本来の目的のジューイなんて放置しまくって異世界人で盛り上がってしまっている。申し訳ないけど今は舞い上がらせてくれ~。


しばし浮かれていた私達だが、数日経ってこの魔法陣の向こうのジューイの嫁(仮)とのやり取りが行われるようになって彼女の素性も分かってきた。


相模那姫(さがみなつき)さん、実川物産にお勤めの26歳、営業職。都内に一人暮らし。性格は生真面目で物事に対して柔軟…フムフム。


「だから~何で俺も手紙かかなきゃいけないんだよっ!」


「だってジューイの嫁捜しの一環で異世界と通信しちゃったの!て、最初に説明してるんだもん。それに…ああ来た!」


未来と二人、輝いた魔法陣の前で待っていたら…例のモノがやって来た。


「おはぎ~~!」


未来と二人で絶叫してしまう。魔法陣の上にはあんこたっぷりのおはぎがぁ!未来はむせび泣いている。


「く~ぅ片倉未来っナツキさんの優しさに身もだえしています!」


おはぎの横には小さめのポストカードが添えられていて


『○越に入っている和菓子屋にしました。ご賞味あれ 那姫♡』


ううぅ本当に良い子だっなっちゃん!そうそう、私の親友ノリにはなっちゃんと呼ばれているらしい。


「なっちゃんもそろそろノリに私達の事話した方がいいと…思ってくれているのよね…」


「ノリさん信じてくれますかね?」


「う~ん、宇宙人とかミステリーっぽいのにいまいち懐疑的ではあるかな…」


ふと…ジューイを見ると、渋々と言いながらも手紙を書いている。


何故だかは知らないがこちらの言葉で書いたジューイの手紙も『自動翻訳』がかかるらしく、冷蔵庫に入ったら日本語になっているらしい。


異世界同士で文通である。


ジューイも最初はごねていたが、今日はすんなりとお手紙を書いている。


何か書いたものを魔法陣の上に置いて…一瞬で消えた後にちょっとニヤニヤしているジューイと目が合った。


「何だよ…」


「いいえ何でも、オホホ…」


と、高笑いしていると…またペロンと紙が一枚魔法陣に現れた。なになに?


『大変です!ノリさんがアオイさんの従兄弟の学さんと結婚させられそうだって!』

 

「ええっ?!」


結婚?ノリと学が…?とんでもない事態である。


異世界でどうしたらいいんだろう?!困った~~困った!



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