表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/94

クリぼっちと召喚魔法


シュテイントハラルはお花の咲き乱れる…とても美しい国だった。


その王宮の端の転移門に着くと、カデちゃんとレミィ王太子殿下と妃殿下かな?お人形のような王太子妃とシュテイントハラル国王夫妻…つまりカデちゃんのご両親が立っていた。


「ナッシュルアン皇太子殿下、アオイ妃、良くお越し頂いた」


ナッシュ様と一緒に膝を突いてカデパパ国王陛下の前で頭を下げた。


「此度はうちのアルクリーダの為にすまんな」


ちょっと小太りのカデパパがホホホ…と笑っている。


「初めまして~アオイ妃、カデリーナの母でーす!宜しくね」


びっくり…ノリ軽っ…。するとカデちゃんがすっ飛んできた。


「もうっこんな変なのが国王妃なんですよ~ごめんね、葵」


「変なのとは何ですかっ…あ、そうそう!シテルンのモッテラありがとうございますっとても美味しゅうございますわ!」


あ、そうか!片倉未来さん発案のシテルン特産品の通販を始めたいと思っていた所に、ご依頼を受けてシュテイントハラル神聖国に向けて『サンチョク』つまり産地直送の通販事業をいち早く始めたのだ。


まず王宮の調理部に通販を始めたんだけど、そのモッテラが新鮮で美味だという噂が噂を呼んで今度はカステカート王宮に出荷する予定になっている。シテルンの地方官の役人の皆様が泣いて喜んでいたわ。中々良い滑り出しよね。


そして移動しようと動きかけた私の袖をチョイチョイと引っ張る人がいた。


「あ、あの…義姉上、私は…その…」


そうそう、今日はガンドレアからリディック様もご一緒だ。何せ彼は箱入りの元皇子殿下だ。物事を多角的に見る目を養ってもらおう…とこれも社会科見学の一環である。渋って嫌がるリディック様を強引に連れ出して来たのだ。


「もう来ちゃったからには楽しみましょうよ」


そう言って困った顔のリディック様をナッシュ様と二人で連行する。ナッシュ様も今回の社会科見学は大賛成だ。


「視察だとか堅苦しいことを考えんでもいい、要は美しいものや素敵なものを沢山見て幸せの貯蓄をして帰ればよい…だったかな?アオイ?」


「そうそう、良いものは心を豊かにして楽しいことは心を明るくしてくれるのですよ!」


いつの間にかカデちゃんが後ろに来てリディック様の背中をグイグイ押してくれている。


リディック様は今度は泣きそうな顔になっている。


「カ…カデリ…ナ姫様…何時ぞやは申し訳…ありませんでした…」


カデちゃんは背中を押しながら何度もリディック様の肩をトントンと叩いている。


「フフ、遅い反抗期ですものね~悩め悩め青少年よ!」


そうは言いますがカデちゃん、リディック様もう27才よ?反抗するにしても遅咲き過ぎるわ…。まあマダムカデリーナから見たら皆、孫みたいなものなんでしょうけどね~。


「よっ!兄上夫妻!あれ?リディックも一緒なの~どうしたどうした?」


王宮の侍従の方に案内されて二の間という広間に行くと、ガレッシュ様とクリぼっちのアルクリーダ殿下と魔術師らしき方々が何か話合いをされていた。


「どうだ?順調か?」


とナッシュ様が声をかけるといそいそとガレッシュ様は近づいて来て、私達を部屋の隅に促した。


「兄上さ、義姉上を呼んだ時、魔法陣を描きながら…魔力を術式に籠めつつ…え~と自分の理想の女の子の事とか考えながら描いてた?」


問われたナッシュ様は少し照れたような顔で私をちらちら見ながら


「そ、そうだな~姿はこんなのが良いな~とか性格はこんなのが良いな~とか…確かによく考えてはいたなぁ~」


と、うざい視線を投げて来る。私はナッシュ様を無視してガレッシュ様を見た。


「俺もね~術式を描いてる時に…容姿は、その…レイナを思い出していたし…性格はとか色々と思いを籠めて描いてたんだ…。でね、アルクリーダ殿下にぶっちゃけて言っちゃうと…そういうやり方をした方がより、自分好みの女の子を呼べるから試してみてって言ってみたんだ」


「で、どうなったんだ?」


リディック様も興味津々なのか前のめりだ。


ガレッシュ様は肩を竦めた。アレ?それどう言う意味のジェスチャーなの?


「ダメだね~アルクリーダ殿下は、若くてかわいい子が良い…とか言ってるだけで、明確な召喚対象への…欲求みたいなのが全然無いんだもん。あれじゃ無理だよ~」


ガレッシュ様は声を潜めると私達に更に顔を近づけた。


「多分召喚は無理だね。失敗しちゃうかも~殿下は魔力量は俺達ぐらいに豊富にあるけどさ~。どうすんのさ、こんな国を挙げて大がかりにしちゃってさ…」


「申し訳ありません…」


カデちゃーーん?!あなた居たの?!


そ、そうだった…あまりにカデちゃんが小さすぎて…失礼、カデちゃんがここに居る事忘れてたわ…。重ね重ね失礼。


「両親…主にお母様にゴリお…言い含められたみたいで…本人も本当にやる気があるのか無いのか…」


「カデリーナさん、ハッキリ言ってやんなよ。親のゴリ押しでしょ?あんなの」


おおっと片倉未来さんがモデル立ちで広間の入り口に立ってますね。カッカッ…とヒールの音を響かせてガレッシュ様の前に来ると、ポッケの中から書類を出してガレッシュ様に手渡した。


「十日後の第二部隊の演習の際の施設使用の許可の確認、お願いします」


ガレッシュ様は何だか慌てて書類を見ている。未来は私に向けて何か用紙を差し出した。


「カデリーナさんとこちらの役人の方々にお聞きして、観光地として有名な所のいくつかをピックアップしました。ウオカーの購読層がどの年代層が中心になるかはまだ統計が取れていませんので、一応各世代向けのものにしています」


未来さんがゆ、優秀すぎて涙が出るわ…。オツカレ…。


「ねぇ…本当に皆で出かけちゃうの…」


ガレッシュ様がしょんぼりした雰囲気でミライを見た。


「ここに来る前から言っておりますでしょう?殿下は召喚のお手伝いがありますからって。私はシュテイントハラルの観光地をご紹介をする本の取材をするのだと…遊びじゃないですよ…くどいようですがっ」


ガレッシュ様はものすっごい目で未来を見ているけど、未来さんはガン無視だ。


「初めまして、ミライ=カタクラと申します」


未来はリディック様に淑女の礼を取って挨拶を済ませると、何事も無かったかのようにカデちゃんにも何か資料を渡している。


「カデリーナさん、取材の日程これで如何ですか?私は個人的にはこの近郊の農園が気になるんですが…ここ養蜂場でしょうか?ローヤルゼリーとか売ってます?」


カデちゃんの目が輝いた。何やら打合せを始めたので女子二人は置いておいて…。まだムスッとしているガレッシュ様に顔を向けた。


「まあまあ…今回は別行動でも良いではありませんか~?ガレッシュ様にはもっと未来から絶賛されるモノを紹介出来る機会があるじゃございませんこと?」


「何それ?」


兄弟と従兄弟の三人の菫色の瞳が私を見詰める。


「ガンデンタッテの香辛料ですよ!あの交易の無い国に皆を引きつれて訪問し、パパッと香辛料を紹介したら未来は喜びますよ~ガレッシュ様素敵っ!とか言われちゃいますよ~」


「そんなことしなくてもミライは褒めてくれるもん」


「へ~え」


ナッシュ様がニヤニヤとしている。私も一緒にニヤニヤした。盛大な惚気ですなぁ~!


すると話を終えたらしい未来とカデちゃんがこちらの話に参加して来た。


「そういえば聞いて下さいよ~召喚で忙しい時期なのに、例のお見合いも同時進行するらしくって…。」


なんとまあ…クリぼっちの召喚騒ぎの中こっちで狂戦士もお見合い騒ぎですか…。


「見合いはいつですか?」


「今日の13刻です。マディ大丈夫かしら…ふぅ…」


「じゃあマディ姫はもうカステカートに着いているか…」


と、ナッシュ様がしみじみと言った。すごい不安だけど本当にお見合い大丈夫なのかしらね~?


さて


ムスッとしたガレッシュ様はほっておいて…私達は観光…もとい現地取材の旅に出かけることにした。


未来が行ってみたいと言った養蜂場に行き…蜂蜜っぽいものを味見し…国立公園で春を満喫し、地元で有名な洋菓子店に赴き、ユタカンテ商会のシュテイントハラル限定の『メンズ』男性化粧品を大量に購入したりした。そしてナジャガルにもユタカンテ商会の支店を出してくれーとカデちゃんとシュテイントハラル本店の責任者の方と話し合いも出来た。念願のユタカンテ商会ナジャガル支店開設!胸躍るわ!


実りの多い取材旅行になった、満足。


そうそう


移動中、護衛のシューテ君とジーパス君があからさまに不機嫌だった。男前レベルが下がってますがどうしたの?


護衛のミーツさんに聞いた所によると…


「はぁ…なんでもガレッシュ殿下から『ミライさんと正式にお付き合いするから、宜しくね』とか言われちゃったらしくて…いや~若いですね~」


「それぐらいで顔に出すとは訓練が足りんね、後でしごいとこうか、ミーツ?」


アンティ副団長がジロリと若い護衛の二人を睨んでいる。


あらら~とうとうガレッシュ様が言いましたか?ってか私、まだご報告受けてませんけど?どういうこと?


これは早速…


皆で今日の最終目的地、山沿いの高原へ移動中に未来に話しかけた。


「ちょっと~未来、聞いたわよ?あなたとうとうガレッシュ様とお付き合い始めるんだってぇ?」


「きゃああ!本当ですか?!」


「いや~ん!異界の乙女の恋物語再びですよ~!」


これこれ、ユリアンもネスレンテさんも大声で煽るんじゃないよ。後ろで魔圧を上げてギリギリ歯を噛みしめている護衛二人がいるからさ。


「おお?とうとうか~お付き合いって…婚姻はいつなの?」


ナッシュ様の言葉に皆の視線が未来に集まる。未来は真っ赤に顔を染めながら


「とりあえず…まだです。私が…普通の恋人同士みたいな…その…デートとかしてみたいって…お願いして…」


と小さい声で答えた。


「きゃああ!やだ~~!可愛いっ未来可愛いわ~そうよねぇ…二人でデートしたわよねぇぇ!」


カデちゃん…興奮しすぎです。益々護衛の若い子が魔圧を上げてますから…。


「でーとって何?」


「逢引という意味です」


ナッシュ様に聞かれてそう答えると、またメイドの二人が叫んだ。


「ミライさん可愛いわっ!」


「それにお答えする殿下も素敵!」


未来はメイドの二人に囲まれている。因みに今は転移門の前だ。高原の避暑地(仮)はまだ宅地や別荘などは建っておらず、放牧などが行われている非常にのどかな地域らしい。


「さあ、まずは移動しようか~」


ナッシュ様の声掛けに皆がはーいと答え、転移門で一気に高原のあるシュークリメンスに移動した。


高原は今の時期はまだ肌寒いが、やはり空気が美味しい。お腹いっぱいまで空気を吸い込む。


早速、農場に移動して新鮮な乳製品などを買い込むと、湖の近郊や避暑地になりそうな所をウロウロとしてみた。


うえぇぇ…そんな時に魔力酔いがぁぁ…。


木陰に座っていると、リディック様が冷たい果実水を渡してくれる。カデちゃんが治療魔法をかけてくれた。ご迷惑おかけします…。


「少しここで休もうか?景色の綺麗な所だし…」


リディック、あんた優しい男になったねぇ!おねーさん嬉しいよ!


ナッシュ様は湖で釣りをしてくる…と出かけてしまったので、なんとなくリディック様を女子が囲んでいる構図になっている。


一応ムスッとした護衛のジーパス君とシューテ君もご一緒だ…。いい加減に機嫌を直せよ。


「リディック様、お顔の血色も良くなりましたね。魔力波形も良いですよ」


カデちゃんがポッケから一口サイズのオレンジクッキーを皆さんに配りつつ、そう言うと、言われたリディック様は果実水を飲みながら少し照れている。


「日中、各地区の被害状況や必要な物資の補充の点検を野外でしていますので…自然と体を動かしているからかもしれません。」


「それにしては…魔力量が上がってきているようですね?ちょっと失礼…」


カデちゃんはリディック様の肩辺りに手を置いた。


「これは…以前拝見した時より魔力量が上がってきていますね…」


そんなことってあるの?思わずカデちゃんの顔を覗き込んだ。


「稀ですがありますよ?ご病気で臥せっていた方が、本復されて動き出せるようになった途端、魔力量がグングン増えたとか…。つまりはリディック様も快活な生活を送られるようになって本来の魔力量が生成されるようになった…と考えられますね」


「へ~え。じゃあ、殿下達の従兄弟だし中々の高魔力保持者になるのかな?」


未来が関心したような声を上げた。


「う~ん、子供なら伸びしろみたいなのもありますが、今までほとんど魔力は無かったのですよね?」


とカデちゃんが聞くとリディック様はコクコクと何度も頷いた。


「でしたら、伸びしろという表現よりは本来扱える位の魔力を生成できるようになるという言い方が正しいでしょうね。上がる分扱える魔法が増えますよ?魔術の練習、頑張って下さいませ。」


カデちゃんに微笑まれてリディック様は困り顔だ。


「この年で覚える事沢山出来たなぁ…あはは」


本当に丸くなったわね、リディック様…恋があなたを大人にしたのね…え?違う?


「本当に…私でも役に立てている…と最近実感出来るようになったのです」


リディック様は一言一言噛みしめるように話し出した。皆、リディック様の次の言葉を待った。


「本当に分かってなかった。自分が追い出されて一番苦しいとか、一番不幸なんだと…思い込んでいた。ガレッシュと二人きりで話したのがきっかけだったのだ。あいつは私など比べものにならないほど、苦労をしてきていた。本当の第二皇子殿下なのに、私のせいで…あいつは何でもないみたいにこう言ったんだ。『もしまたお前は皇子じゃない、ここから出て行けって言われても生活は困らないからさ、俺しぶといしね。子供の時も死ななかったくらいだし?』と…私は、彼だから…彼だからこそ持って生まれた才覚を持っていたからこそ…皇子殿下なんだと気が付いた。私との本当の器の違いを見せつけられた…」


「そうかな…?」


突然の否定にギョッ…として皆が未来を見た。未来はリディック様をまっすぐ見詰めている。


「才覚っていうか剣士とか術士の才能は確かにあるとは思うよ。でも器とか…は違うんじゃない?あの人皇子っぽくないもん。地位のある人ってさ、最初から皇子じゃなくて…周りに鍛えられて?育てられてかな?それ相応の態度とかを身に付けるものだと思うけど…そこは本人の頑張り次第じゃないかな?あなたがそれが足りなかった…って今、思うなら努力してこなかった結果だと思うよ?上に立つ人ってさ、その地位に甘んじている人はすぐ失脚するよ?皆、陰ながらすごく努力しているはずだから」


リディック様は静かに泣き出した。未来が「泣かせちゃった~」と言ってリディック様の背中を摩っている。摩るついでに治療と回復をかけてあげている…。リディック様も魔力量があがってきているからか、未来が治療してくれているのに気が付いたみたいね。お互いに恥ずかしそうに頷き合っている。


「リディック様、あなたはこれからですわよ。何て言っても伸びしろがありますものね!器はこれから育てましょう」

私がそう言うとカデちゃんは満面の笑顔でサムズアップをしている。リディック様は泣き笑いになりながら何度も頷いてくれた。


いつの間にか魔力酔いも治まっている。ああ、とても良い気分だわ…。


その後、湖で魚を獲って来たナッシュ様達と合流し、王宮に戻った。


さあ、明日はいよいよ召喚を始めるようですよ。朝から早起きしてみますかね。


あ、別に失敗しろよ~ぐへへ…とか意地の悪い事は考えてないよ?どうなるかは興味津々だけどさ。


朝一番、二の間と呼ばれる大広間に出向いた。もう詠唱が始まっているみたい。


広間の隅のソファの辺りでナッシュ様が消音消臭魔法をかけてくれたので、その中に皆で入ってお茶のセットをヨジゲンポッケの中から出して広げた。


「この詠唱が明日まで続くんですよね?」


「そうだな…そういえばこの詠唱している最中でも…魔力が抜けていくのを感じていたな。」


「あっ!兄上もそうなの?やっぱり詠唱中そうなったよね?アルクリーダ殿下に詠唱中に魔力切れだけは気を付けて…て言っておいて良かった」


とかナジャガルのご兄弟と喋っていると…カデちゃんと国王陛下夫妻が広間にやってきた。今日はカデちゃんはご両親と一緒に見守ります…と事前に聞いている。向こうの方から手を振るカデちゃんに振り返して答えた。


ちなみにリディック様は昨日の夜にガンドレアに帰られました。


色々話せてすっきりした顔になっていらっしゃった。なんだか未来と仲良くなったみたいで帰り際まで二人で何かお喋りして笑い合っていた。


あら?よく考えればリディック様って未来が思う理想の王子様のイメージに近い感じじゃない?所謂、優男系だもの…。


これは~ガレッシュ様は大ピンチじゃない~? 


ガレッシュ様は今は真面目な顔でナッシュ様と召喚魔法の話をしている。すると私の視線に気が付いたのかガレッシュ様がこちらを向いた。


「なに~?義姉上~」


「いえいえ、オホホ。そう言えば未来はどうしたの?」


ガレッシュ様は苦笑いだ。


「ほらさ、前アルクリーダ殿下に、女だから…とか言われてたでしょ?なんだっけえ~と『セクハラ』とか言うんだったけ?それ言われてから未来さ、アルクリーダ殿下のことを目の敵にしてるんだよ。今日だって『けっ…失敗しちまえばいーんだよぉ!』とか言って、タクハイハコで送られてきた軍部の仕事を怒りながら朝からこなしてるよ」


ガレッシュ様、未来のモノマネ上手いね…。気にするのはそこじゃないけど…。未来めっちゃ根に持ってるね。


詠唱はまだまだ続いている…。ちょっと眠くなって仮眠したり…を繰り返しながら2日待った。待ってみた。


「う~ん、そろそろ魔法陣が輝きだすはずなんだけどなぁ…」


「だよね…。俺は魔力をごっそり取られるみたいな感覚になって倒れそうになったけどな…」


「おっ…お前もか?私も倒れてしまってな…魔力切れで」


へ~そうなの~。とか、思っていると二日目の朝、未来が作りたてのフレンチトースト、シュテイントハラル産の蜂蜜かけを持って来てくれた。ナッシュ様は大喜びだ。


「まだ…召喚終わらないんですか?」


「みたいだね~」


と、ガレッシュ様が未来に答えている。未来はチラリと詠唱中のアルクリーダ様の後ろ姿を見て


「何が召喚だよ…召喚する前に色々やることあるんじゃねーかよ…失敗しちまえ…。」


と呪詛?を呟いていた。


未来さんの呪詛が効いた…かどうかは分からないが、召喚は…失敗に終わった。


3日間詠唱を続けてみたが、魔法陣は変化なしだった。うちの兄弟皇子達は一応召喚失敗反省会?に参加して、今後どうするか…とか話し合いをしてきたらしい。


一足先に女性陣だけはナジャガルに帰国させて頂いた。


「もうやめとけ…って言ったんだけど、向こうの国王妃が何だか必死なんだよな…」


帰国して来たナッシュ様もさすがにカデママの圧に押されたのか、疲れた表情だった。ガレッシュ様に至っては滞在を延ばして、もう一度召喚を試みたいから助けてくれ~と泣いて縋られたらしい…。


「なんだかお母様が必死でごめんなさい…多分ね、葵や未来が『出来る嫁』だと言うことをあちこちで聞いたらしくて…アル兄様のお嫁さんは異世界人が良い!と思い込んじゃったみたいで…ごめんなさいね」


カデちゃんが謝ることないよ。


いやもしかしたらだけどさ、未来の呪いでクリぼっちの召喚が失敗している可能性も、あるっちゃあるしさ…多分だけど、まさかね?


だってね、クリぼっちの召喚が失敗した…って分かった時、未来さんわっるい顔でニヤーッと笑っていたもの…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ