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カッコいいより可愛いもの

誤字報告ありがとうございます<(_ _)>


私の懐妊が正式発表された。


歩く先々で色んな方に声をかけて頂いて、おめでとうと言って貰える。正直こそばゆい…。


「先輩~シュテイントハラルの広告印刷が上がってきましたよ」


未来が詰所に帰りかけている私に声をかけてきた。


「コロ君おはよっ!」


「おはようございます、ミライさん」


未来が横に立つコロンド君に挨拶をした。


実はこの一部の子達を未来があだ名で呼ぶことが…見守る隊内で問題になっている…らしい。


最年少の見守る隊員のコーリー君に「コー君」と呼んだことがきっかけだった。ジャレット君には「ジャレ君」コロンド君には「コロ君」…お気づきだろうか…?


未来は無類の可愛いもの好きだ…、何度も言おう、未来は可愛いものが大好きだ。


可愛いモノ達(生き物を含む)に可愛いあだ名をつけて何故悪い?


と未来が僕もあだ名で呼んで下さい!と詰め寄ったシューテ君に言い放った言葉だ…。


シューテ君なんてわざわざ第三の詰所までやってきて、コロンド先輩ズルいっすよ!と散々コロンド君に詰って帰っていったほどだった。実はコロンド君の方が年上なんだよね…。シューテ君まだ20才よ?


シューテ君カッコいいけど、可愛さに負けたか…。ああ無常。


「シュテイントハラルの国立公園の絵、綺麗ですね…この世界に写真技術があったらいいのにな…と思ってましたけど、絵でも十分素敵ですね」


未来が見せてくれたカデちゃんからの熱い御要望にお応えした、『シュテイントハラルへおいでませ』の広告ページのイラストはとても綺麗だった。


「風光明媚な所は絵でも素敵ね~軽井沢の避暑地のイメージだわ」


「それいいっすね、カデリーナさんにお伝えしておきます!それと、宮内託児所(うち)の広告出してみてはどうですか?次号のバラミアウオカーの特集にするとか?働く女性必見…で、先輩にあやかって新ママ特集もいいですね」


未来さんの企画案件に全部乗っかりたいです!流石、片倉未来!


「今はまだ忙しいでしょ?ガレッシュ様のシュテイントハラル訪問が終わってからでいいわよ?」


私の横を歩きながら未来はちょっとギクンとしている。


…どうやら見守りの時にとうとうガレッシュ様と何かあったらしい…。多分皆が喜びそうな方向で。私も大人だ…一々騒がない…騒がないけど、ホッとした。


最近はガレッシュ様のお部屋に時々障壁が張られているけど…無意識でなく、意図的に張っていると思っている。それにちょいちょい未来の部屋にも同種類の障壁が張られている…。


丸く収まっているならなによりだ…。


バラミアウオカーの試し刷りが出来たら、町の書店に営業に出かける予定だ。今日の午後、未来と共に町へ出てまずは事前プレゼンの書店廻りをしようか…と打合せをしながら詰所の前で別れた。


窓の外から中庭を覗くと未来が走って行くのが見えた。どうしたんだろう?


「ザッ君、リーちゃん今日は出勤しているの?」


なるほど…ザック君が3才くらいの女の子と男の子の手を引いて中庭を移動しているのを未来が見つけて声をかけている。


そう何度でも言おう…未来は可愛いものが大好きだ。


未来はヨジゲンポッケの中から小さい小袋を出して子供達に渡している。一口サイズのお菓子かな?男の子を抱き上げると高い高いをしている。子供達の弾むような笑い声が聞こえてくる。


今、未来の可愛いものとして一番のお気に入りはルル君の妹リリアちゃん12才だ。


無愛想ルル君の妹とは思えないほどよく喋り、明るく可愛い。未来が「リーちゃん」と言って可愛がっているのを見ても、見守る隊の熊さん達は流石にリリアちゃんに詰め寄ったりはしない。


リリアちゃんに難癖をつけようもんならルル君とジャックスさんのSSの双璧二人が羅刹の如く切り込んで来て…半殺しの目に遭わされるようだ。


未来絡みではないが、リリアちゃんに言い寄って来た警邏の少年兵数名をジャックス兄貴がボコボコにした…という実例がある。恐ろしや…。


「ガレッシュ…明後日から例の召喚の件でシュテイントハラルに行くんだよな?ミライは連れて行くのかな?」


執務室から出て来たナッシュ様に聞かれて、頷きかけて気が付いた。


「あれ?そういえば…未来から何の話も聞いてないわね…。昼から町に一緒に出て来るから聞いてみるわ~」


「ん?おい…町に出るなら、マスワッツのワルッテを買って来てくれ」


またお菓子ですかっ?この天然スイーツ皇子めっ…ナッシュ様に胡乱な目を向けてから


「ナッシュ様~ご存じです~?異世界に糖尿病というとても恐ろしい病気がありまして~」


と、糖分の取り過ぎは命の危険に直結していること話してナッシュ様を目一杯脅して差し上げた。


まあ糖分の取り過ぎだけが糖尿病の原因ではないけれどね…おほほ。


昼過ぎ、護衛のジーパス君とメイドのユリアンと未来の四人で町へと出かけた。


私と未来は隊服を着ていたせいかすぐに身バレしてしまい、民衆に取り囲まれてしまった。


「アオイ様~おめでとうございます!」


「ありがとー!」


「はいはーい!通して下さいねー!」


未来さん、いつの間に防御障壁を習得されたの?未来は私達の周りに防御障壁を張りながら民衆を捌いて行く。


しかし数人はついて来てしまったので、追い払うのは諦めてゾロゾロと移動し…数軒の書店を廻り『バラミアウオカー』のプレゼンをして確かな手ごたえを感じて…気分よくお洒落なカフェに入った。


追っかけ?の民衆もしっかりついてきていて、別のテーブルに座っている。よく見ると若い女の子のようだ。あれさ、もしかしてジーパス君の追っかけではないかな?


「ワルッテ50個を持ち帰りで包んでおいて貰える?」


「承知いたしました」


カフェの店員にそう告げてからテーブルに着席した。そう、ここはナッシュ様が買って来いと言っていた、高級洋菓子店マスワッツに隣接するカフェだ。未来はメニューを熱心に見ている。


「ザッハトルテみたいなケーキもありますよね…コーヒー豆無いのかな…」


「カカオの実…っぽいのはカステカートのガンヴェラー湿地の近くで収穫されるみたいね、あの辺り亜熱帯気候だもの」


「じゃあ益々コーヒー豆がありそうですね…。ほら、ジー君、護衛はいいから座んなよ~ユリちゃんは座ってるよ?」


な、なんと未来がサラリと「ジー君」と「ユリちゃん」とジーパス君とユリアンをあだ名で呼んだ!


呼ばれた二人はめっちゃ嬉しそうな顔だ。最近、このあだ名論争が独り歩きをして、未来にあだ名で呼ばれると「未来の可愛いもの達」カテゴリーに入れてもらえたとかで、城勤めの方々がマウントする際の言葉として大変重宝されているらしい。


「きゃあ!私ユリちゃんですかぁ?!明日から皆に名付けてもらったって自慢しよ!」


ユリアンは顔を真っ赤にして喜んでいる。ジーパス君も耳を赤くしている。別テーブルの追っかけから黄色い悲鳴が上がっている。うむ…間違いなくジーパス君のおっかけだ。


「自慢~?そんな嬉しいもんかね~。先輩どれにします?」


私は果物の乗ったタルトのティーセットを頼み、各々が注文を済ませると未来の顔を見た。


「未来、あの地図出来上がった?」


「これですね…よっと」


未来がテーブルに地図を広げた。縦横幅は1シーマルぐらい大きな紙だ。


「こ、これバラミアの商店街ですか…うわ…各店舗の名前も入っていますね、すごい!」


ジーパス君が地図を覗き込んでいる。


「これを商店街のギルド前に看板にして立てようかと思ってね」


と未来が言うとユリアンとジーパス君はキョトンとしている。


「初めてここに来た時に路地が多くて、商店街の配置が分かりづらかったのよね~それで、地図にして貼り出せば、初めて来た観光客にも役立つし、路地裏の新しいお店を発見出来る楽しみも出来るしね!」


と未来は悪戯っぽく微笑んでいる。


この地図製作に警邏担当のマスワルト中将閣下が大活躍された。警邏兵に路地裏の徹底調査をさせ、未来に資料として渡したのだ。


「マスワルト閣下ありがとうございます!」


未来の輝くばかりの笑顔を浴びてマスワルト閣下はホクホクしていた。因みにマスワルト閣下はその筋の人かと思わせるほどの強面フェイスである。顔に刀傷の勲章付きだ…。


「すごいですね!路地裏の一度しか行ったことない店とか場所を忘れてしまいますもの!昔お使いで以前お勤めされていたメイドの方のご自宅にお伺いした時に迷子になったの思い出しました…」


ユリアン分かるわ、その気持ち。スマホも無いから地図アプリ見れないものね…。


お茶を頂きながら商店街の中に医術医院を開設するとか、後で不動産屋行きたい!だとか話していてフト思い出して未来に聞いてみた。


「そういえば、未来…シュテイントハラルへは一緒に行くの?」


すると未来はものすごく眉間に皺を寄せて溜め息をついた。


「仕事溜めたくないし、行くのイヤだって殿下には言ったんですが…ホラ、例の障壁を寂しくなって張っちゃうかも~とか訳の分からん脅しをかけてきて…」


本当っにあの兄弟はごねると厄介だな…。


「でもね、よく考えたらシュテイントハラルに行くのは一石二鳥なんっすよね。カデリーナさんも里帰りしているらしいので、ついでに次回のえ~とシュテイントハラルの首都は…『ケーイナハルウオカー』の打合せと現地取材も出来るかなって~」


おおっ!?おおっ現地取材!流石、片倉未来!


「それいいよ!本当だわ~やだ~私も行きたい!けど…新体制のガンドレア評議会の式典に参加だし…くそ~っあのクリぼっちめっ!忙しい時期に召喚しやがってえぇぇ~」


つい、口汚く某王子殿下を罵ってしまったわ…反省。


「シュテイントハラルの観光地って何かなあ?いや~楽しみっすね。お土産買ってきますから…あ、そうだ。ユタカンテ商会のシュテイントハラル限定の…え~と何だったかな」


と、言いながら未来はヨジゲンポッケからユタカンテ商会の目録を取り出して捲って見ている。


「そうそう、シュテイントハラル限定のその名もずばり『メンズ』って名前の男性向け化粧品があるんですよ。お茶の石鹸…ピューリの化粧水…」


と未来が説明し出すとジーパス君が急に慌て出した。


「ええ?!そんな男性向けの商品あるんですか!?欲しい…」


「ジー君、護衛で一緒に来れば?ガレッシュ殿下はアルクリーダ殿下と城に籠るんでしょ?私ら特に用事無いし、カデリーナさんと皆で観光すりゃいいじゃん」


「い…行きます!絶対行きます!」


「私も行きますぅぅ!」


「私も行きたい…」


ジーパス君とユリアンの嬉しそうな声とは裏腹に私はどんよりした声で答えた。


ああ…行きたい…。勿論ガンドレアの公務は大切だ…しかし…。


「先輩も遅れて参加は出来るんじゃありませんか?え~とガンドレアの式典の終わった後で…2日くらいは空いてません?」


未来は自分で作ったシステム手帳みたいなのに何かを書き込んでいる。いいなぁ~私もソレ欲しい。


「未来ぃ…その手帳欲しい…」


と、私が言うと未来はゴソゴソ…とヨジゲンポッケの中を弄り、ユルキャラ?が描かれた手帳を私に差し出した。


「実はもう少し形を整えてから企画あげようと思ってたんですが、可愛い系の文房具作ろうかと思って…。託児所の子供達にも必要でしょ?」


未来ーー!あんたは出来る女だよ!本当凄いよ!


「こちらの暦は独特ですよね…。曜日という概念が無いせいか6月の15日とかの数え方だし…一年360日だし。だからこその手帳ですよね」


未来の手帳は一日の予定と月ごと、年事を書きこめるようにデザインされていた。


「これ地図作っている時に見つけた路地裏の文具店のおばあちゃんとの合作なんですよ。このキャラとお花の絵、可愛いでしょ?これと同じデザインで筆箱とペンも作ってもらっています。」


「きゃああ!これ日付が入ってる?毎日の用事とか先の予定も書き込みできるんですね!」


ユリアンが食いついた。ジーパス君もガン見している。よし…メンズ文具も作るか!


未来が使い方をユリアンに教えているのを横目にこれからの野望に胸が熱くなっている私であった。


しかし胸が熱くなっている場合ではなかった…。


軍の第三の詰所に戻ってナッシュ様にシュテイントハラルの事を伝えるとものすごく睨まれた。


「ちょっと~その観光は、私は頭数に入ってないのではないかな?!その日程じゃ私は参加出来ないことは分かってるのかな?!」


「仕方ないじゃないですか~ナッシュ様は~向こうで視察の予定が詰まってますし~私一応式典には出ますけど、身重で公務は免除されてますしぃ~?」


つい言いながらニマニマしてしまう。その私の顔を見て益々ナッシュ様がムスッとしている。


「絶対、絶対ついてくぞ!アオイばっかり楽しい思いをしてけしからん!」


ちょっと怒る所がずれてるんじゃない?楽しい思いをしに行く訳じゃあ~ないのだよう?


その後


なんとナッシュ様は裏技を使ってきた。馬車馬の如く働いてこちらの仕事を前倒しで片付けて…評議会二日前にガンドレア入りし…視察を先に済ませたのだ。日程調整をしたフロックスパパと事務次官様達オツカレ…。


この前入り作戦を話した時のフロックスパパの顔ったらなかったわ…。皇太子殿下に攻撃魔法でも仕掛けそうな顔で睨んでいたもの…。


そんなこんなでナッシュ様は汗と涙の結晶で二日間の自由時間をもぎ取っていた。


さて、ガンドレアに私は出発した。


護衛二人とメイドのユリアンとネスレンテさんとザック君とジャレット君の六人だ。


「ガンドレアとシュテイントハラルの護衛とメイド達は誰がついて行くかですごく揉めたんだってね?」


私について来てくれたのは30代の護衛のお兄様達。シューテ君とジーパス君は意地と根性?で未来とガレッシュ様と一緒にシュテイントハラルの方へ行っている。


「そういえばミライさんについて行きたい~と若いのが騒いでましたね」


と苦笑いしているのは黒髪のミーツさんだ。このミーツさんはアジア人っぽい顔立ちなのだけど生まれを聞いたら、お爺様があの、香辛料の産地と噂のガンデンタッテのお隣の国のご出身なんだとか…。


「あそこは圧政がすごくて、じいさんは親…曾爺さん達と逃げて来たんですよ。二年ほど前にやっと内乱が治まって政権が変わったとかでじいさん達泣いてましたよ」


どこにもガンドレアみたいな碌でもない国があるのね…。


もう一人の護衛の方は…なんとあの俳優の松前崎慶様に似ているのよ!ハッキリ言って渋いのよ!


「アンティさんって異世界の…俳優の松前崎…、え~と芝居小屋の看板男優に似てるんですよね~」


と未来がアンティ護衛騎士団副団長に言った時、仰天した。そうだ!誰かに似ていると思っていたのだ。


慶様っ!と、心の中で呼んでいるのは許して欲しい…。


新生ガンドレア国の各地区代表と三ヶ国同盟軍の幹部の皆様が一同に会した式典は厳かに…そして後半は幸せな気持ちが溢れる楽しい式典になった。


「らっしゃいらっしゃい~!」


「ピューリの甘がけどうだい!」


びっくりである。なんと、ガンドレアの王城近くに沢山の屋台が出ているのである。屋台目当てなのか…観光客?というか大盛況である。


「この屋台すごいでしょう?実はユタカンテ商会が主体で開催している催しなのですよ」


と、私の後ろでヴェルヘイム様の伯父上様のデッケルハイン元伯爵と奥様が嬉しそうに微笑んで立っておられた。


ガンドレア国として新しく『民主制』を導入し、国民の代表として首脳を選出する選挙を行い…投票の結果、オランジェル=デッケルハイン新首相が誕生した。


「義姉上のおっしゃっていた活気ある国造り…まずは第一歩でしょう?」


デッケルハイン首相夫妻の後ろから、ナッシュ様とリディック様の二人が連れだって歩いて来た。リディック様はお顔の血色も良い。どうやら『もやし』は卒業したようだ、魔力波形も綺麗だ。


彼は大丈夫だ。今も彼の後ろにはガンドレアとナジャガルの議員の方々がニコニコ笑顔で立っている。皆、魔力波形がとても綺麗だ…。


「製糸工場と縫製工場の方は上手くいきそうですか?」


私がそう聞くとリディック様が大きく頷いた。


「昔は製糸、縫製工場が盛んだったとのことで…要経験者の方を優先的に雇用している最中です。本当に商会のような規模で蚕の飼育を任せてもいいのですか?」


「今は国自体が疲弊しているもの…個人で生計を立てるのは難しいわ。国が援助出来る所は補助してあげるべきなのよ。まずは国民皆が健勝で過ごせること、これが目標よ。国の元気は国民から!国民が元気じゃない国は動かないわよ?国王一人では国は存在出来ないの」


そう言ってリディック様を見るとちょっと涙ぐまれている。


「私は…そんな事考えてこなかった。食事も余るくらい食べれて当たり前、寝る所にも困らない…疲れたと言えば休めて…贅沢が…贅沢だと気が付かなかった…。自分がいれば国があるのは当然だと…。」


私はリディック様の背中を摩ってあげた。まだまだモヤシっ子だね…でも男の人の背中になってきたね。


「今気が付けただけ素晴らしいですわよ?驕り高ぶり…死ぬまで気が付かない愚か者もおりますから、あなたは気付けた、大きな違いですわよ」


ナッシュ様もリディック様の頭をグリグリ~と撫でている。


ああ、ホッコリするわ…。最近すぐ涙ぐんじゃうわ…年かしらね…。ん?


「ナッシュ様…気持ち悪い……。うぇ…」


「な、何!?悪阻か?そこに座れ…もうっすぐ無茶をするから…」


情けない…リディック様とデッケルハイン夫人に支えられながら壁際の椅子に座らせて頂いた。夫人は回復魔法をかけて下さる。ネスレンテさんが果実水を入れてくれた。


「ありがど…ずみまぜん…」


ネスレンテさんが心配そうな顔で私を覗き込んでいる。デッケルハイン夫人は穏やかな笑みを浮かべていらっしゃる。


「私…こう見えてもコーデリナ神殿の元巫女でしたのよ?」


と昨日は嬉しそうに話しかけてこられたデッケルハイン夫人には、マジー様との懐かしいお話も聞かせてもらえた。


「巫女姫様、お元気そうで何よりですわ~確かに医院の術医に向いてらっしゃる方だわね!お話してるととても楽しい方だもの」


分かります、分かります。会話のテンポが心地よい方なのですよね!


「義姉上…この状態でシュテイントハラルは無理じゃないかな…?」


オロオロとしながらリディック様がそう言ったけどキリッと彼を睨みながら


「先程も言いましたけどっナジャガルだけが元気でもいけないのですよっどの国も元気になってもらいたいのです!シュテイントハラルの観光産業も盛り上がるし、関連書籍の売れ行きも上がれば、うちの国の出版業界も盛り上がる!頑張る時ですよ…ですからっ…うえぇぇ…」


と騒いでいるとまた悪阻がきてしまった…。


悪阻と言うより極度の魔力酔いだな…お腹の子はさっきからキャッキャッ喜んでいる…ようだ?元気で何より…うえぇぇ…。


そして次の日…なんとか予定を終わらせたナッシュ様と共にシュテイントハラルへ出発したのだった。


次回は番外編です。

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