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ヤウエン討伐 SIDEミライ前編 

ミライの前後編の番外編です



ガレッシュ殿下に買って頂いた新品の『レデスヨジゲンポッケ』をたすきがけにかけて、私は自室を出た。


今日はいよいよグローデンデの森の定期討伐に出かける日だ。


いよーしぃ!やってやるぜー!


「おーい、集合ー!」


大人数を目的地に運べる魔道具『転移門』の前でガレッシュ殿下が皆を呼んだ。


はあ…複雑だな。


先輩から聞いた召喚の真実…正直ショックだった。


ガレッシュ殿下があの召喚をして…満島ちゃんを呼びたかった…と。


ぶっちゃけると満島ちゃんが…好みで呼びました…って言ってるのと同じ事じゃねーか!?頭くんなぁ~ああ、いいよいいよっ!どうせオマケだよっ!?あんたの好みじゃなくて悪かったね!?


つい、ガレッシュ殿下を睨みつけてしまう。仕方ないじゃないか…ムカつくんだからさっ!睨まれたガレッシュ殿下は怪訝な顔をしている。


ふんっ!澄ましやがって…もう口なんて聞いてやるもんかっ!


昨日はいい人だなぁ~とガレッシュ殿下の私の中の株がググッと上がったのに、今日は大暴落だよっ!


昨日…あの私の理想の王子様像のまんまの二人は、見た目に反して中身は残念な人達だった…。


まだ変態的?発言のフィリペラント殿下はいいんだけど…あの何気ない一言を発してきたアルクリーダ殿下の言葉には心を抉られた。


女だから…。


楽でいいよな~ちょっと胸触らせてあげてるだけで…仕事も貰えてさー…。


会社で嫌味を言われたことを思い出した。しかもちょっと王子様っぽくてかっこいいな…なんて思ってた男性だったので余計にショックだった…。


胸なんか触らせてないよ…。きっちり仕事して成果を上げているだけだもの…。


必死で頑張っても…嫌味を言ってくる人は必ずいる。


「専務の愛人さんは楽でいいわね~」


とか年上の女性社員達に集団で嫌味を言われたこともある。何が愛人だ…。あんなおっさん興味ねぇよ!


「ミライ…」


物思いに沈んでいたがガレッシュ殿下の声で意識が浮上してきた。


目の前に立っているガレッシュ殿下は心配そうな目で私を見ている。綺麗な瞳の色だな…青じゃないけど菫色もいいな…。


「大丈夫…か?アルクリーダ殿下は…その、悪気があって言ったのじゃなくて…」


「大丈夫です、慣れてますから…」


そう慣れている…もう嫌味も…僻みも慣れている…。するとガレッシュ殿下がフワッと私を抱き締めてくれた。何だか気持ちいい…。温かい…これガレッシュ殿下の魔力かな?


「慣れなくていいよ…こんなことは慣れなくていい…。怒ったっていいよ、泣いたっていいよ。ミライは懸命にやってるよ…」


やだ…ガレッシュ殿下が優しい…これ魔力だよね?何て温かくて…気持ちいいんだろう…。体の中に温かい魔力とそして気持ちが満ちてくる。


とかさ…昨日は優しい皇子様だな~と思ったわけよ?


なのになんなの!?好みじゃない女が間違って残っちゃってごめんなさいねぇ~?


ガレッシュ殿下が討伐に関しての注意事項を説明している。


イカンイカン…仕事は仕事だ。もう私にはこれしかない…。仕事に生きる女、片倉未来だ。


気持ちを切り替えて『転移門』に入った。ガレッシュ殿下は少し離れた所で、物憂げに立っている。ムカつく~イケメンなのも腹立つぅ!


一瞬でヤウエンに着いた。視界が明るくなり空気が変わる。寒っ…先輩から貰ったピンク色のマフラーを首に巻いた。


ヒートの魔法を使えばいいのだけれど、可愛い小物を身に付けておきたい…。


可愛いものが好きなんだ…、文句があるか?満島ちゃんだって可愛いから大好きだ…。彼女に罪は無い…。


ついまた思い出してガレッシュ殿下を睨んでしまう。ガレッシュ殿下はちょうどこちらを見ていたようでギョッとしたような表情をされた。


ドスドス…と音を立てて殿下の横を通り過ぎるとアーダクトさんの後ろをついて行った。ヤウエンで第三部隊が討伐用に使っている邸宅に向かう。


「いや~なんだか落ち着かないね、こんな少人数の討伐初めてだし」


とアーダクトさんは言った。選抜5人の一人、バーバンさんも相槌を打っている。


「そうそう、本当にうちも第三みたいに経費削減出来ますね~いつも100人規模の討伐隊の予算上げて切り詰めるの困ってたんですよね~」


そうなんだってね…。あの憂い顔で私達の後からゆっくりついて来るガレッシュルアン皇子殿下が、100人分の働きをしてくれる…とかで、今回の討伐から5人編成の討伐隊になったそうだ。


本当はガレッシュ殿下一人で行く…とか騒いだらしいけど流石に皇子殿下を一人に出来ないとかで…最低のこの人数らしい。


それはそうと…実は数日前から気になっていることがある。


葵先輩に聞いても「そうかしら~?」とか恍けられてしまった…怪しい…。


そう…私の周りに魔法を使った障壁が常に張られているのだ。しかもこの魔法をかけているのはガレッシュ殿下だ…。この温かい魔力は間違いない…今はその事を問い質せる絶好のチャンスなんだけど…個人的恨みから聞けず仕舞いだ…。


そしてヤウエンの討伐隊の拠点になる元宿屋に到着した。


私はすぐに台所へ行って備品のチェックだ。『レイゾウハコ』『センタクハコ』包丁や調理器具類も確認する、大丈夫そうだ。


「なあ…ミライ…今日機嫌悪いの?」


びっくりした…気配を消すな!


いつの間にかガレッシュ殿下が台所の戸口に立っていた。ガレッシュ殿下は足音も無く私の前まで近づいて来ると


「理由聞いていい?」


と聞いてきた。今ここで言うの?まあいいか…。こんなモヤモヤ~とした燻った気持ちを持ち続けているよりは早く吐き出した方がいい。


「葵先輩から…ガレッシュ殿下が私達を召喚したのだと聞きました。そして…満島ちゃんを呼びたかったことも…私だけが残ってしまってすみません…」


ちょっと意地悪い言い方になったのは許して欲しい…。だって腹が立って…虚しくって…何だか悔しいんだ。


ガレッシュ殿下は大きく目を見開くと、台所にあるテーブルの椅子によろめきながら座った。


「説明させてもらってもいい?」


「それって言い訳ですか?」


「…そうだな、うん…兎に角話してもいい?」


ガレッシュ殿下の魔力波形が、なんだろう…三段階ぐらい暗くなった…切れかけの照明みたい…。


「義姉上にさ…幻術魔法でレイナだと見せられたあの子…に一目惚れして召喚をしたのは本当」


はあ…やっぱりってか…だろうね…。なんかショック受けてるわ。私…どうしてなんだろ…。


「でもさ…あの幻術がそもそも間違えてた…て聞かされて、俺…正直さどうしていいか分からなかったんだ。もう召喚魔法の魔法陣は描き始めているし…ここでやめるのもな…て。でもさ、義姉上に違う人と間違えていた…本当はミライと言う女性なんだ…て聞かされた後に…義姉上に聞いたんだ。そのミライという人はどういう人なの?って…」


「葵先輩はなんて答えたんですか?」


ガレッシュ殿下は何だか嬉しそうな表情をした。


「最も尊敬する後輩だ…って。あの義姉上が尊敬する女性…すごいな…って思ったんだ。きっと仕事が出来るんだろうな…とか。カッコいいのかな?とか…。同性に尊敬されるような人ってすごいな…とか。魔法陣描きながら…ミライのこと考えてた」


葵先輩…!私の事そんな風に思ってくれていたんですね…片倉未来、感激です!


「その日から…魔法陣をずっと描き続けて…召喚術の詠唱が始まるまで…今思えば不思議な感覚だった。術を描きながら気が付いたら召喚するレイナのことずっと考えていた…。レイナはきっと優しくって、元気で明るくって、俺と一緒に仕事をしてくれて、俺に無いものをたくさん持ってて…俺はそんなことばかりを考えていたんだ」


あれ?ちょっと待ってよ…。


「あの…満島ちゃんは…明るく元気…というよりは、お淑やかで大人しい性格ですが…」


と私が言うとガレッシュ殿下は苦笑いをした。


「うん…それ最初にレイナに会った時に気が付いた。でも俺、顔しか知らないから…レイナに自分が好む女性の性格を勝手に当てはめていたんだ。それで…勝手に召喚して…ミライとレイナ…二人を召喚してしまった…と言う訳…ゴメンね」


な、なるほど…なんとなく私と満島ちゃん二人が召喚されてしまった理由が分かった。


つまり外見は満島ちゃんで性格的には私…みたいな女性を思い描いていたから、私が選ばれた…ということなのだろう…。あれ?つまりは私の顔は好みじゃないけど…性格は好みってことになるの?


「え~と、で…レイナに会って…泣き出しちゃっただろ?あれ見てさ…なんか違うな、と思って…」


理想と現実の違い…まるでネットの出会い系みたいだな…と思ってしまった…。ただ引っ張り込まれたこちらは大迷惑どころの騒ぎじゃないけれど…。


ガレッシュ殿下は頭をガシガシと掻いた。


「こっちが勝手に想い描いてただけなのに…勝手に違う…て幻滅してる自分も…すごく嫌だった…。そう思ったら…レイナが消えて…気が付いた。ミライが本当に呼びたかった人だったんじゃないかなって…」


胸が痛い…。それで満島ちゃんが消えたんだ…。なんてことだ…。


「最初はさ…ミライは怖いし、言葉遣い悪いし…どうしてこんな人を召喚しちゃったんだろう…て困ったよ。まだ半信半疑だった…」


「ちょっと…何気にディスってます?」


「です…?異界語?」


「馬鹿にしているって意味です…」


私がじっとりと睨みながら答えるとガレッシュ殿下はワタワタと慌てて弁解した。


「馬鹿に何て…いやえっと…物怖じしないし単純にすごいなと思ったんだ、前も言ったことあるけど異世界に来て…すぐに生活の基盤を考えて…前を向いて…逃げないし折れない」


「私だって…怖かったですよ?でも…葵先輩もいてくれましたし…皆さんに助けてもらえましたし…」


「でもすごいよ…義姉上の言ってた通りの人だな~て。尊敬に値する人だって…俺、分かっちゃったんだよね~俺って、女性に求める事って外見とかじゃなくて内面重視なんだって…この年になって初めて気が付いた…情けない」


ガレッシュ殿下は顔を手で覆った…。


ちょい待てよ?ということはつまりだ…。私の外見じゃなくて内面が好きって…こと?


うわわわっ!?何これ…は、恥ずかしいぃ…。え?え?これって何気に告白みたいじゃないか!?


「あ~あ…俺、可愛い感じの子が好きだと思ってたんだけどな…」


「…またディスってます?」


ガレッシュ殿下は顔を覆っていた手を退けた。結構…顔、赤くなってますよ?


「性格が好みだって言ってるの~仕方ないじゃない…段々気が付き出したんだもん。やることなすこと全部好みだし、それに居心地いいんだもん、ミライの隣」


おぃーーーい!何この人!?私の前で本人?に向かって惚気るって新しい攻撃だよ?!


そうかそうだった…ガレッシュ殿下って基本素直な人だった…おまけに何か含んだり、妙な隠し事とかは絶対しない人だった。


思わずにやけてしまう。そうか、そうなんだ…。嬉しさの後にとてつもない安堵が襲ってきた。


「外見じゃなくて…性格ですか、私が選ばれた理由…」


「だってそれしか考えられないよ?ミライがここに残った理由…」


ガレッシュ殿下は分かってないな…うん、これは私にしか…自分にしか分からないかもね。


外見はどうでも良くて内面で選んでもらえた…。いつも外見で色々言われて…妬まれて恨まれて…こんな外見なんて…捨ててしまいたいと思ってたのに…。


「内面で選ばれましたか…」


イカン…少し涙声になってしまった…。これは嬉し泣きだから…と頑張って笑顔を見せた。


「私の内側に目を向けてもらえたのは嬉しいですが…。でもまだ怒ってますよ?」


ガレッシュ殿下は、あ…と言いながらまたしゅんとした。また魔力の明かりが一段階暗くなった。


「でも…あのミライの外見の…アレはいいよね~アレはすごく好みだ」


「アレ?何ですか?」


ん?何だろう?まだ何か言いますか?


ガレッシュ殿下は四段階暗くしていた自身の魔力の輝きを、最高潮の輝きに戻した…うわっ眩しいっ…。


「ミズギだ。あれはいいな…うん、揺れる胸っ最高だ!」


…おい?…今、ここでまた水着のことを言う?いい感じで盛り上がっていた私の気持ちを返せよっ!


「あっ殿下もミライさんも!こんな所でさぼってますね?!」


選抜メンバーの残りの一人、若干14才のコーリー君が台所の戸口に仁王立ちで立っていた。


「ごめん、ごめん~すぐ手伝うわ~!」


と言い、通り過ぎながらガレッシュ殿下の脇腹に拳をめり込ませた。


「…ぐぇ…」


勿論隙だらけだったし油断していたのは分かっていたので、遠慮なく手加減なしで行かせてもらった。


滅べ…変態っ!


足取りが軽くなる、思わず笑みが零れる。なんだか霧が晴れるみたいに…視界が明るくなったみたい。さーて、片付けますか!


お掃除は浄化魔法があるので、後にして…まずはここで詰所と同じ事務仕事もやるとかで、リビングに『タクハイハコ』を置いておくことにした。ヨジゲンポッケの中から『タクハイハコ』と『アテナック』を取り出した。


「カデリーナさん、完全に商品名で遊んでるなぁ…」


リビングを片付けて…台所に入ると、すでに料理男子ガレッシュ殿下が野菜の下ごしらえをしていた。


「殿下、手伝います!もう、言って下さいよ~下ごしらえだけでもしますから!」


私がそう言いながら台所に入って行くと…ガレッシュ殿下は何だか私を睨んでいる?


「ミライ…腹痛ぇ…さっき手加減なしで殴ったな…」


ああそれか…油断してる自分が悪いんだろ?私はガレッシュ殿下に治療魔法をかけてあげた。もうこれくらいの傷みなら治せるんだぜ~?


「おおっ!?ミライはもう治癒が出来るの?」


「簡単なものなら~。今日は何を作るのですか?」


手元には根野菜が数種類…これはシチュー系だな?


「モロンと野菜の煮物…後は今日…魔獣に会えるかな~狩れたらいいんだけど。おかずもう二品は欲しいな…」


私は思い出してヨジゲンポッケの中を(まさぐ)った。


「殿下、作り置きおかず何品か持って来ているんですよ~。それ使って下さい」


私はポッケから何品か出してみた。コロッケ類をガレッシュ殿下は見つけて喜んでいる。


「ああ、コレ、コロッケって言う異界の食べ物だな~義姉上が作ってくれたの?」


「いえ、私が作りました」


「え?」


「え?」


お互いに一瞬見詰めあう。


「料理出来るの?」


「出来るって言いましたよ?信じてなかったんですね~」


ガレッシュ殿下は気まずそうな顔で私の力作、イカリングフライとカニクリームコロッケを見た。


「いや、大抵の女の子は出来る…て言って散々なモノを作るからさ…」


なるほど…。大抵ね…何気に数多くの女と付き合ってきたんだぜ~な、自慢だろうかね?まあモテるわな…。


「お菓子類も作ってきてますから、お茶の時間にお出ししますね」


と、言うとまたびっくりしたような顔で、私を見るガレッシュ殿下…。分かってるよキャラじゃねぇと思ってんだろ?


「お菓子作り…好きなんです。すみません…見た目と違って女の子っぽい趣味で…」


するとガレッシュ殿下は、まあそれは美しい顔で微笑んだ。


「俺、菓子作りはしないから助かるよ」


やばい…最大級の明るさの照明を直視してしまったみたいだ…眩しすぎる…。


「殿下~そろそろ討伐に出ます?」


と、アーダクトさんが台所に顔を出して野菜を洗っている殿下を見て慌てて近づいて来た。


「で、殿下!?そんなことは我々がしますからっ…」


「何言ってんの?アーダクトさん、モルの皮も剥けないんじゃない?大丈夫だよ、料理歴は20年くらいだから。」


すごっ…人生のほとんどに調理経験があるなんて…アーダクトさんは目頭を押さえている。


「殿下…ご苦労されてますね…」


「いや、料理作るの好きなんだよ、単純に」


そう言われてみれば手慣れた感じで、食糧貯蔵庫で食材選んでたけど…本格的料理男子ですか。


「冒険者でお金貯めたら…料理店開こう…て思ってたんだよ?」


「「ええっ?!」」


アーダクトさんと驚きの声が重なった。はああ~それで料理に関して妙に自信満々な訳だ…。店を開きたいぐらいな腕前か…これは食事が楽しみだね。


「ここに討伐に来るの楽しみだったんだよね~城じゃ料理作れないでしょ?」


それは是が非でも討伐に来たい訳だ…只料理をする為だけに…料理が目的…笑える。


と言う訳で言葉通り…ガレッシュ殿下は手際よく野菜の下準備をし終わった。


さすがプロ料理皇子はすごいね。


ということで早速5人で討伐に出かけることになった。


しかし、よくよく考えると異界のモンスターと初対面だ。


これは…ちょっと怖い。いや…かなり怖い…。


怖いです~ぅなんてキャラじゃないので、何気なさを装いつつ…コーリー君と笑って話して誤魔化していた。


でも私達の一番先頭を歩く方はそうじゃなかった。魔力波形が弾んでいる…。


「ロイエルホーンとかバンバガデランガとか出て来ないかな~♪」


ちょ…あれ何?皇子殿下がスキップっぽい歩き方してるんですけど…?浮かれてんの?


「殿下…そんな大きな魔獣出て来られたら困りますよ…」


とバーバンさんが言うとガレッシュ殿下はクルリと私達を顧みて満面の笑顔だ…。


「俺が一撃で仕留めるし~それに俺、魔獣の肉を食べるの初めてなんだよね~」


「「ええ?!」」


とバーバンさん達は叫んだ。ん?それが何か…?


「ホラ、魔獣肉って高価な食材じゃない?狩ってもすぐに売ってたし…そもそも魔獣肉は魔力が上がるから食べれないからさ~。」


よく分からないな…。取り敢えず聞いてみよっか?


「魔力が上がるとダメなんですか?」


私がそう言うと男性陣、皆が私を見て殿下を見て…を繰り返した。なんだ?


「俺、余剰魔力がすごいからさ~魔力の籠っている食材は食べると魔力が廻り過ぎて体調崩すんだよ。今までも魔獣の肉…食べたことはあるんだよ?でも気分悪くなって吐いた…。しかも寝込んだ…」


おおぅ…それは辛い。


「でも今は食べれるからね~今日は楽しみだ!」


ふ~ん?病気?が良くなった…とかいう感じなのかな?てか、また男性陣がジーッと私を見る。


「不思議ですね…。本当に今も吸い取ってるのでしょうか?」


とバーバンさんはアーダクトさんを見た。そう、アーダクトさんは診える目をお持ちの治療魔法も使えるお方だ。


「はい、今も殿下の方から緩やかに流れて行ってますよ。すごいですね…」


何が?不思議に思ってガレッシュ殿下を見たら…あ!と言う顔をしてガレッシュ殿下が


「言うの忘れてた~ミライが俺の余剰魔力を吸い取ってくれてるんだった!だから診える目を持ってる人から見たらミライが俺の乙女だってすぐ分かるんだよね~」


と、テヘッと笑って私を見た。


そ…そんな重要なこと早く言わんかいっ!なんだよっ皆知ってたのかい!?ぐるっと周りを見たら、皆申し訳なさそうな顔をしている。


コーリー君なんてすごく怪訝そうな顔でこう言った。


「逆にミライさんが知らないことがびっくりです。魔力相性がすごく良いってご存知です?だって殿下の魔力が肌で感じるくらい高まってる時でも、ミライさんが近くに居れば魔力を勝手に全部取り込んでるの…僕だって気づいてましたよ?」


嘘だろ?若干14才にまで指摘されて愕然とした。いやコーリー君は特別か…なんでも軍入隊時から魔術も剣技も抜きん出ていて天才の名を欲しいままにしている優秀な子だ。


このコーリー君は私とルル様との一騎打ちを見ていたらしく、今朝初めて会うなり


「かっこよかったです!」


と握手を求められたくらいだ…。チビッ子どもは熱血だねぇ…そんなことよりっ!


「その吸い取る…て私の体に入っているってことですか?」


アーダクトさんを見て尋ねると彼は大きく頷いた。


「異界の乙女って不思議だね…アオイ妃もナッシュルアン殿下との相性が良い方なんだけど…さすがに体の接触が無いと吸い取ったりは出来ないみたいだよ?ミライさんは離れていても吸ってるね…。うん、本当にすごいね」


はあ…あんまり実感出来ないので…共感し辛いんだけど…すごいんだ…。私も診えているはずなんだけど…その流れてくる瞬間?みたいなのは見たことない…。


「ああ!」


突然ガレッシュ殿下が叫んだので皆が一斉に剣を構えた。


するとガレッシュ殿下が一瞬でいなくなった…転移?


「で、殿下!?転移か?どこに行かれ…あれ…?」


バーバンさんの叫び声が言い終わる前に…遠くの方で猛獣の叫び声…と断末魔のような声が聞こえた。


すると私の前にズオオオッと黒い影が現れた。


「ミライーやった!ロイエルホーンだ!これ捌いてくれー!」


私の前にドーンという効果音と共にでっかい獣が放り投げられた…。獣臭がすごい…。


そのガレッシュ殿下が投げたモンスターは地面に落ちた時の反動で、血飛沫を吹き出しながら私の前に転がって来た。ブシャ…と血が私の顔面にかかった…。目が痛い…獣臭い…。


ゴロン…と転がって来たロイエルホーン…の死骸と目が合う…。血だらけで舌がデレンと垂れていて…白目もむいている……。カバやサイよりでかい生き物だ…。


何度も言おう。


モンスターとは初対面だ…。


私は絶叫した…。


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