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異界の乙女とガレッシュ

ガレッシュの番外編です。

もう一話番外編があります。

「酷い目に遭ったな…」


「兄上より俺の方がマシだったね…」


「でもミライの、え…とジュードーとかの体術、決められると恐ろしく痛いよな」


「あの腕を取られる技、涙が出たよ…」


「あれは痛いな…ザックにも遊びでかけられたんだが…死ぬかと思った…」


兄上は先日のシテルンの歓迎の会で女性が隣席していたことが義姉上にバレて…こっぴどく怒られていた。怒った義姉上がミライにかかれ!と命令したので、ジュードーとやらの体術の技をかけられたのだ。俺も一緒にだ。避けたら避けたでまた怒るだろうし…我慢したけど正直、本気で痛かった。


義姉上が怒っているのは何も女性と飲んで…ということではない。


義姉上に教えずに黙ってその場に赴いたことだった。


兄上は機嫌の悪い義姉上のご機嫌を伺って…毎日謝り倒している。俺から見ると機嫌の悪い義姉上も可愛いなぁ~と思える。


だって


こっちは怒るどころか無関心だもんな。


俺が召喚した異界の乙女は、乙女どころか大層ガラが悪い。


「何回間違えりゃ気が済むんだよっ!寝てるのかぁ?あぁ?」


今も月一のグローデンデの森周辺の、定期巡回の日程と概算をマットンが二度書き間違えて、ミライに提出しまい、罵声と共にやり直しを出されている。


いつの間にミライが一番偉い立場になってるんだ…異界の女性って恐ろしいな。いや、有能なのは間違いない。彼女は誰よりも多い仕事量をこなし、尚且つ自身の勉強にも手を抜かない。


頑張り屋で真っ直ぐだ。皆怒られてもそれが嫌味じゃないのは知っている、何故なら仕事を離れると普段の彼女はとても優しいからだ。何でも第二部隊に彼女を見守る隊とかいう、極秘部隊が設立されている…らしい。


ミライは非常に美人でそして、体術にも優れた武人だった。次の定期巡回にはミライは選抜兵士にすでに内定している。剣技も凄いと聞いたがまだ見たことはない。


ミライとレイナか。


レイナを召喚した時に、やっとレイナに会えた…と感激した。だがレイナが泣き出してしまったのを見て俺は、正直戸惑った。


俺の思い描いているレイナと本当のレイナは違うということに…気が付いたのだ。


これか…義姉上の言っていたことって…泣いてばかりのレイナは、顔を上げようともしない。そして何故か、一緒に召喚されてしまった立ち姿の美しい美人の後ろにすぐに隠れてしまう。


間違って呼んでしまった美人は、しっかりとした性格の女性のようだった。義姉上とレイナに明るい声で答え…そして間違って来てしまった自分を嘆いたりはしなかった。


立ち上がり前を向いていた。すごい人だ…魔力波形も綺麗だし、魔力量も多いな。


現実のレイナはまた泣いていた。


よく泣く子だな…と思いかけて気がついた。


そもそも俺はレイナの事をなにも知らないのに、また自分の思っていた人と違うと失望している。


もっと明るくて元気の良い女性だと()()()()()()()


勝手だよな…ああ、本当にこんな勝手な思い込みで女性二人を巻き込んでしまった。


そして幻術魔法のレイナがまったくの別人を模して作りだされたことが発覚して…俺はもっとはっきりと確信した。


俺が呼びたかったレイナはこのレイナじゃなかったんだ…と。


頭の中は混乱していた。二人になんてことをしてしまったのか…兎に角レイナは皇宮でお世話することになった。そしてもう一人のミライはどうやら一人で生活していこうとしているようだった。


ミライの生活の援助も出来るだけしよう。俺に出来ることは二人の女性が困ることの無い様に、手助けするのみだ。


そうだ、町で暮らすのなら共同住宅のほうがいいよな、確か若い女の子向けの住居もあったし…当面の生活費は俺が出そう。必要な家具もいるよな?女性だし一緒に行って選ぶの手伝ってあげようかな。


そうだ、そうと決まればミライに相談してみよう。早ければ明日にでも新居探しに出かけられるし…早く早く…


今思えば、何故あんなに焦っていたのか分からないけど、早くミライに伝えたくて慌てていた。


そしてレイナは消えてしまった。


ミライが残った…こうなれば認めるしかない。俺がミライを呼んだのだ。


だがミライは俺が呼んだことを知らない。


レイナは無事に戻れたのか…次の日、魔術師団長のホーガンスに聞いたが「恐らく戻れたはず」という曖昧な返事しかもらえなかった。もっと確実に無事を確認する方法はないのか…


今はここから無事を祈ることしかできない。


ミライはホーガンスの話を聞いて落ち込んでいた。


彼女はここに残った…いや、俺のせいで、俺がミライを異界の乙女と認識してしまったせいで、この世界に縛り付けられてしまったんだ。


すべて俺のせいだ…少しでもミライの手助けし全力で守ろう、俺に出来ることはそれしかない。


直接の謝罪は義姉上に真実は告げない…と言われて出来ないので、ひたすら隠れて応援と見守りだ。


「殿下~地域復興課の役人の方がいらっしゃいましたよ~」


ミライが執務室に役人を通して、お茶を入れて来てくれた。


今日は三人で資料を見ながら特産品の内容を検討し、ミライの言う『アンテナショップ』という店で販売出来るか…などの話し合いをおこなっている。うちの財源でもあるオータ(これはパンやパゲッテーナの材料だ)の収穫量と多角的な活用法など…ミライから驚くほどの案が出て来る。


ミライが義姉上の代わりに第二部隊に出向してきた時に、うちの領地の手伝いをやっぱり義姉上がしてくれないか…とこっそりお願いしに行ったら義姉上は自信満々の顔でこう言った。


「そんなこと言っちゃっていいの~?後でミライを是非下さい!て言ってもあげないわよ?」


な、なんだかすごい評価だな、義姉上がこうまで言うなんて…じ、じゃあ働いてもらいましょうか?


結果は俺の予想以上だった。


どうすればこんなに頭の回転が速くなるのだろう?


「殿下…殿下、聞いてます?このオータは異世界でも幅広く活用されているものでして…」


気を抜くとドンドン話が進んでしまうな。あれ?義姉上が来ている?


呼ぶと義姉上は素早く室内に入って来て、何か小声でミライに頼んでいる。「ミズギ」「シテルン」と切れ切れに聞こえる言葉から察するに、視察の時に何かしてもらうようにミライに頼んでいるようだ。


視察かぁ…カデリーナ姫もご一緒に行くとかで、ミライもシテルンの地図を見て何か書き込みを盛んにしている。その横顔はとても楽しそうだ。


まあ、第二部隊(うち)の野郎共が騒ぐのも無理はない。軍部に義姉上に続いて二人目の女性隊員…しかも、出てるとこは出ている美女が入ってきたんだもんなぁ。


そう口が悪くて怖くても我慢する…男とは美女とあれば多少は目を瞑れるのだ。


するとミライと話しをしていた義姉上が、席を離れた。


「義姉上どうしたの?」


「ミズギ取って来るそうです」


ミズギ?さっきのか…そもそも何だろ?異世界語だよな?ミライはすでに役人に山で採れる鉱物などの話をし始めている。聞きそびれた…するとすぐに義姉上が帰って来た、あれ?兄上も一緒だ。


義姉上に手渡された小物入れを受け取ると、ミライは下着のようなモノを取り出して広げて見始めた。


「わ~かっこいい色!殿下の瞳の色ですね。でも意外~ワンピースにパレオかぁ…大人しいデザインですね」


お、おいおいっ!ここには男もいるんだぞっ?なんだそれっ!と言いつつチラ見をしてしまう。


「お!ミライもそのミズギとやらを、着用していたのか?」


兄上が前のめりだ…ミズギとは、女性用の下着のことなのか?


ミライは兄上に、ミズギとやらの特性などを話し始めた。


「はい、私くらいの年の女性なら一着くらいは持っているんじゃないでしょうか?異世界のデザイン…意匠はもっと大胆で、布面積が少なく…」


「ほぼ全裸に近いのだなっ?!」


義姉上に兄上が頭を叩かれた。兄上の言葉に俺は仰天した。


「ぜ…っ全裸だとっ?!」


興奮して立ち上がってしまった。お茶の入れ物まで倒してしまった。布面積の少ない下着だとぉ?局部しか隠していないだってぇ?ビキニとか言うミズギを、ミライが着用している姿を想像してしまった。


妄想ヤメロ!こんな所で…落ち着け俺、落ち着け俺…


そしてそのミズギとやらを着用しているミライを見たいが為に、シテルンについて行くと言った俺に、義姉上は冷たい目線を向けてくる。義姉上にはバレているようだが…欲望には勝てやしない。見逃してくれ…


「今…困っているのが、水着に着替える所が海の近くにないのですよ~」


次の日の朝、ミライがそう言っていたので軽い気持ちで


「宿泊する所で着替えてから、転移で行けばいいじゃないか?」


と言ったらミライがムスッとした顔をして、俺を恨めし気に見てきた。


「だって私、まだ転移魔法使えませんもん…」


と言ったのでこれまた軽い気持ちで、じゃあ俺が送って行ってやるよと言ってしまった。


結果…


あのミズギとやらはヤバかった。ミズギに着替えたミライは廊下で待っている俺の前に、ジャーンとか言いながら飛び出して来た。


胸が揺れているーーー!


き…凶悪だ…なんだその大きい胸はっ!その体その色の白さ…抑々(そもそも)こんなに肌を露出して良いものなのか?!


思わず廊下にミライの裸体を覗き見る不審者がいないか、気配を探ってしまった。


「殿下~私、海の中に入って泳いでみたいんですけど…」


「なっなんだって!?そん…そんな薄い布地で…水に濡れたら…み…見えっ…」


「濡れないように防水の魔法はかけてあるんですって~こっちの海の中って危険かなぁ~?」


んなっ!?海の中どころか地上でも色々と危険だけど、本当にそんなうっすい布地で潜るのか?ん?…待てよ?す、透けたり取れたりしないの?そのミズギとやら安全なのか?


「き…危険だな!よしっ俺が三重掛け防御魔法をしてやろう。ホラ、外は寒いからヒートもしておくよ」


俺が魔法をかけると、ミライは嬉しそうに俺に近づいて来た!?ま、待てっあまり胸を近づけるなー!


「じゃあ、お願いします!」


と、ミライは俺の横にくっ付いて来てしまった!?胸が当たるーー!幸せー!いや違うっそうじゃない!?


「じゃ…転移…するね」


興奮を何とか抑えながら、ミライの手にちょこっとだけ触れて転移をして、兄上達の待つ海辺へ転移した。


ミライは転移が終わるとサッと俺の傍を離れて、腰布を解き…惜しげもなく綺麗な足を全部見せながら、揺れる胸と共に海へと走り出したーー!


「すげぇ…」


「ヤバイ」


ハッとして、俺の斜め前を見るとジーパスとシューテがジッとミライの裸体(水着着用)を見ているようだ。二人の魔力が変な渦を巻いている。こ、これは興奮してるのかっ!?


おいっガキども!そうはさせんぞ!


「ガレッシュ殿下ー助かりました!防御魔法とヒートの魔法もありがとうございまーす!」


ば、馬鹿っ!振り向きながら歩くなっ!む、胸が不必要に揺れているだろっ?!


くそっ!


俺はミライの体に対魔人用の消音消臭と透過魔法をかけてた。ミライは浜辺でびっくりしたように、立ち尽くしている。


俺は自身にも対魔人用魔法をがっちりかけると、ミライの側に走り寄った。


「あの…コレ、何か魔法かけてますよね?すごい複雑な魔法ですが…」


「いいんだよ、防犯対策だから」


「防犯?」


尚も聞き返そうとした言葉を遮るように、俺はミライの手を引いて波打ち際まで歩いた。


「ホラ、海に入るんだろ?」


ミライは気を取り直したのか、微笑みながら海にゆっくり足をつけていった。


「うわっ本当に冷たくない!すごいっ」


俺を見て満面の笑みだった。やっぱり隠して正解だった…


ミライはそのままスイスイと海の中に入って行く。


「ちょっちょっと!そんなところまで行くのか?!」


俺が呼び止めるとミライは


「だって海岸の形状を確認しておかないと。ここで水遊び出来るか、しっかりと調査しないといけませんね!」


と、言いながら沖へと移動してしまう。


俺は慌てて後を追いかけて、海の中へ入った。するとミライが小さく悲鳴を上げた。


「で、殿下!?濡れてしまいます!」


「魔法で防御しているから大丈夫…ホラ、ここから深くなるよ?」


そう言って手を差し出すと、ミライが手を握り返してくれた。そのミライの手に、俺の魔力が吸い取られる。フワッと体が軽くなり視界が明瞭になる。海の輝きとミライの魔力の光が眩しい…


普段は自分の余剰魔力が、体の周りを漂うのから遮光魔法を必要としないけど、吸い取られるとこう見えるのか…と新たな発見をした。


「殿下、眩しそうだね…海は照り返しで意外と光がきついので、気を付けて下さいね」


ホント眩しいよ、ミライ…


「じゃあここから、潜りますね〜殿下はどうされます?」


「勿論、一緒に行くよ?」


「危ないかもですよ?」


俺ってSSSランクの冒険者だけどな…


ミライは上手に体を動かすとあっと言う間に海に潜って行く。俺も後に続いた。海の中は色とりどりのモッテラや海藻でとても美しかった。因みに水中での呼吸は防御魔法が作動している間は問題なく出来る。


少し視界が暗いな…と思い光魔法を放ち、灯りを灯した。海中でミライの裸体(水着着用)が鈍く光り…幻想的な美しさを醸し出していた。


光魔法の明かりが海底まで届き、ミライは海底に何かを見つけたのか、一目散に泳いで行ってしまう。おいっ…少し先に2シーマルくらいある巨大モッテラが居るぞ!?気を付けろ!


ミライは海底の岩にくっ付いている貝を取ろうとしてる。俺が近づいて小刀で外して渡してあげた。


ミライは嬉しそうに受け取ると、また別の方向へ泳いで行ってしまう。


元気だな~…っておい!巨大モッテラに近づくんじゃない!人を襲うかもしれないだろ?!…って?!そんな蛇みたいなモッテラに触るんじゃないっ毒を持っていたらどうするんだ!


…海の中でミライがモッテラに襲われはしないだろうかと、常に警戒していて疲れた。


「綺麗な海でしたね~異世界じゃ見られない魚…モッテラがいっぱいいてすごく楽しかったです!」


「そうだね、良かったね」


最大限の魔物理防御と対魔人用防御を多用して海中に半刻…少し魔力を使い過ぎたかな…


ミライはそんな俺にお構いなしで、浜辺にいる兄上達に向かって駆けて行く。こらっまた!?慌てて後を追って、ミライの腰に巻いていた布を彼女の肩にかけて胸の防犯に努める。


ジーパスとシューテのミライを見る視線も感じたので、ガキどもを目で威嚇するのも忘れない。


なんだか魔物退治より疲れたな…


その日、カデリーナ姫がひどく酔っ払っていた。胸に関する愚痴を吐いておられたが…ミライはその時、少しばかり困ったような泣きそうな顔をしていたのを俺は見逃さなかった。


自称ミライを守り隊の隊長だからな…そうだ、第二に極秘で設立されている…と噂のミライを見守る隊に本当に入隊しようかな?ガッテルリ辺りに聞いてみようかな?


夜、ミライがヴェルナと炙りケーイを手に外のテラスで一人酒をしていたので隣にお邪魔した。


「月…アレ…なんて発音するのですか?」


ミライが夜空に浮かぶソワラを指差していた。


「ソワラ…だよ」


「ソワラ…か。異世界では月って言うんですよ?色も違いますね…この世界のソワラは惑星なのかな?」


ミライが空や宇宙とやらについて色々と話してくれる。初めて聞く話でとても興味深い。


一頻(ひとしき)り話し終えた後にミライは、済まなそうな顔で


「一人で話し過ぎましたね、失礼しました」


としょんぼりした。ミライが飲んでいたヴェルナが入ったグラスが空いている。サッと立つと新しいヴェルナをグラスに注いで、台所から持ってきた。


「ホラ、新しいヴェルナ」


ミライは呆けたように俺を見ている。どうした?もう酔ったのかな?


「で、殿下が入れてくれたのですか?」


「そうだよ?だってメイド達はもう休んでるしね」


ミライは困ったような…泣きそうな顔をまたしている。


「済みません、気が利かなくて…皇子殿下にお酒のおかわりを持って来させるなんて…」


なんだ、そんなことか。


「気にするなよ?前も言ったけど俺は孤児院で育って、少し前までは市井で生活して冒険者をしていたんだよ?一人で出来て当たり前」


「ガレッシュ殿下…すごいですね。庶民から皇子殿下になって、そのブレない…え~と気負ってないように見えます」


そうかな~?これでも色々思い悩むんだけどな。


「俺にはミライの方がすごいと思うけど…だって異世界に飛ばされて、はい、ここでこれから生活してね…なんて俺が逆の立場だったら、野垂れ死んでる、もしくは自暴自棄になって異世界で大暴れの狂人になるかもしれないよ」


ミライはあはは…と笑っている。


「殿下が暴れたら異世界壊れちゃうかも~うふふ…ふぅ…」


ミライは笑いを引っ込めると顔を上げてソワラを見上げている。


「異世界でも、この世界でも…皆、生きにくいことには違いないんですよね。世界が変わっても悩みは一緒かな…」


何か悩みがあるのかな?これは…自称ミライを守り隊としては是非悩み解決をしないとな!


「何か悩みがあるの?良ければ相談に乗るけど…」


ミライはまた困ったような顔をして、しばらく思案しているようだったが口を開いてくれた。


「カデリーナさんが…さっき、その胸について嘆いていたって言うか、気にされてましたよね?」


胸…と聞いて俺も動揺したが「う、うん」となんとか相槌を打った。


「私…子供の時から胸が大きくて、男の子によくからかわれてすごく嫌だったんです…」


あ~あ…男の子って言うよな~って異世界でもガキってそんななの?本当に世界変われど、男の思考回路は一緒と言う事か…


「カデリーナさんは小さくて気にされてて…逆に私は大きくて嫌で嫌で、上手くいきませんね~でも胸が大きくて得したことなんてないですよ?会社…商会で働いていた時にもご年配の男性社員からは、おっぱいちゃんとか呼ばれたりして…すごく惨めだった」


な、なんてこと…とんでもないジジイだな!ぶん殴ってやりたいよっ?!


しかし俺も胸、胸と心の中で連発していた。そんな破廉恥なジジイと変わらないか、猛省します。


ミライの前では胸の話は禁句だな。


「皆、何かに悩んでますものね。私だけじゃありませんものね…」


俺はミライの頭をポンポンと撫でた。


「悩みの無い人なんているかな~?それに悩みの無い人なんて考えることをやめちゃった人の事だよね」


ミライは少しだけ目を潤ませている。


「私…この世界に来て…後悔だけはしたくありません。だから頑張ります、ガレッシュルアン皇子殿下、これからも宜しくお願いします」


はあぁ…強いな~本当強いよ。ミライは…


頭を撫でる手に魔力を籠めてみる。スルスル…と魔力がミライの中に入って、彼女の魔力と混じり合っているのが見える。


「あ…」


びっくりした。ミライが小さく超強烈な色っぽい声を上げた。


「今、殿下何かされました?体の中にヒート?みたいな温かいものが流れているのですが…」


魔力って温かかったっけ?魔力を注ぎ込まれると、押し込んでくるみたいな違和感?は感じるけれど…そうだ。


「ミライ…俺の体に魔力入れてみてよ。え~と水洗の水魔法を使う要領で…」


「あ、はい?では…入れますよ~」


ミライの魔力はどんな感じなんだろう。ミライが俺の手に自分の手を重ねた。


温かい…まさに温かくて柔らかい何かが手の先から体中に入って来る。それはアレの刺激に近いもので、俺の体は敏感に反応してしまった。


「う…ぅぁ…」


体を折り曲げて色々な痴態を隠そうとしたら、ミライが別の意味に捉えてしまったようで、小さく悲鳴を上げた。


「で…殿下っ?!やだぁ…どうされました?!痛いのですか?!」


いや、あのミライさん…体を揺すらないで下さい…刺激が強すぎます。あのそれと、先ほどから俺の屈んだ後頭部の上に、ミライさんのお胸が乗っていまして…より刺激が与えられてしまっています。


仕方がないので…


「大丈夫、大丈夫だから…」


と言いながらしばらく俯いて誤魔化した。辛すぎる。


魔力の相性が良いってこういうことなんだ。これはいけないよね…ってよく考えたらコレ、異世界人の体質とかじゃないのかな?


つまり、ミライは誰とでも触れたらあんな刺激を相手に与えちゃうってことじゃない?!


これはマズいな…うん、やっぱりミライを色んな毒牙から守らねばね。




ガレッシュも大概の拗らせです。

変態兄弟の苦情は浦へお願いします。

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