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番外編 片倉未来 2

誤字報告ありがとうございます。

助かっております<(_ _)>


上手く受け身はとれた…はずだ。体は痛い所は無い。


眩しい光が目に飛び込み、しばらく目を瞬かせた後、ゆっくりと顔を上げると懐かしい…本当に懐かしい声が聞こえた。


「未来!?み、満島ちゃん…?!」


この声…え?まさか…?


「葵先輩?」


そう呼びかけると眩しい光を体中に纏った…鷹宮葵先輩が走り寄って来るのが見えた。


「葵せんぱぁぁ…い」


私の背後から泣きながら、第三企画部の満島玲奈の声が聞こえて振り向いた。満島ちゃんは私と同じく床に座り込んでいる。こちらを見ながら大号泣だった。ど…どういうこと?え?何これ?


「未来…満島ちゃん…ご、ごめんね…まさか二人共呼んじゃうなんて…混乱してるわよね?今、説明するから…」


「あの先輩、すみません…それよりもまず、先輩めっちゃ後光?みたいなので眩しいんですけど…もしかしてここって天国ですか?それとも霊界?」


葵先輩はびっくりしたように私を見た。眩しい…直視出来ないよ。


「私、ま、眩しいの!?未来もしかして…」


葵先輩は後ろを振り向いた。私も先輩が振り向いた先を一緒に見たけど、更に眩しい人達が居るようで全然見れない。複数人がいるんだけど…誰だろう?


「『視える目』をお持ちなのですね!さあこれで…もう開けて大丈夫ですよ」


あまりの眩しさに目を瞑っていると可愛らしい声の主が近づいて来て、フワッと温かい何かを私に向けた。言われて恐る恐る目を開けて見ると、葵先輩の顔が近くにあった。おおっ!先輩だ!先程の可愛い声の主の方かな?金髪のお人形みたいな外国人の女性が微笑んでいる。


「未来、もう見れるかしら?久しぶりね…元気だった?満島ちゃんも…元気?」


満島ちゃんが更に大号泣だ。私は慌てて満島ちゃんの肩を抱いた。


「満島ちゃん…もう大丈夫だから…落ち着いて」


私はそう言って満島ちゃんの肩を摩ってあげた。満島ちゃんは何度もしゃくり上げながら頷いている。そして葵先輩の後ろに居る後光が眩しいイケメン達を見詰める。


なんだこのイケメン達?思わず胡乱な目のまま葵先輩を見詰めてしまう。


「うんうん、戸惑うよね。私もそうだったし…今から説明するから…」


私は話し出そうとする葵先輩に待った、をかけた。


「先輩…大変恐縮なのですが、夕飯まだなんです。腹ペコで死にそう…」


上手い具合に満島ちゃんの泣き声に掻き消されていたが…私のお腹は大音量で空腹を訴えていたのだった。


葵先輩に促されて、大きなホールから外へ出ると、ここは本当に大きな建物内だというに気が付いた。


「大きい…」


「ここの皇宮…つまりお城なのよ」


葵先輩の返答に仰天してしまう。れ、霊界のお城なの?


「私…もしかして死んでます?」


「あははっないない~!生きてるって!」


そう…ですか?もしかして先輩も死者の認識が無い、ということもあり得るけど…


そうだ、聞きそびれていたけど…


「あのつかぬ事をお伺いしますけど、先輩の横にいるイケメンさんどなたです?」


さっきから金色の後光を纏ったイケメンさんが、先輩の腰に手を当てて横を追随して来る。何か二人の周りの明るい光…みたいなのが溶けって二人の体を包んでいるように見える。


「もしかして彼氏?」


「やだぁ~分かる?オホホ…実はね、主人なの~旦那様!」


「だ…旦那ぁ?!」


思わず声が裏返ってしまう。旦那…結婚したの?先輩


「先輩…とうとう…おひとり様から脱出したのね!」


「そうなのよ~永遠のお一人様のつもりだったけど、ウフフ…」


ほ~っ!なるほど…先輩の旦那様はイケメンスマイルを私にも向けてくれる。


「初めましてナッシュルアン=ゾーデ=ナジャガルと申す。異界のアオイの部下の方よ」


ふわ~流石、ガ…ガイジンさん、英語名だ…ね?あれ…?


「か、片倉さん…あの、あの人…日本語喋ってるね…」


満島ちゃんのご指摘通りだー!ええ?日本語?どうして?


「あ~驚いてる!そうですよ~転移の加護でこの世界の言葉が分かるようになるんですって!」


と、先ほどの可愛い声の金髪のお人形美人が流暢な日本語で答えてくれた。


「転移の加護?」


「まあまあ…詳しい話はまた後ほどで~ささっこっちよ~」


葵先輩に連れられてお城の庭を抜けて…小奇麗な洋館の中に入り、私と満島ちゃんは事のすべてを話して貰ったのだった。


葵先輩に作ってもらったきのこパスタを食べ終わると、手を合わせて御馳走様をした後に…すべてを聞き終えた私は、ショックな気持ちを隠しながらワザと元気よく、自分に言い聞かせるように声を張り上げた。


「そっか~じゃあ、私は間違えて召喚?とやらで連れてこられてしまった訳ね!」


私がそう言うと葵先輩と先輩の旦那様が明らかにビクッとなった。おまけに旦那様の横に座ってこちらを見ていた旦那様によく似たイケメン(多分親戚?弟さんかな?)も同時にビクッと体を強張らせた。


隣で満島ちゃんがまた泣き出した。思わず満島ちゃんの背中を摩る。


「じゃあ…私が呼ばれて片倉さんが巻き込まれてしまったの…そんな…」


「ああ~満島ちゃんが泣くこたぁないよ~いいっていいって!私なら雑草が如くどこでも生きていけるしね!」


葵先輩も泣きそうな顔になった。ああ~もう皆メソメソすんな!ぶっちゃけ泣きたいのは私だよ!


「先輩もやめてよ~大丈夫だって!とにかくさ、今日まずは先輩のとこに泊めてもらえないですか?で、明日から就活したいんだけど、異世界人でも雇ってもらえる所…先輩、どこか紹介してくれないです?それと、最低でも向こう三ヶ月は生活を立てる為に資金を借りられる所も更に紹介してもらえます?出来れば闇金以外で」


私がそう頭の中で今後の生活のシミュレートをしていると、旦那の弟?が更に私をガン見してくる。


「アオイもこちらに来た時から仕事が…とか生活のことをすぐに決めようとしたけど、君もすごいね…」


旦那様は純粋に褒めてくれているようだ。だけど、何言ってるの?そんなの当たり前じゃない。


「そんなの当然ですよ?だってこちらでは宿無しコネなし一文無しですし、すぐにでも働かないと生きていけませんし…そういえば、ここって皇宮?お城の敷地内だと思うのですが…葵先輩お城に住んでるの?」


「あ~えっとね、私の旦那…この国の皇子様なのよ!」


びっくりし過ぎて椅子から転げ落ちた。


慌てて床に膝を突いて旦那様に向き合った。


「失礼しました、一国の皇子殿下だとは知らずにご無礼を…」


「ああ~いいよいいよ~アオイなんて初日からお腹殴ってきたし~」


と旦那様が言い掛けると葵先輩が凄い目で旦那様を威嚇している。夫婦のパワーバランスがはっきり見えたね!


取り敢えず


葵先輩の説明でまだ半信半疑とはいえ、自分の置かれた立場が分かってきた訳だ。満島ちゃんはまた泣き出してしまった。大丈夫かな…当たり前だけどショックで不安定になっているのかも…


「ここ…本当に…異世界なの…?怖いです…」


「あ~大丈夫っ大丈夫だよ!私もいるし、葵先輩もいるしさ~それに満島ちゃんは正規に呼ばれた人だし、ちゃんと生活の保障はされているはずだよ?だからここでの生活も心配すること無いって~」


私がそう言いながら満島ちゃんの背中を撫でていると、葵先輩が半泣きになりながら私にしがみ付いて来た。


「も~う先輩までぇ…どうしたの?」


「私のせいなの…」


と葵先輩が涙で声を詰まらせながら事情を説明してくれた。


「ええ!?あの旅行の時の私を満島ちゃんだと思ってたの?ひどいよ~先輩っ裸踊りする先輩を介抱までしてあげたのに~」


そう私が言うと葵先輩はムグッと言葉に詰まっているようだ。


「それにさ~飲んで泣き出してしまった先輩を何とか温泉に入れて体も頭を洗ってあげて、部屋に入ったら脱ぎだして中々寝てくれないし…やっと静かになったな…と思ったら裸…で」


「っわあああ…ゴメンっ本当にゴメン!感謝してるっそれと皆の前で勝手に幻術で見せてゴメンね!」


ん~?幻術かあ…剣と魔法の世界なんてあるんだねぇ~


「せんぱ~い、その幻術ってどんなの?見てみたいけど…」


そう私が言うと葵先輩は困ったように旦那様と弟?さんを見ている。


「あの…だって、未来が温泉で飲んでいるところよ?浴衣も肌蹴てたし…」


と、葵先輩に言われて当時の様子を思い出す。肌蹴るって言っても先輩みたいに脱いでなかったはず?


「別にいいっすよ~」


と言うと満島ちゃんが驚いたような声を出した。


「片倉さん、大丈夫なの?だって今は…男の人もいるし…」


「ん?何でよ…浴衣着てるんでしょ?どうせあの席でも原田課長にも散々見られてるんだし今更だよ~」


「あっそっか…原田いたっけ?」


と葵先輩が思い出して来たのか声を上げた。ホントに酔って覚えてないみたいだな…先輩はお酒は禁止だね。


「いたよ~でぇ、酔って『アホボケカス』を連発してたよ、酔うと関西弁出るから…」


「あ~ぁ…そうか」


と、言う訳でここで先輩の魔法を見せてもらえることになった。


もう嬉しすぎて堪らない!魔法だよ~?あの魔法!やばいっ!緊張してくる。


あのお人形美人と目が合って微笑まれた。カデリーナさんと言うらしいあの方は実は、転移ではなく転生してこちらに生まれたバリバリの日本人だとか。困った事があったら頼ってね!と言ってくれた。勿論頼りますよ!


葵先輩が魔法を起動?し始めたようだ。体を魔力…光の帯が包み込む。まるで星がグルグル回っているような、不思議で幻想的な光彩だ。


「綺麗…」


思わず呟くと、旦那様の弟…つまり皇子殿下と目が合った。慌てて微笑んで顔を反らした。


「おおっ!」


と男性陣のどよめきが聞こえて声を上げると確かに…私が居た。うん、着物肌蹴てるね…私は思わず近づいてよく自分の姿を確認した。


「これ…違いません?確かに顔は私だけど、しかも飲んでる時、先輩私の左横にいましたっけ?」


葵先輩は顔を歪ませた。やっぱり相当酔っていたね?先輩…


「因みに先輩から見て私は反対側の横にいましたよ?そしてこの幻術のように右横…に座っていたのは、原田課長ですよ!しっかりして下さいよ~勿論、原田課長はアホボケカスを連発してこれくらい浴衣、肌蹴てましたけど?」


葵先輩は床に両手をついてがっくりと肩を落とした。


「はらだかちょーて…じゃあ、この幻術の人は…また人違いなの?」


旦那様がやや呆れたような声を上げている。まあ、酔っ払いの記憶だしね、あやふやにもなるわな…


「まあ…さ、先輩めっちゃ酔ってたもん。部屋に連れて帰っても温泉入る!って騒ぐし…記憶曖昧でも仕方ないよ。男風呂に突撃しそうにもなってたしね」


「ええ?!うそっ?!」


先輩が絶叫した。


「大丈夫だよ、腕挫十字固で動きとめたから」


「それ柔道の関節技じゃない…未来、柔道していたの?」


「黒帯三段。因みに剣道四段、空手初段だよ」


「あなた最強ね…」


「親に習い事を強要されてたのよ…」


私は葵先輩に親の正体を明かすことにした。


「あ…実は父親は警察官僚…でして、はい」


と私が言うと葵先輩も満島ちゃんも「お父さん警察官なの?!」と同時に叫んだ。


「昔は私を警察官にしたくて、体術ばかり習わせていたんだ…で、私が嫌がると今度は結婚相手に官僚の息子~とかなんとか大臣の息子とかを薦めて来るようになってね…いや~最近もずっとお見合いをしろ!て言われてて困ってたんだ」


そしてフト気が付いた。


もうお見合いをしろ…と言われることはない。言ってくる父親もいない、母もいない。おじいちゃまもいない。


一瞬、目の前が暗くなりかけたが、満島ちゃんの声で意識が戻って来た。


「それでか…男性社員に絡まれたりしてた時、片倉さんがすごい勢いで割って入って来てくれて、正義感強いなぁ…とか思ってたんだけど血筋だね」


そうか、血筋か…もう会えない両親と祖父の顔が脳裏に浮かぶ。もう会えないのかな…


「葵先輩、もう向こうの世界には戻れないのですよね?」


私がカデリーナさんと葵先輩を交互に見ながら、そう聞くと二人共沈み込んだ表情をした。


「わ、私は…大丈夫かな…おばあちゃんはもう…いないし」


そうか、満島ちゃん、旅行から帰って来た3日後にお婆様亡くなっていた…よね。


葵先輩はご存じなかったのか…泣き崩れている。


そうか旅行の後に異世界に飛んで行ってたし、あれ?そう言えば経理課の沢田美憂はどうしたんだろ?この話の流れからすると、一緒に異世界に来てるよね?


泣いている先輩と満島ちゃんには聞きづらいし…少し後ろに下がるとカデリーナさんの横にススッと忍び寄った。


「あの…少しお聞きしたいことが…」


「敬語はやめて下さいね~うん、なあに?」


では遠慮なくタメ口を…


「葵先輩と一緒に沢田美憂と言う、うちの会社の女の子も召喚されてるはずなんだけど、あの子はどこに?」


するとカデリーナさんは横に立っている…これも体を包む二人の光から察するに恋人かご夫婦?と思われるご主人?を見上げた。このご主人も大きいけどかなりの男前だ。


「ミユという娘は…今はこの国にはいない、国外逃亡した」


「こっ…?!」


「ヴェル君っそんな言い方したら…驚かれるでしょう?!」


カデリーナさんはご主人を一喝した後に、私に向き直ると言い直した。


「つまり…色々問題を起こされて…逃げられましたの…」


お…おうっ。つまりいい方変えただけで逃亡犯な訳だ…あの子何をしたのよ?


「前から満島ちゃんに嫌味言ったり、葵先輩に嫉妬メラメラ女だったけど…異世界に来てまで迷惑かけるなんてね、日本の恥さらしだよっ!」


と、言っていると気持ちが落ち着いてきたのか葵先輩達が、こちらにやってきた。


「沢田美憂はもう少し、道理の分かる子だと思ってたんだけどね…」


と葵先輩は困り顔だ。


「あの子はそんなこと考えてないですよ、アイツが入社式の後に新入社員の世話係の満島ちゃんに因縁つけてたから、注意したら大声で泣き真似しながら『先輩に苛められた!』て、専務にわざわざ言いに行く女ですよ?有り得ない…」


流石にこの事は葵先輩は知らなかったみたいだ。顔色を変えた。


「そんなことが…満島ちゃんどうして言わないの!」


満島ちゃんは困り顔で「すみません…」と小さな声で謝った。


「満島ちゃんが謝ることないよっあの性悪女が悪いんだよ。まったく…あの時に大外刈で投げつけてやりゃよかったよ!」


「柔道三段に投げられたら、骨折しちゃうから…」


葵先輩の絶妙なツッコミも懐かしい…と思っていると足元に小さい男の子が立っていた。おお、綺麗な顔のぼっちゃんだね。


「初めまして!僕、ザックヘイム=デッケルハインと言います。お姉さん強いの?」


ザックヘイム…と名乗った坊やの体を纏う光がグルンと動いている。なんか興奮しているのかなぁ…?


「少年よ、君は強くなりたいか?」


「はいっ!」


「どんな修行にも耐えられるか?」


「はいっ!」


瞬時にザック少年の体を引き寄せ、綺麗な一本背負投をしてあげた。投げられたザックヘイム君はキョトンとしている。


「今の払いが避けられなきゃまだまだだね、出直してきな。話はそれからだ」


「きゃあああ!かっこいい!」


びっくりした…カデリーナさんか。満島ちゃんまでキラキラした目でこちらを見てくる。はぁ…またやっちゃった。ますます婚期が遅れる…いや待てよ?もう婚期が~とか気にしなくていいんじゃない?これはこれで…いいか。うん、よしっ!


その後にザック少年に「ミライ師匠!」と師匠呼びを連発されてしまった。熱血な少年だね。


そしてその場にいるご家族を紹介してもらった。フムフム、部下のイケメン達も同居してるのか…なかなかの大所帯だね。そして客間に案内してもらった。


当面の落ち着き先が決まるまでは、こちらに居候させて貰えるらしい。新婚家庭にお邪魔してすみません。


一人で寝るのは怖いから…と満島ちゃんにせがまれて、同室にエキストラベッドを入れてもらった。満島ちゃんはもう寝ている。


こっちは全然眠れないけどね。


夜空を見上げる…月が出てるけど明らか大きさも違うし青色?に見える。星も出てるけど…星座はまるで違うようだ。


「冬の大三角形無いなぁ…」


ああ、やっぱり違う世界なのかな…話を聞いて納得しているような、まだ信じられないような…そんな感覚だ。このまま眠れば次目覚めれば、元に戻っているんじゃないかとか考えてもいる。


「壮大な夢だなぁ…」


「夢じゃないよ」


気配は無かった…瞬時に気配を探る。木々の陰から金色の光がチラチラ見えている。あの光は…


「ああ、弟殿下ですね」


すると、気配を出しながら葵先輩の義理の弟、第二皇子殿下が木立の陰からゆっくりと出て来た。はい、月夜に照らされた皇子殿下、神秘的だね。カッコいいね~物語の王子様だね。


「眠れないの?」


そう言って私に向かって何か魔法を放った。フワッと温かい空気が体を包む。これ温風?


「夜は体が冷えるよ?」


わ~魔法って冷え対策にも対応出来るんだ。便利だな。私は都合のいい夢だな…とおかしくなって笑ってしまった。


「何を笑っているの?」


「自分に都合のいい夢だな…と思って」


「だから夢じゃないよ?」


「こんな綺麗な男の人と夜に月夜を見ているなんて、夢みたいですよ」


夢だと思うと普段は言えない大胆なことも言えてしまう。夢とはいえ葵先輩が幸せにしている姿も見れたし…ホッとした。弟殿下は困った顔をして一歩私に近づいて来た。フワリ…と彼の魔力の光が私に触れる。


すると弟殿下が弾けたように後ろに飛び退いた。


ど、どうしたの?


弟殿下は驚愕の表情で私を見ている。な、何?


すると私の部屋の方からピカーッと眩しい光が放たれた。


「な、何だ?」


「み、満島ちゃん?!」


私は慌ててベランダから部屋に飛び込んだ。すると部屋のドアが開いて、葵先輩と旦那様も飛び込んで来た。


部屋中に眩しい光が放たれている。


「満島ちゃん!」


大声で呼んでみるとベッドの上に居るであろう、満島ちゃんが「はぁい…どうしました?片倉さん…」と眠そうな声で返事をしてきた。


「無事なんだね?そこでじっとしててよ!」


そう言っていると光が段々と収縮してきた。よし…何か分からないけど収まって…き…た…


光は収まった。


葵先輩も旦那様も弟殿下も身じろぎひとつしない。


ベッドの上から満島ちゃんがいなくなっていたのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 軽いねぇ、まるで召喚遊戯。異世界に拉致された召喚者も家族や知人のことも忘れたのかひたすら軽い。一番軽いのは拉致召喚された葵なのは何なんですかね。
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