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皆様お怒りのようです

普段、詰所で事務仕事をしているのは私、ナッシュ様、コロンド君、ジューイ、フロックスさん、先日からジャレット君も加わって総勢6人だ。


ルル君達他の隊員達は実働部隊だ。今日はあまりの事件が起こってしまったので、ルル君は休暇扱いになっている。今は詰所の応接室でルル君とザック君、ジャックスさんの3人でどんよりと座り込んでいる。


そこへ今日、託児所開設の準備に城に来ていたルル君の妹…リリアちゃんが血相を変えて詰所に飛び込んで来た。


「あ、あのっ失礼します!お兄ちゃんは?」


ああ…リリアちゃん…ごめんねっあなたの大事なお兄様があんな年増のせいで傷物にっ…


私が応接室に目を向けると、リリアちゃんは頭を下げて室内に入って行った。


「お兄ちゃんっ…大丈夫なの!?」


リリアちゃんの後ろから私も一緒について入った。ルル君は下げていた頭を持ち上げてリリアちゃんを見た。打ちひしがれるルル君…色っぽい。あの女王めぇ~審美眼だけは…それだけは認めてやる!


「今、公所で無効の手続きをしてくれている。心配かけてスマン…ばあちゃんには言うなよ?」


と、ルル君がそう言うとリリアちゃんは戸惑いながらも首を縦に振っていた。


「でも、でも許せないわ!勝手にそんなもの出して…お兄ちゃんに恋人が出来て、もし婚姻ってなったら…どうしてくれんのよっ!」


リリアちゃんの魔力がかーっと燃え上っている。ルル君によく似た魔力波形だ、流石兄妹…


「許さなくて構いませんよ…アレのことなど」


良く通る声が応接室に響き渡った。室内に居た皆が一斉に応接室の戸口を見た。


そこに…キラキラ眩しい、フォリアリーナとルーブルリヒト=ダヴルッティ夫妻が後光を放ちながら立っていた。


ま、眩しいっ!遮光魔法をかけて良く見ると…リアもダヴルッティ様も…憤怒の表情だ。魔圧も怖い…どうしたの?


「昨日、ナッシュルアン殿下のアレにされたことをカデリーナに聞いて…私共も申し上げねばならないことがあり参上致しました」


ダヴルッティ様がそう言って後から応接室に入って来たナッシュ様に騎士の礼をとられた。リアは淑女の礼をした。


「どうされましたか…まさかダヴルッティ閣下も…アレと…」


ルル君とジャックスさんとリリアちゃん、おまけにザック君は立ち上がってすでに部屋の隅に立っている。素早い…


ソファに腰かけたリアとダヴルッティ様は深い深い溜め息を吐かれた。なんだか、怖いよ…何があったんだろう…。私とナッシュ様は対面に座ってお二人が話し出すのを待った。ダヴルッティ様が口を開かれた。


「そう、ヴェルが私も公所によく確認しておいたほうがいい…と言ってきたので確認しに行ったのだ。そうしたら公所の所長が出て来てこう言ったのだ。『ルーブルリヒト様は奥様との婚姻届のみ受理されています。ただ数年前まではガンドレアから、事情がよく分かりませんが、何度も婚姻の許可申請書類が送られて来ていました。え~と…ラブランカ=ガンドレア…これ、あの女王様なのですか?』と…」


「やっぱりっ!」


「こわっ!」


ナッシュ様と同時に叫んでしまった。ダヴルッティ様はまた憤怒の表情だ…。


「取り敢えず、カステカートですでに私とリアは受理されていたから、不受理でガンドレアには送り返していたらしい…それは構わないのだがっ」


ダヴルッティ様からビリビリと魔圧が放たれる。本気で怒っていらっしゃるわね。


「公所の所長と話していると奥から女性の職員が血相を変えて走って来たのよ。今、ダヴルッティ家の届が他に無いか調べていたら…もう一つあったそうなの…」


リアはここまで喋って息を一度吐き出した。顔色が悪い…ダヴルッティ様がリアの肩を摩っている。


「私達の息子のレーイアリヒトとラブランカの婚姻届が…ガンドレアで受理されていた。息子は第四夫君だ」


な、な、な…


「息子って、ザックと年の変わらない子じゃないか!?え~とザックの…一才下だから…6?いや、7才になったばかりだよな?」


ナッシュ様も動揺して言葉がしどろもどろになっている。


ダヴルッティ様は深く頷くとチラッとルル君達を見た。


「公所の届け出を確認した所、うちの息子は第四夫君だった。迂闊だった、公所も良く調べれば私の息子の年も分かる…おまけに相手が誰かなど分かりそうなものなのに!公所の所長は解雇だな!」


確かに…職務怠慢よね。でもこちらに幼児性変質者に対応する刑事罰ってあるのかしら?まさか性善説で、なあなあに済まされていたのかしら、由々しき問題ね。


ダヴルッティ様はナッシュ様に視線を向けた。魔圧も同時に向けちゃってるけど…


「こうなると第一夫君は当然あのコスデスタの公子だろう。では第三までの間は誰が夫君なのだ?やはり殿下ですか?」


「いえ、今日調べて来ました。私は外務大臣の機転で不受理扱いでガンドレアに何度も送り返していて無事でした。しかしそこのルルが…受理されていて、第二夫君でした」


ちょっと待って…待ってっ!?


「リアの息子さんが第四…だとすると第三は誰なの?」


私達の視線がウロウロとした後にある一点に集中した。それは…


ザック君が真っ青になった。慌てて走って来るザック君を私も駆け寄って抱き締めた。大丈夫!大丈夫よ!


ダヴルッティ様も近づいて来てザック君の背中を撫でてくれる。


「すっかり失念していたな…こんなにもヴェルに似ているのだ。アレが、邪な思いを抱いても不思議ではない」


「公所…に早く手続き無効の…手続き…」


ナッシュ様は完全にオロオロしている状態だ。ジャックスさんがナッシュ様の傍に駆け寄った。


「殿下、ザックはまだ居住国はカステカートのままです。ここから手続きをするより、カステカートの公所で直に申請するほうが早いと思われます」


ナッシュ様はハッとして、ジャックスさんを見た後に


「すぐ行く、アオイ、ザック!来いっ!」


と、ナッシュ様が私とザック君に手を差し出したので、勢いよくその手を掴んだ。途端、視界が暗転して…目を開けると、カステカートのユタカンテ商会の前だった。


「こっちだ」


ナッシュ様に手を引かれてユタカンテ商会の隣の公所に入って行った。ナッシュ様はすぐにカウンターに押しかけた。


「すぐに公所の所長を呼んでくれ」


受付の男性はポカンとしている。すると、カウンターで何か書類を書いていたおば様がナッシュ様に怒鳴った。


「ちょっと兄ちゃんっ順番守ってよ!」


「ナ、ナッシュ様…番号札を取らないと…」


私が受付横の札を取ってナッシュ様を待合のソファに座らせた。ナッシュ様は剥れている。


「早く手続きしたいのにっ!」


「でも、皆さんも順番ですから」


と、私が取り成しているとナッシュ様に抱っこされてたザック君が「あ…」と言って顔を上げた。


「兄上が…僕が来たのに気が付いたみたい。うん、うん、師匠達と一緒…今公所なの、え…あの…僕も詳しいことわか…ら…」


ザック君は説明が上手く出来なくなって半泣きになっていた。するとナッシュ様が突然話し出した。


「あ~閣下?あ、やっぱりザックの体を通して念話って送れるんですね。いえ、すみません…そう、そうです。実は昨日話していた婚姻届の件、私は無事だったのですが、うちのルルと…それと、もしかするとですが、ザックも勝手に出されているかも知れないと調べに…え…いえ、それはダヴルッティ様のご子息も婚姻させられていたのですよ…それで…」


と、言い掛けたナッシュ様の前にヌボッと黒い影が現れた。


小山のような影の主はヴェルヘイム様だった。カステカートの隊服姿である。勤務中ではないの?


「今…なんとおっしゃいました?ザ…ザックが…アレと、こ…こ…婚姻?」


ちょ…ちょっと?魔圧が上がってない?流石の公所内も、この小山の主からの魔力圧に皆さん気づき始めた。私はヴェルヘイム様の周りに魔術防御を張った。すると、ナッシュ様も気が付いて更に上から4重魔術防御を張ってくれた。公所内のざわつきが少し落ち着いて来た。


あの方々術士みたいよ?とか…すごい魔術防御ね…とか…周りの囁き声が聞こえる。


いやいやいやぁぁ~~すごいのは今、目の前で魔圧をガンガン上げている某兄兼某騎士団長で…そこのユタカンテ商会の元姫様の旦那で…


ちょっと…何この魔圧…内側から刺してくるみたいな、恐ろしい感じ…やだ、気分が悪くなってきた。魔力が吸い取られている?いえ、お腹の中を引っ掻き回してくるみたい。こんな魔力あるの?これって…意識が完全に途切れそうになった時に


「ヴェル君、何をしているの!しっかりして!」


と、カデちゃんの叫び声を聞いて私は完全に気を失っていた。


………暖かい…


「あ、目を覚まされましたよ!葵?大丈夫ですか?」


視界が明るくなってきてカデちゃんの顔とザック君の顔が見えてきた。


「うわぁぁぁん…アオイザマァァァ…」


ザック君、ギャン泣きだ…ザック君に縋りつかれて何がなんだか分からない。ここは?


「ユタカンテ商会の事務所ですよ。葵はヴェル君の魔圧に当てられて気絶されたのですよ、もう気分は大丈夫でしょうか?」


魔圧…なるほど、思い出してきた。先程公所でヴェルヘイム様から凄い魔力を浴びちゃったんだった。そうだ、公所のザック君の…どうなったんだろう?


「ありがとう…もう、大丈夫。ザック君はどうだった?」


カデちゃんの後ろに立っているナッシュ様を見上げると何度も頷いてくれた。


「うん、大丈夫…ではなかったが、婚姻無効の手続きをしてきた」


やっぱり…婚姻させられていたのね、可哀相に…泣きじゃくるザック君を抱き締めた。そういえば魔圧の発生源…ヴェルヘイム様はどこに?


私の視線に気が付いたのか、カデちゃんは目を吊り上げた。


「仕事中なのにノコノコやってきて…あまつさえ葵に魔圧攻撃を仕掛けるだなんて!あれほど魔力圧を自分より低い方に向けてはいけないっと言っていたのに!」


まぁまぁ…あんまり怒らないで~お顔の皺が増えちゃうよ!これは言ってはいけないね。ということは、ここにヴェルヘイム様がいないのは仕事に戻られたのかな?


取り敢えず、手続きが上手く出来たようで安心した。私達は少し休んだ後にナジャガルに転移で戻った。


戻った途端、仁王立ちになったフロックスさんが待ち構えていた。冷たい風が吹き荒れている!これは久々の、ゆ、ゆ、雪女だぁ!


「何を仕事をほったらかしにしてどこを遊び歩いているのですか?殿下はともかく、アオイ…あなたまで一緒になって…」


顔に霜が降りてきて…痛いっ。ザック君の体にヒートをかけてあげる。ザック君がフロックスさんの前に飛び出した。


「あ、あの…僕のせいなんです!僕が…あの、婚姻されてて…その無効の…」


すると、フロックスさんは膝を突くとポケットから飴の袋?を取り出してザック君に渡すと、初めて見る菩薩のような表情をした。


フロックスさんっあなた…そんな表情も出来るのね…!


「ジャックスから話は聞きました。あんな害獣女…失礼、あんな女王のことなんてさっさと忘れてしまいなさい。さあ、お菓子を食べて待っていて下さい」


明日、マジで吹雪くんじゃないかしら?いや今も室内で猛吹雪だけどさ…私はザック君をジャレット君に引き渡すと、大人しく吹雪に体を打たれ続けた。これも修行だ。


その日の夜…ヴェルヘイム様が、カデちゃん後ろに隠れるようにして離宮を訪ねて来た。体は完全にはみ出てますよ…


「アオイ…すまなかった…体はもう大丈夫か…?」


カデちゃんは大きなホールケーキ(中はキイチゴのタルトだった)を手土産に持って来てくれた。ナッシュ様が大喜びだ…おいっ倒れた本人は私ですが?それはそうと、聞きにくいことだけど…


ザック君はニルビアさんに切り分けて貰ったタルトを食べて、ナッシュ様と笑っている。チラッとザック君を見てからヴェルヘイム様を見た。


「さきほど、ヴェルヘイム様の魔圧を受けて…色々とあなたの魔力の本質が見えました。もし、どうしてもお話になりたくない…とのことでしたらこれ以上は聞きません。実は…以前5つ首のサラマンダーからザック君が『マジンノミコ』だと聞かされました。つまり魔の神の…子供という意味でしょうか?」


カデちゃんが息を飲んだ。ヴェルヘイム様に至っては一瞬で顔が強張った。


こりゃ…失敗したかな。私ってば口を滑らせたので…ヴェルヘイム様に口封じされちゃうかな。


ヴェルヘイム様の方から、黒い色…の何だろ?敢えて言うなら闇の霧?みたいな得体のしれない何かがこちらに近づいて来る…ああ、いよいよやばいかなぁ…と思い始めた時…


「うちのヴェル君はそんな物騒なことしないって!」


と、私の肩を誰かに抱かれた。肩に触れられた瞬間、ごっそり…本当にごっそりと魔力を取られた。途端に眩暈が起こる。な、何?


「あわ…また魔力取っちゃった~ごめんごめん!」


すると、魔力がドカンと体に戻って来た感覚がした。恐る恐る後ろを見ると、ヴェルヘイム様が立っていた。イヤ、よく見るとヴェルヘイム様より線が細くて、金色の瞳をしている。


「父上…」


「あ~父上!」


「ポカリ様!」


ちちうえ?父上…父親だって?この人…イヤ、人なんだろうか?どう考えてもヴェルヘイム様より見た目若いし、しかもこの魔力…マジン、魔神なの…?これが?


胡散臭い


「ちょ…この子何ぃ?胡散臭いって言った!」


ヴェルヘイム様の顔でこの口調、違和感が凄い…コレ本当に父親か?しかも私、声に出して言ったっけ?


「言ってないよ~!…て、このやりとり前にカデちゃんともしたよね~異世界人て皆、同じ反応なの?」


飛びついて来たザック君を軽々と抱っこしたこの魔神?父親?を見詰めた。そうだ、カデちゃん…と思い出してカデちゃんに視線を向けた。カデちゃんは若干苦笑いだ。


「あ、はい、ザック君とヴェル君の…お父様でアポカリウス=カイエンデルト様です」


「マジで父親なの?まあ、確かにヴェルヘイム様に激似だけどさ。初めまして、アオイ=タカミヤです」


アポカリウス…ああ、なるほどだからポカリ様なのね。私は別メーカー派だったけど…


「あのドリンク飲みたくなるわね…」


カデちゃんがピョンと飛び上がった。


「ですよね~ポカリ様見るとアレ飲みたくなるんですよね。ああ、いけない!あまり長居出来ないのでしたね!御用は何ですか?ポカリ様」


長居?留まる…という意味よね?忙しいのかしら?何の仕事をしているの?


「う~ん世界の反発を食らうからこっちの世界に長く居られないんだよね~」


何じゃこりゃ?しまった、触れちゃいけない系の人だったのか?痛いな…中二病かな?


「チュウニビョーって何?」


ん?


「触れちゃいけない系ってどういう意味?」


んん?


コテンと小首を傾げてこちらを見るヴェルヘイム様に激似の男は、どうやら…認めたくはないが、心を読んでいるようだ?


「せいかーい!心を読んでます~」


「ポカリ様っ!また勝手に女性の心の中を読むなんてっ!破廉恥ですよ!」


カデちゃんが私の前に立ってキリッと言い返している。そしてナッシュ様もゆっくりと歩いて来ると


「お久しぶりです、アポカリウス様」


とか呑気に挨拶なんかしちゃっておりますよ!


いやいやいや?ちょちょちょ…!?


こ、ここ…心を読めるの!?本当に…マジン、魔神?魔神なのマジで!?あの魔神?勇者なんかに倒されちゃったりしてる、ああアレは魔王か?いやちょっと待って?魔神のイメージが爬虫類しか思い浮かばないのだけど…コレあれだ!甥っ子がしてたゲームのイメージだな。あのもっちゃりした小太りの肌の色の悪くて舌をペロぺロ出している、キャサデザの…


「ちょっと~何がもっちゃりした小太りのだよ~僕そんな気持ち悪い姿じゃないでしょう?ホラッ、え~とイケメンでしょう!?」


自分で言っちゃってるよ…やっぱり痛いわ…この人?魔神か…もうどっちでもいいか。


しかし二人のお父様ならもうおじさんの年齢よね?しかもリュー君達のお爺様よね?痛いじーさんね…


おじーさん(魔神)は両手で顔を覆った。


「やだーーこの子めちゃくちゃ言うよっ!僕、おじいさんじゃないし~ひどいよっ!」


「何言ってるのです?実際、こんな大人の男性の父親でしょう?孫もいるのにおじいさん以外の何だと思っているのです?」


カデちゃんがドスの効いた声でバッサリと切り捨てた。


「皆~ひど~い!それはそうとさ、さっきアーちゃんが言ってた~」


「勝手にあだ名で呼ばないで下さい…」


「まぁ気にしないっ気にしないっ!そのサラマンダーって5つ首って言ってたよね?そのサラマンダー雌?雄?どっちだった?」


「え?サラマンダーさんの性別?う~ん…」


急に何を言うのだこのじーさん…サラマンダーさんの性別?カデちゃんやナッシュ様を見ても首を捻っている。


「両生類かと思ってましたが…」


ですよね、カデちゃん。だけど…なぁ~


「雄かな~とは思うのですが喋り口調がそんな気がして…」


すると、ポカリ爺は肩を落とした。


「そっか…雄か、それに5つ首でも無事にドラゴンになれるとは限らないしね。あぁ~あ、雌の子ならいいのになぁ!」


「今なんと言いました?」


カデちゃんがポカリ爺に聞いた。今、ドラゴンって言ってなかったけ…そうだ、確か図鑑に書いてあったじゃない、サラマンダーが成長すればドラゴンになるって…あれのこと?


「そう、ソレの事~でも雄だと参るな~番になって欲しいのにな~」


つがい?番うの…意味の番のこと?誰と番うの?


「ああ、番って欲しいのはね、僕の友達のドラゴン!もう1500年もボッチなんだって~」


室内がしーんとなった。するとその静寂を破るようにヴェルヘイム様が


「ド…ドラゴ…」


と、真っ青になって震えだした。ま、ま、またぁぁぁ!?魔圧が上がってるーー!


「ヴェル君!」


カデちゃんとナッシュ様の魔術防御壁がヴェルヘイム様を包んだ。


うわわっ!と思っていると、ポカリ爺がポンッとヴェルへイム様の肩を叩いた!何かの魔力がポカリ爺の体に吸い込まれた。フワッとヴェルヘイム様が倒れて、ポカリ爺が抱き留めた。


「ややっごめんねっ~ヴェル君にドラゴンの話は禁物だった~」


「そ、そうですよっポカリ様…ヴェル君のトラウマが…」


カデちゃんのいうトラウマ…ってなんだろ?


「ヴェル君が子供の時にね~ヴェル君をビックリさせちゃおって思ってドラゴンを召喚しちゃったんだよね~それ見てヴェル君、お漏らして気絶しちゃったのさ」


…のさ、じゃねぇよっポカ爺!幼気な子供に何やってんの?こんな大人になっても動揺するって余程怖かったのよ、きっと!


「本当に…ドラゴンを召喚…されたのですか?」


ナッシュ様が唖然としながらポカ爺に話しかけた。


「うん、まあ?」


ナッシュ様は興奮したように…専門用語を連発してポカ爺と召喚が~古代語魔法が~とか話し込んでる。


カデちゃんとザック君は気絶しているヴェルヘイム様が寝ているソファに寄り添っていた。ニルビアさんは…あれ?台所を見に行くと…椅子に座って眠っている?


「ポカリ様が眠らせているみたいですよ…」


後ろからカデちゃんが入って来た。私は布巾を手桶に入れて、水を冷たくしてカデちゃんに渡した。


「ヴェルヘイム様に…冷やす?」


カデちゃんは小さく笑った。桶を受け取ってから、溜め息をついた。


「多分…多分ですけれどね、ザック君の例の、婚姻とそれを聞いてヴェル君が魔力圧かけちゃったことと…ポカリ様、息子達を心配して来たのだと思うのですよね」


「心配?あれで?全然そんな素振りも見せないけど…」


私達が二人で戻ると噂のポカ爺は、ザック君と二人でヴェル君を覗き込んでいる。あれ…ナッシュ様…てか、床に寝転んじゃってるよ!


慌ててナッシュ様の側に行くと…


「寝てる…」


「あ、ごめんよ~古代語魔術のこと深く聞いてきたから、ちょっと眠っててもらってるだけだから~明日、目が覚めたら僕が来た事忘れているから~」


ちょっと!まさか眠らせる時に頭を打ったりさせてないわよねぇ!?


と、ギロリとポカ爺を睨んでやる。魔神なんてそんな未確認生物知らんわいっ!Gと同じレベルだっ!


「ひどっ…アーちゃんは本当に容赦ないっ…」


「皇子殿下を床に寝転がらせるなんて不敬ですよっ!」


「し~らない!僕、魔神だも~ん。あ、そろそろマズいわ…帰るから~ザックもいい子にしてるんだよ!アーちゃん、ザックを宜しく!」


ポカ爺は消えた…何なのアレ…


てか、私の予測ではポカ爺は只の人間だけどね。そもそもさ!魔神が子供作れる訳ないじゃないっ!非現実的な魔王だか魔神だかいるもんですか、と思い掛けて…あれ?そう言えば…


あることに気が付いた。


私も剣を召喚したり…しかも、その人化した剣と喋ったりしてたわ。あはは…おまけにここ異世界だった。


そ~だよ~アーちゃんってお馬鹿だね!


と…いうポカジジイの嘲りが聞こえた気がして、つい廊下の天井を睨んでしまった。


久々のウザイポカリ様登場でした。

書いていて楽しい


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