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イケメンの活用方法

誤字修正しています。お知らせありがとうございます。

「先程気になることを申していたが…」


と、目覚めたぽっちゃり親子とメイドと従者達5人を取り囲んで、ダヴルッティ様とキラキラ軍団は睨みを利かせていた。まあ、これだけ暑苦しいんだから私は混ざらなくても大丈夫だろう…と思いジャレット君とザック君とで朝作ったクレームブリュレを隅のテーブルに出して3人で頂いていた。


「アオイ様、このムースの焦げてる所も美味しいですね!」


「これ、砂糖を焦がして作っているのよ、異世界では割と有名な菓子なの」


「美味しいぃ~」


甘いモノと美少年に囲まれる至福の時…


「あぁ!?何を食べてるんだ!お前達だけでズルいぞ!」


ああ、うざいのに気づかれた。キラキラ軍団の輪の中にいるスイーツ皇子殿下を睨んでやった。


「うちに帰ればバナナマフィンもありますから、ガタガタ言わないっ!」


ナッシュ様がすんごい目で睨んでくる。おいっ私はあなたの一応嫁だけど?


「話を戻そう…コスデスタ公国からの入国は今は厳重な監視下に置かれて禁止されている。それをどうやってここまでやって来たのだ?チラッと申していたが軍の指示の元…か?」


ポッチャリーナ一号はキラキラしたダヴルッティ様のご尊顔をうっとりと見詰めながら何度も頷いた。そりゃこんな美形うっとりもするわよね~今この空間で一番の美形だもの…ナッシュ様を除いてね


「はいっ軍の発表がありましてっ勇者がガンドレアに巣食う魔の眷属を一掃したとかで、コスデスタに避難している者達に通達が来ました!」


すごっ…自白剤とかは使っていないはずなのに…ベラベラ喋っている…イケメン印の自白剤の威力スゲー


「うむ…では入国はどうしたのだ?国境は監視の目が厳しかっただろう?」


ダヴルッティ様が慈愛の籠った目でポッチャリーナ一号を見詰めた。


「はいぃぃ!コスデスタ軍の方が先導してくれて難なく入れました!」


「場所はどこからだ?」


「クレンテントですっ!」


「クレンテント…伝令を頼む」


「御意」


ダヴルッティ様は、後ろに控えていた赤い髪の渋いお兄様に指示を出した。


鮮やかな手際である。流石イケメンの無駄遣いはしない。適材適所、正にこれだ。イケメンの有効活用の最大活用を見た清々しさすらある。


コスデスタ軍が密入国しているかもしれないものね…赤髪の渋いお兄様っ伝令お願いね!


赤髪のお兄様は部屋を出る前にザック君にニヤッと笑いながら手を挙げて挨拶すると、素早く出て行った。


「お知り合いなの?」


「はい、兄上と同じ第三騎士団の副団長のジーニアスさんです!」


カステカートの騎士団の方々って、顔面偏差値高いわね。今残っている青い髪のお兄様も悶絶ものの美形だし。見詰める私の視線に気が付いたのか、美形のお兄様がこちらを見た。やだっ!フワッと優しく微笑みかけられてしまったわ。


素敵すぎる…魅惑の美麗騎士様だわ。思わずぽーっとなっていると、こちらをジットリと睨むナッシュ様と目が合った。ナッシュ様は忍び如く一瞬で近づいて来た。


「今レンブロ殿に見惚れていたなっ!?」


「あのお方レンブロ様とおっしゃるの?」


「美形ですよね~カステカートで開催したミスターコンで優勝2回、準優勝2回の殿堂入りイケメンですからね~!」


「まああ!ミスターコンなんて開催してるのぉ!?うちも今度開催しようかしらぁ!」


カデちゃんがそう言って近づいて来たので、ナッシュ様そっちのけで妄想が膨らむ。


「優勝はルル君かしら~準優勝はコロンド君?あ、近衛のジーパス君が出ちゃうと順位予想が難しいわね…これ、優勝予想の賭けも開催したら更に盛り上がるわね」


「きゃあ!いいですね〜私はルル君に一点買いです!」


とか盛り上がっていると、大きく咳払いをしたナッシュ様がブスッとした顔で私の腰を引き寄せた。


「なんだ…みすたーこん?て…」


「ナッシュ様は主催者側だから出れませんよ?」


「だからなんだよ~それ?」


カデちゃんがレンブロ様とダヴルッティ様を呼びよせて、コンテストなるものの概要を熱く熱く語ってくれた。私も異世界のコンテストの様子を補足して説明してみた。


「つまり誰が一番の美形かを競う催しか、市場や商店街は便乗商売が出来るから…祭りのような感じになるのだろうな。しかしそんな目立つ催しに、ルルは出るかな?」


しまった…盲点だった。あの、無口で表情筋の死んでいるルル君が出てくれるだろうか。ジャックスさんが出たら渋々参加するかも…と、チラチラとジャックスさんを見ていると


「俺そんなの出ないよ~」


とすげなく断られた。くそぅ…一番人気になるはずのルル君が欠場なんてっ!その時キョトンとしてるザック君と目が合った。


「そ、そうだ!ザック君とジャレット君がいるじゃない!?優勝は決まりね!」


「そうですっ!ザック君もナジャガルに在住になるものね、出場資格がありますねっ!」


とか私達が盛り上がっている横で、フォリアリーナが静かにぽっちゃり親子の前に立っていた。


私が気が付いて見ていると、周りの皆様も気が付いて黙って見詰め始めた。


フォリアリーナ、リアは静かに微笑みながら話し始めた。


「大事な息子さんをここに置いて一年離れていて…食事は喉を通りましたか?心配で夜は眠れませんでしたか?まあ、あなたはそのようなことは無かったようですわね」


リアはバサァと扇子を広げると口元を隠して小さく笑い声をたてた。怖いねこれ…リアから流れ出る魔圧も怖いけど…


「こんな戦争状態の中で素敵なドレスをお召しね?それにお手も手入れが行き届いて、お美しいわね」


ポッチャリーナは褒められたと思ったのか…顔を綻ばせた。


「ええっ美に関しては金を惜しみませんのよ~美しくして夜会に出席したいものね!あなたもお分かりよね?」


おいおいおいっ!?ジャレット君を放置しておいてぇ挙句に夜会に出席だぁ!?


私は飛び掛かって一発殴ってやろうかと、構えているとナッシュ様に制された。


「リアさんに任せとけ」


何、どういうこと?するとダヴルッティ様が美しいご尊顔を私に向けて微笑んだ。うわっ目が潰れる…


「あいつに任せておけばいいよ…」


男性陣がしみじみと口を揃えて言うので、仕方なく成り行きを見守ることにした。


リアは広げていた扇子をバチンと閉じると妖艶な微笑みを浮かべた。


「そう…そうやって湯水が如くお金を使っているのね?あなた方貴族のお馬鹿さん達は…」


ほわっ!?今なんと言ったの?リア?


「よーしやっちゃえ!リア姉っ!」


カデちゃんが煽っている!?も、もしかして…リアって…


「あなたのドレスを買うお金も、ご主人のお給金からでしょう?そしてそれは国から支払われている…国は誰から収入を得ているの?考えてごらんなさいな…まさか体同様、頭の中まで脂肪で埋め尽くされている訳ではないでしょう?」


うわわ…うわわ…リア様?


「国民が税を払い、国に納めていなければ王族は食べてはいかれないのよ?国は国民がいなければ死んでしまうのよ?あなたは国民に生かされているのよ?だからこそ、貴族や王族の仕事は何かと言えば、自分を生かしてくれている国民の為に身を粉にして働くことなのよ?贅沢なドレスを着たり手を綺麗にしたり、豪華な夜会をするためだけじゃないわ。この国の状態で贅沢をするなんて愚の骨頂っ!恥を知りなさいっ!」


ひえぇぇ…めっちゃ怖いぃぃ!魔圧も怖い、横に居るメイドの女の子なんて魔圧にやられて失神している…恐ろしすぎる。


「そして、そんな脂肪の塊に仕えている侍従のあなた方、主人がおかしな方向に行きかけたら諌めるのも時には使用人の仕事よ。こんな所に主人のご子息を置いて行くなんてっ間違っていると言えないのは、怠慢な証拠です!あなた方も身を引き締めなさいっ!」


し…し…脂肪の塊…いや、あの間違ってないけど、表現が怖すぎる。チラリと横目でナッシュ様を見ると青ざめている。あんたがビビってどうするんだよっ!


「驕り高ぶればいつかは身の破滅がやって来るのです。もうすぐ来る終焉に怯えていなさいなっこの人でなし!」


「奢れる平家久しからずや…実るほど頭を垂れる稲穂かな…まさにそうですよね」


リアの説教を聞きながらカデちゃんが小さい声で呟いていた。


そう、上に立つからこそ自身の足元を良く見なくては、上ばかり見ていたら…いつかは。


「そう悪いがもう栄華は終わりだ、ガンドレアは三ヶ国共同で新体制で復興させることが決定された。君達貴族も爵位は剥奪されてもうすぐ平民だ」


冷たい声音でナッシュ様がそう言うとポッチャリーナ二号が、なんとナッシュ様に向かって怒鳴った。


「な、何よっ!?あなたなんかにそんな偉そうに言われる覚えはないわっ!名を名乗りなさいよぉ!?」


あら~あ?この空間で一番偉い人にソレ言っちゃいますかぁ?ナッシュ様はわざわざ「これは失礼した…」と断りを入れてから名を名乗った。


「ナッシュルアン=ゾーデ=ナジャガルと申す。ナジャガル皇国の皇太子だ。先程、母君が扇子を投げつけたのが皇太子妃のアオイだ。我が妃に傷をつけるとは…不敬罪だな、極刑に処しても構わないよな?」


ぎゃあっこれは!魔圧の上昇は無いけれど声音が低い…ナッシュ様相当お怒り?そういえば以前言ってたではないか、自分のものを貶されるのが好かないのだと、今まさにその状態ではなかろうか…


横に立つナッシュ様の手をソッと握った。するとチラリと私を見たナッシュ様は、久々のそちも悪よのぅ~みたいな顔をしてニヤッとした。


ああ、イカン…完全に悪代官のごとく悪巧みでほくそえんでしまっている。こんな時は自分の悪役っぷりに酔いしれてガンガンに攻めたてていくのだ。何を企んでいるのだろう。


「な、何…皇太子殿下!?」


ポッチャリーナ一号は真っ青になって二号の体を押さえつけた。


「お知り合いのご婦人方にも知らせるがよい。我が妃に不敬を働いたガンドレアの貴族共を片っ端から極刑に処すると…それが嫌なら他国へでもどこへでも逃げ出すがいい。少しでもガンドレアから資産を持ちだそうとしたら極刑だぞ?早う逃げ出せ」


ナッシュ様は朗々と、それこそミュージカル俳優が如く手を頭上に掲げ酔いしれている。○イオンキングでも歌い出しそうだ…


ポッチャリーナ一号は二号の手を引くとアワアワと立ち上がった。そしてジャレット君を顧みた。


「ジャ…ジャレットッ!あなたも早く来なさい!」


ジャレット君!どうするの?皆が固唾を飲んで見守った。ジャレット君は寝台に座ったまま、ジッと俯いていた。ジャレット君はゆっくりと顔上げると


「行かないよ…」


と、震える声で答えた。もうすでに泣きそうな状態のジャレット君を見て私ももらい泣きしそうだ。


「逃げないよ…ぼ…僕は逃げない!ガンドレアの人達は歯を食いしばって現状に耐えてるんだっ!軍人の僕が逃げていいわけないっ!」


ジャックスさんがジャレット君の肩を抱き寄せた。そして義母と妹を見た。


「ジャレットには俺がついてる。あんた達は好きにしたらいい」


ポッチャリーナ一号と二号は震えながらジャックスさんとジャレット君を見ていたけど、一号が手を引っぱって動き出すと、倒れたメイドを背負い従者共々走りながら出て行った。


室内を静寂が包む…その静寂を破ったのはダヴルッティ様だった。


「体のいい厄介払いだな~」


そう言ってナッシュ様の肩を叩いた。言われたナッシュ様は苦笑いを浮かべている。


「これで煽られた貴族達が暴れたりせずに出て行ってくれれば良いのですがね~」


成程ね…コスデスタから貴族(富裕層)が戻って来たとなったら、また国民に圧政を強いるかもしれない。それならばガンドレアから着の身着のまま資産を置いて逃げ出して欲しい…と。


「ナッシュ様が権力を笠に着て暴言を吐いたことになりますよ…」


と、私が言うとナッシュ様はナッシュ様の右手に置いていた私の手を握り返すと


「いいもん~事実だしな~私は悪い皇子殿下だしな!」


とニコニコしながらそう言い切った。まあ、本人が悪代官でもいいって言ってるんだから…いいか。


私達は帰宅の準備を始めた。それにしても…


「リアがあんな…その、言い方するとは思わなかったわ」


フォリアリーナは美の女神様も逃げ出しそうなほどの微笑を浮かべた。


「オホホ…あの手の婦人は嫌いなのよ。いい気味だわ」


ずばーーん!刀で袈裟懸けでござるな。一切の躊躇なし。カデちゃんも悪よのぅ~の大奥の局みたいな笑いをしながら「でもねでもね~」と会話に入って来た。


「まだ言い足りないのでしょう? まだアレが残っていますしね~」


「アレ?」


「厚塗…じゃなかった、ラブランカ女王陛下ですよ、ね?リア姉様?」


今カデちゃん…厚塗り…て言い掛けてなかった?まあ、私も白塗りって心の中で呼んでたし同類か…


「確かにあの年増にはもっと言ってやりたい気もするけど、今もっと言ってやりたいのはジャレットの父親ね」


確かに…そういえばポッチャリーナ達とは一緒じゃなかったわね?どうしたんだろう?


「ポッチャリーナはコスデスタに逃げていたけど、お父様はガンドレアにまだいるのでしょうか?」


カデちゃんまでもあだ名で呼んでるし…まぁいいか。


ジャックスさんは首を傾げながらジャレット君を顧みた。ジャレット君も首を傾げている。


「どうかな…カステカート侵攻の部隊には入っていたはずだけど、例え母上達と一緒に逃げていても僕らには会いに来ないよ…母上には絶対逆らわないよ」


「ああ、オヤジは元平民なんだ。で、俺の母親が俺を生んですぐ病気で死んで…再婚したのが男爵家のアレ…て言う訳。子供の俺が言うのも何だけど親父、美形なんだよな。アレに美形だから狙われたんだよ」


ジャックスさんまでアレ呼ばわり…まあいいけど。分かりますよ…ジャックスさんとジャレット君を見てれば、男性側には美形遺伝子が働いているのを色濃く感じますよ…それに比べて…ね。


「妹御様はお可哀相に脂肪の塊に色濃く似てしまったのね…ホホホ」


「オホホ…ほぉんと残念ですよねー!」


シュテイントハラルの姫君達は高笑いだ。こんな所で脂肪だのアレなんて呼ばれているとも知らず、哀れねポッチャリーナ親子。


私達はうっかりと、子供達の前でまた人様を悪しざまに罵りながら、それぞれの国に帰国して行った。ジャレット君はジャックスさんが背負っている。


「よーし皆、一気に運ぶから~」


と、ナッシュ様の言葉で視界が一瞬暗くなってそして…もうナジャガルの皇宮内の離宮の前だった。


「やっぱすげぇな~俺もこんな長い距離飛べたらな~」


と、ジャックスさんが言った後、離宮の前に立っている方々に目が行った。


ジューイ、フロックスさんにガレッシュ様…総勢でお出迎えだ。


「おっかえり~帰って来た早々悪いけど、三ヶ国協議の…」


と、ジューイ達がナッシュ様を連れて行ってしまったので私とジャレット君を背負ったジャックスさんとルル君、ザック君の5人で離宮の中に入った。


「おかえりなさいませ、アオイ様」


「只今戻りました、ニルビアさん。やっぱりナジャガル暖かいわね~ガンドレア寒くって~」


私はニルビアさんに愚痴ってからジャックスさん達を中に入れた。ニルビアさんはニコニコしている。


「いらっしゃいませ、ジャックスさん。今日からまたお住まいですね。宜しくお願いします」


「ニルビアさん宜しくです!あ、これが俺の弟のジャレットね」


ジャレット君は背負われたまま、あたふたしながらご挨拶をした。


「あ、あのこんな姿ですみませんっ!弟のジャレットです」


「こちらこそ、宜しくお願いします。ニルビアで御座います」


そしてザック君がピョンとニルビアさんの前に飛び出した。


「お久しぶりです!これからよろしくお願いします!ザックヘルム=デッケルハインです!」


ニルビアさんは破顔した。


「まあザックさん~うふふお元気そうでっ。はい、これから宜しくお願いしますね」


私はまずは個々のお部屋に案内してから、ジャレット君を車椅子(カデちゃんから借りた)に乗せて居間に連れて行った。ジャックスさんは半休で昼から軍の警邏の仕事がある。


お昼にキノコのグラタンとバナナマフィンを作って皆で食べた。因みにナッシュ様は帰って来ていない。


「じゃあ、俺行って来ます~俺の部屋の片づけは自分でしますんで~」


本当に片付けるのか~?実に嘘くさい…実はジャックスさんは汚部屋の住人らしい。らしいというのは現場を見たのはルル君だけで、ルル君曰く「人間の住む所じゃなかった…」とのことだからだ。


「ジャレット君の荷物はあれだけでいいの?」


ジャレット君の荷物は衣装箱一つだけなのだ。まだ体の自由が利かないジャレット君に代わって蓋を開けると、簡単な着替えくらいしか入ってなかった。ジャレット君は恥ずかしそうにしている。


「取り敢えずの着替えしか入れてないのです」


「そうなの?まあいいか…何か足りないものが出てきたらナッシュ様に取りに行かせればいいしね」


何気に皇太子殿下を転移の出来る便利屋さん扱いしている気もするが…気が付かなかったことにしておこう。


「それに…ガンドレアは寒いけどナジャガルは気温が高いって聞いてて何を持って来たらいいのか分からなくて…」


そうなのだ、この世界は地球と同じく北が寒く南が温かいという気候なのだ。これは北の方にグローデンデの森があることが寒暖差に表れている…というのはエフェルカリードが森を確認した際の見解だ。


ガンドレアは森に隣接した国で、当然ながらこの四の季はめちゃ寒い。魔法があって良かった。常にヒートをかけて歩いていたし…


「この世界にはエアコンないしなぁ~この時期寒さも堪えるよね~あぁ~早くカデちゃんがエアコン開発してくれないかな~」


ザック君がジャレット君の服をクローゼットに仕舞ながら


「それって寒い所に使うものなのですか?」


と聞いてきた。ジャレット君も興味があるのか、寝台に腰かけてはいるが前のめりだ。


「人が快適に過ごせるちょうどいい温度の風が出てくる機械…発明なのよ。こちらで言う所の魔道具ね。つまりガンドレアでは室内は暖かく出来るし、逆にナジャガルで暑い時は涼しく出来るのよ」


「わあっいいな~じゃあ外が吹雪いていても、室内…その魔道具が発動している場所は温暖な気温ということですか?」


「そういうこと~ユタカンテ商会で開発中らしいわ~その魔道具が出来ればガンドレアの方々も少しは住みやすくなると思うのよね~あ、そうだ!ザック君、私ちょっとお城に頼んでいた食材が届いているかもしれないからジャレット君と待っててくれる?」


「食材…ですか?」


「うん、ナッシュ様のご領地のシテルンから海産物のお取り寄せをお願いしているのよ。届いていれば今日はモッテラ?だったけのお料理ね」


ジャレット君が歓声を上げた。ザック君も嬉しそうだ。


「僕、初めてです。海も見たことないし、そこで泳いでいる生き物ですよね?」


「そうよ、異世界では魚と言うのだけど…どんな魚類でも美味しいお料理にしてみせるわ!」


声高らかにそう宣言して、ニルビアさんに留守をお願いすると、私は地域復興局のシテルン地方の担当官のおじ様の所へ出向いた。


「妃殿下届いてますよ~」


いや、まだ妃殿下じゃないし…とかもういいか後数週間で婚姻式だし…。そう、今日は日本式の暦で言う所の年の瀬12月30日にあたる。


シテルンの海産物のお取り寄せをしていたのにも訳がある。


お正月におせち料理を作ってみたいのだ。材料が集まらないのでなんちゃっておせちになる予定だが、おせちのレシピはカデちゃんに教えてもらった。流石ね!おばあちゃんの知恵ぶく……失礼。


「お魚…モッテラの種類は指定したモノに似たルーナっていうのは漁獲出来たかしら?」


担当官のおじさんはトロ箱っぽい木の箱を後ろの戸棚から出して来て中を開けて見せてくれた。


「腐敗と時間停止をかけてます。しかし…こんなルーナの卵なんて食べられるのですか?」


私は中を覗き込んで歓声を上げた。


「やったー!スジコよ!」


ああ嬉しい!これでイクラの醤油漬けが食べられるぅぅ!カデちゃんにも作って送らないとだし…え~と他の魚は……白身の魚ね…フムフム鯛っぽいわ。ん?赤い身の魚だけどこのピカリと光る脂の乗りは…


「マジでぇ!?マグロのトロ!?いやいやまだ分からないか…」


「あの、妃殿下このモッテラ…本当にお料理に使われるので?」


「そうよ~すごく美味しいのよ。実はシテルンでこの御料理を食べれるお店を作ろうかと思っているの。またナッシュ様と視察に行くから詳しくはその時にね。来年の初め頃には行けると思うから案内宜しくお願いします」


担当官のおじ様は乙女の様に頬を染めて喜んでくれた。


魚の入ったトロ箱を担当官から受け取った私は、ヨジゲンポッケにしまうとスキップしながら離宮へと帰った。


さあ、おせち料理作るぞー


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