ドラミン先輩無双
しばらく無双が続きます
「で…魂だけこっちに移動というのかしら、それでシュテイントハラルの家に生まれたのです」
すっかり砕けた調子になっているドラミンことカデちゃん(私も呼ばせてもらうことにした)は実は向こう…異世界でご病気で亡くなっていて…転生されてこちらに来たらしい。
中身はアラ還手前の酸いも甘いも噛分けた大人女子だった。なんとうちの取引先の一つの某会社の部長さんだった。もしかしたらお会いしたことあったかも…しかしかっこいいね!…あのユタカンテ商会の抜かりない商売はこの方の手腕によるものだった。益々かっこいい…。
「言葉が通じないって困るよね~」
「困りますね~頭の回転は大人なのに言葉が分からないってストレス溜まりました~」
おや、摘まんでいたクッキーが無くなったので、クレームブリュレを出した。カデチャンは大喜びだった。
「や~んクレームブリュレだぁ~生クリーム作るの大変だから作らないのです~」
「これうちのヤウエン地方の生乳なんだけど、作り方のレクチャーしてから生産ライン確保して製造、販売に漕ぎ着けたいのよね。ヤウエンは魔の眷属の来襲が多くて新たな産業起こしにくいのよね~悩ましいわ」
「もしかして、葵って政務も手伝っているのですか?」
「まぁ少しね、あの人一応皇子殿下だから…私の持っている異世界の知識で使えそうなものを活用しているの」
カデちゃんは顔をキラキラ輝かせて私を見ている。これで中身が渋いおば様だなんて詐欺だっ…
「とりあえず、少しは仮眠をしておかないと明日って…今日か、うちのモヤシを見てもらわないといけないし…」
「ぶっ…モヤシ?て…スーパーに売っているあの?」
「そうモヤシっ子のモヤシ」
するとカデちゃんは麗しのご尊顔を曇らせた。どうしたの?
「その…モヤシさんはあそこにいた国王陛下と王妃様の横に座っていた細身の男性のことですよね?」
「うん、そうだけど…」
「実は少しだけ視てました…ほんの少しだけど…あの方が視て欲しい方?ご病気ではないのですよね?」
「ああ、そうか…違うの。そういう不治の病とかの判定とかじゃないから…えっとね、この世界ってDNA鑑定ってないでしょ?」
「無いですね」
「で、今ちょっとご兄弟かどうかで揉めているのよ…ナッシュ様とモヤシがね」
カデちゃんは驚いて思わず後ろにのけ反っていた。
「確認する方法って魔力判定しかないでしょ?ところがねうちのご兄弟に微妙な判定が出てね…」
「今頃判定したのですか?生まれてすぐに判定するのじゃなかったでしょうか?お国によって違うのかな…」
ええ?そうなのか…そのあたりは詳しく知らないから次の親族会議で話せばいいか…
「よく分かんないけど、ゴタゴタしちゃってるのですねぇ…大変ですねぇ~」
カデちゃんは頬に手を当てた…こういう仕草、スーパーの鮮魚売り場でよく見るよ!晩御飯のおかず何にしようかしら~て考えてる時の無意識ポーズよね!
茶化してごめんねカデちゃん先輩…ドラミンとしてちゃんと尊敬していますよ。
とりあえずご夫婦はツインルームにご案内して、私達もお休みすることにした。寝る前にヴェルヘイム様がすごい技を見せてくれるらしい。
「絶対驚きますから」
へえーっ驚きのポイントてどんなのかな!かっこよすぎて驚くのは分かるけど…ヴェルヘイム様は左耳に手のひらを当てた?オヤ…スマホ持ってないのに持ってるフリかな?
「あ~ザック?夜中にすまん。どうだ問題ないか?うん…いや…ちょっと長引くかも…え?う~ん、後で聞いてみるよ。とりあえず今日の朝ぐらいにもう一度呼びかけるから…」
…な、何?誰と喋っているの?思わず隣のカデちゃんを見た。すごいニヤニヤしてる。
「なんでもテレパシーみたいなのらしいです。私は『もしもしテレフォン』と呼んでいます。ちなみにテレパシーに応じていたのがヴェル君の弟なのです。一応子供達の叔父さんだし、一番しっかりしていますよ」
す、すごいねーー!私もしたいなぁもしもしテレフォン!
そしてもう夜明け前だが就寝することにした。うちの皇子殿下が甘えて来たので、今日は付き合ってあげることにした…明日、回復魔法のお世話になるんだろうな~と思いながら、翌日を迎えることになった。
一旦、朝に起きたが今日、私は休みの日だった。基本隊員でローテーションだけど最近はナッシュ様と同じ日に休ませて頂いている、有難い。という訳で、隣で寝てるナッシュ様を起こさないように着替えてキッチンに入った。
「おはようございます、ニルビアさん」
「まあ、アオイ様!昨夜は遅くまでお話されていたでしょう?今日はゆっくりでいいのですよ?」
「昨日の会議の続きが今日あるのですが、その開始時間を確認して一度仮眠は取るつもりです…大丈夫よ」
お昼くらいまで起きて来なければ各部屋にお声かけをお願いして、ロールパンを二つほど食べてから第三の詰所に顔を出した。
「あれ、妃殿下?今日休みじゃねーか」
ここにも私を呼び名で弄る男がいた。ジャックスさんだ。ルル君もいる、ペコンと頭を下げている。
「ちょっと昨日の親族会議が紛糾して…今日に持越しになったんだけど…国王陛下から連絡来ていませんか?」
ジャックスさんが嫌そうな顔をした。
「紛糾~?きなくせぇな…なんだかジューイさんも朝から抜けてていないから…ちょっと待つか?」
するとフロックスさんが朝一に何あったのか、不機嫌顔で詰所に入って来た。後ろにジューイがいる。
「なんだ、今日休みですよね?ああ、もしかして親族会議ですか?今日は夕方4刻から行うそうですよ?一応、正当性と信憑性を示す為とかで父上とバウントベリ宰相も参加だとか…」
4刻ね、了解。それにしてもジューイは昨日の会議で疲れているのかもだけど、フロックスさん何故そんなにイライラとお疲れが重なったみたいな顔になっているの?
「朝からモヤシが暴れたのですよ…」
暴れたぁ?おいぃぃぃ!?なんでまたっ?ジューイはあくびをしながら頭をぼりぼり掻いた。
「あのモヤシの野郎っ叫びてぇのは俺の方もだよっ俺、寝てねぇよ…3刻間くらい仮眠していい?」
そう言って詰所の奥、物置の隣の仮眠室に入っていった。
「リディック殿下、叫んだり…したのでしょうか?」
私の言葉を聞いて、フロックスさんが体からドス黒いオーラを出している幻が見えたような気がした…
「そうだね、朝…僕が行った時には城の術士に強制睡眠術をかけられて倒れていたけど…ジューイがモヤシに蹴られたとかでご立腹だった。後、異界の乙女も頬を叩かれたとかで治療しておいた」
女の子に手をあげちゃいかんよっ!大荒れじゃない…そりゃ、荒れもするよね。自分が王族じゃないかもしれないなんて…そうだっいけない!私は慌ててジューイを叩き起こして連絡してもらい、レデュラートお兄様とジュリードおじ様、両人にお会いして色々会議に向けて準備出来るモノを揃えていった。
そして昼過ぎに離宮に戻るとそこには…
「わぁーいいぃどうだーー!」
「師匠!どうですかっ!」
「いいなっ上手いぞ!ザックはもっとこい!」
うちは託児所か何かでしたかね?え~と庭は結構広いのよね、これでも皇宮の一部なので…で、そこの庭で日本で言う所の小学校低学年くらいのぼっちゃん達2人に、ナッシュ様が剣の指導をされているようなの。うん…それを見ているカデちゃんとこれまた幼稚園児くらいの坊やと、同じく見た目は子供のエフェルカリードが楽しそうに絵を描いている。うん…その横に乳飲み子を抱えたヴェルヘイム様…赤ちゃん潰れませんか…?心配…
「おかえりなさいませ、アオイ様」
「ただいまもどりました…これ何?」
ニルビアさんはニコニコしながら果実水を運んでいた…私もお手伝いをする。
「おかえりなさいっ葵!ごめんなさいっお留守の時に大勢で押しかけちゃって…」
打ち合いをしている坊っちゃん達の姿かたちを改めて見る。ああ!そうかっ。
「お子さん達ね!あれ、でも一人多いような…」
するとカデちゃんが足早にこちらに近づいて来た。大丈夫?小石に躓きそうになっていたけど…
「あの一番大きいヴェル君にそっくりな子がヴェル君の弟のザックヘイム君なの、今7才。それで一緒に遊んでいるのが、うちの子長男で6才のリューヘイム。あのお絵かきしているのが次男のレオンヘイム、4才。そしてヴェル君が抱っこしているのがユカリーナ生後8か月。分かります?割と日本語の人名を当ててみたのです、うふふ」
リュウ、レオン、ユカリ…アレだな人名でカイザーくんで皇帝の当て字を使うあれに近いかな?いや、ちょっと違うか…
私は食事を食べ損ねたので、卵焼きとモロンシチューを頂く事にした。溶き卵を溶いて塩と砂糖を入れて焼いて行く。そしてソーナを掛けようとしてキッチンの入口に立つカデちゃんに気が付いた。
「ん?カデちゃんどうしたの?」
「そ、それ…それ、し…醤油?」
「あ、ソーナって言ってね、似てるでしょう?」
アツアツの卵焼きに回しかける。するとカデちゃんが急ぎ足で近づいてきた。…大丈夫?今度はドアの敷居に躓きそうになっていたけど…
「しょ、しょっ…醤油どこに売ってますかっ!?欲しいですぅぅ!」
思わず笑顔になる、あ~やっぱり日本人だねカデちゃん!分かるよその気持ち。
「うふふ、実はナジャガルのシテルン地方の特産品なのだー!今お城に瓶で保存しているから好きなだけ持って帰るが宜しいっしかもシテルンは魚も獲れるのだ~お刺身にどうぞー!」
カデちゃんは、
「うれしいーー醤油ぅ!」
とまた号泣した。気持ちは分かるよー日本人の心の友だものね!
その後2人で泣きながら卵焼きを頬張った。その時シテルンリゾート計画を話すと大興奮で
「お手伝いさせてーー!お刺身食べたーいぃ」
と抱き付かれた。ドラミンならいつでもOKさ。
さてさて、チビッ子達を引きつれて皇宮にやってきたよ。ヴェルヘイム様にお守をお願いして、ナッシュ様、私、カデちゃんと座る。今回はフロックスパパとバウントベリ宰相と…あの人誰だろ?綺麗なんだけど…白装束みたいなあまり飾り気のないドレスを着ている50代くらいの女性…クリッシュナ様と小声で何か喋っている。
「巫女姫だ」
小さくナッシュ様が呟いた。カデちゃんが小さく体を強張らせたので手を握りつつ…大丈夫よ…と声をかけた。モヤシは完全に不貞腐れていて…沢田美憂はずっと俯いている。
「あの子も日本人ですね?」
「あの子がこの世界に召喚された異界の乙女なのよ」
カデちゃんは、あ~あ、あの子が…と小さい声で呟いている。やがて国王陛下が入られた。皆様で起立してお待ちした。
「皆、何度もすまないな…」
キリッシュルアン国王陛下は一日でゲッソリとやつれたように疲れ果てていた…そりゃそうよね。
「昨日よりの続きではあるが…早速だがカデリーナ姫、リディックルアンを視て頂けるか?」
「はい、承知いたしました」
カデちゃんがソファに座り直し、体ごとモヤシの方へ向けた時、モヤシが突然、テーブルの上のティーカップをカデちゃんにぶつけた。一瞬の出来事だった…カデちゃんの周りにはうっすらと防御壁が出来ている。カップはその壁にブヨン(弾力があるみたい)と当たると床に落ちる前にナッシュ様の手の上に落ちた。
「カ、カデちゃん!?」
「大丈夫かっ!?」
「リディックッ何をなさるのっ!?」
あちこちから非難と小さく悲鳴が聞こえる。
「大丈夫です、ナッシュルアン殿下から会議中は気を付けろと言われていたので…」
さすが、カデちゃんとナッシュ様。私はモヤシを睨みつけた。その際に飛び散ったお茶を浄化するのも忘れないぞ!手を一振りしてお茶を消してからモヤシにこう言ってやった。
「親の代で彼女を苦しめて、今度は子供のあなたが彼女を辱めるのですか?親子揃って馬鹿は勘弁して下さい」
私の言葉に皆様が息を飲んだ。そうよ、これしか有り得ないじゃない?王族の血族でここにいる従兄弟と同じ条件の血族と言えば…アイザックの子供しかいない。しかもアイザックには不幸にも子供がいる。
「カデちゃん、まずは見てもらえない?あなたの見解を聞きたい」
私がそう言うとカデちゃんは一呼吸置いてモヤシを見た。視ている…かな?モヤシは情けないことにジューイとナッシュ様に取り押さえられている。本当に情けない。
随分と長い間視ていた気がする。もしかしたら短い時間かもだけど…すごく静かな沈黙がカデちゃんの
「終わりました…」
で破られた。みんなが大きく息を吐き出した。つい息を止めて見てしまっていたね。カデちゃんは何度かゆっくり深呼吸をした後
「私が視させて頂いた、リディックルアン皇子殿下の診断の結果をお伝えします」
と切り出した。
つい横顔を見詰めてしまう。カデちゃんはキリッシュルアン国王陛下とクリッシュナ様を交互に見た。
「そちらにいらっしゃるリディックルアン皇子殿下はキリッシュルアン国王陛下とクリッシュナ妃との御子ではありません。こちらにいらっしゃる方々で直接の血族の方は見当たりません。従兄弟ではないか?とのご指摘がありましたが…私もそのように視えました。ここにいらっしゃるナッシュルアン皇子殿下とレデュラート様、ジューイ様、リリアンジェ様の従兄弟であられる可能性が高いです」
やっぱり…だった。ドッと体の力が抜ける。
「なっ何を言うのだっ!?でたらめを申すなっ!私はリディックルアン第一皇子だっいずれこの国の国王になる身であるぞっ無礼者めっ!」
なにコイツ…私は隣のカデちゃんの手を握りしめた。カデちゃんも握り返してくれる。
「無礼はどちらですか?私はキリッシュルアン国王陛下の要請により参りました。シュテイントハラル治療術院の代表でもあります。私は現存する治療術士の中で己が一番だという自負もあります。もしお疑いなら我が王家の名の元に一族全員の診断を受けられるが宜しいっ!」
かぁ…かぁっこいいぃぃ!流石ドラミン先輩っカッコいいよ!
するとクリッシュナ様がやおら立ち上がると、震える声で叫んだ。
「あの…あの…カデリーナ姫様、私っ私…ちゃんと子供を産んでいるのですっ!リディックの時もナッシュの時のように魔力酔いがすごくて辛くて…生まれても…正直…疲れてもう子供を触る元気もなかったのですが…でもちゃんとお腹にこの子達はいて…回復魔法をかけてくれて…喋りかけると魔力が弾むようにお腹の中から聞こえて…ナッ…ナッシュ、ナッシュッ…!」
ナッシュ様は慌ててクリッシュナ様の傍に行った。大人になってから初めてまともに目を合わせたのでないかしら…と思えた。それくらいナッシュ様は狼狽えていた。クリッシュナ様は縋るようにナッシュ様の手を取った。
「あなたも私のお腹に…いてくれたわよねっ…そうよね?間違いない…わよねぇ…ずっと…回復魔法…かけてくれてたわよねっ…リディックもお腹にいたわ…よね、あの子も優しい子で…気分がっ悪くなると…すぐに…あなた達は…私の子よ…ねぇ…」
ナッシュ様は泣きそうな顔で頷いた。
「はい…はいっお腹にいましたよ…母上…リディックがお腹にいる時も存じています。母上のお腹の中で回復魔法が何度も発動しているのを見ました。間違いありません…お腹には確かに弟が…いました」
「カデちゃん…」
「はい、恐らく葵も考えているアレです。日本でもたまにニュースになっていましたよね」
「あかちゃん取り違え…」
私は手元の資料を見た…恐らくこの方が母親だ…故意か偶然かは今は分からない。私はスッと挙手した。
「アオイ、申してみよ」
キリッシュルアン国王陛下は少し声が震えていらっしゃった。私はスッと立ち上がった。
「ここで少し過去の事件を掘り起こすことにします。アイザック=ゾーデ=ナジャガルについてです。この事件に際しご不快なお気持ちを感じられる方もおられるとは思いますが、何卒ご了承下さいませ」
ドアンガーデ一家が少しざわついた。正直、出て頂いてもらっても構わない…また胸糞なことを思い出すだけだから。しかしカッシュブランカ様は残ることに決めたようだ。
「先程も申しました通り、この…青年が…ナッシュルアン皇子殿下と従兄弟だと仮定すると、今お集まりの方に血族者がいないとなると…残るはただ一人、今は亡きキリッシュルアン国王陛下の弟御という事になります。ご不幸にもアイザックの魔手に合い…身籠られた方が二名…いらっしゃいます」
小さく女性陣から悲鳴が上がった。
「お一人は生まれる前に身罷られました。そして…お一人は生まれて…女性のご両親の意向により孤児院に預け入れられたそうです。今分かっているのは…その孤児院に入れられた子は無事育っていれば…26才という事です」
私は静かに座った。クリッシュナ様がいっそう泣き崩れた。ナッシュ様が背中を摩っている。
皆様の視線がリディックルアン…様?に集中している。彼は真っ青だ…今は皇子殿下と呼ばない方がいいのかな。
「明日にでもその被害に遭われた女性のご家族から詳しく聞き及んで参ります」
そう手を挙げたレデュラードお兄様が私の後を引き継いで会話を繋げられた。
この手の事件に本当の意味でも解決なんてないと思う。今まで一緒に生活してきた子が今日から他人ですって思えるかな…ないよね。
「葵…」
「何?カデちゃん…」
「そもそもなんだけど…キリッシュルアン国王陛下とクリッシュナ様って仲が悪いのですか?」
「どういうこと?」
カデちゃんは今はキリッシュルアン国王陛下を視ているようだ。何か視えるんだろうか…ま、まさか背後霊とか…いやあぁぁぁ…自分で想像して怖くなっちゃった…
「う~ん、なんというか魔力波形は今は心配とか悲しみとかそういう感じですが、クリッシュナ様の方へこう…優しい波形が伸びているのです。こんなに優しい波形めったに見ないけど、実際は寄り添いもしてませんよね?どうしてなんでしょ…」
カデちゃんはこう…と言って手を差し出している仕草をしている。そういえばナッシュ様こう言っていたっけ…父上に生き写しなのが気に入らないのだ…と。物心ついた時からずっと言われていたそんな目で見るな、気に入らない…と。ホントどうしてなんだろ?
とか、ボソボソと喋っていたら突然、沢田美憂が立ち上がった。そ、そういえばいたのだった。
あ、あれ?沢田美憂は「舞台女優」の仮面を被っていた!?この場所で?なんか需要あるかそれ?と思っていたら…
「じゃあ私は本物のリディック皇子殿下の異界の乙女なのですね!」
と、何故かカデちゃんに向かって同意を求めるように手を差し出した!?
「知りません」
カデちゃんの冷静なツッコミが静まり返った応接間に響いた……
ヴェル君の影が薄い…




