転生者は巻き込まれずに平穏に生きたい
すみません、短編の三つ目のお話なので前のからお読みいただくと読みやすいと思います。
できましたら前の二つもお読みいただければ嬉しいです。
二つ目のお話は今回加筆しました。
いや、ほかの二つに比べて短すぎるのが不憫で…。
「この世界は狂ってる」
僕の目の前には武器屋がある。
看板に『エリックの武器屋』と、書いてあるから間違いない。
これは比喩でもなんでもなくて、この店の看板には『エリックの武器屋』と『日本語』で書いてある。
気がついた時はなぜ中世ヨーロッパの世界観なのに言語は日本語なんだー、って衝撃だったなぁ…。
「おー、ジェバンニ、久しぶりだなぁー」
店に入るとどう見ても西洋人のおっさんが『日本語』で話しかけてくる。
異世界語が自動に翻訳される『翻訳チート』ではない、と僕は考えてる。
「えっちゃん久しぶりー。いきなりジェバンニクーイズ、これなーんだ? 当たったらお土産として進呈しちゃう」
「おま、えっちゃんって、なんだよ急にそんな呼び方…いや、それ、ただのりんごだろ?」
優しいエリックは、ずいーっとりんごを差し出し続ける僕の質問に困惑ぎみに答えてくれた。
そして『えっちゃん』を、自分が愛称で呼ばれたと正しく認識した。
「ん? なんだって? ゆっくりはっきり発音して?」
「え、いや、り、ん、ご、だろ?」
相手の唇をじっと見ていても発音と違う動きはしない。
「パンパカパーン、正解でーす。パーフェクトリックの名は伊達じゃないねぇ。りんごちゃん進呈しちゃう」
「いやいやいや、りんごくらい誰でも知ってるだろ。パーフェクトリックとか伊達じゃねーとか、バカにしてんのか?」
とかいーながら渡すとすぐに嬉しそうにりんごを齧るエリック。
もちろん英語圏でのポピュラーな愛称の『リック』にも認識。伊達政宗に由来する『伊達じゃない』も認識。
エリック、りんごは洗ってから食え。しかもここお前の店だろ? 店主が店でりんご食うとか日本では考えられない接客だなー。
幼い頃から続けている『もしかして、二次元転生? じゃあこの世界の明日はどっちなんだよ診断』も正直もー飽きてきた。
どう考えても日本じゃない世界観に日本語の看板、おしゃれ毛染めじゃなくリアルに紫の髪に紅い瞳の関西弁のおばちゃん、この世界には日本なんて国ないのに日本の歴史に関する言い回しがあり、日本固有のマナーがまかり通ってたりする。
昔は違和感があまりにひどくて、なんだかずっと頭にもやがかかったように感じでいた。
三歳になるくらいの時、僕は川で溺れて死にかけた。川を流されていると色々な記憶が次々と蘇ってきて「ああ、これが走馬灯ってやつか」となんだかぼんやり思ってから「いや、違うだろ。酸欠になった脳が生き残るために過去の記憶をひっくり返してるだけだろ」だって昔テレビで見たし、と考えて『走馬灯』、『酸欠』、『テレビ』と、この世界にない単語を続け様に使いはっきりと思い出した。
昔、僕は日本に住んでいた生粋の日本人だった、と。
とはいえ、今の僕はジェバンニ・フローレスト。
灰色の髪に紫の瞳の絶対に日本人ではない外観をしている。
大体ジェバンニってなんだよ。何人の名前だよ。
あ、記憶が戻った時って死ぬ寸前だったと思うんだけど実はエリックに助けられた。
それ以来エリックとは気の置けない仲だ。
大体なんとなくわかっちゃいるんだ。あれだろ? 転生って奴だろ?
神様のミスで間違って死んじゃってー、チートもらってー、転生ー、みたいなー?
つーか神様なんて知らんわ。会ってないし、チートとか貰ってないし。大体この世界、魔法はあるけど魔族とか魔王とかいないし。スキルとかステータスとかゲームシステム的な職業とかないし。
なんなんだよ。思い出しただけとか。誰得?
思い出して以降ははっきり言って苦痛しかなかった。
テレビがない、ネットがない、コンビニも、そこに売ってる漫画もない。
公衆衛生もなってない。トイレにウォシュレットなんてないし、公衆トイレもないから外出中は基本その辺にてきとーにする。生水なんて恐ろしくて飲めなくなった。
その後水系統の魔法が使えるようになった時は嬉しさのあまり泣いた。安心して水が飲めるし、いつでも手も顔も洗える。周りは攻撃に向かない水系統の才能に失望して泣いたと思ったようで、めっちゃ慰められた。罪悪感はあったが便乗して近所のおねーさまに慰めてもらった。ぐへへ、おねーさまぺろぺろ(妄想で)。
記憶を取り戻してからしばらくは正直浮かれてもいて、チートがなくても知識チートで金稼いだり、地球の音楽や物語を持ち込んで文化の父とかよばれちゃったり、そんでもっておねー様はべらしてくんかくんかしちゃったりと、いろんな妄想に忙しかった。
その妄想の過程でふと、思ったんだ。
あれ、この世界おかしくね? と。
異世界であれ何であれ、先ずは日本語がなぜ通じているのか?
なぜありえない髪の色をした人間がいるのか。
そのくせ微妙に日本の風習があるのは何故なのか。
僕はじみーにじみーに検証していった。
結果。言語について。この国の共通語は日本語。自動翻訳とかでなく発音も文法も日本語。どー確認しても間違いない。そのくせ近い国々は英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語などすべてヨーロッパ圏の言語だ。うちだけ日本語。
なんだよ、陸続きの国々の中で一国だけ言語が大きく違うとかありえないだろ。
大体中国語がいないとか。漢字は自然に発生したのかよ。文法もうちの国だけ全く違うし、うちの国の先祖だけ頭おかしいだろ?
ちなみにテレビや電車などこの国にまだ存在しないものは言葉として理解されない。また、酸素や電気などもまだ発見されていないとゆーか、概念がないので理解されない。
てれび? なにそれ、おいしーの? みたいな感じだ。
伊達じゃないなど浸透してる言い回しはそのまま使える。ちなみに語源とかは気にされないらしく、もちろん伊達政宗はいない。
しかし走馬灯は使えない。走馬灯自体もない。
使える言葉との差を考えると、走馬灯体験、いわゆる臨死体験をして助かる人が少なく、また僅かにある臨死体験も普及するためのメディアがない。結果走馬灯はこの国に存在しない言葉になっている。
確認しないで喋ると変な風に見られるから、若い時は少しずつ少しずつ確認しながら、かなり気をつけて喋っていた。
その頃の俺はコミュ障キャラだったと思う。
さらに、髪色だ。
瞳はまあ、日本のある地球でも紫とか赤もごく僅かにいるみたいだから、ありなのかもしれないけどさ。
髪の色はメラニンの色だろ?
髪が青とかさ、メラニン青いのかよ? 日に焼けたら肌青くなんのかよ?
実際はみんな日に焼けたら普通に黒くなる。
意味わかんないよ! 青くなれよ!
ヨーロッパ圏の世界観なのにさ、みんなご飯の時『いただきます』って言うんだよ。部屋ではスリッパはくんだよ。クリスマスとかバレンタインとか由来が謎のイベントがあるんだよ。しかも謙遜は美徳とか言われてるんだよ。公衆トイレない割に家にはちゃんとトイレがあるんだよ。中世ヨーロッパってうんこその辺に捨ててたんじゃないのかよ!
ぐぁー、なんだよもー。
で、僕は考えたわけだ。あれだな『二次元転生』ってやつだな、って。
多分地球の常識なんてクソ食らえな世界なんだ。
髪色がカラフルなのは(メディアミックスされる際など)キャラ見分けがつきやすいように、だと思うから多分元媒体は、ラノベ、漫画、アニメ、ゲームのいずれか。
言語は作成スタッフが語源なんか考えず作中で使ったりすれば普及。使わないものは普及しない、とかかなぁ?
日本語の看板とかを考えるとラノベは除外かなぁと思う。ラノベの挿絵に異世界言語でたらイラストレーター頑張って異世界語で看板書くと思うんだよなー。
地の文なら日本語だろうけど、ラノベで『武器屋と書いてある看板があった』と書いてあったら異世界語で書いてある前提だと思うんだよ。
この理論でいえば言葉だって異世界語前提だと思うし。
その点ビジュアルで見てる人に意味を伝えなきゃいけない漫画、アニメ、ゲームなら日本語のまま書いとく作品もある、んじゃないかな?
紙媒体の漫画もたとえ日本語吹き出しでもなんか、異世界語になってそうかとも、思うし。他国の人が外国語使う意味もわかんないし。
ゲームもないかなと思う。レベルとか、スキルとか、あまりにもゲームシステム的なものがなすぎる。
前世ゲーマーだった俺は泣いた。生身で無駄に派手なエフェクトのスキルとか使いたかった。必殺技とか使いたかった。
作中に自宅トイレが出て公衆トイレが出ないとか。キャラクターがスリッパ履く、キャラクターがいただきますって言って食事をするとか、作中に描写があるなしでこの世界に反映されてるのではないだろうか?
アニメで中世ヨーロッパの世界観を持つ話。
世界の正体をつきとめるために、国名や世界の歴史、偉人伝などをくまなく確認したが、僕の知ってる日本のアニメに類似のものはなかったし、日本で流行りそうなストーリー性を持った歴史もなかった。
これから、メインストーリーが始まるのか、それともまだずっと未来の話なのか。もしくは歴史にのこらない地味な恋愛物とかで、メインストーリーは過去にもう終わっているのか。
この国が日本語を使っていて他国がヨーロッパ圏の言語を使っている限り、うちの国が話のキーになる国である可能性が高い、と思う。
ヨーロッパ圏の創作作品ならアジア圏から日本だけピックアップなんかしないんじゃないかと思うんだよね。日本の作品だって某有名ストリートファイトアクションゲームなんかはインドとか中国のキャラクター出てたし。
日本人が中世ヨーロッパ風のいわゆる『剣と魔法の世界』的なファンタジーを考えたから他国はヨーロッパ言語なんじゃないかなと考えたり。
お貴族様の学校も四月からだし、何よりいただきますやスリッパの文化があるんだし日本人の考えた作品に違いない。
とにかく、漫画などのストーリーが本当に展開されるなら、一国を揺るがす大騒動になる可能性もある。
もし僕が知らない話で、気がつかずうっかりメインストーリーに巻き込まれでもしたら…考えたくない。
伊達に日本人は世界から変態と思われてるわけではないのだ。伊達にね。
他国に逃げるも考えないでも無いけど、今の地位と安定を失ってまでとも思う。何も起きなかったらめっちゃ損だし。
魔族とかいないけど、これから急に魔王が出現して勇者が召喚されるとか、だったら…。他国から滅ぼされていってうちの国が残り、召喚された勇者が魔王を倒しに旅立つとかもー…とか考え出すとなにが安全なのかまったくわからない。
うーん、ほんと勘弁してほしい。
フローレスト家は三代続いた男爵家だ。
騎士をしていた曽祖父がかつての大戦で武功をあげて男爵位を得た。
その後の太平の世、祖父と父は文官として男爵位を引き継いだ。
当然長男の僕も文官として男爵位の継承をめざしてる。
領地なし男爵だから僕が王に仕える文官や騎士を狙わなきゃ位を返還して平民に降ることもできる、けど、まあ、なんかトラブルあった時、身分は高いほうがいいかなと思って。
とりあえず僕も文官におさまった。
そっからはせめて『できる範囲で前世の知識による内政チート』でぶいぶい言わせよーかなぁ、って思っでたんだけど、ダメだわ。なんかすげー目立つし、場合によっては何言ってんだこいつみたいな目で見られるし。
第一この世界は様々なことがちぐはぐなのだ。
日本のゲームほどではないがある程魔法がある世界の為か、科学は全く進歩していないようだ。乗り物といえば馬か馬車。明かりはロウソクかオイルランプ、わずかに魔法。そのくせ紙はある。しかも活字印刷もあり本は地球ほどではないが貴族なら普通に買える値段だ。
そのくせ平民の通う学校がないので識字率は低い。活字印刷開発したやつ元取れてなさそうだなぁ。
ちょこーっと使った知識チートの中の一部の当たり知識が王妃様の目にとまった時は正直ガクブルしたけど、俺の目立ちたくない気持ちと、王妃様の俺を利用したい気持ちはいー感じに利害が一致した。
今や僕はすっかり王妃様の犬だ。
いや、王妃様すげー美人だしさ。年上美人のおねー様にいーよーに使われるの、嫌じゃ無いよね。むしろご褒美です。
前世は色々こじらしてたんだ。察してくれ。
王妃様のもとで何年か過ごすうち、俺は不穏な気配を感じ始めた。
第一王子が二つ名で呼ばれるようになったんだ。
『神の愛し子』とか…。
調べたら他にも複数人二つ名持ちがいる。
一人以外は全員が若い男性だ。
あれ、これなんか始まっちゃうんじゃ無いの?
先の大戦をおさめた先先代の王だって大仰なおくり名こそあれ、こんな中二な二つ名なんてないよ?
この二つ名持ち達を中心にこれから伝説が始まっちゃうんじゃないの?
完全に王子様勇者フラグビンビンじゃん。
しかも許嫁候補の公爵令嬢なんて『暁の天使』だぞ。
聖女フラグとしか思えない。
王妃様ぺろぺろ(妄想の中で)の安定を取るか、逃げやすいように平民に降りとくか。しかし逃げるってどこに?
逃げようがないなら現状維持しかあるまい。
王妃様くんかくんか(あくまで妄想で)。
妄想しながら現状維持していたら王妃様から皇太子補佐(王政なのになぜか皇太子)をしろと命がおりた。
関わりたくなさすぎてとっさに「だが断る」って言いそうになったけど、王妃様のおっぱいをぱふぱふして(しつこいようだが妄想で)なんとか飲み込んだ。
それはもう勇者パーティに組み込まれるのかとビビりながら詳細をお伺いした所、文官として王子の提案する案件をまとめ、可能なようなら実施し、成功をおさめよ、とのことだった。
わかりやすくいえば、王子がなんか言ってるから聞いてやって。なんかものになりそうなアイディアあったらあんたが成功させなさい。功績は王子のものにするから。ってことですな。了解にしてラジャーです。
むしろ『知識チート』再び、しかも僕目立たないよ! とか最高です。
うきうきしながら王子の話を聞くと僕の『知識チート』が不安を訴えてきた。
あれ、こいつ転生者じゃね?
病院の設立、平民に対する学校の設立、かつ義務教育化とか、現代日本の知識でもないと九歳児には考えつくの無理じゃね? 王子も知識チートじゃね?
いや、やるけどさ。
詳細を詰めて聞いていくと王子は口籠り、実はアイディアは許嫁候補の公爵令嬢のもので詳細は令嬢の方がきちんと説明できると思うから会って欲しい。とのことだった。
公爵令嬢七歳じゃん。子供じゃん。余計無理じゃん。
『暁の天使』が転生者かー。
俺は早速「発案者は公爵令嬢だった」と王妃様にチクった。正直そのままこの企画ぽしゃればいいなって思った。
転生者かもとか言い出すと「ジェバンニ、あなた疲れてるのよ」とか言われちゃうから黙っといた。
沈黙は金だ。
王妃様は少し考えこんだがすぐ口を開いた。
令嬢より更に詳しく話を聞いてそのまま案件をまとめ、実施せよ。しかし、事を公表する前に今一度報告するように、とのことでした。
お話ししてみたら『暁の天使』はアホの子だった。
とりあえず日本にあったものはいいものに違いない、みたいな思い込み満載とゆーか。
しかもたまに間違えた単語や知識を、自作との『ボトックスウォーター』をのみながらドヤ顔で言ってくるし。
ボトックスお前の足りない頭に注射してやろーか。
とりあえずあんまりアホすぎて僕も転生者だってことは黙っといた。
なんかバレたらめんどくさそう。
僕は頑張った。超頑張った。
正直病院なんて最初反発しかなかった。
車や交通機関が整っていないこの世界で病人、怪我人が別の場所に移動することは難しいことだった。
医者が患者のうちを回っている現状で、急に病気や怪我をして大変な時に医者のところまで出向けなどと言っても納得されるはずもなかった。医者のもとにむかえない重病人や重症者は死ねと言うのか? と言われ、全くもってその通りで普通に困った。
救急車的なものを普及させたくても、大通り以外は殆ど馬車など通れない未舗装の道だ。
そういった場所は担架などで運ぶしか無い。
また、人を雇うにも馬車や担架を用意するにもお金がかかる。
しかも電話などが無いため呼び出しが難しい。
これ無理じゃね? と、何度か挫折しそうになったが俺はもう『知識チート』じゃなく頑張ったんだ。
前々から考えていた騎士団マルチ化を提案。
騎士団に救急救命や火災の消火、災害派遣、公共事業の指揮、各地区に新設した『緊急相談所』への常駐など、日本で公務員が行っていた業務、あとは通信網の代わりを全部おっつけた。
今までが町の警らと町の門の警備、害獣の駆除、犯罪者の捕縛もしくは討伐、一部は国境警備への派遣、くらいが仕事で他はほとんど訓練だったから、倍以上の人員が欲しくなる。
警察だったのに消防士も救急救命士も自衛隊も市役所職員も、果ては電話とゆーか、飛脚もぜーんぶ兼任させる感じ。
とりあえず兼任させておいおい組織を細分化していければなーと思う。
正直騎士団の仕事量は尋常じゃないくらい増えた。
この人手不足に応じて平民の学校設立。
入学テストは簡単な体力テストと健康診断、面接のみ。学校がなかった事を加味して知識についてはハードルを設けなかった。
さすがに最初から義務教育は反発もあるのでまずは希望者のみで。
基本八歳以上十二歳まで募集をかけたが、それ以上の年齢の者からも希望が出た。
むしろ僕はこの層が欲しかったんだ。
読み書き礼儀さえ身についたら即戦力になれる十三から十八歳までの希望者。
僕は嬉々として平民学校高等部(仮)を設立。
ここは短期ですぐ閉鎖予定だからあくまで仮。
高等部は読み書き礼儀が習得出来たら、希望するものは即卒業させる。さらに卒業後、三年の騎士団への従属を約束する者には奨学金を設け、さらにさらに十年無事に勤めれば返還義務なし、と大盤振る舞い。
平民学校を学び舎ではなく、就職先として口コミを広めてもらった。これから数年は、卒業すれば簡単に騎士団に入れるってね。
数年したら騎士団もそれなりに増えるだろうし、そしたら試験をして優秀者のみの登用に切り替えるしか無いかなと思ってる。それまでに知識を身につける事の有利さが平民に浸透してればいつかは義務教育化できるかな?
ちなみに口コミは近所のおねー様ネットワークにお願いした。お礼におねー様が望めば足でもなんでも舐めます。むしろ舐めたい。舐めさしてください。丁重に断られた。解せぬ。
高等部は人手不足を補うのに読み書き礼儀以外を犠牲にしたが、数年すれば算術や歴史、外国語も身につけた子供が仕上がるはずだ。
そこまでに騎士団の中の文官枠を固いものにしていきたい。引いては城勤めの文官まで成り上がってほしい。
今までも平民が騎士になることはあったが、ほんの一握り。
健康であればだいたいが合格出来る平民学校に応募はびっくりするほど殺到した。
財源は王妃様に気に入られた僕の『黒歴史的前世の知識チート(笑)』だ。未だに思い出すと悶えたくなる。もじもじする、走り出したくなる、叫びたくなる、黒歴史まじやばい。
でもこれを機に僕は黒歴史を増やすことになった。お金のためだ…やめて、僕のライフはもうゼロよ!
読み書きと簡単な計算、マナーと体力作りをメインに希望者にはそれぞれの専門知識をちょっとだけ。
優秀な者や元々専門知識を持つ者は最短三か月で卒業させ、希望する者には新設した騎士団の仕事のうち、きつかったり、地味だったり、完全に内務のみだったりして人気のないとこで卒業者を準騎士として採用した。人手不足を補うためをダシに学校設立したからしゃーない。
派手に活躍はできないし、きつかったりめんどくさかったりする仕事が多くてかわいそうな気もするけど、最初はお互いの反発を考えればこの辺がいい妥協点だと思う。
本当は現在までそのほとんどを貴族が占めている文官こそ平民を雇用したかったが、貴族の強い反発が予想される。
ではなぜ騎士ならいいかと言うと、力仕事は下々のものがすること、とゆーのがこの国の一般的な意識だからだ。
この国では平民であっても騎士になる事は出来る。
費用がバカ高いが一応平民でも入れる騎士学校を卒業するか、高位の騎士もしくは貴族の推薦を受けるかでだ。まあ、現状かなり少ない。
騎士団に剣を使えなくとも働ける部署をつくり、そこで徐々に文官を育てる。
後は平民出身の準騎士の中で功績が高いものを徐々に別な部署に雇用し、最終的には極力全部所に準騎士を在籍させる。
更にはその後準騎士も正式な騎士に任命したり、立てた功績によっては細分化した組織の中から文官に振り分けていく。
そんなことが出来たらいいな。と思ってる最中です。
まだまだかかるよー。
あー、王妃様になでなでして欲しい。妄想でなくてリアルで。
しかしなー、こんな頑張ってんのに、魔王が急に現れて王都崩壊とかしたらどーしよ?
王子様は相変わらずキラキラ成長してるし、『暁の天使(笑)』様も中身は残念ながらも、見た目はそれなりに姫様らしく育ってる。たまにその外面の良さに笑いそうになるけど。
最近は二人の仲もそれなりのようで爆発すればいいと思う。
あー、他にも色々やりたいことあるんだけどなー。
どうせなら俺を巻き込まない範囲でさっさと危ないとこおわんないかなー。
「ジェバンニ、いつも皇太子の面倒見てくれて助かるわ。ありがとう」
「勿体無いお言葉です」
王妃様大好きー、ぺろぺろ、くんかくんか、もふもふ、ぱふぱふ(全て妄想で)。
「お茶を、いれてちょうだい」
「かしこまりまして」
王妃様のためならば某特命係にも負けないお茶を御用意しますよ。
僕はその後の何年か、王子が近衛騎士に剣で勝ったり、レアな属性に目覚めたり、戦略級魔術を覚えたりするたびにビビりまくって過ごした。
また同時に公爵令嬢の思いつきに胃を痛め、王妃様の妄想で回復する日々でもあった。
公爵令嬢たまに、いや頻繁に張り倒したくなる。
転生者であることが『暁の天使(笑)』にバレて、この世界が乙女ゲームだと教えてもらう数年前の出来事だった。
早く言えよ!
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークや評価も頂けて嬉しいです。
次は乙女ゲームヒロイン目線を公開予定です。