そもそも【ゲート】とは
玉座に座った黒髪の少女、フェリール。彼女は王冠を弄びながら語り始めた。
「本来、この魔法は素質の有無を調べる為に作られたのじゃ」
かつてブロードが行ったのはギルドの所有する水晶に魔力を流すというものだ。これにより火、風、水、土、雷の五属性の魔法が使えるかどうかがわかるのだ。
「お前さんは適性が無いと言われたじゃろう?具体的にいえば少し違う。適性が無いのではなく、魔法が使えないのだ」
ブロードは首を傾げる
「わかっておらぬの?使えないのではなく、使えるほどの魔力がないという事じゃ」
なるほど、とブロードは呟いた
「この魔法が使える時点で一つは適性があるのじゃ。複数の扉を作るには三つ、無詠唱にするためには四つ程度の適性がないと困難となる。じゃからお前さんには適性があって魔力が無いと言うことになるのじゃ」
手元で転がしていた王冠を頭に載せると腕を組み胸を張ってむふーと息を吐き出した。
口には出していないが、凄いじゃろ?の?と言っているようだ
「とはいえ…五属性とは言われておるが現象の数だけ属性があるとも言えるのじゃからなぁ…」
言いながら腕を下ろし、片膝を抱えるように持ち上げた。
「話を戻すが、わかるのはな、かつてヒロトが多用しておった時空に関わる属性じゃ。使えるものの少ないれあものじゃぞ?便利でつおいんじゃぞ??」
フェリールは目を輝かせながらブロードを見る
「それで僕が選ばれたと…でも魔力がないなら使えないままなんだっあーーですよね?」
「無理に丁寧に話さんでも良い。それでな、魔力が無ければ増やせば良い。そのための制約じゃ」
「つまり制約によって魔力が増えたってことですね?」
「そういうことじゃ。じゃがな?」
フェリールは立ち上がるとブロードに近寄り両手で頭を掴むと互いの鼻が当たるほどに引き寄せた。
「制約を結ぶ際に我の名を思い浮かべていたであろう?そのせいで零十で結ぶはずが六四か七三になってしまったのじゃぞ!」
目を見開き責めるような目つきで捲し立てる
「えっと…その…ごめん、なさい?」
零十や六四がわかっていないブロードは戸惑いながらも謝った。
「いや、説明をしなかった我も悪いのじゃが…」
フェリールは両手を離し、ふらふらと玉座へ辿り着くと居すにすがりつくように倒れ込む
「制約のセの字も知らぬ男にしてやられたとあってはな、王家の名を穢すような話でな…すべては考え無しに制約を持ちかけた我の責任なのじゃ…」
泣き出しそうな雰囲気に気の利いた言葉もかけられず、ブロードはただただ困惑するしかできないのであった。
「ところで、制約の零十や六四とはなんでしょう?」
しばらくして椅子に座り直したフェリールにブロードは気になっていたことを尋ねた。
「力関係の割合じゃ。零十は隷属と考えて構わぬ。死ねと言われれば死ぬような強い主従関係である。五分を超え六四や八二ともなれば命令を拒否する事ができるようになるのじゃ」
シネトイワレレバシヌ?
ぽろりとこぼされた事実にブロードは固まってしまう
「それだけでは無いぞ?零十であれば姿にまで影響を及ぼしてな、変わり果てた容姿にに戸惑うのをわろうてやる筈であったのにな、逆にこちらが変化してしまったのじゃ。本来なればさらに大人びて美しく、声をかけようものなら落ちぬ男などおらぬというに…どうしてくれるのじゃ!」
ブロードは夢を見なければ今この姿でいられなかったという告白にに寒気のようなものを感じながらも、理不尽な怒りにもやもやとした感情を抱く。
「あとは…付与される魔力量にも影響があってな、我が使える魔法とその知識程度は受け取っておるはずじゃ。しばらくは魔力を慣らしながら使えるように練習をするのじゃ。」
ならなかったのだから追求はするでないと言わんばかりにブロードを指さすフェリール。
「まぁ、はい。わかりました」
ブロードは頬をかきながらこたえる。
「制約において真名とはそれほど重要なものなのじゃ。じゃからおいそれと公言するでないぞ?絶対じゃぞ?ふりではないからな?」
「えぇ。人には伝えないように気をつけます。」
「ならば良し」
フェリールは満足そうに頷いた
「ところでふりとはいったいどういったものでしょう?」
最後の方で気になったことを素直に聞いてみる
「ヒロトが良く漏らしておったのじゃがな?ダメだダメだと言いすぎると逆に良しとなることがあるらしいのじゃ」
「駄目が駄目でなくなる…?」
「詳しいことは知らぬ。それ以上は聞くでない」
「勇者は不思議な事を言うのですね」
「言葉だけではなく、成すことも無茶苦茶であったわ」
少しだけ懐かしむような顔をしたフェリールではあったが、ブロードが気付く前にその表情を隠してしまった。
「さて、話はそれくらいにして魔法の練習じゃ。ある程度使えるようになれば、してもらわねばならぬことがあるでな!」
にこやかに笑うフェリールに、なんとなくではあるが悪い出会いではなかったのかとブロードは考えていた。
…時折制約の話を持ち出してからかうようになるのだがそれはもう少し先の話である
誤字脱字は感想より。