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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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勇者、スギノヒロト

かつて世界には大きな戦争があった。

世界の統一を目指す魔族と、生き残ろうとした者達の争いだ。


数では人類が有利であったが、魔族は個々の能力も高く強かであったために負けを重ねてゆき、その数と支配地域を減らしていった。


人類滅亡が目前となった時、神が1人の勇者をこの世界へと招き入れた。

名前をスギノヒロトと言い20にも満たない若者だったという。


彼の活躍は凄まじく、人類は勝利を重ねながらその支配地域を増やしていった。


人類が大陸の半分を取り返した時。

魔王率いる魔族と、勇者の呼びかけに答えた力による統一を望まない勢力、エルフ、獣人、人等による連合軍の最後の戦いが幕を開ける。



ひと月にも及ぶ戦いの結果は勇者と魔王の直接対決で幕を下ろした。両陣営の見守った対決は大陸を二分するほどの亀裂を産み、2人はその亀裂へと落ちていったという。


魔王を失った魔族は次の魔王を決めるために軍を引き、連合軍は亀裂を越えられぬ為に撤退した。

長く続いた戦争が終わったのである。





「というのが1500年ほど前の出来事で、彼の最後として伝わっているわけです」

ブロードが伝えられている話を終えると骨が若干肩を落としたようにもみえる

〈そうか…あやつは…〉

脳に響く声にも先程までの力はなく、弱々しいものとなった


その後しばらくの静寂が訪れる。

〈もう、帰っても良いぞ?〉

ようやく声が聞こえたと思えば1人にしてくれと言わんばかりの内容だった

「と言われましても…出口がなくては…」

ブロードは困ったように答える

〈出口がなくとも魔法があろう?〉

おかしなことを、と言わんばかりの疑問が投げられる


4人は顔を見合わせながらどうしたものかと悩み始める

〈お前は…ゲートの魔法が使えるのではないのか?〉

ゲートの魔法が使えれば帰れる、そう思える内容にブロードはさらに困った雰囲気を出した



〈そうか…すでに失われておったか…〉

事情を説明すると納得したように頷く。

〈ふむ…そうじゃな…〉

顎に手を当てながら、骸骨は何かを考えている

〈よし、選べ。ここで死ぬまで待つか…それともそやつを差し出すか〉

ゆっくりとした動きで骸骨はブロードを指さした


「差し出せば3人は助かるとでも?」

ジェイクが尋ねる

「ちょっと!何を…」

「待て。詳しく聞かなければ判断のしようがないだろうが」

ジェイクがブロードを見捨てるのかと思ったメフィアが話に割り込もうとするがジェイクによって止められる

「仲間だからな、説明してほしいんだが…?」

ジェイクの質問に骸骨はカタカタと音を鳴らしながら笑うように体を揺らした



提案された内容はブロードを手下として受け入れる事で労働力を確保。その見返りとして3人を送り返す、というものだった。


「なぜこいつなんだ?」

ジェイクはブロードを指さしながら尋ねる

この時ジェイクは悩んでいた。気にかけているからこそブロードをチームに入れているのだが、そのせいでブロードが犠牲となるかもしれないのだ。

〈なぁに、とって食う話ではない。その男であればゲートの魔法本来の使い方が出来るやもしれぬからだ〉

「僕はそれでいいよ」

その言葉にジェイクは驚いた

「いつも世話羽になってるし、戻ったところで出れるかなんてわからないし、手紙くらいは書けますよね?」

骨はゆっくりと上下した

「それに3人は赤土からも誘われてるんでしょ?」

ジェイク達が傭兵組織、赤土の旅団から勧誘を受けていたことをブロードは知っていた。

「気付いて…」

ジェイクは無かったものとして隠そうとしていたのだ

「偶然、だけどね。グループの再編成はよくある話だし、今がその時ってことでいいんじゃない?」

その言葉にジェイクはかける言葉をうしなっていた


〈では…口付けを〉

指輪を付けている側の腕が伸ばされる。

ブロードは近寄り片膝をついた。

〈今は無き夜の国、夜王フェリールへの忠誠を誓うか?〉

「はい(王女リリィ・フェミリアじゃないんだ)」

先に聞いた名前と違う名に戸惑いながらもブロードはその手に口付けた。


ブロードが立ち上がると右腕に痛みが走る。まるで皮膚を焼かれるような痛みだ。手首から始まり肩へと伸びる痛みに、ブロードは腕を抱え込むように抑えて蹲りながら呻く


「おいっ!?」

眺めていたジェイクにしてみれば何が起きているのかはわからないが、苦しんでいるということははっきりとわかる。

〈忠誠の証だ。すぐに済む…ぬ?〉

まるで初めからわかっていたかのように語る骸骨は身を乗り出しながら首を傾げる

「こんなに…痛いとは…」

思わなかった。そう言いたそうなブロードは袖を捲ると腕についた刺青を眺める。まるで蝙蝠の群れが飛んでいるような模様が手首から肩にまで伸びている。

〈なっ…そんなはずは…〉

明らかに動揺している声が響く。直後彼女の指輪が光を放ち、骨を飲み込むように広がってゆく

光が収まると骨であった跡形はなく、先程よりはひとまわり背の低くなった少女が椅子に座っていたのである。


歳は15,16ほどの女性。肩まで伸びた黒い髪は緩いカーブを描き、燃えるような赤いドレス。肌に沿うようで体のラインを強調するように黒い刺繍が施されている。

年相応とも言える育った胸と人形のように白い肌。そしてその美貌は思わず見とれてしまうほどだ。

少し見とれたあと、ブロードは思わずつばを飲み込んだ。


「まさか、名を知っていたとは…」

ため息と共に吐き出された声には諦めのような感情がこもっていた

「しかし…過ぎた以上は…仕方がない…」

少女は玉座へ沈むようにもたれかかり、4人はそれを眺めていることしかできなかった…

※話の帳尻を合わせるために第2話、思い出話の前半部分(150文字程度)を更新しました。既に見られている方はご確認いただきますようにお願いします。

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